蟲師の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『蟲師』とは、漆原友紀による漫画作品およびそれを原作としたアニメ、実写映画、ゲーム作品である。1999年から2008年まで『月刊アフタヌーンシーズン増刊号』にて連載。蟲師を生業としている主人公ギンコが、旅をしながら蟲とヒトを繋いでいく。時にヒトに寄り添い、時に蟲に寄り添い、ヒトがどうあるべきかを模索していく物語である。蟲に翻弄されるヒトの無力さや愚かさを生々しく描かれており、それでも逞しく生きていくヒトのしたたかさに読者は共感を覚える作品である。

「あの子は私の言う事なんて……」

しのは望まぬ婚姻により、心を塞いでしまった。自身の子供・レキのことさえも愛することは出来なかった。そんな母親の態度を察し、レキもしのに懐こうとはしない。レキは雷に打たれても無傷でいられるという特殊な体質をしていた。ギンコがレキの体質を調査すると、招雷子(しょうらいし)という蟲に寄生されたことが原因だと判明する。招雷子は、宿主が受けた雷を餌にする蟲である。そのため、宿主が落雷に遭っても死なないよう体質を変化させていたのだ。しかし、それも何度も繰り返せばレキの身体はどうなるか分からない。害がないうちに、蟲を身体から駆除することを提案する。しかしレキは「このままで良い」とギンコの提案を拒否。しのはレキが治療を拒否したことについて何も言わない。ある日、レキは再び雷に打たれようと外に飛び出す。ギンコはしのに「やめさせねぇと。行こう。何してる。あんたも来るんだ」と言う。しかし、しのは「あの子は私の言う事なんて……」と否定的だ。ギンコは「あんたでなきゃだめなんだ」と説得する。しのはギンコに言われるがまま、レキを引き留めようとするが、心からレキを止める気持ちにはなれない。しのは息子を愛する事ができない後ろめたさからレキに「一緒に死のう」とまで言う。結局、この親子は離れ離れで暮らすこととなるのだった。

カジの名言・名セリフ/名シーン・名場面

「うん ……相変わらずだよ……」

カジは母親と2人で暮らす少年だ。父は行商人をしており、家にはほとんど帰らない。カジは、近頃母の物忘れが激しくなり不安を覚えていた。くしゃみや団子、自分が持っていた着物のことなど、日常的な物事そのものが頭からすっぽりと抜け落ちているようだった。そんな時に、カジはギンコに出会い母親のことを相談する。カジに招かれたギンコは、数日母親の様子を観察する。記憶喪失の原因は影魂(かげだま)という蟲だった。影魂は寄生した宿主の記憶を徐々に捕食する蟲だ。日々繰り返しおこなう家事や顔を合わせるカジのことや、毎夜機織りをしながら思いを馳せる夫のことなど、習慣になっていることは忘れずにいられるのではないかとギンコは推測した。原因が分かったものの、治療方法は無かった。しかし、得体の知れない記憶喪失の要因が分かったことで母親は前向きになる。いっそのこと夫に会いに行こうと、カジと共に西の街へと旅に出ることにした。しかし、西の街で目の当たりにしたのは、夫が別の人と所帯を持っているという残酷なものだった。酷薄な現実を突き付けられた母親は、その後何日も床に臥せた。そのため、影魂は母親の記憶をほとんど喰いつくしてしまい、目を覚ました母は、カジのことと必要最低限の身の回りのことしか覚えていなかった。それから1年ほど経ち、ギンコはカジ親子と再会する。カジは、これまでの経緯をギンコに語る。父親のことを忘れた母だが、毎夜機織りをする習慣は変わらない事。記憶はなくとも、身体は忘れていないのだろう。そんな母をカジは心苦しくも静かに見守りながら生活をしていた。話を聞いたギンコは「……そうか。相変わらずだな」と言う。カジは「うん ……相変わらずだよ……」と頷くのだった。

