無限の住人(漫画・アニメ・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『無限の住人』とは、講談社・『月刊アフタヌーン』において1993年6月から2012年12月まで連載された沙村広明によるサムライ・アクション漫画である。コミックスは全30巻が発売されており、新装版は全15巻となっている。アニメ化もされており、2017年には木村拓哉主演で実写映画化もされている。
江戸時代を舞台に、両親を殺された少女・浅野凛と、仇討ちのために雇われた不死身の肉体を持つ用心棒・万次は、その仇討ちの相手である剣士集団逸刀流・天津影久を追う中で、幕府を巻き込んだ戦いに身を投じていく。

『無限の住人』の概要

『無限の住人』とは、青年漫画雑誌・『月刊アフタヌーン』(講談社)において1993年6月から2012年12月まで連載された、作者・沙村広明によるアクション時代劇作品である。作品の元となっているのは、1993年にアフタヌーン誌上で行われた漫画賞・四季賞において大賞を受賞した読み切り作品となっている。

江戸時代を舞台に、両親を殺された少女・浅野凛(あさのりん)と、仇討ちのために雇われた不死身の肉体を持つ用心棒・万次(まんじ)は、その仇討ちの相手である剣士集団逸刀流・天津影久(あのつかげひさ)を追う中で、幕府を巻き込んだ戦いに身を投じていく。

主人公は浅野凛と用心棒の万次であるが、凛の両親の仇である逸刀流の二代目統主・天津影久も主人公の一人と言える。江戸時代が舞台になっており、登場人物は奇抜な出で立ちの者が多く、使用される武器も特殊な物が多数登場する。体をバラバラにされるなどグロテスクな描写が多く、時代劇でありながら斬新な設定・ストーリーであることから、「ネオ時代劇」と称されることが多い。

鉛筆で濃淡を表現する独特のタッチと高度な描写力を基に描かれる時代劇は高い評価を受け、1997年には第1回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を、2000年には英語版がアメリカで最も権威ある漫画賞のひとつであるアイズナー賞の最優秀国際作品部門を受賞している。
2008年、アニメ専門チャンネル・アニメシアターXにおいてアニメ化された。2019年には『無限の住人ーIMMORTALー』というタイトルでWEBアニメ化もされている。Amazonプライムビデオで配信され、その後TOKYO MX、毎日放送でも放送された。
2017年4月には『岸和田少年愚連隊』の他、『クローズ』や『ヤッターマン』など漫画原作の映画化も数多く手掛ける三池崇史監督により実写映画化された。主演には木村拓哉を万次役で迎え、凛役には杉咲花、天津役に福士蒼汰、尸良役に市原隼人、乙橘槇絵役に戸田恵梨香など、豪華な顔ぶれで話題となった。北米をはじめ、イギリス、オーストラリア、ドイツでも公開され、第70回カンヌ国際映画祭ではアウト・オブ・コンペティション部門に選出された。
月刊アフタヌーン2019年7月号より、スピンオフ作品として『無限の住人~幕末ノ章~』が連載されている。原作は『テルミー』『超人間・岩村』で知られるライトノベル作家・滝川廉治、作画は2018年アフタヌーン四季賞において『百大兵器譜』で四季賞を受賞した陶延リュウ、沙村広明が協力で参加している。

『無限の住人』のあらすじ・ストーリー

凛と万次の出会い

仲間を引き連れた天津(中央)

時は江戸時代「国中の剣という剣を滅ぼし、あらゆる流派の垣根を取り払う」という理想を掲げた剣士集団があった。その、強さのみを至上とした逸刀流(いっとうりゅう)は、近隣・遠方の道場へ押し入り「服従か死か」の二択を迫っていた。

2代目統主・天津影久(あのつかげひさ)は、祖父であり初代統主・天津三郎(あのつさぶろう)が過去に破門になり、逸刀流を興すきっかけとなった無天一流(むてんいちりゅう)・浅野道場を逸刀流剣士を引き連れて襲撃し
た。

