波よ聞いてくれ(漫画・アニメ・ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『波よ聞いてくれ』とは漫画家沙村広明によるヒューマン・コメディ漫画である。2020年4月にアニメ化され、2023年4月には小芝風花主演でテレビドラマ化された。原作漫画は講談社の青年漫画雑誌である『アフタヌーン』にて2014年9月から連載。物語は北海道札幌市にあるとされる架空のラジオ局、藻岩山ラジオ局(MRS)を舞台に、偶然ラジオパーソナリティになってしまった主人公鼓田ミナレが、周囲を巻き込んで奮闘する姿が描かれている。

『波よ聞いてくれ』の概要

『波よ聞いてくれ』とは漫画家沙村広明によるヒューマン・コメディ漫画である。英題は『Wave,Listen to me』。
2014年から講談社の青年漫画雑誌『月刊アフタヌーン』にて連載されており、沙村広明にとってはデビュー作で代表作の『無限の住人』から数えて、3作目の長編連載となる。

物語は札幌市のスープカレー店に勤務している鼓田ミナレ(こだみなれ)が、男に金を持ち逃げされた話を飲み屋で愚痴るところから始まる。隣に居合わせたMRS(藻岩山ラジオ局)のディレクター麻藤兼嗣 (まとうかねつぐ)はミナレのトーク力の高さと声に魅力を感じ、策を弄してラジオの世界に引き込もうとする。
麻藤の思惑どおり深夜の放送枠で冠番組の『波よ聴いていくれ』を持たされたミナレは、金を持ち逃げした元カレへの怒りをラジオ内でぶちまけたり、ラジオ局の音声を使ってテロを起こそうとしていた宗教団体を壊滅させたり、引きこもりの青年を社会復帰させるなど縦横無尽の活躍を見せる。

2020年にはTBS系でアニメ化され、2020年4月4日〜6月20日まで全12話が放送された。鼓田ミナレ役は声優の杉山里穂が演じた。
ミナレがラジオの世界に足を踏み入れ、元カレ須賀光雄(すがみつお)をラジオ内で埋葬するまでのエピソードがアニメ化された。
2020年7月と9月にはブルーレイ化もされている。
また2020年3月5日から6月25日までの毎週木曜21時〜21時30分、杉山里穂がパーソナリティを務めるラジオ番組『波よ聞いてくれ 〜Wave,Listen to me!〜』が実際にAIR-G'(エフエム北海道)で放送された。

2023年にはテレビ朝日系「金曜ナイトドラマ」枠で実写ドラマ化もされている。鼓田ミナレ役は映画・ドラマ・バラエティで活躍する小芝風花が担当し、マシンガントークを披露している。

原作漫画は2016年と2017年、2020年と3度、マンガ大賞にノミネートされている。また主役の鼓田ミナレを演じた杉山里穂、小芝風花の演技がハマリ役すぎると、アニメもドラマも高評価を得ている。

