まっすぐにいこう。(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『まっすぐにいこう。』は、きらのデビュー作で、1991年に『ザ マーガレット』で発表された漫画。雑種犬マメタロウの視点から描かれる高校生の恋愛物語である。飼い主の郁子と彼氏の秋吉の関係を中心に、日常の出来事や恋の悩みが温かく描かれている。全26巻発行。2000年には第4回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞している。2003年と2004年にアニメ化され全9話が放送。2021年には続編『OH MY DOG! まっすぐにいこう。〜キキの場合〜』が連載され、新たな視点が加わった。

『まっすぐにいこう。』の概要

『まっすぐにいこう。』は、日本の漫画家・きらのデビュー作となった少女漫画。1991年、『ザ マーガレット』(集英社)11月号に読み切り作品として掲載され、その後、1993年12月号から2002年7月号まで『別冊マーガレット』(集英社)で連載された。2002年からは『コーラス』(集英社)で連載。単行本は、マーガレットコミックスより26巻が発行された。また、集英社文庫からも15巻が出版されている。本作は人気を博し、2003年8月18日から8月21日まで第1期(4話)、2004年3月27日から4月1日まで第2期(5話)がテレビアニメとして読売テレビ系で放送された。

『まっすぐにいこう』は、高校生の若月郁子と秋吉純一、そして郁子の愛犬マメタロウを中心に展開する心温まる物語である。マメタロウの視点から、郁子と秋吉の恋愛模様や日常生活が描かれる。郁子は明るく優しい性格で、マメタロウとの絆が深く、秋吉への恋心を抱いている。二人の関係は順調に見えるが、秋吉が「好きだ」と言わないことが郁子を少し不安にさせる。しかし、二人の間には深い信頼と愛情があり、マメタロウもそんな二人を見守り、応援している。物語は、高校生活ならではの出来事を通じて展開する。クラス替えや新たな友人との出会い、ライバルの出現など、様々な要素が物語を彩る。また、夏休みの神戸旅行や北海道での犬ぞりレース、フリスビードッグ大会などの冒険を通じて、登場人物たちの成長が描かれる。

新たなキャラクター・陸の登場は物語に新しい風を吹き込み、郁子と秋吉の関係にも影響を与える。また、イジメの問題など、現実的な困難も描かれ、それらを乗り越えることで絆を深めていく様子が丁寧に描写される。マメタロウ自身も成長し、フリスビードッグ大会への挑戦や、源さんとの再会など、彼の純粋で一途な心が描かれるシーンが多く存在する。特に、マメタロウが感じる嫉妬や不安、そしてそれを乗り越える姿が、読者に強い共感を呼ぶ。全26巻にわたる本作は、恋愛や友情、家族の絆を優しく描き、笑いと涙、そして成長の瞬間を通じて、多くの読者に愛され続けている。日常の中に潜む小さなドラマが優しく描かれ、シリーズ全体を通しての成長と変化が感じられる作品である。

『まっすぐにいこう。』のあらすじ・ストーリー

はじめに

この物語は、高校2年生の郁子、その愛犬マメタロウ、そして同級生の秋吉純一を中心に展開する青春ストーリー。マメタロウの目線で郁子と秋吉の恋愛模様や日常生活が描かれる。郁子、秋吉、2人を取り巻く友人や家族の様々な試練を乗り越えていく。

出会いと関係の始まり

仲良しそうに話しながら散歩をする郁子(左)と秋吉(右)。真ん中の犬がマメタロウ。

郁子と秋吉の出会いは、マメタロウの散歩だった。いつもベンチに座って靴紐を結んでいる秋吉。意識しながらも話しかけられない二人は、マメタロウをきっかけに徐々に親密になっていく。しかし、その関係の進展には様々な困難が待ち受けていた。

最初のキスと関係の深まり

半年経っても関係が進展しないことを同級生友人たけしにからかわれた秋吉は、勢いで郁子にキスしようとする。しかし、郁子は「半年もなにもないのは珍しいから?」と泣きながらそれを拒む。そんな中、マメタロウが腹痛で倒れるというハプニングが起こる。郁子の両親が留守の中、秋吉が自転車で駆けつけ、二人でマメタロウを病院に連れて行く。幸い単なる食べ過ぎだと分かり、ホッとする二人。この出来事をきっかけに、秋吉は郁子にそっとキスをし、二人の関係は新たな段階に進む。

新たな人物の登場と試練

物語が進むにつれ、郁子と秋吉の関係に影響を与える新しい登場人物が加わる。陣内(郁子に好意を寄せるライバル)、渡部京介(秋吉のアルバイト先の先輩)、小田切陸(郁子に好意を持つ1年生)などだ。これらの人物たちとの交流を通じて、郁子と秋吉の関係はさまざまな試練を経験することになる。