父を目の前で逸刀流に殺された浅野道場の1人娘・浅野凛(あさのりん)は、道場襲撃から2年後、両親の仇である逸刀流統主・天津影久を討つことを父の墓前で誓う。そこで出会った、800年生きているという老尼僧(ろうにそう)・八百比丘尼(やおびくに)に用心棒を雇うよう勧められる。

用心棒として勧められた男・万次(まんじ)は、2年前上司の旗本の不正に加担していたことを知り、その旗本を斬ったことでお尋ね者となっていた。その際に、追っ手百人を斬ったことから「百人斬り」の異名で呼ばれる剣士だった。八百比丘尼によって、究極の延命術・血仙蟲(けっせんちゅう)を移植され、八百比丘尼と同様に不死の肉体を持っている。
用心棒を懇願する凛が、亡くなった妹の町(まち)の顔と重なり、万次は用心棒を引き受けるのだった。

逸刀流剣士たちとの戦い

万次は川上新夜と対峙するが、練造が止めに入った

黒衣鯖人(くろいさばと)のもとに、2年間に渡り黒衣から送られ続けた恋文を持った凛が現れる。凛の父親に実際に手を下したのはこの黒衣である。しかし黒衣は、2年前に凛に一目惚れしており「究極の愛とは、死である」という持論から凛を殺し、自分も後を追うことを提案する。

万次は黒衣を斬ろうとするが、一瞬早く黒衣に足を切断され倒れてしまう。
黒衣に詰め寄られた凛は、鍔のない短刀である匕首(あいくち)を指の間に挟み一斉に放つ技「殺陣黄金蟲(たておうごうちゅう)」で黒衣の素顔と、肩にあった謎のこぶを露わにした。その両肩には、2人の女性の頭部のはく製が縫い付けられていた。

片方は黒衣の昔の妻で、もう片方は2年前の襲撃事件から、行方知れずだった凛の母親の顔であった。凛は激昂し再び「殺陣黄金蟲」を繰り出すが、すべてかわされ黒衣に追い詰められてしまう。自分が死ねば黒衣も後を追って死ぬと説き伏せられた凛は、絶望から自害しそうになるが、万次が後ろから黒衣を斬ったことで事なきを得る。

凛と万次は、凛の父・浅野虎厳(あさのたかよし)の友人である町絵師・宗理(そうり)のもとを訪れ、両親の仇討ちに加わってほしいと依頼する。
宗理は西洋の絵画を入手するために幕府の隠密になった男であり、父以上の剣術の持ち主であった。宗理は一旦断るが、凛を狙って襲撃してきた逸刀流の剣士達の血の色を確認した。それが求めていた赤色だと分かると、死体全てを30両で買い取り、凛たちへの資金援助を行なった。

剣での協力は断ったが、2〜3年は野宿をしないで済む金額を手に入れることができた。

凛は万次の刀を研ぎ屋に持って行った時、かつて浅野道場に宝刀として祀られていたクトネシリカがあることに気付く。その刀は2年前の襲撃で奪われ、現在は逸刀流剣士・凶戴斗(まがつたいと)の持ち物になっていた。
凛は「30両で譲ってほしい」と頼むが、凶に「浅野道場の1人娘の居場所を教えれば考える」と言われ諦める。

その話を聞いた万次は、夜になると凶のもとへ1人で向かった。
凶と対峙した万次は、凶の地の利を活かした戦術に苦戦を強いられ負けたかと思われたが、万次の不死の肉体を知らずに背中を見せた凶は腹を貫かれ倒れる。凶はクトネシリカを置いて体を引きずりながら去っていき、万次は凛の部屋の前にクトネシリカを置くのだった。

