きっと、うまくいく(インド映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『きっと、うまくいく』とは2009年に制作されたインド映画で、インド映画歴代興行収入1位を記録した大ヒットコメディである。理系のエリート大学であるインド工科大学(ICE)を卒業して10年経ったファルハーン・クレイシーとラージュ・ラストーギーの2人が、各地を周りながら手がかりを集めながら行方不明になった友達のランチョルダース・シャマルダース・チャンチャルを探す旅をする。旅の中で10年前に3人がICEで経験した様々な出来事を回想しながら、「生きるとは何か?」を観ている人に伝える映画となっている。

『きっと、うまくいく』の概要

『きっと、うまくいく』とは2009年にインドで公開されたコメディドラマ映画である。インド国内だけでなく、世界中でヒットし、数々の著名人もこの映画に感銘を受けている。スティーブン・スピルバーグはこの映画を「3回も観るほど大好きだ」と絶賛、ブラッド・ピットも「心が震えた」とコメントを残すなど、今もなお色褪せない作品となっている。

インドで有名な俳優のアーミル・カーンが主演を演じた。インド映画界で最も成功した映画制作者の1人とされている、ラージクマール・ヒラーニが監督・脚本を務めた。

日本では2010年9月20日に「下町コメディ映画祭」にて、『3バカに乾杯!』という邦題で公開された後、『きっと、うまくいく』と題を改め、2013年5月18日に公開された。日本での配給会社は日活。受賞歴としては、2010年インドアカデミー賞にて史上最多16部門を受賞。日本では第37回日本アカデミー賞にて優秀外国作品賞を受賞した。実際、インドと日本以外でも高い評価を受けていることから、各国でリメイクがされている。制作費は3億5000万ルピー、日本円にして約5億8000万円。興行収入は38億5000万ルピー、日本円にして約64億5000万円。

理系のエリート大学であるインド工科大学(ICE)を卒業して10年経ったファルハーン・クレイシーとラージュ・ラストーギーの2人は、同級生のチャトル・ラーマリンガムの招集を受け、母校へと集まる。「10年後の今日に母校へ戻り、どちらがより成功したかを見せ合う」ともう1人の友人「ランチョー」ことランチョルダース・シャマルダース・チャンチャルと賭けをした日であったのだが、そこに彼は現れなかった。ファランとラージューは各地を回りながら行方不明になった友達のランチョーを探す旅をする。

コメディ映画だが教育問題をテーマにしており、若者の自殺率の高さについても触れている。旅の中で10年前に3人がICEで経験した様々な出来事を回想しながら、「生きるとは何か?」を観ている人に伝える映画となっている。

『きっと、うまくいく』のあらすじ・ストーリー

旧友との再会

離陸待ちの飛行機に乗っていたファルハーン・クレイシーの元に、かつて在籍していたインド工科大学(ICE)時代の同級生チャトル・ラーマリンガムから「ランチョーが来る!」と連絡が来た。ファルハーンは、離陸目前の飛行機からうまく抜け出し、同じ大学の同級生のラージュー・ラストーギーに連絡を入れ、彼を迎えに行った。
急いで合流場所の母校ICEに向かうが、そこにICEを首席で卒業した友人「ランチョー」ことランチョルダース・シャマルダース・チャンチャルの姿はなかった。
彼は成績優秀なだけでなく、ファルハーンとラージューに「人生において大事なこと」を教えてくれた、人生を変えてくれた親友である。だが、ランチョーは大学の卒業式の途中で姿をくらまし、未だ消息不明なのだった。
ランチョーがいないことをチャトゥルに問い詰めると、ICE時代に「10年後の今日、母校で会い、どちらがより成功したか見せ合おう」と賭けしていたことや、彼が「シムラ」という町にいる情報を得ていた。
ファルハーンとラージューはランチョーと過ごしたICE時代の思い出を振り返りながら、チャトゥルの車で「シムラ」へと向かう。

