満州アヘンスクワッド(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『満州アヘンスクワッド』とは、原作門馬司、作画鹿子により2020年4月から2021年9月まで『コミックDAYS』にて連載し、その後、『週刊ヤングマガジン』にて連載している漫画。第二次世界大戦前の満洲国を舞台に、主人公の日方勇が、ヒロインの麗華らと共に、日本軍や中国マフィアと対立をしながらも、それぞれの目的を果たすため阿片の密造・密売を行っていくクライム作品である。派手なアクションや知能戦だけでなく、仲間内の絆による団結力なども魅了的な作品である。

『満州アヘンスクワッド』の概要

『満州アヘンスクワッド』とは、原作門馬司、作画鹿子により2020年4月から2021年9月まで『コミックDAYS』にて連載し、その後、『週刊ヤングマガジン』の2021年43号から連載再開をしている漫画。第二次世界大戦前の満洲国を舞台に、主人公の日方勇(ひがたいさむ)が、ヒロインの麗華(リーファ)らと共に、関東軍や中国秘密結社と対立をしながらも、それぞれの目的を果たすため阿片の密造・密売を行っていくクライム作品である。勇は心優しい青年であったが、病気の母の治療費を稼ぐため、阿片の密造・密売を行う。勇の作った阿片の効力の強さに目をつけた麗華と手を組み、満州やその一帯に阿片を売りさばいていく。満州の当時の深刻な状況が鮮明に描かれていて、飢餓に苦しむ貧困層がいれば、アヘンに身を滅ぼす富裕層もいるという歴史的側面も垣間見ることができる。激しいバトルシーンだけでなく、阿片をどう密売するかやピンチを切り抜ける際の駆け引きも魅力的な作品である。

『満州アヘンスクワッド』のあらすじ・ストーリー

奉天編

物語は中国の満州を中心として作られた国家である満州国を舞台に、時は昭和22(1947)年、植物好きで心優しい青年日方勇(ひがたいさむ)が満州における日本軍の関東軍に召集されるところから始まる。勇は軍に所属し、従軍をするも敵軍の子どもに情けをかけたところを銃撃され、右目を負傷してしまう。そのため、勇は戦線を退き、農業義勇軍として農作業に従事していた。勇はそこで母と幼い妹と弟と暮らしていた。しかし、そんなある日、母がペストに感染してしまう。病気の母を治療するためにはあまりに高価な金額が必要であった。薬を買えず、金策を練る中、阿片芥子が大量に広がる畑を見つけた。その瞬間、密かにその畑を生産していた勇の同僚である陣内茂(じんないしげる)が勇に襲い掛かったが、勇の妹の協力により、陣内を殺害して埋めることができた。その阿片芥子を使用し、勇はかつて満州中に蔓延した麻薬である阿片を製造し、麻薬密売を手掛ける秘密結社青幇(チンパン)に販売をした。交渉が決裂しようとする中、リーダー格の謎の女に命を救われる。その女は麗華(リーファ)と名乗り、青幇の三大ボスの1人杜月笙(トゲツショウ)の娘であり、勇の作った阿片を密売する協力関係を求めた。母親の病状は悪化し、薬が間に合わず助けることはできなかったが、幼い弟妹と日本で平穏に暮らすということを目標に麗華に協力することを決意した。手始めに彼らは勇の作る阿片、真阿片を満州鉄道の職員に売りさばいていった。そして、麗華の提案により、青幇の管理下にあった瞬間記憶能力を持つ日本人の少女リンを救い出し、仲間にした。

熱河編

真阿片の密売やリンの救出などで青幇に目をつけられてしまったため、一行は住処と生産地を熱河省へと移す。そしてそこで、モンゴル民族に阿片生産地の護衛を依頼することとなった。これ以上の旅は危険ということで勇の弟妹は阿片の作り手として熱河に留めた。さらに、通訳として働いていたモンゴル民族のバータルを仲間に加え、勇、麗華、リン、バータルの4人は真阿片を密売するため、新京へと向かった。

