虫と歌(市川春子作品集)のネタバレ解説・考察まとめ

『虫と歌』とは2012年に講談社から発売された市川春子による漫画作品。夏に伯父さんの家で出会った不思議な少女は自分の指だった『星の恋人』、肘を負傷したエースピッチャーとネジ止め「ヒナ」との日常を描いた『日下兄妹』、飛行機が不時着したことで遭難する2人の少年の旅路を描いた『ヴァイオライト』、兄が開発した人型の虫「しろう」と生活する内に自分の謎に迫る表題作『虫と歌』の4作品を収めた短編集である。作者自身が行った装丁にも注目。

野菜が嫌いで肉しか食べない。しろうの第一発見者であることから、しろうの命名権を手に入れた。うたのしろうに対する態度は過保護だと感じている。

しろう

技術が追いつかず海に沈められた試作品だったが、蘇って晃の家を襲撃した。草食でカミキリムシがベースとなっている。名前はカラスのように真っ黒だが、翅は白いことから「白鳥(しろう)」と、はなによって命名された。カミキリムシの好物が花粉と朽木であることから、庭の花を食い荒らす。ハーブ系の草は食べないらしい。

『虫と歌』の用語

関節唇損傷

『日下兄妹』にて、雪輝に下された診断。肩の上腕骨と肩甲骨の間でクッションの役割を果たす軟骨が剥がれたり、痛んだりすることで起こる。雪輝のものは擦り切れてなくなっており、かなり痛かったはずである。このままでは日常で脱臼を繰り返すと医師に言われた。彼の場合は野球の投球で酷使されたことが原因である。

晃の研究

この先、居場所を失った昆虫が人間に擬態する可能性が出た場合、進化ではなく昆虫として人間に近い形態で生き残らせるために行っている技術開発のこと。人型の虫を人間と同じ寿命にするため、実験を繰り返している。

『虫と歌』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

ヒナが雪輝の一部になったシーン

雪輝(画像中央)の一部になったヒナ(画像上部の円形)

ヒナは元々星のチリだったが、タンスのネジあてにされとても窮屈な思いをしていた。そこを救ってくれたのは雪輝であったことから恩返ししたいと考えていた。そのため、人型になり文字を覚え、図書館で勉強していたのだった。雪輝は大人から嫌われないため必死で野球をする反面、すべて捨てて1人でやって行くためわざと肩を壊したと主張する。しかし、雪輝は日に日に体調を悪くしていたことを知っていたヒナはこれからは話すこともできないが、雪輝の一部として生きることを決意する。

うた「春を見せたかった」

しろう(画像右)に様々なことを教えるうた(画像左)

しろうを看取った後、うたも倒れる。自分の正体がしろうと同じ実験体の虫であることを悟ったうたは、しろう同様恨み言なしで寿命を全うしようと決意する。ただ一つ心残りがあり、それはしろうに「春を見せたかった」だった。カマキリベースのしろうは花粉を好み、花をよく食べたため「いくら食べても減らない」季節があることを直に見せたかったのだった。

『虫と歌』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

初めて描き上げた漫画が『虫と歌』

幼い頃から虫や花が好きだったが、特に意識して不思議な生命体について描いている自覚はないと「このマンガがすごい!WEB」におけるインタビューで語っている。漫画は全く描いたことはなく、就職してからふと「ひとりで企画、編集、デザインまでやったら楽しそうだな」と思いつき、どうせやるなら期日・目標を設定して1本描いてみようとしたのが『虫と歌』だったとのこと。本作は「アフタヌーン 四季賞」を受賞した。

声優・斉藤壮馬のお気に入りは「日下兄妹」

『BRUTUS』での連載・#斉藤壮馬の「ただいま、ゼロ年代。」にて、本書との出会いは高校生であることを語っている。中身を検めずに表紙の印象だけだ購入するいわゆるジャケ買いで本を購入することにはまっており、当時購入した1冊だと言う。お気に入りの話は「日下兄妹」で、雪輝が海辺でハナに話しかけるシーンが印象に残っていると話す。

Ayatori20206
Ayatori20206
@Ayatori20206

目次 - Contents