作りたい女と食べたい女(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ
『作りたい女と食べたい女』とは、ゆざきさかおみによって描かれた漫画、及びこれを原作としたテレビドラマ作品である。女性同士の恋愛をテーマにした作品で、女性らしさに縛られることの苦しみを食べ物に絡めて描いている。
「作りたい女」野本ユキと、「食べたい女」春日十々子の出会いから、セクシュアリティに向き合うまでの過程などを描いた繊細ながらも芯のある力強い作品だ。
『作りたい女と食べたい女』の概要
『作りたい女と食べたい女』とは、ゆざきさかおみによって描かれた漫画、及びこれを原作としたテレビドラマ作品である。通称は『つくたべ』。女性同士の恋愛をテーマにした作品で、女性らしさに縛られる苦しみを食べ物に絡めて繊細に描かれている。
元々は、作者のゆざきさかおみがTwitterやpixivの個人アカウントで発表していた作品だったが、「いいね」など高評価をを30万以上集めるほど注目され、2021からウェブコミック配信サイト「ComicWalker」内のレーベル「COMIC it」にて商業連載を開始した。
「作りたい女」野本ユキと、「食べたい女」春日十々子の出会いから、セクシュアリティに向き合うまでの過程などを描いた繊細ながらも力強い物語となっている。
『作りたい女と食べたい女』のあらすじ・ストーリー
2人の出会い
野本ユキ(のもとゆき)は料理を作ることが好きな女性だが、本人は食が細く大量の料理を食べきれることはできない。「本当はお皿いっぱいの料理を作りたい」と思いながら自身のSNSに写真をアップして普通の生活を送っていた。
同じマンションの住人である春日十々子(かすがととこ)との出会いは、仕事帰りのエレベーターの中だった。両手にファストフードを抱えた春日の姿に、野本は思わず「パーティーですか」と話しかけると、「いえ、ひとりで食べます」と返される。
それから何日か経ち、またもや料理を作りすぎてしまった野本は、春日のことを思い出した。「夕飯はお済みでしょうか」と聞き、料理が余っていることを伝えると、彼女は「ありがたくいただく」と返す。これが2人の付き合いが始まるきっかけとなった。
食費の問題
料理を作る側と食べる側の関係になった2人は、食費の問題に直面する。
いつものように料理を食べ終わった春日は、「今までの食費を払う」と食費の話題を持ち出した。一方、野本は「私はお金を出してでも自分の料理を食べてもらいたい」と返し、2人で金銭に関する話し合いを始める。
最終的には、「労力に対して対価を支払いたい」という春日の訴えにより、野本が食費を受け取ることに決めた。
生理問題
ある日、野本の部屋から料理の良い匂いがしてこないため心配になった春日は、「具合悪いですか」と連絡を入れる。野本が生理痛に苦しんでいると知り、必要なものなどの質問を重ねた後「食べたいものはあるか」と聞くと、「焼きおにぎり」と返された。
春日は看病用の道具と共に自宅の炊飯器を持って彼女の部屋に訪れる。その後、生理痛の話題となり、野本に産婦人科の受診を勧めたが、「私ぐらいの辛さで行くものじゃない」と返される。それに対して「その考えは危険だ」と春日は忠告したが、「体調が悪い時に考えることではないですね」と、気持ちを切り替えて焼きおにぎりを作り始めた。
春日は、「作る様子を見たい」と言う野本と共に2人でキッチンに立つ。彼女用に作っていたが途中で自身の分も欲しくなり、大量の焼きおにぎりを完成させた。
「らしさ」の呪いから解放
野本は会社で自作の弁当を食べていると、近くにいた男性に「良いお母さんになるタイプっすよね」と声をかけられる。ただの趣味であるのに勝手に違う解釈をされ、帰りにスーパーに寄った際にそれを思い返した彼女は、「好きで料理を作っているだけなのに」とモヤモヤしていた。
一方、春日も実家での不公平な扱いに頭を抱えていた。親戚の集まりでも「女性だから」という理由で家事をさせられたり、夕飯の量が少なかったりしたことで、「なんで自分だけ」と思っていたのだ。
2人はそれぞれ違う形ではあるが、「一般的な女性像」や「女性らしさ」に苦しめられていた。
『作りたい女と食べたい女』の登場人物・キャラクター
野本ユキ(のもとゆき/演:比嘉愛未)
作品名の「作りたい女」にあたる人物。
料理を作ることが好きで大量に調理してしまうが、自身は食が細く食べきれない。野本にとって料理は趣味のようなものだが、周りの人々からは勝手に「女子力が高い」「いい母親になりそう」と決めつけられ、モヤモヤしていた。
自身の作った料理を食べる春日の姿を見ることが好きで、彼女との出会いがきっかけでレズビアンであることを自覚していく。
春日十々子(かすがととこ/演:西野恵未)
作品名の「食べたい女」にあたる人物。
食べることが大好きだが、幼少期から女性であることを理由に食事を制限されることなどがあり悩んでいた。そのため、家族とは疎遠になっている。
クールな印象を受けるが優しい言動が多く、恥ずかしがり屋な性格である。
野本と関わりを持つことで笑顔になることが増え、食事も楽しめるようになった。
『作りたい女と食べたい女』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
野本が自身のセクシュアリティに気付く
春日のことを考えていた野本が、「私は女の人を好きになって良いんだ」と唱え、自分がレズビアンであることに気付く場面がある。これまでにネットで「レズビアン」と検索をかけたり、心の内で葛藤したりしている様子があり、自分のセクシュアリティに自信が持てなかった様子から、それを自覚し受け入れることができるようになった名シーンだ。
女性だから「量を減らす」という固定概念
春日が定食を注文したところ、勝手にご飯の量を減らされるシーンがあった。店側からすれば「女性だからたくさんの量を食べられないであろう」という親切心だったが、この行動に彼女は心を痛め、「普通にしてください」と一言申し入れる。素直な店主だったため、揉めることもなく普通のご飯の量を美味しく完食できた。
その後、春日は野本を引き連れて再び同じ定食屋を訪れる。すると、その店では「ご飯の量はどうするか」と客に質問するシステムが加わっていた。良かれと思ってやったことでも、性別などで勝手に決めるのは失礼なことだと店側が理解を示してくれた印象的なシーンである。