凛と万次は茶屋で、僧の格好をした逸刀流剣士・閑馬永空(しずまえいくう)に出会う。
凶から、万次の不死の肉体のことを聞いていた閑馬は「天津を消し、手を組んで逸刀流を乗っ取ろう」と万次に持ち掛ける。自分以上に閑馬の体から漂う血の匂いに異常を感じて提案を断ると、閑馬は匕首(あいくち)で万次を斬りつけた。同時に万次は閑馬の急所を貫き、閑馬は死んだと思われた。
しかし閑馬は立ち上がり、自分も八百比丘尼に「血仙蟲」を埋め込まれ、200年以上生きていると告げる。

その夜、万次はこれまでに負った傷口が次々開きもがき苦しんでいた。閑馬が万次を斬った刀には血仙殺(けっせんさつ)という毒が塗られており、血仙蟲を体内に持つ者の古傷が開くという効果があった。
凛は母から教わっていた毒消しを万次に渡し、医者を探しに行くが、閑馬に騙され捕らわれてしまう。凛の毒消しが辛うじて効き、動けるようになった万次が駆け付け、閑馬の体を回復できないようにバラバラにすることで倒すことに成功した。
閑馬は天津影久が半月後に加賀へ発つことを凛に告げ、息を引き取った。

凛に飯屋の前で待たされた万次は、1人の夜鷹(江戸時代の娼婦)に出会う。女は夜鷹を装い、万次を殺すよう天津影久から依頼された剣士・乙橘槇絵(おとのたちばなまきえ)であった。
槇絵は人を斬ることを恐れ、実力を出せず万次に1度は敗れる。しかし天津が認めるほどの才能の持ち主であり、遊女をしていたが天津に身受けされた過去を持つ。人並みの幸せを望むも、天津のために万次を斬ることを決心した槇絵は、本来の実力で万次を圧倒する。
止めを刺そうとした時に凛が万次を庇い、その姿を見た槇絵は万次に止めを刺せず、天津の前からも去るのだった。

凛は万次と最初に出会った納屋で、剣の稽古を付けてもらうことになった。休憩中、納屋の近くで偶然天津影久と遭遇する。
あっさり天津に囚われてしまうが、天津は凛の父親を斬った理由と逸刀流の所以を話すと凛を解放した。

凛は天津を殺そうとしている自分をなぜ殺さないのかと問うと、天津は「お前の目は父親と違う方向を見ている。その技(殺陣黄金蟲)は無天一流の教則では邪道で、それを編み出したお前はもう無天一流の人間ではない。半ば以上我々と同類の剣士なのだ」と言い、去って行った。凛はその言葉に戸惑い、背中を見せた天津を攻撃することもできず、ただ泣くだけであった。

凛と万次は、縁日に出かけ気分転換をする。
凛と別行動をとっていた万次は、独特な絵柄の面を売る男・川上新夜(かわかみあらや)に出会う。新夜は2年前浅野道場を襲った逸刀流剣士の1人であり、凛の母親を辱めた男であった。
万次と新夜は一触即発であったが、新夜の息子・練造(れんぞう)が止めに入る。

新夜は練造の前では、逸刀流だということや過去のことは隠しているため、万次とは戦わず練造と一緒に行ってしまう。この時凛は新夜を見つけ、心をかき乱していた。
翌日、凛は新夜を探しに縁日が行われていた境内に行く。そこで侍の鼻緒を切って斬られそうになった練造を助けたことで、お礼に家に招待へ招待される。新夜は凛が浅野道場の娘だとは知らずに、息子の命の恩人として歓迎する。

新夜と2人きりになった凛は、浅野道場での惨劇を話したため、浅野の娘だと気付かれた。
凛は練造のことを考え「新夜を殺しに来たわけではなく、手をついて謝ってほしい」と言うが、新夜はそれを拒否。凛を殺そうとするが、窓から侵入してきた万次によって阻止される。
戦いの末、万次が新夜に止めを刺した瞬間を練造に見られてしまい、万次は嘘を言って練造に自分を殺すよう仕向けた。練造は混乱しながらも燭台で万次を突き刺し、万次は練造にとっての仇である自分が死んだように見せかけたのだった。

