Mr.FULLSWING(ミスフル)のネタバレ解説・考察まとめ

『Mr.FULLSWING』とは、鈴木信也が2001年から2006年まで集英社の『週刊少年ジャンプ』で連載していた漫画作品。舞台は埼玉県にある十二支高校で、好きになった女性が全員スポーツ部の彼氏持ちであったことからスポーツが嫌いだった猿野天国が、野球部マネージャーの鳥居凪に一目惚れして野球部に入部することから始まる。ギャグ要素が多すぎる野球漫画として知られているが、スポ根要素も含んだ展開も魅力で、漫画ファンから根強い人気を誇る作品。

『Mr.FULLSWING』の概要

『Mr.FULLSWING』とは、2001年5月21日から2006年5月8日まで日本の出版社である集英社の『週刊少年ジャンプ』で連載されていた漫画作品。作者は、人気漫画『るろうに剣心』の作者として有名な和月伸宏の元アシスタントである鈴木信也。

高校球児の活躍を描くスポーツ漫画だが、内容の大半をギャグが占める「野球ギャグ漫画」として知られている。他の漫画やゲーム、映画などのパロディネタが多く、人気漫画でありながらアニメ化されなかった原因の1つとされている。物語の舞台は、埼玉県にある「埼玉県立十二支高校」。これまでに好きになった女性が、全員スポーツ部の彼氏持ちであったことからスポーツが大嫌いな「猿野 天国(さるの あまくに)」が、野球部マネージャーの「鳥居 凪(とりい なぎ)」に一目惚れしたことで野球部に入部することから始まる。

ギャグ漫画として有名だが、熱い展開が多いスポ根要素も含んでいる。超人的な必殺技も多く登場することから、特に男性からの高い支持を得ており、「週刊少年ジャンプ」の黄金期を支えた。単行本が20巻以上発売された長期連載作品である。

『Mr.FULLSWING』のあらすじ・ストーリー

野球部入部篇

埼玉県にある「埼玉県立十二支高校」に入学した1年生の「猿野 天国(さるの あまくに)」。無類の女性好きで、これまでに多数の女性に告白してきたが、全て断られている。その理由が、全員運動部の彼氏がいるからということで、猿野は運動部員が大嫌いなのであった。

だが、高校でどうしても彼女を作りたい猿野は、自慢のパワーを生かせるウェイトリフティング部の体験入部に行ってみることに。男子部員が1人しかいないウェイトリフティング部の現状に絶望して帰ろうとしていたが、そこに「鳥居 凪(とりい なぎ)」という女子生徒が現れる。ウェイトリフティング部のマネージャーがいると思い、嬉しさのあまり160キロという経験者でも難しいバーベルを難なく上げる猿野。だが、凪はウェイトリフティング部にトレーニング器具を借りに来ただけなのであった。

凪は、特異なパワーを持つ猿野に興味を持ち、自身が在籍している部活に招待する。凪に付いていくと、そこは高校の野球場であった。運動部の中でも特に大嫌いな野球部ということで複雑な気持ちになった猿野だが、凪に「野球は好きですか?」と聞かれて、咄嗟に「好きです!」と嘘を付く。試しにバッティングをしてみることになり、凪が投げた球をセンター方向にある校舎の更に奥へと伸びるホームランを放つ。「十二支高校野球部」の黄金時代に活躍した伝説の選手「村中 紀洋(むらなか のりひろ)」の様な打球を放った猿野に、凪は野球部への入部を勧める。猿野は、一目惚れした凪のために入部する決意をするが、今年の「十二支高校野球部」は、監督の意向で入部試験があるのだった。

猿野は親友で幼馴染である「沢松 健吾(さわまつ けんご)」に頼み、特別練習を行うことに。練習の内容は、リトルリーグの少年野球チームと1対9で試合をしたり、0距離でノックを打ってもらったりと奇抜なものが多いが猿野は食らいついていく。だが、猿野はド素人の自分が野球部の入部試験に受かるはずがないと一時は諦めてしまう。そんな時、凪が猿野の前に姿を現し、猿野を励ます。励ましてもらった猿野は入部試験当日に向けて努力を重ねるのだった。