ICEの異端児・ランチョー

ファルハーンはICEに入学した時のことを思い返していた。ICEはインドを代表する理系のエリート大学で、ヴィールー・サハスラブッデー学長の「競争こそが全て」という方針が前面に押し出されている校風だった。
インドでのエンジニアは、古来古くから残るカースト制度に関係しない業種で、重宝される仕事であることから、カメラマンの夢を持っていたファルハーンも親からエンジニアになることを強要され、ICEにやってきた。
そこでルームメイトとしてラージューに初めて出会った。当時の彼は恐怖心の塊のような存在で、実家が貧乏でいつも貧困や環境によって刻まれた恐怖心を取り払おうと、神様への祈りを欠かさない男だった。

ICEの新入生には上級生により、新入生全員がパンツ一丁にされるという“儀式”が待っていた。新入生一同は上級生の指示に従いパンツ一丁となっていたが、そこにランチョーが遅れてやってきた。ランチョーは上級生の儀式を「意味のないもの」と拒否し、逆に上級生を持ち前の工学の知恵を使って感電させて返り討ちにしてしまう。好きな工学を突き詰め、自分の人生を信じる自由なランチョーの生き様に、ファルハーンとラージューは一目を置くようになり、3人は友達となった。

ランチョーは、学長とは真逆の価値観を持つ男だった。入学直後のある日、学長はカッコーの卵が入っている鳥の巣を新入生に見せた。カッコーの習性になぞらえ、競争の意味を説きながら、宇宙で字が書けるという1本のペンを掲げた。「このペンは私の恩師が、“優秀な君に”とくれたペンだ。お前のような学生に出会ったら、このペンをあげなさいとも言われたが、未だ誰一人として渡すに値する生徒はいなかった。この中にこのペンを勝ち取りたいものはいるか?」と発言する。しかしランチョーは「宇宙で字を書きたいのであれば、なぜ鉛筆を使わないんです?鉛筆ならインクじゃないから無重力は関係ないですよね?」と学長を言い負かしてしまった。
ランチョーは競争はどうでもよく、とにかく大好きな工学を学びたかった。工学にのめり込みながら、上級生や教師、学長らの常識に対して反抗していくランチョーの存在は、競争を第一としている学長にとって目障りとなっていた。「All is well(うまくいく)」を座右の銘とし、その言葉通りに自分の信念の元、どんどん前に進んでいくランチョー達にある事件が起きる。ICEの4年生であるジョイ・ロボは卒業研究としてカメラ付きヘリコプターを作成していたが、経済的に困窮している家族のことも相まって大苦戦をしており、提出に遅れが出ていた。学長が彼に対し「これ以上提出が遅れるのであれば留年してもらう」とプレッシャーをかけ、熱意がこもった制作を否定したことで心が折れ、ロボは自ら命を絶ってしまった。
ロボの葬儀で、ランチョーは「彼はあなたが殺した」と学長を責めた。学長はさらにランチョーに対して攻勢を強めていき、ランチョーを授業の講師にして恥をかかせようとするが、逆にランチョーに返り討ちにあってしまう。ランチョーの学長への反抗心は強くなる一方だった。怒りの収まらない学長は、ファルハーンとラージューの親に「息子さんはランチョーという男に悪影響を受けている」と、いう内容の手紙を送りつけ、3人の関係を解消させようと試みる。

