かろりのつやごと(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『かろりのつやごと』とは小田ゆうあが描く、体型にコンプレックスをもつ主人公・花鳥風月と定食屋のアルバイト店員・青井柊吾の恋を描いた漫画作品。2019年に『月刊オフィスユー』で連載を開始。本作の主人公は食べることが大好きなぽっちゃり体型の女性で、あだ名は「かろり」。男性に縁がないが、恋愛に強く憧れている。常に控えめな彼女だが、青井との出会いによって少しずつ自信を持ち成長していく。恋愛だけでなく、2人を繋げる「食」もテーマとなっており、胃袋も刺激される作品である。

『かろりのつやごと』の概要

『かろりのつやごと』とは小田ゆうあが描く、体型にコンプレックスをもつ主人公・花鳥風月(かとりふづき)と定食屋のアルバイト店員・青井柊吾(あおいしゅうご)の恋を描いた漫画作品。『月刊オフィスユー』にて連載。作者は『君を夏へつれもどす』で漫画家デビュー。代表作にはテレビドラマ化され、大きな話題となった『斎藤さん』や『ふれなばおちん』などがある。また、2人の息子をもつ母でもある。
主人公の花鳥風月は美味しいものを食べることが何よりも楽しみな、ふくよかな体型のアラサー女性。外見は存在感がありながらも、自信のなさからか声が小さく控えめな性格。周囲からは「かろり」と呼ばれている。体型を気にするあまり、何事にも消極的で男性経験もなし。だが人一倍、恋愛に対して強い興味と憧れを抱いている。ある日かろりは、美味しいと評判の定食屋・ナナツノコでアルバイトをしている青井と出会い、彼に恋をしたことで日常が変わっていく。一方で青井も、人として大切なものをしっかりと持っている彼女に惹かれ、大切にしたいと思うようになる。
異性と付き合った経験はないかろりが、気持ちが先走ってたびたび男性相手に妄想を頭の中で繰り広げる場面も見どころ。恋愛に臆病だった主人公がコンプレックスも認めてくれる相手と出会い、成長していく姿は励まされると同時に応援したくなる作品である。

『かろりのつやごと』のあらすじ・ストーリー

定食屋での出会いと事件

食べることが大好きなアラサー女性・花鳥風月(かとりふづき)は、「かとり」という名前と「カロリー」をもじって、「かろり」というあだ名で呼ばれていた。迫力のあるぽっちゃり体型を気にしながらも、美味しいものが大好き。
ある日、かろりは朝定食が美味しいと評判の定食屋・ナナツノコを訪れる。椅子がきしむほどの大きな体の彼女を見て店の人達は一瞬固まってしまうが、美しく丁寧な所作で食事をする姿に感心しきり。店でアルバイトを始めたばかりの男子大学生・青井柊吾(あおいしゅうご)は、祖母と同じく食べ終わった茶碗をお茶で綺麗にする彼女に好感を抱く。一方、かろりもいい印象ではなかった自分のあだ名を青井に「可愛い」と褒められ、明るく人懐こい彼と話すことで心が和むのだった。
店の味や雰囲気が気に入り、常連となったかろりに、ある日事件が起こった。いつも同じ席に座っていたため彼女の重さに耐えられなくなったのか、椅子が大きな音とともに壊れてしまう。椅子とともに崩れ落ち、突然の出来事に驚いてショック状態となったかろり。その様子を見て笑う男性客に対して怒りをあらわにする青井に、かろりは恥ずかしさとともに、かばってくれたことを嬉しく感じる。だが人に迷惑をかけることや目立つことを避けたい彼女は、大事になってしまったことを申し訳なく思い、店に現れなくなってしまった。
それを残念に思ったおかみさん夫妻とアルバイト店員のめぐは、かろりのために頑丈な椅子を用意した。座ってもきしむ音がしない、自分専用の椅子を得たことに安心したかろりは、また店に通うようになる。店が忙しい時は皿洗いを手伝うなど、この定食屋はかろりにとってかけがえのない場所となっていく。

かろりの自宅を訪ねた青井たち

おばあちゃん子の青井は、祖母のぬか漬けが大好物。ところがある日、実家からぬか漬けだけでなくぬか床が送られてきて、扱いに困ってしまう。その話を聞いたかろりは自分に譲ってくれないかと言い、青井は大喜びでその申し出を受けた。譲る約束をしてからしばらく渡せずにいたが、自宅に遊びに来ていた大学の友人・成美可奈(なるみかな)と、上原冬馬(うえはらとうま)にぬか床の話をしたのをきっかけに、3人でかろりの自宅に届けに行くことになった。
いきなり訪ねてきた3人に驚きながらも、たくさんのお菓子でもてなそうとするかろり。青井と冬馬は喜んで食べるが、成美は「女子の人生の楽しみは食べること以外にもあるの」と言い、次々と食べ物を持ってくるかろりを制止する。成美は女性ならば食べたいという衝動は我慢できるはずなのに、好きなだけ自由に食べたり「孤独死も覚悟している」と話すかろりに苛立ちすら感じ、つい強い口調になってしまう。そんな成美の発言に対して青井は「たらふく食べてなにが悪いんや」と納得いかない思いを抱いていた。
一方でかろりの胸には成美の言葉が深く残る。成美の言う他の楽しみとは何かが分からず、今さら痩せるということも考えられない。自分にとっては食べることが最大の喜びであるかろりは、眠れないほど思い悩んでしまう。