加賀編

凛を助けに来た万次

凶戴斗は逸刀流の総本山である、向島の天邦道場(てんぽうどうじょう)へ向かう途中、駕籠(かご)屋の2人組に襲われるが凶が返り討ちにした。

その頃天邦道場では、幕府の新番頭(警備の責任者)である吐鉤群(はばきかぎむら)が天津影久と面会していた。吐は幕府の講剣所(こうけんじょ)を創設するにあたって、逸刀流の剣士数名を師範代として迎え入れることを申し出る。これは半ば強制で、この申し入れを受け入れる。

同時に天邦道場に着いた凶は、逸刀流が幕府お抱えの一門になることを聞く。幕府と侍に憎しみを持つ凶は「逸刀流を抜ける」と宣言する。
それを受け入れた天津は、凶が寝泊まりしていた逸刀流昵懇(じっこん)の廓「雪待」の部屋は好きに使って良いと言った。だが、凶は妹のように親しくしていた雪待の遊女・恋(れん)にも別れを告げ、荷物をまとめて出て行った。

凶が出て行った直後、「無骸流(むがいりゅう)」の剣士・尸良(しら)という男に恋は斬殺される。
同じ頃、逸刀流剣士2人も、無骸流の百琳(ひゃくりん)と真理路(しんりじ)、偽一(ぎいち)によって殺害された。

一方、凛と万次の元へ無骸流の尸良が現れる。尸良は無骸流が逸刀流を狙っていること、ここ数日で逸刀流剣士を数名殺していることを伝える。そのため「天津に用心され人出が必要になる」と言い、手を組むことを提案する。凛と万次は詳しい話を聞きに、無骸流のねぐらに向かうことにした。

凛と万次は、尸良に連れられやってきた無骸流のねぐらの湯屋で、百琳、真理路、偽一に会う。逸刀流に内通者として潜入している無骸流の真琴(まこと)から得た情報をもとに、加賀へ続く3街道を3手に分かれて天津を狙うことが決まる。真琴の情報から、天津が女装をして小仏の関所まで行くと考えた凛と万次、尸良の3人は、宿から街道を見張ることにした。

凛と尸良が街道を見張っていると、浪士同士の喧嘩が始まり、1人が自分が天津影久であると名乗っている。その騒ぎに目もくれず立ち去る女に目を付けた尸良は、女の荷物が天津の武器の形に似ているという凛の証言から、尸良と凛でこの女の後を追うことにした。

女は天津ではなく雪待の女郎であり、女郎の役目は、逸刀流剣士が来るまでのおとりであった。
他の二街道にいる、百琳と偽一に手柄を持っていかれると思い激昂した尸良は、やってきた逸刀流剣士2人と女郎をなぶり殺し始めた。

その尸良の異常性に呆然とする凛は、女郎を辱めようとした尸良を止めに入る。尸良が凛に刀を向けた瞬間、駆け付けた万次によって右手を腕ごと切り落とされてしまう。右手を切断され混乱した尸良は、通行人がやって来たのを見計らい逃げいき、万次と共にその場から去った。

同じ頃、他の2街道にも天津は現れなかったが、偽一は天津役の女郎から天津の行き先が心形唐流(しんぎょうとうりゅう)・伊羽指南所(いばねしなんじょ)であることを突き止めていた。

万次はお尋ね者で関所を通れないため、凛は1人で天津を追って加賀へ行く決心をする。宿を出たところで会った偽一は、凛の様子にすべてを悟り、天津の加賀での行き先を凛に教えた。
関所を目指していた凛は、立て札にお尋ね者として凛と万次の姿が描かれているのを見つける。必死の思いで先日まで泊っていた宿の飯盛り女に匿ってもらった。凛は以前この飯盛り女から聞いていた、関所を通れる方法を試したいと申し入れる。