その結果、ランチョーはファルハーンとラージューの実家に呼び出しをくらうのだが、そこで2人がどういう環境で育ってきたのかを知ることとなる。
ファルハーンの家は父親が力を握っており、ファルハーンの意思や考え方を尊重するのではなく、自分の考え方を押し付けるスタンスであった。
また、ラージューの家は貧乏で、3人が食事をもらう時も母親から食材一つ一つの金額を言われる始末。流石にそんな環境で食事を頂くのは申し訳ないと感じた3人は、腹を満たすために結婚式に忍び込み食事しようと画策する。式に参列していたカップルのやり取りを見ていたランチョーは、「連れのあの男はお金のことしか考えていないからやめた方がいい。冷静になった方がいい」と女性にアドバイスをした。女性は否定したが、ランチョーから「それなら証拠を見せてあげるよ」と、言われ本性が暴かれてしまった男の姿に呆れ顔を見せた。そこに学長が現れ、この結婚式は彼の娘のモナ・サハスラブッデーの結婚式であり、先ほどの女性はモナの妹ピア・サハスラブッデーだった。
慌てて逃げ出す3人だったが、翌日、学長室に呼び出され、ファルハーンとラージューに「ランチョーの家は金持ちで、君たちとは違う」という事実を伝えられる。自分たちには抗えない現実があり、ランチョーとは環境も違うことから、学長の指示に従うしかなかった。ラージューは同室だったランチョーとファルハーン距離をおき、成績優秀の評価を得ているチャトゥルの部屋に移動するのであった。

ランチョーによる学長への仕返し

ランチョーの元を離れたラージューだったが、順風満帆ではなかった。チャトゥルのペースにのまれ、さらにはサイレンサーの異名を持つチャトゥルのすかしっ屁で生活のリズムまで乱されていたのだ。そんな最中、チャトルはICEの記念すべき一日“教師の日”に代表スピーチをすることになった。彼は教師に合わせて苦手なヒンディー語にした原稿を図書館で作成していたが、ランチョーとファルハーンが現れ、「丸暗記や点を取ることが全てではない」ことをラージューに伝えるためにイタズラをすることにした。チャトゥルを嘘の電話を駆使して席を外させ、その間に「奇跡」という言葉を「強姦」という言葉に差し替えたのだ。
教師の日当日、自信満々の表情で壇上に現れたチャトゥルは、丸暗記した原稿を意気揚々と語り始める。それは「これからも学長は強姦し続ける。」「さらに犯し続けるでしょう。」と学長を侮辱した内容になっており、それを聞いた学長は卒倒してしまう。
大恥をかかされたチャトゥルはその日の夜、屋上で酒を飲んでいるランチョー達の前に現れ、怒りをぶつけながら「10年後の今日、母校で会い、どちらがより成功したか見せ合おう」という賭けを持ちかけ、ランチョーもそれに応じるのであった。

ランチョーを街中で見かけたピアは父が卒倒した件について、彼を責め立てる。それに対してランチョーは意図を説明した上で「君だって真実がいまだに見えていない」とピアの婚約者について言及した。婚約者の真の姿を気付かせるため、ピアにプレゼントした時計をランチョーが預かり、ピアは言われるまま婚約者のところに向かった。すると「僕があげた時計はどこにやったんだ!!あれはすごく高いんだぞ!!そんな高価な物を無くすなんて君はなんてダメなやつなんだ!!」と婚約者はピアを責め立てた。これがきっかけでピアは婚約者と別れ、ランチョーと彼女の距離はさらに縮まるのであった。

そんな折、ラージューの父親の容体が悪化したと連絡が入る。慌てたランチョーはピアのバイクを借りて、ラージューの家に向かい、お金がなくて救急車が呼べない彼の父親をバイクに乗せて病院まで搬送した。ランチョーのお陰で、父親は一命を取り止めた。学長の差金でランチョーの元を離れたラージューだったが、一連の出来事を経て、友達とその家族を大事にしてくれるランチョーの姿に心から感謝する。またピアもそんなランチョーに惚れるのであった。そのまま病院で寝泊まりした3人は、起きて早々ICEでのテストに臨んだが、翌日発表された結果はファルハーンが最下位、ラージューは最下位から2番目という散々な結果だった。1位は暗記が得意なチャトゥルかと思われたが、ふと横を見るとチャトゥルが発狂して打ちひしがれていた。チャトゥルは2位となっており、1位はまさかのランチョーだったのだ。ファルハーンは、「人の心は複雑だ。親友が落第だと落ち込む。が、1番だと余計落ち込む」と、言葉を漏らすのであった。