古豪ということで多くの野球経験者が入部試験に集まる中、ド素人である猿野は不安を抱いていた。試験は打・投・走・守の4つで行われる。持ち前のパワーを生かして、猿野は打と投で1位の記録を残す。だが、走と守の成績は悪く、最終試験の模擬試合で決まることになった。模擬試合は成績上位のAチーム、成績下位のBチームに分かれて行われることに。猿野はBチームであり、チームメイトのピッチャー「子津 忠之介(ねづ ちゅうのすけ)」とともに協力して戦う。Aチームには、俊足の「兎丸 比乃(とまる ぴの)」や堅守の「司馬 葵(しば あおい)」、そして天才ピッチャーの「犬飼 冥(いぬかい めい)」によって苦戦を強いられる。だが、全員で一致団結して食らいつくBチーム。そして、1打同点のチャンスで猿野に打順が回ってくる。相手ピッチャーの犬飼はソフトボールの経験を生かした投法で投げていたが、ここで本領発揮のオーバースローを解放。剛速球に苦しめられるが、猿野は見事打ち返して、校舎の時計直撃のホームランを放つ。同点で試合が終わり、両チームの選手が見事入部を果たす。喜び合う選手たちだが、本当の闘いはここからなのであった。

合宿篇

入部試験を突破して、野球部に入部した猿野達1年生。ついに野球部の練習に参加することに。野球部の先輩たちは、曲者が揃っており、レベルの高さに期待と焦りを見せる猿野達。主将でオールラウンダーの「牛尾 御門(うしお みかど)」を中心に、レギュラー陣の能力に圧倒される。ファーストを希望ポジションにしている猿野の前に、2年生のファーストレギュラーである「虎鉄 大河(こてつ たいが)」が姿を現し、その実力を見せつける。また虎鉄は大の女好きであり、猿野の想い人である凪にもちょっかいをかける。猿野は、野球と恋のライバルとして闘志を燃やす。

1年生が練習に参加してから数週間経ったある日、監督である「羊谷 遊人(ひつじたに ゆうじん)」から伊豆で合宿を行うと告げられる。初の合宿であることから浮かれる1年生。そんな姿を尻目に、レギュラーメンバーである上級生は真剣な表情で合宿の開始を受け止める。この合宿は、ただの合宿ではなく、夏の甲子園予選のベンチ入りメンバーを決めるための選抜試験を兼ねていたのだった。そして、ついに合宿が始まるのだった。

合宿所に向かっていた野球部一同だが、突然羊谷によって山奥に放り出される。これから2人1組を組んでトレッキングを行い、先に合宿所に着いた組から先着順で宿に泊まることができ、遅かった組は野宿をするといったとんでもない内容だった。猿野は、入部試験から犬猿の仲である犬飼とペアを組むことに。トレッキングが始まっても喧嘩を続けていた猿野と犬飼だが、虎鉄に発破をかけられたことで、一時協力して進むことになった。だが、途中で犬飼が足を負傷してしまう。猿野は、そんな犬飼を背負いながら無事に合宿所に到着する。

2日目からは、3球同時ノックや様々な球種と速度が織り交ざったバッティングマシーンによる10球バッティングなど奇抜なトレーニングが待っていた。部員は苦戦しながらも食らいついていく。合宿のトレーニングが1段落ついたある日、羊谷からこの合宿が甲子園予選のメンバーを決めることを目的としていると告げられ、1年生は全員メンバーに選ばれないといったまさかの事態が発生。1年生のまとめ役であるキャッチャーの「辰羅川 信二(たつらがわ しんじ)」が異を唱え、1年生対上級生の試合が行われることに。試合をするまでの4日間は各自の自主練習期間となり、それぞれのメンバーが独自のトレーニングを行う。

猿野は、得意のバッティングにおいて苦手としていたカーブの打撃練習を行うことに。中々進歩しない猿野の前に、報道部の野球取材班として活動していた親友の沢松が現れる。沢松による特別練習によって猿野は、カーブ打ちのコツを掴んでいく。そしてついに試合当日を迎える。

