バリハケン(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ

『バリハケン』とは、鈴木信也によって、2008年から集英社出版の『週刊少年ジャンプ』に掲載されたギャグコメディ漫画である。作者の鈴木信也は、人気野球ギャグ漫画『Mr.FULLSWING』も手掛けており、今作は2作目の連載作品。ヤンキーとオタクという異色の組み合わせと、テンポの良いギャグが魅力となっている。
主人公はオタクで臆病な性格の高校生・御手洗団吾。ひょんなことから番長になってしまった彼が、様々なハプニングに巻き込まれていく物語である。

『バリハケン』の概要

『バリハケン』とは、鈴木信也によって、2008年から集英社出版の『週刊少年ジャンプ』に掲載されたギャグコメディ漫画である。作者の鈴木信也は、『週刊少年ジャンプ』で5年に渡り連載された人気野球ギャグ漫画『Mr.FULLSWING』も手掛けており、今作は2作目の連載作品となっている。
ヤンキーとオタクという、一見相容れない存在の組み合わせが魅力的な異色のヤンキー漫画。聞き間違いや勘違いなどから、様々なハプニングが起こるテンポの良いギャグが見どころである。
物語はオタクで臆病な性格の主人公・御手洗団吾が、入学した首都高校の番長を倒してしまったことから始まる。御手洗は、自らがオタクであることをカミングアウトできないまま、新たな番長として祭り上げられた。そんな彼が舎弟となった不良たちと共に様々なハプニングに巻き込まれる姿を描いた作品となっている。

『バリハケン』のあらすじ・ストーリー

オタク番長の誕生と派遣組の結成

アニメやゲームが好きなオタクである御手洗団吾(みたらしだんご)は、恋愛ゲームのような甘い学園生活を送りたい一心で共学の首都高校(しゅとこうこう)に入学する。しかし首都高には不良も多く、御手洗は入学早々1年生の不良集団に絡まれた。番長の鮫島(さめじま)に大切にしていた美少女フィギュアを破壊された御手洗は、我を忘れるほど怒り狂い、鮫島を殴り倒してしまう。フィギュアを破壊された悲しみで泣いていると、不良たちからは鮫島を殴り倒す強さだけではなく、倒した相手のことを思う慈愛の心まで持ち合わせていると勘違いされる。その強さと優しさは次期番長にふさわしいとされ、御手洗は番長の立場に祭り上げられてしまった。自分がオタクであることを言い出せないまま番長となった御手洗は、シールで偽物の傷を貼り付け、髪形はリーゼントにし、1年生の不良をまとめ上げることとなる。

番長となった御手洗の元に、裏番長と呼ばれる火讐怜斗(かしゅうれいと)が現れた。火讐は「覇権組(はけんぐみ)」と名乗り、様々な部活を潰して学校の覇権を握ろうとしている人物である。番長となった御手洗の噂を聞き、倒すために乗り込んできたのだった。今まで制覇してきた部活の中から1つを選び、勝負をするという火讐の提案に、御手洗は「痛くなさそう」という理由で長風呂部を選択する。
長風呂勝負とは、火をつけた山小屋の中で五右衛門風呂に浸かる時間を競う過酷な内容であった。それに加えて互いの大事なものを賭けるという条件に、御手洗は好きなアニメキャラクターの抱き枕を差し出す。火讐は抱き枕が中身の見えない袋に入っていたため、本物の彼女が入っていると勘違いしていた。彼女を賭ける御手洗に恐れを抱いた火讐は、自分の賭けたものはボクシングのグローブであると自白する。それがプロボクサーを目指していた昔の夢の残骸であることを語り、怪我によってその夢が潰えて荒んでしまったことまで打ち明けた。御手洗は自分の好きなキャラクターが物語の中で亡くなってしまった悲しみと、火讐の夢を失った悲しみを重ねて涙を流す。それに対して火讐は、御手洗が自分のために涙を流してくれていると勘違いするのだった。
そんな中、御手洗と火讐が入っている山小屋は炎により倒壊しかけていた。煙と炎で視界を遮られた御手洗は、倒れた火讐を持参した抱き枕だと思い込み、無意識のうちに救出する。自分のために涙を流し、命がけで炎の中から救出してくれたと思っている火讐は、その日から御手洗の舎弟に加わった。そして今まで部活を潰してきたことへの罪滅ぼしとして、「覇権組」を「派遣組(はけんぐみ)」に改名し、部活の助っ人活動を行う決意をする。