新京編

新京における、次なるターゲットを満州映画協会に据えた。満州映画協会の新作お披露目パーティーに潜入すると、大人気中国人女優の李姚莉(リヤオリー)に助けを求められ、彼女をかくまうことになる。彼女は実は中国人のふりをさせられた山内洋子(やまうちようこ)という日本人であり、青幇によって管理されていると発覚した。その後、李姚莉の不在を利用し、麗華、リン、バータルの3人は満州映画協会の社員たちに阿片を販売を画策していた。一方、勇と李姚莉は青幇に捕らえられてしまうも、李姚莉が勇をかばったことで、勇は解放される。勇の尽力により李姚莉を青幇の元から解放することに成功した。李姚莉を取り戻した一行は真阿片によって傀儡とした満州映画協会を利用し、真阿片をプロパガンダとする映画を製作した。そうして、新京でのやるべきことを成し遂げ、次なる販売地を哈爾濱(ハルビン)と定め、向かった。

哈爾濱(ハルビン)編

哈爾濱は中国の秘密結社青幇とロシアのマフィアが勢力争いをする場所であった。到着すると情報収集のために勇と麗華は寺院に向かった。その際、突然司祭の暗殺が行われ、2人は犯人の疑いをかけられたため逃走を図った。捕まりそうなところを、2人が依頼主だと勘違いした「逃がし屋」キリル・メドヴェージェフに救われる。一度は協力を断ったキリルだったが、想い人であるナターシャが青幇に誘拐され、競売にかけられることを知ると、彼女を救うために再び麗華らと手を結ぶことにした。そして、彼らはその競売をロシアンマフィアの仕業のように見せかけて、爆弾を仕掛けて邪魔をした。ナターシャを取り返すことに成功するもロシアンマフィアに捕まってしまい、結果的に逃げおおせるも麗華は銃で撃たれ、重傷を負ってしまう。麗華の作戦の通り、青幇とロシアンマフィアの対立は激しさを増していった。それをうまく利用し、青幇とロシアンマフィアのボスをそれぞれ打ち倒すことができた。しかし、麗華は銃で撃たれた傷が悪化し、勇とリンとともに一足先に腕の良い闇医者がいるという吉林へと向かった。バータルとキリルは後始末を終えて、吉林へと向かう。その際キリルはナターシャと2人で暮らすための資金を稼ぐために勇たちの仲間となることを決め、ナターシャとも別れを済ませた。

吉林編

腕の良い闇医者である關志玲(クワンシーリン)に出会うことができ、なんとか麗華の治療にあたることができた。治療を終えた麗華らは次なる顧客をかつての支配階級であった旗人の子孫に決めた。上級旗人に仕えていた下級旗人であった昊天(ハオテイエン)を説得し、上級旗人やその妻に真阿片を売りさばいていった。しかし、そんな折に關が拠点としていた酒場に関東軍所属の長谷川圭人(はせがわけいと)と凡(ぼん)が突如現れ、勇の居場所を探るべく、關とリンは連行されてしまった。彼女らを助けるか否かで揉めるも、最終的にはボスである勇の判断に従う形で、リンと關の救出が為された。そして、関東軍に追跡され、逃げる形で吉林を脱し、態勢を整えるため、一度生産地である熱河へと戻った。
熱河に戻ると、関東軍総司令本部所属で阿片王と呼ばれる里山柾(さとやままさき)が、彼らの元を訪れ、勇をスカウトする。しかし、勇は仲間たちを家族であると宣言し、里山のオファーを拒否した。その後、關は満州一の大病院を作るという理想のために正式に勇の仲間となった。

大連編

阿片王里山を超えるため、世界中に取引先を作ろうと、アジアで二番目に大きい港である大連を目指すことを決めた。大連に着くとすぐさま一行は、絶対的な信頼をおける密輸の仲介人を探し始めた。すると、貿易会社に勤める李静(リージン)という男が接触をしてきた。そうして、静をある程度信頼しつつ、上海へと密輸をすることとなった。青幇の妨害もあったが、静の鮮やかな妨害作戦により、何事もなく、上海へと出航することができた。