万次は凛が1人で天津を追って加賀へ行く気だと確信し、百琳に天津の行き先を問い詰める。
百琳は天津の行き先こそ教えなかったが、万次に通行手形を逸刀流剣士から奪えるようお膳立てする。それは真琴が天津からの書簡だと偽造して、逸刀流統主代行・阿葉山宗介(あばやまそうすけ)へ送り、剣士を1人加賀へ来させて通行手形を奪う作戦だった。

しかし書簡を受け取った阿葉山は内容を疑い、3人の剣士を送ったことにより、万次は苦戦を強いられる。万次は手を切り落とされながらも逸刀流2人を倒すが、最後の1人である火瓦(ひが)に両足を切断され倒れてしまう。だが、駆けつけた百琳と真理路によって九死に一生を得る。そこに町絵師の宗理が偶然通りがかり、万次の付き添いを買って出た。

その頃凛は、飯盛り女から聞いた上長房村(かみながふさむら)に来ていた。宿屋を訪ねた凛は、宿の主人・中屋(なかや)夫妻に自分を養女にして欲しいと頼む。
小仏(こごとけ)の関所は、上長房村の人間に限っては関を通るのに手形の一切が不要であり、関を通りたい罪人を縁者と偽って金で手引きをする村人がいるという話を聞いていた。
中屋は一度は断るが、凛の覚悟に負けて引き受けることにした。

凛は中屋夫妻の妻の妹・佐和になりすまして関所を通ろうとするが、奉行に引き留められ詰問を受けることになる。奉行は凛に敢えて間違った佐和の身辺を問うが、佐和の家庭まわりを一晩で全て暗記していた凛は引っかかることなく答えていく。これにより、凛は関を通ることができた。

万次は宗理の家で養生していた。そこで、実は宗理と知り合いだった百琳と無骸流の正体を聞く。無骸流とは幕府に命綱を握られた死罪人の集まりで、百琳は宗理の朋友であった夫を殺したことで無骸流に入ったという。そして通行手形は宗理が用意できると知り、今までの戦いは何だったのかと脱力する万次であった。

数日前に宗理と知り合ったという凶戴斗と、宗理邸で遭遇する。凶は逸刀流を抜けた後、恋を殺した尸良を探しており、ひょんなことから出会った宗理に雇われて家にやって来たところで万次と遭遇した。万次は凶の仇相手が尸良だと分かると、一緒に加賀へ行くことを提案する。

尸良は逸刀流に無骸流のアジトの湯屋を教え、見返りに通行手形を入手していた。
湯屋は逸刀流剣士を含む数人によって襲撃され、真理路は殺されてしまう。百琳は、無骸流の雇い主を吐かせるため拉致され拷問を受けながらも何とか堪えていた。そこに偽一が現れ、逸刀流剣士を次々と斬り殺し百琳を救出した。

宗理に手形を用意してもらった万次は、凶と共に加賀へやって来た。そこへ予想通り尸良が現れる。
尸良は自分の右手の肉を削ぎ、骨を削り武器としていた。その想像を絶する過程で、尸良の髪は白くなっていた。尸良と戦うと見せかけ林の中へ尸良を誘導した万次は、その環境での戦いが得意な凶に尸良の相手を任せた。
凶は尸良を相手に苦戦し重傷を負いながらも、尸良を滝つぼに落として勝利した。

一方、天津は加賀の心形唐流・伊羽指南所に到着。2代目師範・伊羽研水(いばねけんすい)に謁見していた。研水は逸刀流の思想が、先代の思想と通じるものがあるとして、逸刀流傘下へ組み入れることを申し入れた。研水はその条件として、娘である密花(ひそか)を妻として迎え入れることを天津に提示した。

江戸では、吐鉤群が逸刀流を幕府に迎え入れる酒宴を計画していることを、馬絽(ばろ)が伝えに来た。天津は、10日後に江戸に戻ることを阿葉山に伝えること、飛騨のどこかにいるはずの乙橘槇絵を探してほしいと馬絽に頼む。