磯部巻と虹橋しゃぼん

御手洗は、「まろん同盟」というハンドルネームでオタク活動を行っている。自宅ではネット上の交流サイトで、虹橋(にじはし)しゃぼんという名の女性との交流することが日々の楽しみとなっていた。一方、虹橋しゃぼんのハンドルネームで活動しているのは、御手洗と同じ首都高校に通う磯部巻(いそべまき)である。学校での磯部は、御手洗と同じくオタクであることを隠し、スケバン集団「覇那乃堕女組(はなのおとめぐみ)」を率いる総長として活動していた。

ある日、御手洗は舎弟たちと共に回転寿司を食べに出かける。遅れて現れた舎弟の1人である拓(たく)から、御手洗の中学の頃からの友人である茶越樽斗(ちゃこしたると)が堕女組に襲われたという報告を受けた。茶越自身からのメールを受信したと同時に、磯部を含めた覇那乃堕女組が寿司屋に乗り込んでくる。互いに率いてきた不良とスケバンに煽られ、御手洗と磯部は大量のワサビを食べる激辛対決を強いられるのだった。
辛さに耐え切れなかった磯部は、適当な理由で周りを誤魔化し、トイレへと逃げ込んだ。トイレの中では、総長であることや激辛対決のことは伏せながらも、まろん同盟に弱音を綴ったメールを送る。まろん同盟こと御手洗はメールに気付き、自身も激辛対決のことは伏せて、現在辛い思いをしているとメールを返信した。あまりにも似た現状に、2人は互いがメールの相手なのではないかと勘付く。しかし確認しようと顔を合わせた瞬間、両者とも不良を演じるための本能で口喧嘩を始めてしまう。交流サイトやメールでの優しいやり取りとは異なる、荒い言葉の応酬に互いに別人だと勘違いを続けてしまうのであった。その後、激辛対決は共倒れとなり、2人は互いの本性を知らないまま不良としての交流が続くこととなる。

2年生との決戦

ある日御手洗が派遣組の部室へ入ると、ロッカーの荷物や武器などが全て盗まれていた。これを火讐は、派遣組のことをよく思っていない2年生の仕業だと予測する。しかしその場に現れたのは、相手の凶器を奪い自らの武器にすることから、”百器の紋武(ひゃっきのもんぶ)”と呼ばれる紋武乱(もんぶらん)であった。紋武は停学や傷害を繰り返したことにより留年し、2年生に上がったかつての不良仲間たちから避けられ、独自の不良集団を率いている。彼は再び2年の仲間に入れてもらう条件として、御手洗を倒すように指示され、喧嘩を売りに来たのだった。
様々な武器を使用する紋武に、御手洗はすぐに瀕死に追い込まれた。しかし倒れた際に偶然確認した時計で、午後5時を過ぎていることを知ると立ち上がり反撃を開始する。御手洗は午後5時から、好きな声優の握手会に行く予定を立てていた。それに参加できなかった怒りに任せて拳を振るい、紋武を倒すことに成功する。返り討ちにされたことで、紋武はその日から派遣組の一員となった。

