治癒魔法の間違った使い方(ラノベ・漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『治癒魔法の間違った使い方 〜戦場を駆ける回復要員〜』とは、くろかたによる日本のライトノベル作品。イラストはKeGが担当し『小説家になろう』にて2014年3月から連載していた。コミックを九我山レキ、サイドストーリーである『治癒魔法の間違った使い方 〜誘いの街・レストバレー〜』がカクキカイにより連載され、アニメ化が決定している。異世界の勇者召喚に巻き込まれた兎里健は治癒魔法を発現し、救命団なる部隊に配属される。ローズに鍛えられた治癒魔法の特殊な戦い方で戦場や世界を駆け回り、異世界を生き抜いていく。

『治癒魔法の間違った使い方』の概要

『治癒魔法の間違った使い方 〜戦場を駆ける回復要員〜』は、くろかたによる日本のライトノベル作品。イラストはKeGが担当し、『小説家になろう』にて2014年3月から連載開始となる。九我山レキが作画を担当した漫画版は、『月刊コンプエース』(KADOKAWA)にて2017年6月号から、またカクキカイによるスピンオフ『治癒魔法の間違った使い方 〜誘いの街・レストバレー〜』が、『FWコミックスオルタ』(フロンティアワークス)で2023年8月から連載がスタートした。2021年8月15日にはアニメ化が発表されている。
作品としては第2回ライト文芸新人賞にて佳作を受賞し、アニメ化するなど人気の作品である。

主人公のウサトこと兎里健(うさとけん)は、「魔法があれば」なんて考えてしまう平凡な少年であった。そんなウサトは、下校時に一緒に帰ることになったクラスメイトで生徒会副会長のカズキこと龍泉一樹(りゅうせんかずき)と文武両道にして才色兼備の生徒会長であるスズネこと犬上鈴音(いぬかみすずね)の勇者召喚に巻き込まれてしまう。しかしウサトには貴重な治癒魔法の適性があった。適性を知られたことで治癒魔法使いの部隊「王国救命団」の団長ローズに拉致され強引に弟子として鍛えられる。そして治癒魔法の技術と戦い方を身に付けて、異世界を生き抜いていく。

『治癒魔法の間違った使い方』のあらすじ・ストーリー

勇者召喚に巻き込まれる

魔法があればなんて考えてしまう平凡な高校生ウサトこと兎里健(うさとけん)。雨の降る放課後に、クラスメイトで生徒会副会長のカズキこと龍泉一樹(りゅうせんかずき)と文武両道にして才色兼備の生徒会長であるスズネこと犬上鈴音(いぬかみすずね)と一緒に帰ることになった。その帰り道にウサトは、鐘の音が聞こえたカズキとスズネとともに異世界のリングル王国に召喚された。
この世界では魔王が復活し、魔族が各国に進行していた。勇者召喚が最後の手段として行われ、召喚されたウサト達はロイド・ブルーガスト・リングル国王に謁見する。カズキとスズネは勇者として召喚され、ウサトは2人の召喚に巻き込まれたことを知った。
王都魔法使いウェルシーの案内で3人は魔法適性を調べると、カズキは光属性、スズネは雷属性の適性だった。巻き込まれたウサトも念のため調べてみると検査機がエメラルド色に輝いた。応急処置程度の回復魔法とは違い、治すことに特化した貴重な治癒適性があることが判明。ウサトを連れてウェルシーは慌ててロイド王の下へと駆け込む。ウサトの事を隠しておきたいと思ったロイド王だが、救命団団長のローズが謁見にやってきた。ロイド王達はローズに隠そうとしたが、カズキとスズネがやってくるとエメラルド色に光ったことをバラしてしまった。それを聞いたローズはウサトを気絶させると、ロイド王の制止を聞かずに「一人前の治癒魔法使いに育ててみせましょう」と救命団へと連れ去っていった。