天津は心形唐流を組み入れることに合意し、密花を妻にすることを決心した。江戸に一旦戻る前夜、天津と密花は祝言を挙げた。その最中、公儀の使いが伊羽指南所を訪れ、研水に「逸刀流と手を切り、天津の首を奪え」という幕命を伝える。密花の命を脅されての幕命であった。

翌朝、江戸へ向かうため伊羽指南所を発った天津は、行き倒れていた凛と遭遇する。そこへ黒頭巾を被った男たちが、天津と凛を取り囲んだ。天津は返り討ちにした後、黒頭巾を外すと心形唐流の人間であった。同門となった剣士に狙われた天津は、伊羽指南所へ急いで引き返し、凛も天津の後を追った。

天津が研水の部屋へ行くと、研水が切腹をしている最中であった。天津は研水から、公儀が自分の首を狙っていることを聞き呆然とする。密花の命を盾に取られ大義を見誤った研水を責めることはできないと、天津は研水を介錯した。途中から話を聞いていた密花は、裏道を天津に教えて天津が去った後に、研水の側で自害した。

天津は、江戸の逸刀流剣士たちも危ないと思い江戸へ向かう。凛は天津と共に行動し、隙をみて天津を討とうと考えるが、天津が隙を見せることはなかった。しかし天津は、心形唐流に襲われた際に受けた傷口から破傷風を発症していた。途中立ち寄った白川郷で、馬絽に捜索させていた乙橘槇絵に再会した。天津は、唯一の目標の父が病死したことで廃人同然になっていた槇絵を説き伏せて白川郷を後にするが、破傷風の症状が進み倒れてしまう。

そこに心形唐流たちがやってくるが、凛と協力して何とか切り抜けた。

食べものを買いに行った凛は心形唐流の門下生に見つかり、天津の居場所へ案内させられる。
門下生たちは、破傷風で動けない天津に大勢で斬りかかる。そこに、万次が現れて戦うことになるが苦戦し、天津を心配して追って来た凶戴斗も応戦する。門下生たちは凶を囲み天津を斬ろうとするが、天津の体調の異変に気付いて駆け付けた槇絵によって阻止される。槇絵は圧倒的な剣舞で門下生を次々斬り殺し、分散させていた門下生たちも万次と凶が全員倒し、心形唐流は終焉を迎えた。

凛は天津に「幕府に裏切られた逸刀流の行く末を見届け、抗うのか滅びるのか結論が出た時に殺しに来る」と告げ、それぞれ加賀を後にした。

不死実験編

吐鉤群が主催した逸刀流との酒宴は、吐が仕組んだ罠だった。
無骸流とは吐が発足した組織であり、逸刀流の壊滅を目的としたものだった。金で雇われていた偽一と共に酒宴で集まった逸刀流幹部たちに毒を盛り、皆殺しにした。逸刀流はこの裏切りにより、天邦道場を焼き払い冬の決起まで地下に潜ることとなった。

その後、偽一は病気の息子が亡くなり、生きる目的がなくなっていた。叶から、これまでの功績から罪状放免できる金額を稼いでいるがどうするか聞かれ、その金で百琳の放免を頼む。だが断られ、条件として万次を連れてくるよう命令されて協力することになる。

凛と万次は江戸に戻っていた。
そんな万次の元へ、偽一が現れて自身の上司が公儀であり吐鉤群であることを明かした。幕命として無骸流に入るよう万次に話して、吐の邸宅に出向いた。
吐は万次の不死の肉体のことを知っており、真の目的は万次の不死の肉体の研究であり、万次は吐と大勢の番士によって捕らわれてしまう。

凛はいなくなった万次を探しつつ、安全に寝泊まりできる生家の浅野道場に戻ってきていた。そこに空き家だと思いやって来た、逸刀流の吉野瞳阿(よしのどうあ)と八苑狼夷作(やそのおおかみいさく)が居ついてしまう。凛は2人が逸刀流だとは知らずに、しばしの間居候をさせることになった。

