それでも町は廻っているの名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『それでも町は廻っている』は、石黒正数による日本の漫画。『ヤングキングアワーズ』にて、2005年5月号から2016年12月号まで連載された。本作は嵐山歩鳥が喫茶店でのアルバイトを通して、ほのぼのとした日常を描くアットホームな漫画かと思いきや、ミステリー要素やSF要素が混在している。クラスメイトや店の常連との力が抜けるような日常や、少し不思議な体験が魅力の本作の名シーンを紹介していく。

歩鳥は、普段から丸子商店街の人たちから「可愛い」と言われ育ってきたが、最近それがマスコット的な可愛いさを意味していることに気付く。自分の容姿を嘆く歩鳥に対してタッツンは「まぁ…世の中にはそのあんたを思ってる人もいるんだからちょっとは自身持ちなよ」と慰める。これは真田が歩鳥に片思いしていることをタッツンが知っているかのような台詞である。これまでのエピソードでは、タッツンは全面的に真田への恋心を押し出した描写しか描かれていない。しかしこのエピソードは、タッツンが真田の思いを知った何かしらのエピソードのあとの出来事だと思われる。突然タッツンからこのような言葉が出て来たのも時系列シャッフル掲載の面白さである。

真田広章(さなだひろゆき)の名言・名セリフ/名シーン・名場面

「すーはー 至福だ」

歩鳥との時間を嚙み締める真田。

真田広章は歩鳥がアルバイトをしているメイドカフェに入り浸っている。歩鳥の幼馴染で長年片思いをしている。歩鳥がアルバイトをしているという理由から、このメイドカフェの常連にもなっている。数学の宿題に取り掛かっている真田の隣に無理やり腰を下ろした歩鳥は「宿題を見せてほしい」と言う。真田は面倒くさそうに拒否をするが、素直になれない真田は、喜びを嚙み締め「すーはー至福だ」と漏らすのだった。

「ウオオオオオオ 変態から生還ーッ」

喜びの雄叫びを上げる真田。

丸子商店街の寄り合いで、旅館を訪れた歩鳥・タッツン・真田。大人たちが宴会で酒を飲む中、歩鳥は誤って酒を口にしてしまう。すっかり酔い潰れた歩鳥を心配した真田は歩鳥を部屋まで送り届ける。歩鳥のことが好きな真田は、浴衣がはだけた歩鳥の姿を見てドギマギしてしまう。何とか下心を抑えようと奮闘しているところに同室のタッツンが戻ってきて、真田は思わず押入れに身を隠してしまった。下心があったとは言え、特に後ろめたいことは何もしていない真田は「何故、咄嗟に隠れてしまったのか」と自分の行動を激しく悔やむ。歩鳥とタッツンは深く眠りについた隙に、どうにか部屋から脱出した真田は「ウオオオオオオ 変態から生還ーッ」と雄叫びを上げるのだった。

「こいつと結婚したら毎日楽しいだろうな」

色んな発見を新鮮に受け止める歩鳥(左)と、そんな歩鳥と一緒にいるのが楽しい真田(右)。

昔食べたそばが非常に美味しく、もう1度食べたいと考えていた真田。しかし、幼い頃に食べたこともあり、いつどこで誰と食べたのかはっきり覚えていなかった。父親に聞いても有力な手掛かりはない。その話を聞いた歩鳥は美味しいそば目当てにそば屋の捜索に協力する。子供の頃に食べたのだから、家の近くからそう離れてはいないだろうと考えた2人は、早速そば屋探しを開始する。そば屋を探しているにも関わらず、歩鳥は民家に張られたステッカーや地面に描かれたケンケンパの落書きに目移りするばかり。それに付き合う真田は「こいつと結婚したら毎日楽しいだろうな」としみじみ思うのだった。その後、そば屋の真相は真田の母の葬式の日に食べたそばということを思い出す。実は真田は母を亡くしており父子家庭で育っていることが今回の話で判明する。母がいない真田が「自分が家族を持つなら」と考える話となっている。

