ハックルベリーにさよならを(舞台・漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ハックルベリーにさよならを』とは、集英社より発売された漫画作品。演劇集団キャラメルボックスが上演した脚本をきらが漫画化したもの。脚本は劇作家の成井豊が担当している。主人公で小学6年生のケンジの側には兄さんがいる。ケンジの両親は離婚しており、面会日に父親からカオルさんという女性を紹介される。ケンジはカオルさんに反発するが、兄さんは好意を持っている。ケンジは父親と喧嘩し、ボートで川を下りながら後悔を取り戻す旅に出る。親子の葛藤や、少年の成長などを描き出すファンタジー作品。

ケンジの父親が絵本を書いている出版社に勤めており、ケンジの父親に好意を抱いている。下高井戸のアパートに暮らしている。髪が長く、可愛らしい印象。ケンジと親しくなりたいと思い、苦手な料理に挑戦したり、カヌーについて話をしたりと前向きに頑張っている。“兄さん(もう1人のケンジ)”とは少しづつ仲良くなる事が出来るが、ケンジとはなかなか親しくなる事ができない。

たけし先生

ケンジの家庭教師。国語と算数をケンジに教えている。カヌーの魅力をケンジに教え、6年生になったお祝いにケンジにパドルを贈った。また“たけし”は、きら作『まっすぐにいこう』の登場人物の姿と名前を借りている。

『ハックルベリーにさよならを』の用語

ハックルベリー

マーク・トゥェイン作『ハックルベリー・フィンの冒険』の主人公の名前。ハックルベリー・フィンは、この作品の中で、大酒のみの父親から逃亡するために、筏で川を下る。本作中では、主人公ケンジが、両親の離婚や父親の再婚話など、受け入れきれない現実から逃れ、1人になるためにカヌーに乗って川を下るシーンが描かれている。辛い現実から逃れるために川を下るという点で、ハックルベリーの境遇とケンジがリンクしていることが表現されている。

カヌー

小型舟でパドルを使って水上を進むスポーツ。ボートは後ろ向きに乗るが、カヌーは前向きに乗るという違いがあり、この事は作中でも言及されている。主人公ケンジは、家庭教師から魅力を教えられ、カヌーに夢中になった。

パドル

カヌーで水をかくために使う道具。作中では、パドルは小学6年生になったお祝いに、ケンジが家庭教師からプレゼントされたもの。ケンジは、父親の家に行く時も、塾に行く時もパドルを持ち歩いている。作品のクライマックスでは、このパドルを使い、ボードに乗って川を下る。

絵本『マメタロウくんとはなこちゃん』

ケンジの父親と母親が作った絵本であり、カオルさんの好きな絵本として登場する。絵本のタイトルに使用されている“マメたろう”“はなこちゃん”は、きら作『まっすぐにいこう』の登場人物でもある。

『ハックルベリーにさよならを』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

カオルさん「今度は絶対に出て行かせないわよ」

父さんとの結婚に関して、カオルさんが覚悟を見せた。

カオルさんの家に遊びに行った時、兄さんはカオルさんの父親への思いを確かめる。兄さんが「あんな冴えないおじさんと結婚しちゃったら夢もロマンもないでしょう?」と聞くと、カオルさんは笑って「あなたは!息子だから父親の良さがわからないの!」と返した。それを聞いた兄さんは、真面目な顔で「……妻と子供をおいて家を出ていったんだよ」と言ったが、カオルさんは「今度は絶対に出て行かせないわよ」と覚悟を見せた。

兄さん「だっておれはおまえなんだから」

カオルさんに対するケンジの本当の気持ちを、兄さんがケンジに伝える。

ケンジはカオルさんの家で父親と話していたが、兄さんはケンジ自身であると父親に指摘され、外に飛び出してしまう。兄さんはケンジを追いかけ、戻ってカオルさんに謝ろうと説得する。それに対してケンジは「…嫌だ カオルさんなんて大っ嫌いだ」と兄さんを怒鳴りつける。兄さんは「そうだ おまえはカオルさんが大嫌いだ でもおまえはカオルさんが大好きなんだ」と言い、更にケンジに顔を寄せて「だっておれはおまえなんだから」と言いつのった。ケンジと兄さんが同一人物である事が明確になった、重要なセリフ。

ケンジが兄さんとボートで川を下るシーン

カオルさんへの好意、母親への後ろめたさ、家族の形が変わってしまう事への不安など、色々な思いを振り切るように、ケンジは兄さんと一緒にボートに乗って川へと漕ぎ出す。その時、ケンジは「驚いたのは水面から見た 目の前の景色だ 東京にも空があることを僕はすっかり忘れていた」と感じていた。大きな空の下で、自分自身と向き合う第一歩を象徴するシーンとなっている。

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