エリスの聖杯(ラノベ・漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『エリスの聖杯』は「小説家になろう」で常盤くじらによって書かれた小説及び漫画作品であり、2019年に「GAノベル/SBクリエイティブ刊」より発行された。誠実がモットーの子爵令嬢、コニーは小宮殿の夜会で婚約者の浮気を目撃。更に窃盗の濡れ衣まで着せられてしまう。窮地に陥る彼女の元に10年前処刑された稀代の悪女の亡霊が現れ、瞬く間に形勢を逆転。しかし亡霊は見返りを求めるのだった。登場人物全員に膨大な背景と思惑があり、それぞれの生き様が鮮やかに実感を伴って描かれており、物語に重厚感があることが魅力。

『エリスの聖杯』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

ケイト「貴族だからと言う理由だけでコニーを責めるあなたこそ、頭でっかちで自分のみたいものしか見ない、ひどい差別主義者よ」

「自分の見たいものしか見ないひどい差別主義者よ」

コニーの元に、市民団体すみれの会の婦人部代表を務めるキンバリー・スミスと名乗る人物が訪れる。コニーが幻覚剤を使っていると疑っており、さらには「貴族の言い訳が平民に信じてもらえると思うの?我々平民を人とも思わない差別主義者の集まりのくせに」と言い放つ。そこにケイトが現れ、元平民である自分も差別主義者なのかとスミスに問う。ケイトの両親のことを立派な方と言うスミスに対し、ケイトはその発想こそ差別であると言う。「私はずっと、貴族の集まりでは平民の血を引く卑しい娘と蔑まれ、街に行けばお貴族様のくせにと疎まれてきた。貴族であろうと平民であろうと、自分とは違うと言う理由で爪弾きにされるのは変わらなかった。でもそこにいるコンスタンス・グレイルは一度だって私をそんなふうに扱ったことなんてなかった。当たり前のように、ただのケイトとして付き合ってくれた。それがどれだけ得難いことか、あなたにわかる?どれだけ救われてきたか、あなたに想像がつく?きっと分からないでしょうね。だってあなたは平民から差別されたことがないんだもの。貴族だからと言う理由だけでコニーを責めるあなたこそ、頭でっかちで自分の見たいものしか見ない、ひどい差別主義者よ」と言い放つのだった。コニーの人柄とケイトがコニーを思う気持ちがいわしめた言葉である。

アイシャの前に姿を見せた亡霊のスカーレット

アイシャの前に現れるスカーレット

10年前に仕込んだのは毒薬ではなくただの痩せ薬だった。「私のせいじゃない!だからお願い許してスカーレット!」というアイシャ。しかしなぜ自分の罪を告白しなかったのか、仕込んだ薬がなんであろうと、アイシャの犯した罪のせいで自分は処刑されたとスカーレットは言い放つ。「あなたのためだったの、あなただってきっと機会さえあれば同じことをしたでしょう?だから私が代わりに」と言うアイシャに対し、たとえ死んでもそんな無様な振る舞いはしないとスカーレットは言う。「10年前に起きたことは全て、お前がお前自身のためにやったことでしょう。わたくしを言い訳に使うだなんて身の程を知りなさい。わたくしになりたいと言ったわねアイシャ・スペンサー。特別にもう一度だけ教えて差し上げる。お前、わたくしを一体誰だと思っているの?」とスカーレットは言う。薬をもるような無様な真似はしないし、そのような真似をしたアイシャが高貴な自分になれるわけがないと言葉と態度で圧倒する。死してなおスカーレットが輝くシーンである。

『エリスの聖杯』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

エミリアの想い人はランドルフ・アルスター

招待状返信の署名

エミリアはかつて自分が「2本足の豚みたい」と馬鹿にしていたゴードウィン男爵と結婚した。しかし密かに思いを寄せていたのは「生真面目堅物男」とスカーレットが嫌うランドルフ・アルスターであった。男爵家に嫁いでいるため、エミリアの実家は男爵家から子爵家あたりであると想像できる。ランドルフは公爵家出身であるため、エミリアは身分違いの恋をしていたことになる。

スカーレットの出自

星冠のアリエノール

大ファリス帝国最後の皇女は、星の数ほどの小国を従えるという意味で星冠のコーネリアと呼ばれていた。大ファリス帝国が滅亡した際、コーネリアは中立を保つソルディタ共和国に留学に行っており一命を取り留めている。数百年後、ソルディタ共和国の片田舎でコーネリアの子孫である可能性がある女性が発見される。世が世なら大陸全土の覇者たちがその女性の元に集い忠誠を誓うはずであったため、その女性は冠なきアリエノールと呼ばれていた。アリエノールが産んだただ一人の子供がスカーレットである。

南奈緒
南奈緒
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