『波よ聞いてくれ』のあらすじ・ストーリー

ラジオパーソナリティとしてのデビュー

北海道札幌市にあるスープカレー店「ボイジャー」でウェイトレスとして働く鼓田ミナレ(こだみなれ)は、店内で流れているFMラジオから酔っ払ってくだを巻いている自分のしゃべりが急に流れてきたことに愕然とする。その会話とは昨夜とある飲み屋で居合わせた麻藤兼嗣(まとうかねつぐ)を相手に、元カレに50万円を持ち逃げされた事の嘆きと、その元カレ須賀光雄(すがみつお)に対する恨み辛みを語ったものだった。
昨夜麻藤から受け取った名刺に書いてあった藻岩山ラジオ局(MRS)に乗り込んだミナレは、生放送中のラジオブースに乱入する。
その場にいた麻藤に「今流れている音声を止めてもいいが、その代わりお前が喋れ」と言われたミナレは、昨夜の会話で光雄の出身地である福岡をディスったことを詫びつつも、光雄に対しての怒りをマイクの前でぶちまける。そうしてミナレは思いかけずラジオパーソナリティとしてのデビューを果たすこととなった。番組終了後ミナレは勝手に録音した音声を流したことを麻藤にクレームを言うが、昨夜酔っ払った時書いた「この録音をどう使われようと文句は言わない」という自筆のサインを見て自らの酒癖の悪さを恨む。
ボイジャーに戻ったミナレだったが、ラジオに出演したことが常連客たちの間で話題となる。営業に響くと考えたボイジャー店長、宝田嘉樹(たからだよしき)はミナレにクビを言い渡す。さらに元カレに持ち逃げされた50万のせいで、アパートも追い出されてしまったミナレはMRSのアシスタントディレクター難波瑞穂(なんばみずほ)のアパートに転がり込み、不承不承ラジオパーソナリティの仕事をするようになる。
ある日店長の宝田が交通事故に遭ってしまったことで、ボイジャーは人手不足となってしまう。元同僚でミナレに好意を抱く中原忠也(なかはらちゅうや)の誘いもあり、ミナレはラジオとカレー店の2足のわらじの仕事をし始める。そこへ交通事故の加害者の妹を名乗る城華マキエ(たちばなまきえ)が現れ、一緒に働くようになる。過保護な兄から自宅に監禁された過去があり、自宅に帰りたくないマキエは中原の部屋に泊まることになる。そこで中原の誠実さに触れたマキエは中原に好意を抱くようになるが、中原はミナレに好意を持っており三角関係となってしまう。しかし中原が全くマキエの好意に気づかないため、モヤモヤした感じになる。

光雄の殺害と埋葬

ミナレの冠番組は深夜3時30分から4時までの30分間の『波よ聞いてくれ』という番組であった。
第1回目の放送に麻藤が提案したのは光雄をラジオの中で殺害する架空実況であった。
たった今元カレを殺してしまった女性の一人語りが偶然電波に乗ってしまった体を装ったトークを、ミナレはアドリブで繰り広げる。
そのラジオはミナレのもとから去った光雄の部屋にも流れていた。また新しい女性を騙して金を手に入れようとしていた光雄は、その女性からまさに今本当に刺殺されそうになっていた。ミナレの鬼気迫る彼氏殺しの演技に怯えた女性は逃げ出し、ミナレのラジオは光雄を結果として救うことになった。
助けられたと思った光雄は再びミナレの前に現れる。貸したお金の半分25万円を返して、光雄はよりを戻そうとする。しかしミナレはその陰に違う女性の匂いを感じ、自分への借金を返すために他の女性を不幸にしようとする光雄と決別する。そんなミナレに麻藤は第2回目の放送で光雄を埋葬するラジオドラマを企画する。
ADの瑞穂や音効スタッフの加工猿(かこうえん)、加工豚(かこうとん)、さらにはMRSの花形パーソナリティーの茅代まどか(ちしろまどか)の協力でラジオドラマを録り上げたミナレは、そのラジオドラマの最後でラジオパーソナリティとして生きていくことを力強く宣言する。

呪われた部屋

ミナレの『波よ聞いてくれ』は第2回の放送も深夜枠にしては好評であった。次の番組の企画はリスナーから届いたメールやファックスから採用しようとしていたミナレと瑞穂のもとに、「霊に殺される」と助けを求めるFAXが届く。最初は相手にしなかったミナレだったが、その送信者が自分のアパートの下の住人、沖進次(おきしんじ)であることに気づく。沖の様子がおかしかったことや、部屋からただならぬ臭気がしていたことを思い出したミナレは瑞穂と一緒に沖の部屋に取材に訪れる。
沖の部屋は悪霊退散の札が大量に貼られ、天井からは腐肉まじりの水が滴り落ちていた。以前交際していた阿曽原律子(あぞはらりつこ)という女性が、一緒に行った蔵王の秘湯温泉で行方不明になったことを後悔している沖は、彼女の霊が自分を連れに来ると怯えノイローゼになっていた。
ドンキホーテで買った陰陽師コスチュームに身を包んだミナレと、巫女のコスチュームを着た瑞穂は沖の怯えっぷりに戸惑う。しかしミナレは現実的な行動力を発揮し、換気口から天井裏に登る。そこにあったのは腐った肉塊が入った数個のビニール袋であった。失踪した女性の遺体と早合点したミナレは警察に通報し、沖は連行される。
しかし捜査の結果その肉塊は大量のマトン肉であり、しかもそれは上の階に住んでいたミナレが床下収納に入れっぱなし、忘れていたものだったことが判明した。
犯罪者扱いをしてしまった沖に、ミナレは謝罪とともに阿曽原律子を尋ね人のコーナーで紹介する。それによりなんとか告訴を取り下げてもらったミナレはこの騒動を深く反省した。