治癒魔法使いとしての修行

ウサトはトング、ミル、アレク、ゴムル、グルドの5人のけが人を運ぶ人員がいる救命団の詰所へと連れてこられた。他にも治癒魔法使いが街で診療所をしている。その日からウサトは共同生活を送りながら、治癒魔法使いとしての修行を開始した。疲労もケガも筋肉痛も治癒魔法で回復され、朝から晩まで走り込みや魔力感知の訓練が続く。ウサトはカズキとスズネを守るため、死ぬ気で喰らいついて行く。修行の様子を見に来たカズキとスズネ、騎士団長のシグルス、セリア王女が引いてしまう程厳しいものであった。
1カ月が過ぎた頃、ローズからリングルの森でグランドグリズリーの討伐という厳しい試練が与えられた。森に落とされハプニング続きでどうしようかと考え歩いていると途中で見かけた大蛇に殺されたブルーグリズリーの死体に寄り添う子熊見て、大蛇を倒すと覚悟を決めた。手製の石槍とナイフを武器に、治癒魔法を使いながら戦う姿に共感したのかブルーグリズリーの子熊がウサトに協力して共に蛇を倒す。しかし蛇は死んでおらずウサトに襲い掛かってくるが、ローズが助けに入り、飛び蹴り一発で倒してしまった。
王都に戻り傷も癒えたウサトは、救命団で飼われることになったブルーグリズリーの子熊にブルリンと名付けて、エサを与え撫でまわしていた。そこにローズが現れ、戦場に立つ資格があると誇っていいとウサトを称える。そして必要となる戦場での動き方を伝えてウサトに覚悟を持たせた。その後ローズは王城へと向かい、ロイド王より魔王軍が侵攻を開始している情報を得た。

魔族VSリングル王国

訓練でブルリンを担ぎながら王都の街を走り回っていると、救命団の治癒魔法使いのオルガ・フルールと妹のウルル・フルールと出会った。2人の仕事ぶりを目の当たりにしたウサトは自分も頑張ろうと訓練に戻ると、駆け寄ってきた獣人の子に戦場で起こる惨状を見せられた。女の子は「これは大きな貸し、恩を返す義務がある」と言って姿を消した。魔族侵攻が目前と迫る中で、ウサトは訓練でスズネの本音を知る。また戦争の準備時には、ローズに助ける命を選択し自分の命を守ることを指導されて、自分の命を含めたすべての命を救うという覚悟ができた。ウサトからこの世界で経験したことや助けてくれた人達を守りたいと聞いたカズキは恐怖を乗り越え戦うことを決める。
魔王軍との戦争が始まるとトング達は負傷者を運び、ウルル達は救援活動に勤しみ、ローズとウサトは戦場を駆けた。戦場では黒騎士とカズキ達が戦闘を開始、反転魔法で与えた傷が自分が負ってしまう黒騎士の能力にて苦戦しながら戦うが「反転」は予想より強く、カズキもスズネも傷を負ってしまう。ウサトは多くの騎士を助けながら戦場を駆け抜けていたが、黒騎士に殺されようとしていた2人の所に駆け付け、重い一撃で黒騎士を殴り飛ばす。ウサトの攻撃が黒騎士にダメージを与えたことに、みんな驚愕していた。2人の戦いを見ていたスズネは、黒騎士の弱点が治癒魔法だと気づき、黒騎士も反転できない上に純粋な打撃によるダメージを受け続けてついに気を失い倒れた。そこにローズが駆けつけてきたので状況を話し、2人は他の戦闘地へと治療に向かった。魔王軍に黒騎士が治癒魔法使いに負けたと連絡が入り、ローズ以外にも化け物がもう1人いるのかと動揺が走っていた。その後、回復したカズキとスズネが魔王軍に大打撃を与え撤退させたことで戦闘が終結し、ウサトは疲れから気を失い倒れた。

使者としての旅立ち

魔王軍撃退による褒章の受勲などを終えたウサトは捕虜の黒騎士に面会し、人道的に扱い怪我を治癒した。その帰り道、ウサトは未来視を見せた獣人のアマコを見つけ捕まえると、「生きていたか。対価として母さんを助けてくれ」と頼まれた。1年前から戦争でリングル王国が滅びる予知をしていたアマコは、母を助けるために治癒魔法使いを探しており、ウサトなら助けてくれると思い未来視を見せた。救命団に戻ったウサトはローズに相談を持ち掛け、ロイド王に判断を委ねた。ローズはウサトの鍛えなおしや救命団の預かりの黒騎士フェルムを厳しくしごくなど訓練はどんどんハードになっていく。
ロイド王は、ウサト達3人を代表として魔王軍の脅威を伝え協力関係を結ぶ書状を送ることを宣言し、書状を渡していく流れでアマコの母の下に行くことになった。出発前にウサトは治癒範囲強化のため、ローズの訓練の合間に魔力濃度を変化させる治癒魔法の練習をするようになった。ローズは魔力の上乗せを自力で理解したウサトに「数をこなせ。お前ならものにできるだろう」と訓練許可を出す。そして使者として他国に向かうウサトに「期待してるぞ」と言葉をかけた。