影武者だったランチョー

回想から戻り、行方不明になったランチョーを探すために「シムラ」の町に着いたファルハーンとラージュー、そしてチャトゥル。ランチョーの家に来た3人は、ランチョーの父親の葬儀を目にする。驚く3人を尻目に、目の前にランチョーが現れたが、それは彼らが知るランチョーとは全く違う男だった。葬儀後にその男に声をかけたが、すごい勢いで追い出されてしまう。疑問を抱いた3人は、彼の弱みを握ることに成功すると、ICEで共に過ごしたランチョーは実は影武者であり、本当のランチョーは自分だという驚きの証言を引き出した。本物のランチョーの家は富豪で、父親は周りに見せるのに恥ずかしくない子供でいてほしいという気持ちから、理系のエリート大学であるICEに子供を入れようとしたが、あいにく本物のランチョーは勉強が大の苦手だった。途方に暮れている時に、難しい数式をスラスラと解いている家の召使いの子供を見つけた父親は、この召使いの子をランチョーの影武者にして、ICEの学位を取ってきてもらうことを考えた。影武者がICEに入学し、首席で卒業して学位を持ち帰ってくる。学位を持ち帰った後はランチョーの名前を捨てて、この家から離れてもらうという契約だった。彼にとっては不都合に思える条件だったが、大好きな工学が学べることに大いなる魅力を感じ、この話を引き受けたのだ。
本物のランチョーに影武者の居場所を聞くと、田舎のラダックにある小学校にいることが分かる。
チャトゥルは自分は大企業の副社長で、ランチョーは小学校で先生をしていることを知り、10年前の賭けに勝ったことを確信するのであった。

ファルハーンとラージューに現れた変化

再びICE時代の回想に戻る。学長は成績の悪いファルハーンとラージューは卒業できないと生徒の前で宣言し、2人は笑いものにされてしまう。夜に3人でやけ酒をしていると、なぜランチョーは成績がいいのかという話になり、彼は「自分は工学が大好き。だから結果的に成績がいい」と答えた。そこから、ファルハーンには本当に好きな写真家の道に勇気を出して進んだ方がいいとアドバイスをし、ラージュには不安に苛まれずにお守りや神頼みに頼るなと伝えた。
それに対して、ファルハーンは「ランチョーだって、ピアのことが好きなのに告白できてないじゃないか」と煽ると、ピアの家にこっそり忍び込み、ピアに告白をすると宣言した。
結果的に告白は間違えて姉のモナにしてしまったが、同じ部屋で寝ていたピアにも伝わることとなり、2人は恋仲となる。しかしファルハーンとラージューが外で騒ぎを起こしたことで、学長にラージューの顔がバレてしまい、翌日呼び出しを喰らうことになった。ラージューは学長から条件を2つ提示され、今回の責任をとる形で退学をするか、ランチョーが一緒にいたことを証言して彼を退学させることのどちらかを選べと圧力をかけられる。
後者を選べば自分の退学は免れるが、父親の命の恩人でもあるランチョーを傷つけるわけにはいかないと悩んでしまう。学長の定例の昼寝中の髭剃りが終わるまでに結論を出すことになったが、学長が昼寝をした瞬間にラージューは学長室から飛び降りた。幸い、一命は取り止めたものの全身マヒ状態となり、連日ランチョーとファルハーンが看病に駆けつけラージューに必死の声かけをしたが、なかなか良くはならなかった。ピアは「何か不安なことがあって、それが壁になってマヒが治っていないのかも」と言い、退学が取り消しになったことや、母親に新しいサリーを買ってあげた姿を見せたりするが、それでも容体は変わらない。
最終的に妹の結婚の話題に少し反応が出たことから、ランチョーが「ファルハーンがお前の妹と結婚することになったから大丈夫だ!」とデマカセを言ったところ、マヒが少しずつ溶け始める。「嘘をつくな」と言葉を発し、ラージューは奇跡の復活を果たしたのであった。