一方で中原の家に居候しているマキエにも変化が現れる。ミナレのラジオを聞くうちにラジオ制作に興味を持つようになったマキエは、名字の城華をもじった「ジョーカー・スコンスキー」というペンネームでメール職人として投稿を始める。その内容が認められ他局の深夜ラジオ『アナグマ泰治のアナグマ禁猟時間』という番組でラジオの構成作家としてデビューすることになる。

宗教団体「波の智慧派」との対決

MRSの人気番組、茅代まどかが担当している番組『セプテンバーブルームーン』の構成作家を努めている久連木克三(くれこかつみ)は、本業は作家であった。久連木が書いた作品が文学賞の候補になり、構成作家を辞めるという話が持ち上がる。久連木に特別な感情を持つ瑞穂はショックを受けるが、小説のために久連木の取材旅行の下調べに協力する。麻藤はミナレと瑞穂に久連木の取材旅行に同行し、ラジオのネタを取ってくるように命じる。
北海道の和寒町を訪れた3人はガイドの穂隠(ほかくし)という女性と出会う。久連木に馴れ馴れしく接する穂隠に瑞穂はヤキモキするが、久連木はマイペースに穂隠をあしらう。
しかし穂隠の正体は宗教法人「波の智慧派」のハニートラップ要員であった。まんまと教団施設に監禁されてしまった3人に「波の智慧派」代表のトリキュミア花輪(とりみゅみあはなわ)は、自分の言うとおりの放送をMRSで流すことを要求する。渡された台本は特に当たり障りのない内容のものだったが、花輪たちの目的はオリジナルのBGMや教団のパーソナリティであるロティオンの声の周波数を利用した音響兵器でテロを起こすことであった。その事に気づいた久連木とミナレは教団からの脱出を決意する。隙を見つけたミナレは単独で脱出を試みるが失敗してしまう。そこで久連木は教団に渡した音声データの中に、逆再生すると救助を求めるメッセージが流れる音声を忍ばせた。それを聴いたMRSのミキサー甲本龍丞(こうもとりゅうすけ)は3人の危機を察知する。甲本とボイジャーの中原、そしてロティオンの声を聞いて阿曽原律子だと確信した沖は教団施設を突き止め突撃した。彼ら3人の奮闘とミナレの戦闘力の高さにより教団は瓦解し、花輪と穂隠は警察に逮捕された。
そんな中ミナレのもとに送られたハニートラップ要員の少年、妻木ヒロミ(さいきひろみ)はミナレと接するうちに、ミナレの生命力の強さに感銘を受ける。ミナレを慕うようになったヒロミは教団が解散した後、ミナレのアパートに母と一緒にひっそり暮らすことになる。

引きこもりを解決せよ

相変わらず番組のネタに困るミナレに瑞穂は番組ツイッターのダイレクトメールを手渡す。それは長男の引きこもりに悩む主婦からのメールであった。瑞穂の後押しもあり、ミナレと瑞穂はその家を訪ねる。
2人を迎えたのは引きこもりになった義兄、多野潤一(おおのじゅんいち)のことを心配する妹の多野衿子(おおのえりこ)であった。多野家は父の連れ子であった潤一と妹の紗樹(さき)と、再婚相手の母と母の連れ子の衿子という複雑な家族構成であった。父と紗樹はとある理由で別居しているため、義母と義妹と暮らす潤一は疎外感から次第に内向的になっていった。
引きこもりとなった決定的な理由は義母が再婚するつもりなのを知ってしまったことで、しかもその相手は潤一が以前勤めていた会社の上司だった。もう誰も信じることができないと絶望した潤一は引きこもりになることにしたのだった。
やや構いすぎのきらいがある衿子とミナレたちは潤一の本音を聞き出したが、意固地になっている潤一は頑なに部屋の外に出ることを拒む。最終手段として肉親である紗樹の言葉なら耳を傾けるであろうと、ミナレの部屋に居候していた妻木ヒロミに紗樹の格好をさせ潤一を説得しようとする。ヒロミが潤一の部屋を訪れた時、北海道を震度7の大地震が襲った。