学園都市ルクヴィスで弟子の育成

ルクヴィスに到着するとウサトは街でひと騒動起こしてから魔法学園に向かった。魔視を持つハルファの案内で学園長室に行き、学園長のグラディスにロイド王の書状を渡した。その後、ウサトは街で倒れている治癒魔法使いの少年を介抱し、気になりながらもアマコの案内で獣人の女性キリコの家に向かった。ひと騒動あったがアマコが誤解を解き、挨拶をしているところ人間であるウサトを敵視している弟キョウが帰宅。4人は食事をして一晩泊まった。その翌日、学園の授業を見学するウサト達は魔法実演を行うことになり、スズネは高速で移動すると的に雷を纏った木剣を突き刺し、雷撃で追撃して的を真っ黒にした。カズキは魔法の球を複数出現させ、魔力を遠隔操作して的を貫き破壊する。最後にウサトが救命団の治癒魔法使いだと自己紹介すると、生徒達からは治癒魔法を下にみた発言をされ、貴族のミーナ・リィアーシアがウサトとの模擬戦を提案する。ウサトは断った場合にローズが怒り狂う姿を想像し、ハルファとの試合を受けることにした。ハルファは魔視の力で魔力の流れを読み攻撃を行い、ウサトは治癒魔法をかけながら攻撃も防御もしながら戦う。ハルファの武器破壊や魔法で補強された的を拳で破壊し驚かせ、最終的に魔視を利用して勝利した。
ウサトが街を散策していると前日に介抱したナック・アーガレスが治癒魔法を使いながら、ミーナ達の魔法攻撃を耐えていたが、魔力切れで気絶してしまう。追い打ちをかけるミーナだが、ウサトに威圧され攻撃をやめた。ミーナと魔法大会で戦うことなったと目を覚ましたナックに伝えると嫌がったが、ウサトの言葉に覚悟を決めて大会に向け救命団式の訓練を受けることになった。グラディスは訓練をしているウサトを呼び出し「やはりローズの弟子なのね。考え方や表情がそっくりよ。彼女の事を尊敬しているのね」と伝えるとウサトは「無茶苦茶な人ですけど尊敬しています」と微笑む。ナックは厳しい訓練を続けていたが、自分を見ているミーナの姿に怖気づいてしまった。ナックは両親から冷たくされて家を追い出されるようにルクヴィスに来たが、追いかけてきた幼馴染のミーナにいつしか虐められるようになってしまった。話を聞いたウサトは「卒業後したらリングル王国の救命団に来ればいい」と提案する。ナックはミーナとの因縁を断ち切って自分が納得した状態で救命団に行くと決めた。覚悟を受け取ったウサトは、ローズが自分にしたように鬼になって厳しく罵声もあびせながらも一所懸命に鍛え上げる。
試合開始と同時にミーナは炎魔法を放つが、ナックは鍛えた見切りと足で翻弄していき、隙をついて重い蹴りの一撃を与える。しかしミーナは戦闘スタイルの盾で防ぎ、魔法の量を増やし追い詰めていく。「逃げるな戦え」という客席からのウサトの檄で「救命団の治癒魔法使いになるんだ」と覚悟を決めたナックは、逃げずにミーナと向き合った。ナックの覚悟に焦ったミーナは、系統強化した魔法を発動するが暴走し、ハルファやウサトが危険を感じて叫ぶ。ナックはミーナを助けるために、手を握り回復魔法をかけ続け魔力切れで倒れた。目を覚ますとミーナは泣きじゃくっており、ナックは人を治療することができるようになった上に、試合にも勝利していた。その翌日、グラディス学園長に呼ばれたウサト達は、みんなの意識が変わったことに感謝され、その甲斐あってルクヴィスはリングル王国と同盟を結ぶことが決まった。
次の街へと出発するウサト達は、キリコやキョウ、救命団に入ると決めたナックに挨拶と励ましの言葉を送った。その後、ナックとミーナは互いに思いをぶつけたことで、仲が以前のように少し戻った。

