ハーモニー(Project Itoh)のネタバレ解説・考察まとめ
『ハーモニー』とは、作家・伊藤計劃(いとう けいかく)による小説、およびそれを原作とした漫画・アニメ映画である。ジャンルはSF。伊藤計劃のデビュー作『虐殺器官』と同世界観であり、『虐殺器官』によって引き起こされた大災害を機に高度医療社会となった世界が舞台となっている。そんな世界で、ある日突然多くの人が同時自殺をする事件が発生。主人公のトァンは世界の均衡を維持する監察官として事件の調査に乗り出すが、そこで彼女が知ったのは、事件に13年前に亡くなった筈の友が関わっているという衝撃の事実だった。
架空のマークアップ言語。「etml」は略称である。物語のラストに、本作の展開が全てこのマークアップ言語を用いて展開された記録であった事が語られている。小説版に記載された情報によれば、バージョン1.2のものが使用されているとのこと。書かれているタグをテクスチャとしてインストールする事で、そこに記述されている「感情」を体験できる効果がある。このタグの形式がHTMLに近い為、それを基に作られたとファンの間では言われている。小説版では、章タイトルに加えて本文のところどころに使用されている。
生府(ヴァイガメント)
架空の医療合意共同体の名前。「政府」に取って代わる政治形態で、『ハーモニー』の世界観の基盤を作り上げている機関である。なお、政府の方も存在はしている。だが従来の規模よりも縮小されており、治安維持など統治機構としての最低限の役割のみを担っている。生府の役割はかつて政府がこなしていたような政治経済周りの仕事から、医療サーバーを介して市民への医療品提供、健康指標の提示、生府の職員のセッションを行う場の提供などである。『ハーモニー』の世界では、成人すると世界中にある多数の生府のいずれかに合意・参加する決まりがある。国籍などの制限なく登録可能な為、所属している生府と国籍が違う登録者も存在する。
大災禍(ザ・メイルストロム)
2019年に起きた北米を中心とする英語圏で起こった大暴動のこと。『ハーモニー』の作者である伊藤計劃のデビュー作『虐殺器官』にて、主人公のクラヴィス・シェパードが引き起こした虐殺が原因で起きた。この騒動の最中にアメリカが管理していた次世代の核兵器・信頼性代替核弾頭(Reliable Replacement Warhead)(略:RRW)が第三国へ流出。それにより、アメリカ以外の世界でも核兵器を使った紛争が行われるようになる。さらに核戦争の影響で、突然変異したウイルスが誕生する。世界各地で、ウイルスによる健康被害が深刻化した為、高度医療社会と生府が作られた。
WHO螺旋監察事務局(らせんかんさつじむきょく)
世界保健機関(通称:WHO)の1つとして、作中に登場する架空の組織の名前である。紛争地帯の停戦監視、未だ高度医療社会の健康思想に従わない国に出向き、交渉する仕事を担っている。職員達は「螺旋監察官」(らせんかんさつかん)と呼ばれ、トァンもこの職についている。生府の番人ともされている。「螺旋」という名は、遺伝子を象徴してつけられている。
生命主義(ライフイズム)
架空の政治思想の名前。大災禍後の高度医療社会の中で生まれた政治思想で、多くの人々から支持されている。「構成員の健康の保全を統治機構にとって最大の責務と見なす思想」を定義とし、これは生府の基本理念にもあたる。この理念に従う事で、人々は病気と縁のない健康的な生活を送れるようになる。
WatchMe(ウォッチーミー)
生府に普及している架空のナノマシンの名前。恒常的体内監視を行うシステムとなっており、対象の健康状態を分子レベルで常にチェックする事が可能となっている。ただし恒常性を監視する性能の為、成長し続ける子どもの身体にインストール(注入)することはできない。インストールは成人後に行われる。
DummyMe(ダミーミー)
WatchMeを対象とした、架空のハッキングプログラムの名前。WatchMe内にインストールする事で、生府サーバーに偽の生体データを送れる。身体の健康状態を隠す事ができる為、生命主義・健康思想の世界から逃れてタバコやカフェインの過剰摂取を行う事ができる。
メディケア
架空の医療製薬システム(個人用)の名前。
WatchMeから情報を受け取り、インストールされている対象者の様態に合わせた医療薬を提供してくれる。どの家庭にも一台は置かれている。
拡張現実(オーグメンテッド・リアリティ)
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目次 - Contents
- 『ハーモニー』の概要
- 『ハーモニー』のあらすじ・ストーリー
- 少女時代の後悔と世界同時多発自殺事件の始まり
- 事件の裏に感じるミァハの存在
- 父との再会
- ミァハから明かされた事件の真相
- 『ハーモニー』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- 霧慧トァン(きりえ とぁん)
- 御冷ミァハ(みひえ みぁは)
- WHO螺旋監察局
- オスカー・シュタウフェンベルク
- ウーヴェ・ヴォール
- 世界同時多発自殺事件の関係者
- 零下堂キアン(れいかどう きあん)
- 冴紀ケイタ(さえき けいた)
- 霧慧ヌァザ(きりえ ぬぁざ)
- エリヤ・ヴァシロフ
- その他の登場人物
- アサフ
- ガブリエル・エーディン
- 『ハーモニー』の用語
- Emotion-in-Text Markup Language/etml(エモーション イン テキスト マークアップ ランゲージ/イーティーエムエル)
- 生府(ヴァイガメント)
- 大災禍(ザ・メイルストロム)
- WHO螺旋監察事務局(らせんかんさつじむきょく)
- 生命主義(ライフイズム)
- WatchMe(ウォッチーミー)
- DummyMe(ダミーミー)
- メディケア
- 拡張現実(オーグメンテッド・リアリティ)
- 世界同時多発自殺事件
- 次世代ヒト行動特性記述ワーキンググループ
- ハーモニー・プログラム
- インターポール捜査官
- トゥアレグ族
- バグダッド
- チェチェン
- 『ハーモニー』の名言・名セリフ/名シーン
- 御冷ミァハ「私たちはどん底を知らない。どん底を知らずに生きていけるよう、すべてがお膳立てされている」
- 霧慧トァン「あなたの望んだ世界は、実現してあげる。だけどそれをあなたには、与えない。私の好きだったミァハのままでいて!」
- 霧慧トァン「さよなら、わたし。さよなら、たましい。もう二度と逢うことはないでしょう」
- 『ハーモニー』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 作者が語った「ユートピア」とは異なるもう1つのテーマ
- 原作小説の各章はロックバンド・Nine Inch Nails(ナイン・インチ・ネイルズ)の曲名が由来
- 単行本版の裏表紙の紹介文は伊藤計劃本人が執筆したもの
- 朝日新聞の企画・覧古考新(らんここうしん)にて取り上げられた事がある
- 『ハーモニー』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:EGOIST「Ghost of a smile」