大地震発生

北海道南部を中心に強い揺れを観測した地震により、道内全域にて大規模な停電が発生した。MRSでは地震についての放送を流すと同時にミナレの番組『波よ聞いてくれ』の特別放送を実施する。被災した人たちからのメールに時に暖かく、時にジョーク交じりで日常を取り戻すようなミナレの放送は好評で、茅代まどかにも珍しく褒められる。番組終了後にミナレは多野家に戻るが、暖房設備の故障で潤一以外はヒロミも含め近所の小学校の避難所に移動していた。しかし大勢の人と一緒にいることに恐怖する潤一はひとり自宅に戻っていた。そんな潤一をミナレは中原たちが始めたボイジャーの炊き出しの手伝いに放り込む。
自分が人より劣っていると思い込み、社会に出ることを怖がっていた潤一だったが、地震で被災し炊き出しのカレーを受け取る人々が自分より不安なことに気付かされる。中原にも暖かく諭された潤一は次第に変化していく。
地震発生から数日がたち、電気も復旧し街も日常を取り戻しつつあった。炊き出しでやや自信を持つようになった潤一は、それでも自分がコンプレックスを持たずにすむような自分より下の人間を眺めながら仕事がしたいと、刑務所で働く刑務官として社会復帰することを決意する。

「波の智慧派」再び

ある時瑞穂の携帯にミナレの番組『波よ聞いてくれ』の特集記事を掲載したいという、ラジオ雑誌の編集者を名乗る人間から連絡が入る。打ち合わせと称して呼び出された瑞穂は、編集者を騙った大滝(おおたき)に山小屋に監禁されてしまう。
大滝は「波の智慧派」事件の残党であった。大滝ともうひとりの板倉汐満(いたくらしおみつ)は刑務所のトリミュキア花輪と密かに連絡を取り、今回の事件を起こしたのだ。
彼らの目的は前回と同じくMRSの電波を使って、自分たちの巫女のロティオンに放送をさせることであった。
瑞穂と連絡を取れないことを知ったミナレは、茅代まどかとともに瑞穂の救出に向かう。途中で冬ごもり中のクマとも遭遇したが、2人は無事に切り抜ける事ができた。
瑞穂を発見して喜んだミナレだったが、瑞穂が落ち込んでしまっていた側溝の雪溜まりにミナレも一緒に落ちてしまう。

『波よ聞いてくれ』の登場人物・キャラクター

主人公

鼓田ミナレ(こだミナレ/演:小芝風花)

CV:杉山里穂
本作の主人公。年齢は25才。
飲み屋での愚痴を麻藤に録音されたことから、自分の意思とは関わりなくラジオの世界に足を踏み入れる。
しかし喋りに関して天性の才能をもち、初めてラジオブースで喋った時に一度も噛まずに26分喋り続けた。麻藤いわく「素人なら台本渡してリハをやっても考えられないレベル」だという。
滑舌の良さに加えて、とっさに奇想天外なボケを思いつくアドリブ力がミナレのトークの魅力となっている。
目の前の小利を追い、大利を失う刹那主義的な性格。そのせいで常に後悔をしながら生きているが、後悔をすることもひっくるめて自分の生き方だと開き直っている。
運動神経に優れ、男性でもプロレス技で投げ飛ばすことができる。黙っていれば美人と言われる。好きな男性のタイプは体格が良く、たくさんご飯を食べる人。それに誠実さが最も大事。見た目のタイプは相撲取りの鶴竜。

藻岩山ラジオ局スタッフ

麻藤兼嗣(まとうかねつぐ/演:北村一輝)

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