黒伯爵は星を愛でる(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『黒伯爵は星を愛でる』とは、音久無による吸血鬼を題材としたダークファンタジー漫画。19世紀のロンドンを舞台にした、懸命に頑張る主人公・エスターのシンデレラストーリーは、読者の心を打つ。
母親を亡くし、弟もいなくなってしまったエスターは、突然ヴァレンタイン伯爵・レオンに求婚される。それは、吸血鬼ハンターであるレオンが、ダンピールであるエスターの能力を利用して吸血鬼を狩るためだった。エスターは弟を探すためにレオンに協力し、吸血鬼を狩るために貴族社会で生きることを決意する。

エスター「私がいつか死んで 吸血鬼になってその本能に目覚め あなたやお邸のひとを襲ったりしたら その時は必ず私のこの首を あなたの手で刎ねてくださいね」

エスターがレオンに言ったセリフ。
ダンピールが死後吸血鬼化することを知ったエスターは、自分の運命を嘆いた。吸血鬼ハンター一族の当主の妻が吸血鬼になるなど、認められない。しかし、やっとの思いで結婚できた愛するレオンと離れることもできない。覚悟を決めたエスターは、レオンに「私がいつか死んで 吸血鬼になってその本能に目覚め あなたやお邸のひとを襲ったりしたら その時は必ず私のこの首を あなたの手で刎ねてくださいね」と言う。辛い選択をしたエスターと、エスターの選択を否定できないレオンの悲しみが、読者にも伝わってくる。

アル「まぁでも エスターは死ぬまでこうして僕が見てるから大丈夫だよ」

最終話でアルがクリスに言ったセリフ。
モニカに刺されたエスターは、吸血鬼化することなく、人間として生還した。しかし、吸血鬼になったアルの血液を大量に輸血したことで、吸血鬼の能力が目覚めるのではないか、という疑念が残る。また、死後吸血鬼化しないと断言することもできない。
人間と吸血鬼の交流を図る晩餐会が再び開かれ、エスターたちの心は幸せに満ちていた。クリスは、離れたところから晩餐会の様子を見守っていたアルを見つけ、話をする。その時、アルはクリスに「まぁでも エスターは死ぬまでこうして僕が見てるから大丈夫だよ」と言う。アルは自分が吸血鬼となってでも、エスターが幸せなまま死ねるように見届けることを選んだ。アルの妹を想う愛情に、読者は心が温かくなる。

『黒伯爵は星を愛でる』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

人物に留まらないレオンの嫉妬

レオンは独占欲が強く、エスターが関わった男性に嫉妬する様子が、度々描かれる。しかし、おまけの4コマ漫画で描かれたエピソードによると、その嫉妬の対象は人物だけではない。
エスターが、寝るときに抱きしめたいので、ぬいぐるみが欲しいと訴える。すると、レオンはぬいぐるみが羨ましいという理由で却下してしまう。また、エスターが枕を抱いて眠っていた時には、枕に嫉妬して取り上げてしまった。才色兼備で完璧なレオンだが、嫉妬してエスターに振り回される様子は読者の笑いを誘う。

ジェイルがエスターのために買ってきたお菓子

エスターとレオンがジェイルに会いにくることになり、ジェイルはそれを楽しみにしていた。邸で働くメイドたちに、美味しいお菓子の店を尋ね、自ら買いに行った。店員に女性に人気の商品はどれかを尋ねて購入する。「…む…すめと、その婿が会いに来るんだ」と店員に話す時の様子は、無表情ながらも喜びが滲み出ている。
購入したお菓子は、ジェイルがエスターたちにメグの話をする時に出された。しかし、紅茶に盛られた毒によってジェイルが倒れ、お菓子が食べられることはなかった。
ジェイルが、初めて会うエスターにも愛情を持っていたとわかる。また、結局お菓子を食べてもらえなかったことで、ジェイルというキャラクターにギャグ要素を与え、魅力的にしている。

レオンの出番がない現代パロディー漫画

9巻の巻末には、おまけの現代パロディー漫画が掲載された。
エスターは女子高生になっており、クラスメイトにポールが登場する。クリスは、学園理事長だった。帰宅途中にエスターは、レベッカとゲイリーが営むベーカリーで、大量のパンを購入する。家では、花屋を営む両親のメグとジェイル、さらに双子の兄のアルが待っていた。家族4人でパンを食べ、幸せな時間を過ごす。そして、「エスターに結婚を迫る謎の男」という設定のレオンには、出番がなかった。
おまけの短い話の中で、エスターたち家族が4人揃って幸せそうな様子に読者は嬉しくなる。その一方で、出番のないレオンが読者の笑いを誘う。

著者・音久無のヨーロッパ取材旅行

ウィンターソン邸

本作の著者・音久無は、執筆のための取材旅行へ行った。イギリスでは、ウェールズやイングランド、各地の城などを巡った。スコットランドにも訪れ、各地の大聖堂や城を見学する。取材によって現地の文化を学んだ著者は、それを活かしてドレスや建物のデザインを行っている。そのため、作中に登場する建物やエスターの着るドレスは非常に優れたデザインで、本作の世界観をより深いものにしている。
また、著者はスコットランドを訪れた際に、アンガス州にあるグラームス城を見学した。そして、この城がレオンとエスターの暮らすウィンターソン家の邸のモデルだと明かしている。

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