もものききかじり(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『もものききかじり』とは、2017年1〜8月に資生堂のwebメディア「花椿」に連載された漫画作品である。作者は、ブログに掲載していた漫画『センネン画報』が話題となりデビューした今日マチ子であり、代表作『cocoon』は2013年に舞台化された。
『もものききかじり』は、2018年に文藝春秋よりフルカラーで上下巻が発刊された。
舞台女優を目指す主人公・さとだももが、夢と現実の間を揺れながら成長する姿を描く。ごく普通の女性が、迷いながらも夢に向かって前進する姿が見どころである。
「劇団水玉コルセット」の主宰で劇作家、演出家。ももの1つ年上の先輩である。
普段はメガネをかけており、髪の毛をヘアゴムで縛るという無造作なスタイルだが、インタビューの時などは3分で美女に変身する。大学生の時に妊娠し男女の双子を出産、現在はシングルマザーである。実は、双子の父親は人気カルチャー評論家の月野玄(つきのげん)である。
忙しく過ごすのが好きで、家事育児と劇団主宰の仕事のかたわら最近は趣味で小説も書き始め、毎朝5時起きの生活を続けている。
5年前に結成した「劇団水玉コルセット」が最近注目を集め始め、「才色兼備の新鋭」として雑誌で特集が組まれるほどになっている。
表向きはいつも自信と活気に満ち溢れているが、インタビュー中は見えないところで手から血が出るほど強く爪を立てていることもあり、実はプレッシャーと闘っている。
泉摩耶(いずみ まや)
「劇団水玉コルセット」の看板女優。25歳。バイトなどはせず、女優としての収入だけで生活している。口癖は「プロだから」であり、セリフは一度で覚えるなど徹底したプロ意識を見せる。主宰の柿沼さんが注目されるようになるに従って、雑誌で「新世代女優」と取り上げられるようになった。
栗山さんの不在中に突然ももの家に押しかけてきて、ルームシェアをすることになる。ももは突然転がり込んできた泉さんに最初こそ戸惑うが、泉さんの日課である早朝ランニングを一緒にするようになることで、泉さんの意識の高さに感化され次第に良い影響を受けるようになる。ももは、泉さんは演技で行き詰まっている自分に発破をかけるために来てくれたのだと勘違いするが、実は単に母親と喧嘩して家出しているだけだった。
ももと栗山さんに同性愛者であることをカミングアウトするが、「今は恋愛より演劇に集中したい」と明言しており、ルームシェア中の2人と恋愛関係に発展したいという希望はない。思い立ったらすぐ行動する性格で、「目が覚めたらもうここにはいられない」とロンドンへの演劇留学を決意した。
愛読書として新美南吉の「手袋を買いに」を挙げている。
内野さん(うちのさん)
劇団水玉コルセットの若手新入り女優。柿沼さんが「あの子を使って何か作ってみたい」と発言するほど才能を認められている。ももは「自分の代役として起用されるのではないか」と恐れていた。結局は泉さんの演劇留学により、ももが泉さんの代わりに主演となり、内野さんがももの役となった。
仕事関係の人
月野玄(つきの げん)
個人ブログ「月のザレゴト」を運営するブロガー、ライター。ブログでももの演技についての取り上げたことがきっかけで、ももと知り合う。カルチャー批評家として雑誌やテレビに取り上げられるなど、活躍の場をマルチに広げている。以前は会社員であり、派遣を辞めたいが踏み切れないももに「会社で働くことはいい経験になった」「しかし迷うってことはもう次のステップに進む時期に来ているのでは」というアドバイスをくれた。
最近では演劇の脚本執筆にも挑戦しており、自身の演劇「恋のチクタク」に出演してほしいとももにオファーする。しかしその後、女優の丸山ペケ子(まるやま ぺけこ)との熱愛、舞台への丸山ペケ子の起用が報じられる。同じ舞台に出演のオファーを受けていたももが連絡を取ろうとしても、二度と返事が返ってくることはなかった。本人は丸山ペケ子との交際を否定したものの、その後破局が報じられた。