上海編

上海に無事たどり着き、一行は情報収集のを始めた。そして、非合法の煙館だといわれている社交俱楽部へと潜り込み、その煙館が上海の秘密結社紅幇(ホンパン)の管理下のものであると分かった。そしてその煙館をうまく取り込んでいき、店には真阿片を売り、その売上を売り手である煙館の支配人や踊り子などから回収するシステムによって、紅幇の煙館の多くを手中に納めることに成功した。しかし、それによって紅幇はもちろん、上海を守る工部警察にも目をつけられてしまう。上海はパスポートなどが入国に必要ではないため、迫害された人々や職を求める人々が集まり、国際色豊かな都市となっていた。そこには当時のナチスに迫害をされていたユダヤ人たちも多く生活していた。麗華はユダヤ人の少年であるマルク・ベッカーに目をつけ、新聞による紅幇の糾弾とユダヤ人の団結を促させた。しかし、とうとう勇たちのアジトに紅幇による襲撃が始まったがそれは実は静の裏切りにより手引きされたものであった。そして、勇は紅幇のボス宋蘭玉(ソンランユー)の前に連行され、紅幇のもとで真阿片を作るよう命令されるが、勇は断り、監禁されてしまう。紅幇をも裏切り、再度勇たちの味方となった静によって勇は脱出し、静やバータルの活躍により強敵を一掃し、蘭玉邸から逃走するが、紅幇と工部警察の挟み撃ちにより絶体絶命の状況となる。その窮地を救ったのはユダヤ人たちであった。戦いの後、静と対話をする勇と麗華。静は実は英国のスパイであったが、そのことを妻子にも黙っていたため、その罪悪感からスパイをやめたいと考えていた。そして、真阿片一味と紅幇の抗争に巻きこまれ、死亡したように見せかけたのであった。その対話により、静も正式に勇たちの仲間となった。

斉斉哈爾(チチハル)編

斉斉哈爾(チチハル)は満州の北に位置し、ソ連と緊張状態の危険な土地であった。斉斉哈爾へと向かう前に阿片の補給を行い、勇の妹セツと弟三郎(さぶろう)を連れ、斉斉哈爾へと汽車で旅立った。途中関東軍による調査があったが、静の機転によって難を逃れることができた。斉斉哈爾には満州重工業開発会社が存在し、その自動車工場を真阿片の大量生産に当てることを麗華は考え、その会社への潜入を開始する。その会社は関東軍からも兵器生産工場として使うことを交渉されていたが、総裁の鮎見勇一朗(あゆみゆういちろう)は戦争を嫌い、要求をのまなかった。勇たちの説得と関東軍への嫌悪感から鮎見は勇たちと手を組むことにした。一方、バータルとリンは真阿片と似た良質な阿片が街中に多く散見されることから、質の良い阿片が大量生産されていると気づいた。2人はその生産元を突き止めると、青幇の工場で作られているものであった。そこでは幼い少女も被検体として拘束されていて、それを見かねた2人はその少女を救出する。その際、その阿片の開発者と会話し、それは狼阿片(ランアヘン)という真阿片とはまた違う生産法の阿片であった。工場を手に入れた勇は新たに従業員を雇うことにしたが、大量生産の難しさを感じていた。そんな中、狼阿片の効力が強くなっていることを聞き、真阿片の効力を強くすることを決める。

『満州アヘンスクワッド』の登場人物・キャラクター

主要登場人物(真阿片一味)

日方 勇(ひがた いさむ)

日本人。植物好きで心優しい青年。関東軍兵士として招集を受け、満州にて従軍をする。戦争の最中、負傷した幼い子どもたちに情けをかけ、近寄ったところをその子どもに銃で撃たれてしまう。命は助かるも右目に傷を負ってしまう。その後、農業義勇軍として農作業を行うが、病気になった母の高額な治療費を稼ぐために麻薬である阿片の製造を行う。そこで出会った麗華と、日本で家族と平穏に暮らすための費用を稼ぐために手を組み、阿片の密造・密売を始める。

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