ネクロマンサーとの出会い

次の街に向かっていたウサト達は、ゾンビに襲われている女性ネアをアレクの力で追い払うと、ネアの案内でイアヴァ村を訪れる。村ではゾンビの襲撃で困っていることを知り、ウサト達はその元凶であるネクロマンサーを倒すことになった。村人たちと協力してゾンビの軍勢を潜り抜け、ネクロマンサーの下へと向かうが見つけることができずアルクたちと合流。しかし、アルクと村人の様子がおかしいことに気づき、アマコを逃がすため距離をとるとネアが現れた。ネアはネクロマンサーの母と吸血鬼の父をもつハーフで、ゾンビや村人を魅了の魔法で操っていたのだ。ネアは身動きを封じたウサトを服従させようとしたが、治癒魔法を使い無理やり拘束を解き攻撃してくる。しかしネアも村人やアルクを操りウサトを取り押さえようとするが、逃がしたアマコがブルリンを連れて助けに来た。
ウサトが対策を考えているなか、ネアも操っていたアルクからアマコが「時詠みの姫」であることやウサトが勇者召喚でこちらに来た異世界人だと知った。さらにウサトを手に入れたくなったネアは、館の地下に収集されていた父親の遺産に手を出す。
ウサト達は館に侵入してネアの所まで駆け抜けていくが、魔術で耐性を強化されたアルクが盾となって現れた。ウサトは打撃が聞かない状態でも活路を見つけるためアルクと激しい攻防を繰り広げ、気絶させて洗脳を解く。ネアは災害と呼ばれる邪竜を目覚めさせた。邪竜はネアの支配を完全には受けておらず時折自我が戻ると破壊衝動を起こし、ネアにも攻撃を加えてくる。ネアはゾンビ化を解こうとしたが、邪竜は完全に意識を取り戻して復活した。邪竜に立ち向かうウサトとブルリンはけん制しながら隙を作り、アルクは炎魔法を纏わせた武器をウサトに託し、アマコの予知を使ってサポートし、力を合わせて邪竜に最大の一撃を与える。攻撃で勇者の刀が刺さった邪竜の心臓が露わになり、ウサトは咄嗟にその刀を引き抜くと邪竜は塵となり消え去った。決着をつけるためネアと話をするが、自決しようとしたネアを止めに入ったウサトに強制的に従魔契約をしてネアは従魔となった。ネアは村の人から記憶を消し、ウサトと同行することで村から出発した。

ナックの旅立ちとローズの過去

ナックはグラディス学園長に挨拶をし、ハルファとはお互いに能力と貪欲に向き合っていこうと話をした。出発する日にキリコとキョウ、ミーナと挨拶を済ませ、家族の思いも知ることができてわだかまりもなくなり、ナックはリングル王国に出発した。リングル王国でナックは住民に道を聞き、そこで救命団への入団希望を知った住民に入団を止められたが、ウサトの紹介と知った住民は入団に納得し、ウサトを称える声を聴いて偉大さを知った。その後、街であったウルルやウルド達にローズの下に案内してもらった。紹介状を見せたローズから突然、強烈なデコピンくらう。しかしウサトに鍛えられていたおかげでそれに耐え、ローズは「土台は出来上がっているようだな」と不敵に笑い、救命団の訓練に加わることになった。
その夜にはナックの歓迎会が開かれた。ウルルが何気なく戦い方の質問をしたら、ローズが過去に村を支配していたグランドホーンをただただ体を鍛え上げて倒し、その際に治癒魔法を使っていたことが、戦い方の始まりだったと答えた。ローズの異変を感じたオルガが彼女の下を訪れると、5年前の魔族侵攻で亡くした部下の事や救命団の設立について話し始めた。流れついたリングル王国で王国騎士団に入団したローズは、任務をこなし大隊長を務めるまでになった。副隊長のアウルや鍛え上げた荒くれ者達で編成された部隊を指揮し、偶然にも接触したネロ・アージェンスが率いる魔王軍と戦うことになり、ローズはネロと激しい攻防を繰り広げる。魔族が命を捨ててでも殺す覚悟で戦い始めるとローズの部隊も数を減していき、戦いに動揺したローズの隙を見逃さずネロの一撃がローズの右目に入る。治癒するために動くローズをまたもネロの一振りが襲うが、アウルがかばい瀕死の状態になる。治癒ができなかったメンバーは亡くなってしまい、怒りに身を任せた全力攻撃をローズは繰り出していく。疲弊したネロに弟子のアーミラが肩を貸す姿に自分とアウルを重ねてしまい攻撃の手を止めた。魔族の撤退後、ローズはアウルに治癒魔法をかけるが「隊長の部下として戦えて幸せでした。あなたは私たちの憧れのままで」と言葉を残して亡くなった。
全員の亡骸とともにリングル王国に戻ったローズは逃げるように大隊長の座を辞した。部下たちの家族からは優しい思いや言葉が悲観しているローズを苦しめ、右目に負った傷も治癒させず悩み続ける。ふと部下達を思い出した時に顔向けできる自分でいようと決め、戦場で傷つく命を救い、誰も死なせない組織を作ると救命団を発足したと語った。ウサトに出会った頃のローズは、彼にアウルの影を見ていたが、どんどん成長する姿に自分も救われたと感じていた。