凛は百琳と一緒に、万次の行方を知っているであろう偽一を探しだした。偽一は凛に吐を見張るように言い、凛は吐の行動を観察することになった。
同心の前で抜刀したことで目を付けられていた瞳阿は、凛と夷作と3人でいるところを見つかり捕らえられそうになる。だが夷作が凛と瞳阿を逃がし、自身は捕らえられてしまう。

凛は万次を、瞳阿は夷作を助けるため、捕らえられた人間が収容される場所を見張る。だが、夷作は連行されては来なかった。
凛は江戸城の典医と親しい逸刀流在籍の薬屋・果心居士(かしんこじ)から、江戸城で「不死の実験」が行われているという噂を聞く。凛と瞳阿は江戸城周辺を捜索し、おぞましい程の死体の山を発見する。そこで夷作の籠手を身に着けた浮浪者・ナンダ郎を見つけ、籠手を入手した経緯を聞きだす。

ナンダ郎から「林の奥に貒穴(まみあな)と呼ばれる狸のねぐらのような横穴があり、その穴が日に2、3度開き、役人によって死体が運び出されてくる」と情報を得る。その死体を運ぶ仕事をしているナンダ郎は、役人から夷作の籠手を10日ほど前に貰ったという。

横穴は江戸城からの抜け道で、城のどこかで万次を使った「不死の実験」が行われ、夷作もその中にいると確信した。凛と瞳阿は、果心居士が作っていた江戸城の地図と火薬を留守中に拝借し、万次と夷作を救出するため横穴に向かった。

一方、吐に捕らえられた万次は、江戸城地下にある牢に鎖でつながれた。そして囚人を万次と同じ不死の体にするよう命令された、異国帰りの医者・綾目歩蘭人(あやめぶらんど)が、手術を繰り返していた。歩蘭人は手術が立て続けに失敗し多くの囚人を死なせたことで医者としての論理感から精神を病んだが、囚人たちを人間と思わないようにすることで不死の実験に邁進するようになる。

凛と瞳阿は横穴への侵入に成功したが、罠にはまって凛は役人から折檻を受ける。だが、城の地図を瞳阿が盗んだと気付いた果心居士が、逸刀流の怖畔(おずはん)を応援に寄こしたことで凛は助けられる。

吹上門まで来た凛たちは城の人間に追われ、火薬を使い凛の殺陣黄金蟲で爆発を起こし、実験が行われている場所に続く洞窟に入ることに成功する。そこで凛と瞳阿は、実験によって無残に体を両断された幾つもの死体を目撃する。その中に夷作の上半身を発見した瞳阿は、この先は凛1人で行ってほしいと頼む。

洞窟を抜けて地上に出たところで不死の実験に関わる歩蘭人の助手に出会った凛は、実験にうんざりしていた助手の協力を得て、万次が幽閉されている牢にたどり着き鎖につながれた万次を遂に発見する。居合わせた歩蘭人をボコボコにした凛だが、万次の鎖を外す前に吐に見つかってしまう。

万次が体内に隠し持っていた麻酔漬けのかんざしを吐の目に刺し、吐の動きを封じることに成功するが、手術で四肢の切断を請け負っていた首切り浅右衛門(あさえもん)と弟子の弁鬼(べんき)が駆け付けて腕を鎖につながれたままの万次は窮地に陥る。そこに瞳阿と、死んでいたはずの夷作が助けにやって来た。夷作は実験の作用と巨体故の血液の多さから体を分断されても心臓はしばらく動いており、それに気づいた瞳阿が下半身とつなげることに成功した。一時的ではあるが万次と同じ体になっていたのだった。

道灌濠の水が漏れだし大量の水が押し寄せる中、首切り浅右衛門と弁鬼、加えて歩蘭人が密かに生み出していた不死の肉体を持つ人間兵器鵺一號(ぬえいちごう)も万次たちに襲い掛かる。だが、四人で力を合わせなんとか撃破した。