紺双葉(こんふたば)の名言・名セリフ/名シーン・名場面

紺先輩の登場

モブキャラかと思いきや再登場する紺先輩。

3話で背景に紛れて小さく描かれた人物の紺双葉は11話で再登場する。人気キャラクターを俳優に見立て、自身の様々な作品に登場させることをスター・システム制と呼ぶ。著者はこのスター・システム制を採用しており、紺双葉は本作よりも前に執筆した『探偵綺譚石黒正数短編集』にも登場している。3話で小さく描かれた描写も、後に紺双葉が重要な役柄で再登場することを示唆しているのだ。

「ヒトを鉄砲伝来みたいに!!」

語呂合わせで誕生日を覚える歩鳥(右)とそれに反発する紺先輩(左)。

2日後に誕生日を控えたタッツンを祝うため、シーサイドに集まった歩鳥、タッツン、真田、紺先輩。歩鳥は皆で誕生日パーティーをすることが楽しく、皆の誕生日にもパーティーをやろうと提案する。皆の誕生日を聞くが、なかなか近い日付に誕生日を迎える人がいない。歩鳥は紺先輩に誕生日を聞くが、紺先輩は答えようとしない。無理やり生徒手帳奪い生年月日を確認すると今日が誕生日だった。タッツンの誕生日パーティーのために集まった手前全員が気まずい思いをする。もちろん何の準備もしていない歩鳥は、お祝いの言葉を口にするが紺先輩は「安い同情はやめろ!!」と言う。歩鳥は「来年はちゃんとお祝いしましょうね」と語呂合わせで誕生日を覚えたと紺先輩を励ます。しかし紺先輩は「ヒトを鉄砲伝来みたいに!!」と歩鳥に不満をぶつけた。

「あたりきしゃりき……てね」

一人暮らしを心配する両親を、安心させるため笑顔を見せる紺先輩。

紺先輩は、歩鳥と出会ったばかりの頃を思い返していた。紺先輩は中学時代にタッツンと部活が一緒だったため、その縁で歩鳥とも顔見知りになった。しかし人見知りで他人になかなか心を開かない紺先輩は歩鳥に対しても警戒していた。ある日、昼休みに昼食を食べる場所を探していた紺先輩は、同じく昼食を食べる場所を探している歩鳥に遭遇する。2人はそこではじめてゆっくり話をする。歩鳥は「覚えてろ~」や「あたりきしゃりき」など使いどころの分からないセリフをいつか言ってみたいと話し、紺先輩はその話を大笑いして聞いていた。そこから2人の仲は深まり、交友関係が続いていく。時が経ち、ある日紺先輩が一人暮らしをするアパートに両親が尋ねてくる。紺先輩の両親は寂しがりやな紺先輩を心配し「学校は楽しいか?もうしばらくひとりで大丈夫?」と問いかける。そう聞かれた紺先輩は、歩鳥のおかげで学校生活が楽しいことを思い浮かべる。そして、歩鳥に「また一緒にお昼ごはんを食べて良いか?」と聞かれた時と同じように「あたりきしゃりき……てね」と笑顔で両親に答えるのだった。

歩鳥と祭りに行く紺先輩

盆踊りに誘う歩鳥(左)と乗り気ではない紺先輩(右)。

紺先輩は、歩鳥に誘われて丸子商店街のお祭りに参加する。歩鳥は家にある浴衣を紺先輩に貸し、屋台を周り、盆踊りにも紺先輩の手を引いて参加した。あまり笑顔を見せない紺先輩に、歩鳥は楽しいお祭りの思い出を作ってほしいと考えていた。後日、針原から「お祭りは楽しかったですか?」と問われる。「歩鳥から聞いたのか?」と聞くと、針原は「歩鳥は前から紺先輩をお祭りに参加させるんだって意気込んでましたから…」と言う。そして「あの子単純だから紺先輩みたいにムスッとしてる人は普段楽しくなさそうに見えるんですよ…きっと」と続ける。そう言われた紺先輩は、終始一生懸命自分を楽しませようと振る舞っていた歩鳥を思い返す。紺先輩は「あいつは思考も行動も単純だな…」と言い、微笑むのだった。

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