祈りの国サマリアールの過去に立ち向かう

サマリアールに到着すると、リングルに連絡するため魔物のフーバードで伝書便を行っている店へとやってきた。その時大きな塔から鐘の音が聞こえ、町の住民が塔に向かって鐘が鳴り終わるまで祈りをささげた。祈りの国の所以を知ったウサトの下にサマリアール王国騎士団長のフェグニスがやってきて、ルーカス・ウルド・サマリアール国王が会いたいとウサト1人が招待される。謁見するため移動すると、亜人差別の強い騎士団から隠れていた2人はアルクと合流した。
ウサトはルーカス王に謁見し、ロイド王の書状を渡し連合を組むための交渉をする。王は書状の内容には文句をつけながらも連合に同意するが、ウサトを勧誘する目的でルーカス王は猶予を与えてウサトを王城に滞在させた。案内された庭園は魔具により結界が張られており、結界内には病的なまでに髪も肌も白いルーカス王の娘エヴァ・ウルド・サマリアールが隔離されていた。儚いというか存在感が希薄なエヴァは、ウサトを過剰におもてなしする。そんな日が数日過ぎ、ルーカス王の妻エリザの墓でルーカス王と出会い、ウサトの協力関係を強固にするための提案やエヴァにかかっている王族の死の呪いの話を聞いた。その後、ファグニスの案内で庭園に戻る際に邪竜と勇者の影響で厄災にみまわれ、復興のために鐘の塔を建て、いつしか崇拝され祈りの国と呼ばれるようになったとフェグニスは語った。
預けていた荷物を返してもらったウサトだが、フェグニスが勇者の刀を気にしている様子に念のため刀に関する情報を隠し中庭に戻った。そこにフクロウ姿でネアが様子を見に来て、ウサトが心配していたエヴァをネアの協力で呪いを解呪する方法があると知り助けることを決意。その夜にエヴァから呪いの話をされ、逃げ去る彼女の手を取ると突然呪いが体を包み、周りに無数の骸骨たちが出現した。骸骨達の精神攻撃をうけ、身動きが取れなくなってしまったウサトを、ネアが魔術で守り追い払って一時的に呪いの耐性をエヴァに付与して解呪した。ネアの力で解呪のための道筋が見えてきたウサトは、ルーカス王からはるか昔に魔術の生贄になった国民の魂が呪いの正体だと聞く。ネアは魔術の発動原因を調べ、その破壊にアルクやアマコの協力をえるために2人の下に戻り、ウサトはルーカス王やフェグニス達騎士を連れ、玉座に隠された機密の地下室に向かった。
フェグニスの行動に違和感を覚えたウサトは、ネアと調べた呪いの事や勇者の刀について話を振る。するとフェグニスは本性を表し、今まで一族が代々呪いの発動や維持を行っていたことを話し始めた。フェグニスの行いがエリザを死に追いやり、エヴァまで呪っていたことにルーカス王は激怒。さらに呪いの維持のために鐘を鳴らして祈りをささげる国民から少しずつ魔力を吸収していた。それに気づきアルク達に鐘を破壊させ、壊されたことで怒り武力行使に出たフェグニス達をウサトは制圧し拘束した。そして呪いの発動源である地下の部屋で魔術の核を見つけ近付くと、呪いにとらわれた骸骨が現れ、核の破壊を防ごうと立ちふさがる。ネアはルーカス王とエヴァを魔術で守り、ウサトは突っ込み骸骨に取り囲まれて精神攻撃を受けてしまう。対抗魔術で守っているネアの前に、呪いをかけて崇拝する勇者になることに取りつかれた魔術師の骸骨が現れた。ウサトへの攻撃を行いつつ、ネアたちへの攻撃を強めて窮地に追い込む。しかしエリザの魂が姿を現し、ネアと一緒に骸骨の攻撃に対抗していく。防ぎ耐えている間に、ウサトは恨みや苦しみなどの負の感情をぶつけてくる精神攻撃を受けとめ、怒りのオーラを纏って立ち上がった。骸骨に攻撃をさせようとしたが命令を聞かなくなり、その隙に魔術師を核へと投げ飛ばして勇者の刀で動きを封じ、治癒魔法を纏ったパンチで核ごと破壊した。呪いに縛られていたエリザや骸骨の魂が解放されて、エヴァにかかっていた呪いも消えた。
疲労から眠ってしまったウサトが目を覚ましルーカス王に謁見すると、今回のお礼と同盟への参加の承諾をもらった。ウサトはそそくさと次の街へと出発しようとその場を去ろうとするがルーカス王がエヴァの婿となり王位を継ぐ気はないかと薦めてくる。エヴァも乗り気で困ったウサトだが、そこにスズネが求婚を断るためにウサトが想い人だと発言した情報が入り、エヴァがさらに思いを募らせ1番になると宣言し始め、逃げるようにウサトは次の街へと出発した。