北海道旅行

高校2年夏休みの終わり頃、郁子たちは北海道旅行に出かける。この北海道旅行は、恵の元愛犬「源」との再会となる。
恵は以前、ハスキーブームの流れに乗り源を飼ったものの、面倒を見切れずに手放してしまった過去があった。北海道で再会した源は最初、恵を避けてしまう。しかし、2代目飼い主(岡田)の前で昔の飼い主になついてもいいのかと悩んでいただけだったことが分かる。マメタロウの恋人であるはなこの、「はなこはみんなにしっぽをふってしまうから」という言葉に励まされた源は、最終的に恵にもしっぽを振ってなつくことができた。この出来事は、過去の過ちを乗り越え、新たな関係を築くことの大切さを教えてくれる。

秋吉の家庭事情

物語の中盤、秋吉の家庭事情が明らかになる。郁子が秋吉の家に招待され、初めて秋吉の両親に会う。楽しいひとときを過ごした後、公園で食事をしているとき、郁子は無邪気に秋吉の両親との似ている点を尋ねる。そこで秋吉は思いがけない告白をする。「郁、おれは乳児院で育ったから、おれを産んだ人のことは知らないんだ」と。虐待や離婚で親を失う子どもなど、自分よりもっと複雑な背景を持つ子もいると秋吉は話す。郁子はこの告白に戸惑いながらも、「ごめんね。本当に似てると思って」と一言言うのが精一杯だった。この出来事は、二人の関係に新たな深みをもたらすきっかけとなる。

スイス旅行

恵の姉・服部晃子と服部照美の結婚式に参加するため、一行はスイスを訪れる。この旅行中、照美の言葉が秋吉に大きな影響を与える。照美は「家族とは血のつながりを持ったものだと思っていたが、一番大切な家族の晃子とは血がつながらない」と語る。さらに「血は水よりも濃いというが、心のつながりは血よりも強いとさえ思う」と続ける。この言葉に触発され、秋吉は「血よりも確かなものがある」と悟り、心が軽くなる。郁子もそんな秋吉の気持ちを受け止め、二人の絆はさらに強くなった。

陸と海のエピソード

郁子は1つ下の後輩・陸(りく)と出会う。陸は両親と車イスの弟・海(かい)、飼い犬の空(そら)と暮らしている。ある雪の日、海が空を散歩中に逃がしてしまい、郁子や秋吉、先輩の京介が空を探すことになる。無事空は見つかるが、この出来事を通じて、「普通」とは何かという問いが浮かび上がる。京介は車イスの海に対しても、他の人と同じように接する。これは「特別扱い」を期待していた陸に衝撃を与える。陸は秋吉に、昔友人がいなくて悩んでいたことを打ち明ける。「歩けない海には友達がいるのに、なんでおれにはいないんだよって思った」「欠けているんだ、きっとこういうところが」と。しかし秋吉は「おまえのそこんとこ欠けてないよ」と声をかけ、陸を励ます。

郁子の悩みと成長

この出来事から、郁子は自分が「普通」であるがゆえに、秋吉のことを十分に理解できないのではないかと不安を抱く。さらに、秋吉と郁子、京介のアルバイト先のコンビニに、3歳上の女子大生・夏目(なつめ)が短期アルバイトとして入ってくる。両親の離婚や再婚で居場所がない夏目は、「普通の郁子にはわからない」と郁子を突き放す。郁子は自分が「普通」であることを恥ずかしく感じ、秋吉に気持ちをぶつける。しかし秋吉は「自分は普通でおれは普通じゃないってこと?」と誤解してしまう。悲しむ秋吉は、勢いで夏目とキスをしてしまう。しかし、秋吉とキスした後、「傷をなめあおう」と言う夏目に、「おれにはあなたが自分に自信を持てなくて 誰かのせいにしたがっているとしか 思えない」と秋吉は言い放ち、平手打ちされたのだった。夏目は秋吉の言葉にプライドを傷つけられ、コンビニを辞めてしまう。
その後、秋吉の母が自転車事故に遭い、郁子と秋吉は病院に駆けつける。病室で、郁子は秋吉の母に自分の家庭のことを聞かれ、「うちはすごく普通です。たぶん絵に描いたような普通の幸せな家です。それがこの頃少し恥ずかしいんです」と打ち明ける。帰り道、郁子は秋吉に「私は想像力しかないけどいいかな」「秋吉くんのこと一番理解できる人になりたいんだけど、知識も経験もなくて、誰もが持ってる普通の想像力しかないけどいいかな」と話す。秋吉は「いいに決まってるじゃん。好きな子が一生懸命おれのこと考えてくれるなんて、これ以上嬉しいことがある?」と答え、二人の関係はさらに深まる。

いじめの始まりと深刻化

ある日、郁子は学校で同級生に突き飛ばされたり、辞書に落書きをされたりし始める。友人の恵は、誰か知らない同級生に「いっしょに郁子をいじめよう」と声をかけられたと直に相談する。心配する直と恵は秋吉に相談し、秋吉が3日前に同級生からの告白を断ったことが原因ではないかと推測する。いじめはエスカレートし、上履きに落書きをされたり、トイレで水をかけられたりする。マメタロウも外のゴミ箱で捨てられている郁子の上履きを見つけ、心配する。郁子は秋吉に迷惑をかけたくないという思いから、いじめのことを秋吉に隠そうとする。しかし、郁子の友人・直(なお)から、秋吉はいじめの事実を知ってしまう。

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