復活したラージューはランチョーのアドバイス通りにお守りや祈りに頼ることなく、自分の実力だけを信じて就職の面接に向かった。
また、ファルハーンには一通の手紙が届いていた。それは世界的な写真家からの手紙で、撮影助手として付いてこないかという誘いだった。実はランチョーがファルハーンに隠れてこっそり、彼が取った写真を送っていたのだ。嬉しいながらも戸惑うファルハーンに、「親父さんと向き合え、逃げるな」と伝え、ファルハーンは今まで一度も反抗しなかった父親と向き合うことを選んだのだった。

面接会場のラージューは真摯な姿を見せた。変わることができた自分を誇りに思いながら面接会場を後にしようとした時。その場で直接採用をもらうことができた。
色々な不安を乗り越えたラージューの目には大粒の涙が浮かんでいた。

一方、ファルハーンの家では採用面接で受かって帰ってくる息子の帰りをお祝いするために、奮発して買ったPCのプレゼントを用意する親が待っていた。そこに面接をドタキャンした息子が帰ってきたために、父親は怒り心頭となる。「自分は本当は写真家になりたいんだ!」との言葉にさらに怒る父親。「父さんには感謝している。でも、自分の人生を歩ませてよ」という息子の心からの言葉に「もういいでしょ、好きに生きさせてあげてよ」と父親を説得する母親。ため息をついた父親から出た言葉は、「カメラはいくらのが必要なんだ?このPCはまだ返品が効くだろ?そのお金も使ってカメラを買ってやるから遠慮なく言いなさい」だった。息子の夢を応援することを決め、家族全員の目に涙が浮かんでいたのだった。

状況が分からないランチョーは落ちつかない様子で2人を待っていた。ふと、目をやると数十メートル離れたところに2人はいた。急にズボンを脱ぎ始め、ランチョーにこう言った。
「王よ、あなたは偉大なり!!」と、ICEに入学した初日、上級生による下級生への儀式をランチョーに披露した。彼ら2人の夢が、自分のアドバイスがきっかけで叶った。そのことにランチョーは男泣きをしたのだった。

ランチョーと学長の和解

ファルハーンかラージューのどちらかが就職したら、トレードマークの自慢の髭を剃るというランチョーの賭けに負け、学長は自慢の髭を剃った。怒り心頭の学長は、例え次の進路が決まっていても卒業試験に合格しないと採用取り消しとするということを言い出す。しかも問題は、学長が作る難易度の高い内容となっていた。
あまりに理不尽なやり方に、父親のせいで兄を亡くしたピアは学長である父親を責め立て、酒に酔った勢いでランチョーに学長室の鍵を渡す。この鍵で先に問題用紙を回収して、どの問題が出るか対策すればいいと伝えたのだ。

ここで、現在のファルハーンはピアの存在を思い出す。ピアもランチョーに会いたいのではと考えた彼は、ランチョーの元に向かう前にピアのところに行こうと、ハンドルを切る。しかしタイミングの悪いことに、ちょうどピアの結婚式が開かれていた。しかも相手はまたしても金のことしか考えていないあの男だった。ピアは男の本性をわかっている事から、おそらく本心で結婚したいと思っていないことを察したファルハーンとラージューは、ピアを強奪することを考えた。ラージューが変装して忍び込み、ピアを説得してバージンロードに出たところで一緒に車に乗り込む作戦だ。
ピアは案の定、諦めの結婚をしようとしており、まさにランチョーがやっていたような手法をラージューが行い、男の本性を再度突きつけた挙句、見事に花嫁ピアの強奪に成功したのだった。吹っ切れたピアは「何も言わずに去っていったあいつを一発殴ってやる!」と、意気込んでいた。

