もものききかじり(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『もものききかじり』とは、2017年1〜8月に資生堂のwebメディア「花椿」に連載された漫画作品である。作者は、ブログに掲載していた漫画『センネン画報』が話題となりデビューした今日マチ子であり、代表作『cocoon』は2013年に舞台化された。
『もものききかじり』は、2018年に文藝春秋よりフルカラーで上下巻が発刊された。
舞台女優を目指す主人公・さとだももが、夢と現実の間を揺れながら成長する姿を描く。ごく普通の女性が、迷いながらも夢に向かって前進する姿が見どころである。

泉さんからロンドン留学に行くと告げられたももが、自分も前に進むことを決意した時の言葉。劇団では看板女優を努め、今までずっともものお手本であり続けた泉さんの旅立ちは、ももにとって寂しいものだった。しかし、「栗山さんの結婚やももの退職で自分も進まなきゃと思った」と語る泉さんを見て、ももは自分も前に進むことを決意する。ももの前には手を前に差し伸べている銅像があり、その手のひらには雨が降り注いでいた。それを見たももは、「進まなきゃ。手を伸ばしているだけじゃ夢はつかめないのだ」と心の中で決心する。夢を見るばかりだったももが、自分から夢を掴みに行く必要性を実感した瞬間を表す言葉である。

『もものききかじり』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

連載中に路線変更されたストーリー

『もものききかじり』というタイトルの通り、「花椿」での連載開始当初は主人公ももがさまざまな場面で他人の会話を聞きかじり、もうひとつの自分の人生を想像するという構想だった。しかし執筆が進むにつれ、夢と現実の間で悩むももの姿が見えてきたことから、舞台女優として独立するという夢を追うももの物語に路線変更がなされた。

ももが舞台女優になったのは他作品の舞台化がきっかけ

作者の今日マチ子は、本作の主人公のももを舞台女優として描いた理由として、戦争を題材にした自身の他作品『COCOON』が舞台化したことがきっかけであったと語っている。
今日マチ子は、『COCOON』の舞台化により演劇関係者と時間を過ごすことが多くなり、「学生や20代の方が多く、舞台上では輝いている一方で裏ではさまざまな悩みがあるようだった」という気づきを得たと語っている。その時見聞きして感じたことが、舞台女優を目指す中で様々な葛藤を抱えるももの心情描写に反映されている。

「同じ仕事はしない」が作者のモットー

本作品の作者である今日マチ子は、デビュー作である『センネン画報』をはじめ、少女たちの瑞々しい描写の中に衝撃的なシーンを描いて読者の心をざわつかせる作風で人気を博していた。
ごく普通の大人の女性を描く『もものききかじり』は、そんな今日マチ子の作品としては少々意外性のあるものだった。しかし今日マチ子が本作を執筆した背景には、「同じところで止まるわけにはいかない」という思いがあった。
今日マチ子は「同じような仕事は受けない」ことをモットーとしており、「読者も成長しているのだから、私も色々な作品を作って成長しないといけない」「新しい仕事を受ける際は、『今回の挑戦は?』と何かしらテーマを掲げて取り組むようにしている」と語っている。
また今日マチ子は、『もものききかじり』が生まれた背景として、自身が働きすぎて倒れてしまった経験があったとも語っている。今日マチ子は、行き詰まった時に感じたこととして「世の中にはキラキラしていないといけないというプレッシャーがあるが、すべての人が毎秒毎秒輝き続けるのは難しい。輝いて見える人も、普段はもっと地道なことをしているはず。その地道でダサい時間も大切に生きてほしい」とインタビューで語っている。

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