直後に大量の水が押し寄せ、首切り浅右衛門に切り落とされていた万次の左腕が流されてしまう。凛は左腕を拾おうとするが、川上新夜の息子・練造に拾われる。
練造は生き延びていた尸良の世話係をさせられており、尸良と共に幽閉されていたが、この洪水により脱出していた。練造は凛に万次の左腕を一瞬返そうとするが、凛の後ろに万次の姿を発見し呆然とする。そこに尸良が現れ、崩落が起こってしまう。

歩蘭人の助手が実験のため収監されていた囚人を解放したため、城門はそれを迎える女たちと役人で混乱していた。その混乱を高台から眺めていた天津影久は、瞳阿・夷作と共に凛がこの光景を生み出したと知ると、先を越されたと笑うのであった。

凛と万次は無事であり、水に流された瞳阿とそれを追った夷作とも再会することができた。
万次たち同様水に流された歩蘭人は、典医であり兄の蔵多に救出されていた。その後歩蘭人は実験の記録を燃やし、実験で死んでいった囚人たちの家々を行脚する雲水となるのであった。

最後の戦いへ

吐鉤群は今回の江戸城での混乱の責任を取らされ切腹を命じられた。
切腹まで1か月の猶予を与えられた吐は、無骸流と同様に死罪人らで構成された「六鬼団(ろっきだん)」を使い逸刀流を滅ぼし、自らの手で天津影久を消すことに全てを懸けていた。

一方天津影久は、吐の後任として新番頭に就任した吐の元部下・英于彦(はなぶさうげん)に呼び出され、逸刀流を生かす代わりに江戸を出ていくよう命じられる。天津はこの提案を了承し、薩摩に行くと英に告げる。
吐は妻と子を英に人質に取られ、江戸払いとなった逸刀流をこれ以上追わないように、六鬼団の引き渡しを求められる。だが妻と子の自害により吐はそれを断り、天津を追うこととなった。

凛は天津に偶然会い、江戸を去ることを教えられる。逸刀流の行く末を見届ける権利がある凛は天津を追いかけると宣言する。天津はそんな凛に万次にもその権利があるとして万次も常陸に連れてくるよう頼む。

尸良は吐の部下に、密かに綾目歩蘭人から吐へ送られていた不死実験で明かされた血仙蟲の詳細が書かれた書簡と刀を渡され、万次を討つよう命じられる。
偽一は恩を受けた吐の力になろうと吐の後を追うことを決め、百琳も偽一に反対されつつも同行する。

こうしてそれぞれの大義のために、それぞれが最後の戦いに向かって水戸路に就くのであった。

『無限の住人』の登場人物・キャラクター

主人公

万次 / 卍(まんじ)

CV : 関智一(一作目)/ 津田健次郎(二作目)
演 : 木村拓哉
旗本・堀井重信の部下だったが、堀井の不正に知らずに加担していたことを知り、斬り殺したことでお尋ね者となる。その際に追っ手百人を斬ったことから「百人斬り」と呼ばれるようになる。追っ手から逃げ隠れているところを妹の町の夫・斎藤応為辰政に見つかり、町の目の前で辰政を斬殺してしまう。そのことがきっかけで町は幼子のような精神状態になり、苦悩していた万次は八百比丘尼に出会い、血仙蟲を埋め込まれ不死の肉体となった。
町は物語冒頭で万次に殺された序仁魚仏の兄・司戸菱安に、報復として万次の眼前で殺されてしまう。剣によって犯した罪は剣によってしか償えないと悟った万次は、「悪党1000人を斬る」ことを自らに課した。凛に用心棒を頼まれ最初は断ったが、凛が体を売って覚悟を示そうとした際には、凛と町の姿が重なり本気で打ってしまう。
背中に大きな卍柄が入った着物を着用しており、その中に幾つもの武器を隠し持っている。倒した相手の武器を自分のものにすることが多い。
用事がない時は寝ていることが多い。不死になる前、町の夫・辰政を斬った際に辰政により右目を突かれ隻眼となった。

浅野 凛(あさの りん)

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