再び過去の回想になる。ランチョーはピアから渡された鍵を使うか悩んでいた。今のラージューを信じてあげたいが、もし今回ダメだった場合にまた自殺をされたら困ると考えたランチョーは学長室へ潜入し、試験問題のコピーを取ることを決めた。
見事に試験問題のコピーを手に入れたランチョーはそれをラージューに渡すが、「自分はこんなものには頼らないよ。君が教えてくれたことだろ?」とラージューは受け取らなかった。大きく成長したラージューに感動したランチョーは、彼を讃えて抱きしめた。

ところが、学長にはランチョーが友のために試験問題のコピーをとったことがバレてしまった。その結果、学長の一存によりランチョーは退学処分を下されることとなる。意気消沈しながら荷物をまとめ、悪天候の中、学校を出ていくランチョー。

そんな時、妊娠していたピアの姉のモナが産気づいてしまう。学長は慌てて救急車を呼ぶが、悪天候のせいで救急車が来ない。このままでは孫も娘も命の危険がある。学長は自身の車にモナを乗せて、病院へ向かおうとするが車も動かなくなり万事休す。そこに通りかかったランチョーが事態を察し、居合わせていた「ミリメーター」の愛称で呼ばれる荷物運びの少年マンモーハンに協力してもらい、寮の学生たちを起こしてモナを寮に引き入れた。
そこから病院にいるピアにテレビ電話で連絡をしながら状況を伝えた結果、母子共に危険な状態で、そこで子供を産むしかないことをランチョーに伝える。こうして、ピアの指示の元、ランチョーがモナの赤ちゃんの出産を受け持つことになったのだ。しかし、大雨で電気も止まっている危機的な状況であり、赤ちゃんを吸引する機械もない。そんな状況の中で、学長の車のバッテリーから電気を起こし、掃除機にバルブをつけて圧を調整し、吸引機にするというランチョーのアイデアが炸裂する。こうして、ランチョーの指示のもと、学生たち総出で出産の準備に取り掛かる。電気も通電し、吸引できるところまで死に物狂いで耐えたモナ。そこから慎重にかつ、大胆にお手製の吸引機で赤ちゃんを吸い出したランチョー。赤ちゃんが生まれたと歓声に包まれる寮内だったが、産声が聞こえない。ランチョーは赤ちゃんの背中を力いっぱい叩くが、反応がない。ここまで頑張ったのに、やっと出会えたのに、死産なんてとモナは打ちひしがれ、楽章は泣き出す。ピアはテレビ電話越しに必死に声かけをする。
「うま〜くいく、うま〜くいく」とランチョーがピンチの時に呟く、魔法の言葉をつぶやきながらアイデアを模索していたその時、赤ちゃんが少し動いた。赤ちゃんが「うま〜くいく」という言葉に反応したのだ。思い返せば、ピアに告白するために忍び込んだ夜、間違えて告白してしまった身籠っている姉のモナの前で「うま〜くいく」と言ったら、お腹の中の赤ちゃんが力強くお腹を蹴っていたことを思い出した。
「うま〜くいく!うま〜くいく!」とみんなで大合唱すると、赤ちゃんの反応はどんどん大きくなる。ついに、「オギャ〜〜!!」と産声を上げた。
泣き崩れるモナとピア。学長も嬉し涙を流し、「すごいキックだった!将来はサッカー選手か!?」と、普段の工学における競争意識を忘れ、孫の未来に夢を見ていた。

新たな命の火が灯った時、外は晴れていた。退学処分となっていたランチョーは、荷物をまた持ち上げて学校を出ようとしていた。そこに学長が待ったをかけた。「初日に質問したな、宇宙でなぜ鉛筆を使わないのかについて。鉛筆は先がボロボロになるんだ。無重力だと周りに漂い、目や機械に入る。おまえは間違っていた!間違えることもあるんだ!分かったか!?」と語る学長の目には涙が溢れていた。ランチョーは素直に「はい」と言った。
学長は改めてペンを取り出し、「このペンは大発明なんだ!いいか、分かったか!」
と言った。さらに「私の恩師は言った。おまえのような優秀な学生に出会ったら、このペンをやりなさいと。戻れ。勉強しろ。卒業試験に通らんぞ」と泣きながら、ペンをランチョーのシャツに引っ掛け、退学の取り消しを告げた。

