かくしごとの名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『かくしごと』とは、漫画家の父親と小学生の娘の騒々しくも優しく温かい日常を題材とした、久米田康治による漫画作品。タイトルは「隠し事」と「書く仕事」の2つの意味が込められている。2016年から『月刊少年マガジン』で連載され、2020年にはアニメ化された。
下品な作風で知られる漫画家の後藤可久士は、失望されたくない一心で、娘の姫には自分の職業を隠している。親子愛が感じられる温かい言葉や、周囲のキャラクター達のクスっと笑える一言など、『かくしごと』には印象に残る名(迷)言が多く登場する。

鎌倉の平屋にて、可久士の腹違いの妹の息子に出会い、彼から父親の複雑な事情を聞く姫。実は、可久士は有名な歌舞伎役者の妾の子。つまり、隠し子だったのだ。ショックを受けたかと聞かれると、「私とお父さんが本当の親子で安心した」と回答する。「お父さん、優しすぎたから」と話す姫。娘が父を優しすぎると評価するほど、可久士は姫のことを非常に大切に育てていたことがわかる。

姫のひめごと

日本画家の祖父の遺伝子を受け継いだのか、姫は美術のセンスが飛び抜けていた。高校では美術に入部して、数々のコンクールで金賞を受賞する。周囲から美大への進学も期待されているが、姫は可久士と同じく漫画を描くことも好きだった。そのため、かつて可久士が漫画家であることを隠していたように、姫も親友を除く周囲の人間に秘密にして少女漫画を執筆中である。同じ漫画家の道を選び、そして同じように周りの人に隠しながら作品を描いていることから、姫と可久士が“血は争えない”関係であることを証明している。

「想い出はモノクローム。色を点けてくれ」

姫の母親は、姫の年齢ごとに必要になりそうなものを16歳までの分を段ボールに詰めて用意していた。段ボールの存在を知った可久士は、妻に倣って17歳以降の箱を準備していた。その後、姫は可久士の用紙した箱の存在を知り、19歳の箱の中身を目にする。その中には謎の暗号が書かれたトレーシングペーパーが入っていた。その暗号の正体は、可久士が描いた平凡な家族の日常漫画につける色の設計図だった。また、その配色は母が考えたものだった。姫は可久士の原稿をコピーし、母の配色通り原稿に色を付けていく。「想い出はモノクローム。色を点けてくれ」と、両親の家族愛を受け取った姫が、少しずつ完成させていくのだった。強い絆で結ばれていながら、度重なる事故により引き裂かれた後藤家の人々が、漫画を通して再びつながっていく様を描いた感動のシーンである。

「ただいま」「おかえりお父さん」

姫の11歳の誕生日に「(何があっても)必ず帰ってくるさ。姫のところへ」と言った可久士だったが、その6年後、事故で1年近く意識不明になってしまう。ようやく意識を取り戻し、漫画家として復職するようになる。そして、かつて一緒に暮らした鎌倉の平屋に2人は戻り、「ただいま」「おかえりお父さん」という会話で物語は幕を閉じる。平凡な日常会話ではあるが、可久士と姫にとって最も幸せな日常なのである。

墨田羅砂の名言・名セリフ/名シーン・名場面

「姫ちゃんは先生しかいないからね。要らないって思われたくなくて必死なんだよ」

一方的にお小遣いをもらうことに申し訳なさを感じていた姫は、可久士にお小遣いは不要だと断る。姫のことが大好きな可久士は、お小遣いをあげたいと思っていたが、「マンガジンに捨てられても先生には他の出版社があるけど、姫ちゃんは先生しかいないからね。要らないって思われたくなくて必死なんだよ」と墨田は教える。姫を想うあまり思考が偏りがちになってしまう可久士にとって、墨田のアドバイスは役立つ。

志治仰の名言・名セリフ/名シーン・名場面

「三流も10年続ければ二流になれる。その二流を更に10年続ければ一流になれる」

突如、可久士のファンと名乗る者から大きな仕事が舞い込む。アシスタントたちは、子供だった読者が裁量権を得て可久士に依頼したのではと話す。志治は、「今は大きな結果が出なくても、描き続けていれば、10年後20年後、必ず読者が偉くなって救ってくれる。三流も10年続ければ二流になれる。その二流を更に10年続ければ一流になれる」と可久士が話していたことを思い出す。可久士が「継続は力なり」を実行した努力家であることがわかる。

筧亜美の名言・名セリフ/名シーン・名場面

「餃子作ったから間に合ったんだろうがこのドシロウトが!」

〆切りまであと6時間しかないにも関わらず、可久士はアシスタントたちと餃子を作り始める。漫画家はよく〆切り直前に現実逃避を行うのだ。ひたすら作り続け、あとは焼くだけという段階で再び原稿に戻る。そして時間ギリギリで原稿が上がると、アシスタントの芥子駆(けし かける)は、「餃子作ってなきゃもう少し余裕だったでしょ」と呟くと、筧は「餃子作ったから間に合ったんだろうがこのドシロウトが!」と反論する。餃子作りというリフレッシュがあったからこそ原稿が完成したということ。実際、漫画界において料理で現実逃避はメジャーらしく、作者もよく餃子を作ったとのこと。漫画家の現実逃避は、完成に至るまでの重要なプロセスの一環だと主張している(コミックス1巻 描く仕事の本当のところを描く仕事3より)。

「人間の恥ずかしい部分にトーン貼る身にもなって下さい!」

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