湖上の都市ミアラークで神竜と出会う

カームへリオにいたスズネは護衛騎士のクルミアに、ウサトもネアたちにからかわれながらそれぞれ次の都市へと歩みを進めていた。すると突然何かが砕ける音が聞こえ、ネアは偵察のため飛んでいくが、魔力がこもった咆哮が飛んできて飛行が制御できずに落下し、ブルリンやアマコも体が硬直してしまう。咆哮の影響で周りに生息していた魔物が暴走して襲ってくるとアマコに言われ、急いでミアラークを目指して走り出した。
オーガなどの魔物に追われ、襲われながらもミアラークが浮かぶ湖にたどり着いたが、船で渡るはずの湖が一面凍っていた。ウサトはアルクたちに凍った湖を渡って街に行くように指示し、迫ってくる魔物を足止めしようと身構えていると氷の上で鎧をまとった騎士と、異様な雰囲気を持った男の戦いが魔物を追い払う。ウサトが騎士の助けに入り戦うが、打撃にも魔術にも力技で対抗してくる男に苦戦する。ウサトは騎士を抱えてミアラークへと走り出して、騎士から男の正体が勇者と呼ばれるほどの実力があるカロンと聞いて警戒を強めた。カロンは特殊な斧を振り氷魔法を放ち、ネアの耐性魔術でこらえるウサトだが反撃のチャンスなく対抗するのみであった。しかしカロンは竜化することで更に強さを増して攻撃をしてくる。カロンの攻撃に気力で身構え反撃しようとするウサトだが、街に貼られていた結界がカロンの攻撃を防いでくれたことで難を逃れた。結界に阻まれたカロンをその場に残し、ウサトは騎士とともにミアラークの街へと入った。
街には人の姿がなく、目を覚ました騎士の案内で城へと案内された。騎士と入口で別れ、玉座でポーションの効果で寝ずに街を守っていた女王ノルン・エラド・ミアラークと面会した。ウサトはロイド王の書状を渡し協力関係をお願いしたが返事は保留となり、白服を纏った少年が来ると知らされていたノルン女王はカロンについて話し始めた。急に目覚めた竜の力で暴れるようになったカロンは牢に入れられた。脱走し引き寄せられるように宝物庫から使い手によって最適な形に変化する氷の杖を盗み、カロンが所持したことで氷の斧へと変化し持て余した魔力が湖を凍らせてしまった。そこにウサトが性別を勘違いしていた鎧騎士のレオナが玉座に入室してくると、カロンの覚醒や太刀打ちできなくウサトに助けてもらったことを伝えた。異常な強さを持ち救命団の一員だと知ったノルン女王は、助言をくれていた人物へと会いに魔術を使い転移した。
助言者・神竜ファルガがいるクレハの泉に連れてこられた。ファルガは平穏と調和を愛している竜で邪竜を片割れと呼び、勇者やレオナ、カロン所持している武具を作り与えた存在であった。ファルガはカロンの龍の力が覚醒した原因をネアが邪竜を目覚めさせたことと、魔王の復活が原因だと教えてくれた。それにより原因の一端がネアにあることを知ったウサトは、カロンを止めるために力を貸すと提案した。ファルガは鏡像の魔術で最も怒気を抱いた者との戦闘でウサトの力量を図ろうとする。ローズを連想したウサトは恐怖に怯えたが、呼び出されたのはフェルムであった。ファルガの力で闇魔法を使うフェルムは、黒騎士の姿でなく団服の姿で戦う。ウサトは攻撃を受けとめ「鍛錬を頑張っているな」と褒め、照れたフェルムを気絶させた。試練後にはリングル王国にフェルムを戻すが、その瞬間に繋がった空間にローズから「心配はしていないが鍛錬を怠るなよ」と短いがウサトを思った手紙が投げ込まれた。ファルガの試練に合格し、勇者の刀をウサトにあった武具に変化してもらうことになった。武具完成まで、レオナにはウサトとともに訓練を受けて足りない部分を鍛えることになった。