改めて2年生と抗争するため、派遣組は武闘派集団として、名称を覇権組に戻すことを決めた。どうにか抗争を避けようとしていた御手洗は、盗まれた自分の荷物の中にオタク活動に必要な道具が含まれていることを思い出す。その荷物が2年生の番長である善罪真(ぜんざいまこと)の元にあると知り、覇権組として2年生の教室があるエリアに乗り込む決意を固めた。
覇那乃堕女組の力も借り、2年生を圧倒していた御手洗だったが、善罪がいる教室の前で怖気づき逃亡する。それを自分たちの腕を試すための試練だと勘違いした覇権組のメンバーは、御手洗抜きで教室に乗り込んだ。一方逃亡した御手洗は、オタクの聖地である秋葉原に到着する。偶然コスプレイベントが開催されており、番長の姿の御手洗もコスプレだと勘違いされたことによりオタク仲間に自然と受け入れられた。御手洗はそのままオタク活動を楽しもうとしたが、善罪から覇権組を全滅させたという内容の電話がかかってくる。その電話の会話が聞こえていた周りのオタク仲間は、「御手洗の秋葉原への定期券を燃やして無に帰す」という内容を「秋葉原を無に帰す」に聞き間違えてしまう。自分たちの居場所を消されると勘違いし、怒り狂ったオタク仲間たちは、秋葉原中のオタクを集め首都高へと乗り込んだ。オタク仲間の力により善罪たちを倒した御手洗は、1年生だけでなく2年生までも率いる1、2年の統合番長として祭り上げられるのだった。

東冥高校の襲撃

御手洗は、自身の好きなアニメやゲームの二次創作を行う同人サークル「ぷりん@あらも~ど」に所属していた。そのサークルの一員として大型イベントに参加するため、早朝の教室で創作活動をしていると、3年生から襲撃の予告を受ける。予告された襲撃の日がイベントと被っていたため、御手洗は世界の番長が集まるイベントがあると嘘を吐き、サークル参加するためのイベントを優先するのだった。
無事イベントに参加していた御手洗の元に、3年生の教室へと向かっていた火讐から連絡が入る。その内容は、御手洗を襲撃するはずだった3年生が、すでに全滅していたというものだった。そして倒れていた3年生から、全員フードを被っている姿が特徴的な、東冥(とうめい)高校の不良集団に強襲されたことを聞き出していた。御手洗が、次は自身を狙うという犯行予告もあったという報せを受けていると、イベント会場にフード集団が現れる。会場のモニターに映し出された東冥高校のリーダーは、御手洗の小学生の頃の友人である摩堂蓮(まどうれん)であった。

御手洗がフード集団から逃げ回っていると、火讐や他の舎弟たちが応援に駆け付けてきた。2年生の不良たちも現れ、首都高校の不良たちはフード集団へ反撃を始める。御手洗は、かつていじめられっ子として互いに支え合ってきた摩堂に狙われる理由が分からず、1対1での対話を申し出た。摩堂は、小学校の卒業式の際に御手洗からもらったTシャツが原因で、中学でもいじめられたことを打ち明ける。Tシャツは御手洗の手作りで、小学生の頃の2人の合言葉である「仁王立ちで 剣の心 怒涛の荒波も 今 千の雫へ」を平仮名で書いたものである。御手洗自身の分のTシャツと摩堂の分のTシャツで文章を分割したため、摩堂のTシャツには「におう け ど あら いま せん」の文字が書かれていた。摩堂は、Tシャツを作成した当時の御手洗に悪意はなく、純粋な友情の証としてTシャツをプレゼントされたことを知る。御手洗と摩堂はその場で和解し、首都高校と東冥高校の抗争は終わるのだった。