2人きりの時間

行きつけとなった定食屋に通ううちに青井への恋心を自覚したかろりは、日を追うごとに彼への想いを強くしていく。外見で判断することなく、自分ともまっすぐ向き合ってくれる青井に強く惹かれていた。しかし、成美も同じく青井のことを好きなことを知る。それでも気持ちに変わりはなかったが、かろりは自分の恋心は隠したまま成美を応援することを決める。青井も成美も大好きなかろりは、自分のせいで2人が傷ついたり悲しんでほしくないと思ったのだ。
そんな中、大学のミスコンで賞をとり、自信をつけた成美はついに青井に告白した。青井はそれを受け入れ、2人は付き合い始める。強いショックを受けたかろりは、めぐに食事会に誘われても乗り気になれずにいた。それを知ったおかみさんはかろりを励まし、食事会に参加するようにアドバイスする。当日、かろりは待ち合わせの店に向かうが、待っていたのは青井1人だったため戸惑ってしまう。実は、それはかろりの青井に対する気持ちに気づいためぐの計らいだった。食事やバッティングセンターなど、思いがけず青井と2人きりの時間を過ごすことができたかろりは「好きな人との時間を未来にも欲しい」と感じ、彼への想いをさらに強くする。
その後、少しでも綺麗になるためにダイエットを決意したかろり。近所をランニングするなど行動を起こすが、急に運動してしたため膝が炎症を起こしてしまう。神様からの罰なのだろうかと思いながらも、青井への想いを胸に痩せるための努力を続けるのだった。

青井の気持ちの変化

青井と付き合っていた成美だったが、自分から青井にキスした際、涙を浮かべて「ごめん」と言われたことで彼の気持ちが自分に向いていないことを悟る。青井が好きなのはかろりだと思いながらも、諦めることができない成美はかろりを訪ね「青井くんをとらないで」と涙ながらに訴える。嫉妬のあまり、無意識に怖い顔をしてしまうような自分に苦しむ成美。そんな姿を目の当たりにし、かろりは青井への気持ちにふたをするしかなかった。
一方、青井はかろりが好きだと自覚し彼女に会いたいという気持ちでいっぱいだったが、成美に別れを切り出すまでは会えないと感じていた。その後、大学の課題に追われてなかなか成美と話せないまま時間が過ぎていたが、無事に課題を提出。冬馬とともに徹夜をしながら手伝ってくれた成美に感謝しつつ、自分の気持ちに嘘はつけないと覚悟を決めた青井は彼女に別れを告げ、その足でかろりに会いに行く。

恋人同士となったかろりと青井

ついにお互いに想いを伝えあい、恋人同士となったかろりと青井。かろりは2人の関係を知った定食屋の常連客からたくさんの小鉢をごちそうされるなど、周囲からも祝福を受ける。また、青井は夢に現れたかろりの両親に、かろりを大事にすること・たくさん笑わせることを誓うのだった。
一方、青井が通う大学の教授・浅村(あさむら)が実は定食屋の常連客であり、かろりのことも以前から店で見かけていたことが判明。かろりの能力を高く評価する浅村は、自分の秘書として働いてくれないかという話を彼女にもちかける。自分はいろいろと未熟だと謙遜するかろりだったが、自分を必要としてくれる浅村の気持ちに応え、申し出を了承。大学に通う青井とも会う時間が増えることになり、2人は喜びと幸せに包まれる。
秘書として大学で働き始めたかろりは、一緒にいる青井と自分の姿を「素敵なお姉さんと元気な弟くん」と浅村に表現され、モヤモヤした気持ちになる。付き合っていることを伝えようとするが「人からどうみられようと好きになった人と自分を信じよう」と思い直し、青井にちゃんと想われているという自信を取り戻すのだった。

『かろりのつやごと』の登場人物・キャラクター

メインキャラクター

花鳥風月(かとりふづき)

食べることが大好きな本作の主人公。ぽっちゃりとした体型がコンプレックス。男性と付き合った経験はないが恋愛に強い興味と憧れがあり、ドラマや映画を観て得た知識をもとに、頭の中で恋愛に関する妄想を繰り広げる癖がある。食べるだけでなく料理も得意。所作が綺麗で女性らしさを感じさせる雰囲気を持っている。両親の遺産により生活に不自由はなく、街の外れの豪邸で子供向けの英語教室をしながら1人暮らしをしている。過去には会社勤めの経験もあり、実はハイスペックである。
美味しいものを食べることが何よりも楽しみな彼女は、ふくよかな見た目と、「花鳥」という名前をもじって「かろり(カロリー)」というあだ名をつけられた過去を持つ。ひどいあだ名だと思っていたが、ある日、食事をしに立ち寄った定食屋「ナナツノコ」で出会ったアルバイト店員・青井にその名前を褒められる。学校でも職場でも体型をからかわれ、自分の殻に閉じこもるように生きてきた彼女だが、青井と出会ったことで世界が広がり、彼に惹かれるように。周囲からも「かろり」と呼ばれることに抵抗がなくなり、周囲の人との関わりも変化。のちに青井と想いが通じ合い、初めての恋を大切に育てている。

青井柊吾(あおいしゅうご)

関西から上京して一人暮らしをしている大学生。食べることが好きで、たまたま立ち寄った定食屋・ナナツノコの味が気に入り、「メシがうまい店は信用に足るのだ」という理由でその店でアルバイトを始めた。祖母のぬか漬けが好物で、おばあちゃん子でもある。人を外見で判断したりせず、自分の直感や感情で動くようなまっすぐな性格の持ち主だが、かっとなると熱くなりすぎる一面も。
恋愛に関しては鈍感で、大学の友人である成美の好意にも告白されるまで気づいていなかったが、気持ちを受け入れ付き合い始める。だが、次第にバイト先の定食屋で知り合ったかろりへの恋心を自覚し、自分の気持ちに嘘をつけなくなったため成美に別れを告げた。

定食屋の従業員

めぐ

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