誘いの街レストバレーに迷い込む

これはウサト達一行が、レストバレーの街に迷い込んだ話である。ミアラークを目指していたウサト達は、盗賊に襲われていた商人を助け、自分たちの食料を分け与えた。食料を調達しながら進むために森の中に入ったが途端に霧に覆われてしまい迷ってしまう。できたばかりだと思われる道を見つけ、たどって行くと地図にも載っていない街を見つけた。街を訪れると警戒されることもなく歓迎を受け、宿屋の娘メーナの案内で宿泊先に向かい食事を堪能した。メーナとの自己紹介や魔族への認識などを話し、ウサトが変わっている判定を受けながらも楽しく過ごす。メーナが仕事に戻った時にウサトは3人に街について聞いてみると、地図に載っていない街がそれぞれが思う理想郷に感じていると評価されることを疑問を持つこともなく理想郷の街を受け入れていた。この街は入った者は生きて出ることはなく、1人の人物の理想郷である秘密を抱えたメーナは、外で鍛錬を行っていたウサトに魔術が効いていないと知ると待ち人が来たと思った。ウサトは出発準備が終わるまで滞在することになった街を見回っていると、笛が鳴り街のみんなが高台にあった神殿に集まった。ネブラの滝と呼ばれる自殺の名所のような滝で、女性の司祭であるマリリンが魔術で水を操ることで自殺者を助けた。魔術で幸せな夢を見せて死ぬことを許容している住民に驚愕したウサトは、治癒魔法をかければ助けられると治癒魔法弾をぶつけて死にかけていた男を助けた。司祭はウサトが治癒魔法使いと知るとお礼だとして晩餐会に招待し、メーナに含んだいい方でお願いしてウサトを司祭の家に連れて帰った。
ウサトは食事をしながら、神殿で行われていたことや魔術を使っていることを質問するがはぐらかされてしまう。夢を見せる夢幻の魔術とウサトの治癒魔法で更に街を発展させていこうと勧誘されたウサトだが、マリリンの魔術が水を操る魔術と夢を見せる魔術の2つなのか違和感を感じたこともあり使命があるからと断った。宿に戻ったウサトは、アマコ達がすでに寝てしまったことをメーナから聞き、まだ眠くなかったウサトは日課のトレーニングを始めた。ウサトが帰った後、マリリンは自分の思い通りにならないウサトを私のものにしてあげると不敵な笑みを浮かべてたたずんでいた。

『治癒魔法の間違った使い方』の登場人物・キャラクター

lazy-human-EX6
lazy-human-EX6
@lazy-human-EX6

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