不良とオタク

御手洗のオタク友達である御宅田萌留(おたくだもえる)と古森比喜(こもりひき)が、首都高校の不良と名乗る何者かに襲われる事件が起こった。不良を毛嫌いしている2人は、仕返しと称してネット上で首都高校の悪評を拡散させていく。御手洗は、まだ首都高校の不良の仕業と決まったわけではないと諭すが聞き入れてもらえず、自身が番長であることも言い出せないままであった。
首都高校の悪評は瞬く間に広まり、新聞にも取り上げられ学校前には報道陣が集まっていた。そして身に覚えのないことで悪者に仕立て上げられた覇権組の面々は自棄になり、オタクを根絶やしにするために秋葉原へ向かおうと殺気立っている。御手洗の制止も意味をなさないまま、首都高校以外の不良も集め、秋葉原への襲撃が決定してしまった。下校途中の御手洗は、新聞で事件のことを知ったという摩堂と出会う。御手洗がオタクであることを知る摩堂は、これを機に不良側かオタク側のどちらかに付き、片方とは縁を切ったほうが良いのではないかと提案した。どちらも大切な仲間や友人であると思っている御手洗は、片方を選ぶことなどできないまま両者の衝突の日を迎えるのだった。

火讐を筆頭にした不良たちが秋葉原へ乗り込むと、御宅田と古森を筆頭にしたオタクたちが迎え撃つ準備をしていた。両者が激突しようとした瞬間、駆け付けた御手洗が制止の声をかける。御手洗は、オタク活動に使用するコスプレ衣装の上に学ランを着ており、髪型は番長時のリーゼントという異様な姿だった。どちらか一方を選ぶことができなかった御手洗は、両陣営の前で自身が偶然番長になってしまったことと、それ以前から現在までずっとオタクであることを打ち明ける。不良が嫌いな御宅田たちは驚き、オタクが嫌いな火讐は、尊敬していた御手洗の正体にショックを受け裏切られたかのように感じた。
両陣営が御手洗がどちらの味方に付くのかで再び口論を始める中、善罪率いる2年生が駆け付け、御宅田と古森を襲撃した犯人を引き連れてきた。その犯人は首都高校の不良ではなく、首都高校に潰された他校の残党だったことが判明する。誤解が解け事態は収束するかと思われたが、勘違いで悪者扱いされた不良たちの怒りは収まらなかった。火讐の拳と御宅田の武器が交わる瞬間、御手洗はその間に割り込み、自身の体で2人の攻撃を食い止める。身を挺して喧嘩を止める御手洗の姿に、火讐は自身の考えが間違っていたことを認め、両陣営は和解することに成功した。

『バリハケン』の登場人物・キャラクター

首都高校・覇権(派遣)組

御手洗 団吾(みたらし だんご)

番長として活動している時の姿。

オタクとして活動している時の姿。

首都高校の1年生で、アニメやゲームが好きな生粋のオタク。ネット上では「まろん同盟」というハンドルネームで活動している。同人活動を行うサークル「ぷりん@あらも~ど」に所属し、好きなアニメやゲーム作品の二次創作活動をしている。元は臆病な性格だが、番長として活動している間は強気になれる。

小学生の頃はいじめられっ子で、中学生の頃は「空気くん」と呼ばれる暗い学生生活を送っていた。高校入学直後、好きなキャラクターのフィギュアを壊された怒りで、不良を倒してしまったことにより、1年生の不良集団の番長となる。同じく首都高の1年である火讐との勝負を制し、成り行きで覇権組(派遣組)を率いることとなった。その後も不良の抗争に巻き込まれるうちに、覇権組の勢力を拡大し、首都高だけでなく都内の不良をまとめる番長となる。

火讐 怜斗(かしゅう れいと)

首都高校の1年生で、覇権組を名乗り、部活動を潰し回っていた人物。幼い頃はプロボクサーを目指していたが、怪我をしてしまい断念した過去を持つ。格闘技全般が得意で喧嘩が強い。中学生の妹・知世子(ちよこ)を溺愛しており、少々過保護な一面がある。首都高の初代番長であった獄堂竜次(ごくどうりゅうじ)に憧れている。

御手洗との勝負に敗れてからは、御手洗を慕い、覇権組を派遣組に改名して部活の助っ人活動を始める。御手洗の側近のような立場を務め、喧嘩や抗争の際には真っ先に敵陣に飛び込んでいく。

紋武 乱(もんぶ らん)

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