こうして、ランチョーは見事に首席で卒業するのであったが、その卒業式が終わった直後に彼は誰にも何も伝えず行方をくらませたのであった。

10年ぶりの友との再会

過去のことを振り返っていたファルハーンは、ついにランチョーがいるという田舎の小学校に着いた。その小学校は個性的で、そこらかしこにお手製の機械が動いていた、まさにランチョーらしい学校だった。
そこにある男が「おー、来たか。久しぶり」と声をかけてきた。謎の男に困惑するファルハーンとラージュー、そしてピア。「着いておいでよ」と3人は誘われるままに、謎の男の後を追う。

一方チャトゥルは、もう勝負も決まっているから早く取引に行きたいようだ。しかし立ち小便をしていると、生徒のいたずらで感電させられてしまう。

謎の男はとある部屋に3人を招待した。そこにはファルハーンが出してきた写真集や、ピアが被っていたバイクのヘルメットがあった。「ランチョーはここにいるよ。ずっとみんなのことを想っていたんだ」と語る男は続けて、「僕はこう呼ばれていた。ミリメーターってね」と告げた。謎の男は立派な青年に成長したミリメーターだった。個別でランチョーから連絡をもらい、工学を学ぶためにランチョーの小学校で共に働いていたのだった。
ミリメーターに案内された湖に彼はいた。相変わらず、工学に夢中で飛行機を飛ばしていた。そこにピアがバイクで急接近し、いなくなったことをとぼけるランチョーに一発ビンタを喰らわせた。
逃げるランチョーを追いかける3人。そこに遅れて現れたチャトゥルが、「俺の勝ちだ!ランチョー!お前は学校の先生!俺は大企業の副社長!どうだ!俺が正しかった!そして、俺はこの後、世界的な発明家、フンスク・ワングル先生と取引があるのだ!」と言った。
首を傾げるランチョーに、別れを告げて去ろうとするチャトル。背中越しに手を振り去っていくチャトゥルを尻目に、ランチョーは自分の携帯電話を取り出し電話をかけた。すると「あ!ワングル先生から電話が来た!」とチャトゥルが慌てる。
実はランチョーがフンスク・ワングルだったのだ。

それに気づいたチャトゥルは大慌てで手のひらを返す。皆はニヤニヤしながら、その様子を見ていた。さらに慌てるチャトゥルはズボンを脱いでパンツ丸出しで「王よ、あなたは偉大なり!!」と言うのだった。

『きっと、うまくいく』の登場人物・キャラクター

主要人物

ランチョー/ランチョルダース・シャマルダース・チャンチャル(演:アーミル・カーン)

日本語吹替:平田広明
本作の主人公の1人。座右の銘は「All is well(うまくいく)」で、モットーは楽しむこと。世間や周りの人の常識に流されない軸を持っている。一見すると変わり者の変人だが、成績優秀の発明の天才。その場にあるもので、創意工夫をして様々なものを作り出して数々の窮地を脱する。また、仲間想いの一面もあり、親友のファルハーンやラージュの未来について本気で向き合ってアドバイスしたり、困っている人がいたら何よりも優先して助ける男。ICEの卒業式で首席になるものの、突然姿をくらましてしまい、10年後に彼を探すために動き出したファルハーンとラージュー、学生時代にランチョーのことを目の敵にしていたチャトゥルによって、ランチョルダース・シャマルダース・チャンチョルは彼の本当の名前ではく、彼が使えていた富豪の息子の名前であることや、勉強嫌いの本物の影武者としてICEに入学し、首席で卒業する契約をしていたことが発覚する。
その後は辺境の田舎町に広大な小学校を作り、そこで様々な発明品を作りながら子供達に工学を教えている。映画終盤で本名はフンスク・ワングルということも明かされた。

ファルハーン・クレイシー(演:R・マドハヴァン)

樋口将貴
樋口将貴
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