ゼンの名言・名セリフ/名シーン・名場面

「踏みつけてなんざ 進めない」

ハナの一部だった「ニセガラス」で編まれた橋を渡ることはできないと涙するゼン。

3年前、駆け落ちをしようとしたゼンとハナだったが、その途中でハナは橋から落下してしまう。落下すれば命はない高さだったにも関わらず、ハナは生存していた。しかしそれは、ハナ自身ではなく「ニセガラス」に寄生され生かされているすぎない状態だった。そして、ニセガラスが抜け落ちたハナはそのまま命を失った。ハナが死んだことで村を出ることを決意するゼン。桟橋が老朽化により朽ち果ててしまったがニセガラスによって一夜橋(ひとよばし)が作られ、村の外への道筋が作られた。一夜橋を渡るには決して振り返ってはいけない。振り返れば谷底に落ちることとなる。しかしゼンは「踏みつけてなんざ進めない」と涙を流す。ハナを生かしていたニセガラスによって編まれた一夜橋を踏んで渡ることは出来ないと言い、振り返ってしまう。そうしてゼンは谷底に落ちていくのだった。

辰の名言・名セリフ/名シーン・名場面

「夜がこんなに長いとは 闇がこんなに恐ろしいとは」

提灯も持たず、闇夜に徘徊し、猟師に撃たれる辰。

獣を自在に操る能力を持つ男・辰。辰はこの能力を使って森で狩りをして暮らしていた。しかしその能力は、先祖が受けた呪いによるもので、辰は次第に必要のない殺生を繰り返すようになる。ギンコは辰に解呪の薬を飲むことを勧めるが、辰は拒否する。いともたやすく動物たちを操れる力に、辰は酔いしれていた。どんな動物も思いのままの辰は、夜の森も怖くはなかった。しかし、そんな辰に対してギンコは「森の王になったつもりか」と揶揄する。辰はギンコの話には聞く耳を持たず、闇夜に狩りに出る。提灯も持たずに山をうろつく辰は動物と間違えられ、別の猟師に撃たれ負傷する。腕に怪我を負った辰は洞穴で、動物から身を隠し怯えながら一晩過ごす。「夜がこんなに長いとは 闇がこんなに恐ろしいとは」と思い、自身の驕りを考え直すこととなった。

タキの名言・名セリフ/名シーン・名場面

「…そうだね あんたはどこにでもいるんだものね……」

この世界のどこにでも桶太はいるのだと信じ生き続けるタキ。

涌太(ゆうた)は雨蟲(うこ)という蟲に寄生された少年だった。雨蟲とは溺れて仮死状態になったヒトに寄生する蟲だ。水蒸気に紛れ、雨になり、山河に降り注ぎ、そうして生きているモノである。雨蟲のせいで他人と違う見た目や、体温が異様に低いこと、喉の異常な渇きなどから周囲から孤立して暮らしていた。ギンコが偶然、涌太と母・タキを訪れ、蟲を体外へ抜け出させる薬を処方する。しかし、薬は気休め程度にしか効かないと忠告をする。それでも涌太は、平常時よりも体温が上がり、周囲と溶け込めるほど変化していた。ある日、涌太は母に「海はどこから来るの?川はどこに行くの?」と尋ねる。タキは「雲も川も海もすべて形は違うけどみんな同じなの」と教える。平穏に暮らしていたある日、大雨に見舞われる。この雨のおかげで雨蟲は涌太の身体から抜け出たと思われた。しかし、変わらず涌太は喉の渇きを訴える。様子がおかしいと感じたギンコだが、みるみると涌太の体温が上昇し、まるで蒸発するかのように涌太は消え去ってしまった。これまでの雨蟲の記録とは様子が違うことから、ギンコは「溺れたのは涌太ではなくタキではないか」と推察する。ギンコの考えた通り、タキが涌太を妊娠中に溺れたのだった。胎児の時に寄生された涌太は、雨蟲と分離できないほど同化していたのだ。雨蟲の習性により、涌太は本人の意志とは関係なく、蒸気となり消えてなくなってしまった。涌太を失ったタキは以前涌太と「雲も川も海もすべて形は違うけどみんな同じなの」と話したことを思い出す。タキは「…そうだね あんたはどこにでもいるんだものね……」とつぶやき、涌太は今もまだ自身のすぐそばで生きているのだと言い聞かせて生きていくのである。

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