柿沼さんとの間に双子の子供がいるが、現在柿沼さんとは夫婦の関係にはなく、たまに子供と会っている程度である。
ももの友人たち
栗山ひとみ(くりやま ひとみ)
ももの友人。美人でキラキラしており、読者モデルをやっている。ももとは中学高校が同じで、当時はそこまで親しくなかったが、社会人になってから「一緒に住もう」と連絡があった。22歳の頃にルームシェアを開始し、現在は4年目である。ももは、栗山さんが自分と仲良くする理由を「美男美女のキラキラグループにいるとわたしみたいなのが癒しになるんだろう」と分析している。
いつも途切れず彼氏がいるが、「告白されたら大体OKしちゃう」「付き合いながら大好きになればいいやって思うもん」と語っており、恋人に求める条件はあまり高くない。
「演劇はよくわからない」と言いながらも、ももが出演する舞台は必ず見にきてくれる。
新しくできた恋人にプロポーズされ最初は断るも、2度目のプロポーズを受けて結婚し、ももとのルームシェアを解消した。
アツヒロ
ももが同僚に誘われて参加した合コンで出会った男性。ももの髪型を「キノコ」と言ってからかい、もものことを「キノコ」と呼ぶようになった。
合コンの翌日に「劇団水玉コルセット」の公演を見に来ており、そこでももと再開する。アツヒロの軽い雰囲気に最初は面食らっていたももだが、次第に仲良くなる。
「マジ」と「ヤバイ」が口癖だが、ふとした瞬間に本質をついた発言をしてももの背中を押してくれる。知識の引き出しは意外と多く、ももと泉さんが挙げた本や雑誌の話にもそつなく対応して話を広げられる。
婚活関係の人々
幸田愛美(こうだ まなみ)
アイ結婚相談所に勤務する婚活アドバイザー。母親に無理やり入会させられたももを担当することになる。好条件の男性と会うのに尻込みするももに、「演劇に打ち込むには経済面でも頼れるパートナーが必要なのでは」と助言する。
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目次 - Contents
- 『もものききかじり』の概要
- 『もものききかじり』のあらすじ・ストーリー
- 舞台女優を目指すももの日常と葛藤
- 泉さんとのルームシェアでももに生じた変化
- アツヒロと月野さんとの出会い
- 派遣を辞めることへの躊躇とももの決心
- 恋愛や結婚について悩むももの葛藤
- 月野さんの裏切り
- それぞれの旅立ち
- 『もものききかじり』の登場人物・キャラクター
- 「劇団水色コルセット」の人々
- さとだもも
- 柿沼レイナ(かきぬま れいな)
- 泉摩耶(いずみ まや)
- 内野さん(うちのさん)
- 仕事関係の人
- 月野玄(つきの げん)
- ももの友人たち
- 栗山ひとみ(くりやま ひとみ)
- アツヒロ
- 婚活関係の人々
- 幸田愛美(こうだ まなみ)
- もものお見合い相手
- その他
- ももの母親
- 丸山ペケ子(まるやま ぺけこ)
- 『もものききかじり』の用語
- 劇団水玉コルセット
- 「月と酢とポン!」
- 「月のザレゴト」
- 「恋のチクタク」
- 『もものききかじり』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- さとだもも「身軽になりたいって思うけど、抱えてるものが多いほど頑張ることができるのかもしれないなぁ」
- 栗山さん「そんなすぐに変身できないよ。舞台の役だって稽古を重ねて少しずつ作っていくんでしょ?」
- さとだもも「進まなきゃ。手をのばしてるだけじゃ夢はつかめないのだ」
- 『もものききかじり』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 連載中に路線変更されたストーリー
- ももが舞台女優になったのは他作品の舞台化がきっかけ
- 「同じ仕事はしない」が作者のモットー