猿野は5番ファーストとして先発出場。ピッチャーは足の負傷をしていた犬飼を温存し、子津が先発を務める。対する上級生チームは、レギュラーメンバーを温存してベンチ外メンバーを先発出場させる。猿野達1年生が、それぞれの特訓の成果を発揮して試合を優位に進める。そこで途中交代としてレギュラーメンバーが交代して出てくることに。レギュラー達の圧倒的な実力の前に、簡単に逆転を許してしまう1年生。ついに9回裏2アウトまで追い込まれてしまい、後がなくなった1年生だが、1番の兎丸が何とか出塁し、全員で繋いでいく。そして打順が回ってきた猿野が逆転サヨナラランニングホームランを決める。1年生の勝利という結果で、伊豆の合宿は幕を閉じる。

練習試合篇

合宿で上級生との試合に勝ったことにより、夏の甲子園予選のベンチ入りメンバーが大幅に変更される。羊谷は、ベンチ入りメンバーの選考において3つの改革を行ったと部員に伝える。1つ目の改革は、「守備位置の変更」。野手9人の内5人が守備位置を変更したメンバーが抜擢される。2つ目は、「ポジションごとの順位の変更」。1年生対上級生の試合を見て、大幅にポジションごとの順位が入れ替わり、1年生がレギュラーに加わることに。3つ目は、「ベンチ入りメンバーの人数変更」。これまでは20人がベンチに入っていたが、18人に絞ったとのこと。残りの2人は保留であり、今回選ばれなかったメンバー全員にチャンスがあるという内容だった。

猿野達1年生は続々とレギュラーメンバーに抜擢される。猿野はファーストを守っていたが、守備位置を変更してサードを守ることに。犬飼や兎丸、司馬や辰羅川といった実力のある1年生もレギュラーを勝ち取るが、子津は選ばれなかった。サードからライトに守備位置を変更した牛尾の協力のもと、猿野はサードの守備練習を必死に取り組む。甲子園予選が迫る中、「十二支高校野球部」は他行との練習試合を行っていくことに。猿野はパワーを生かしたバッティングで勝利に貢献し、連勝を重ねていく。

一方その頃、猿野達がレギュラーを勝ち取った中、選ばれずに悔しがっていた子津は一人で黙々と自主練を続ける。そんな子津の前に羊谷が姿を現し、現役野球部員時代に使っていた必殺技のアンダースローである「燕(スワロー)」を教わる。必殺技を完成させるために子津は、努力を重ねていく。

レギュラーメンバーは、練習試合に勝ち続ける中、埼玉県で最強の「私立華武高校」と戦うことになる。1年生で4番を務める「御柳 芭唐(みやなぎ ばから)」は犬飼と、エースの「屑桐 無涯(くずきり むがい)」は牛尾と因縁があり、試合は一触即発のムードに。「華武高校」は2軍を先発出場させるなど、「十二支高校野球部」を舐めた様子を見せる。2軍といえど苦戦を強いられる「十二支高校野球部」だが、見事牙城を崩して、1軍メンバーに交代させる。1軍メンバーの圧倒的な実力に圧倒され、先発していた犬飼が因縁の相手である御柳にホームランを打たれたことで、ついに逆転される。結果的に「十二支高校野球部」は新チームで初めての負けを喫する。それぞれの想いを胸に甲子園を目指して更に練習を重ねていくのだった。

甲子園予選篇

ついに埼玉県の甲子園予選が始まった。「十二支高校野球部」は、くじ引きの結果、「私立武軍装戦高校」と1回戦で戦うことに。猿野と犬飼は、予選前の態度や行動によって謹慎処分されており、ベンチスタートとなる。それぞれのメンバーがレベルアップしており、5回までは「十二支高校野球部」のペースで試合が進む。だが、「武軍装戦高校」には対戦相手を壊すといった恐ろしい噂があるチームであり、「私立武軍装戦高校」のラフプレーによってチームの要である牛尾と「蛇神 尊(へびがみ みこと)」が相次いで負傷退場する。怒りを露にする猿野と犬飼を交代出場させる羊谷。猿野は牛尾と蛇神の敵討ちとして、交代した直後の打席で見事ホームランを放つ。ピッチャーの犬飼も圧倒的な豪速球でバッターを凡退させ、ついに「十二支高校野球部」が逆転する。数多くのピンチを迎えながらも、猿野と犬飼の大活躍によって見事初戦で勝利を収める。

2回戦では、虎鉄の元チームメイトである「雛壇 祀(ひなだん まつり)」率いる「私立明嬢学園高校」と対戦することに。雛壇による3種類のスライダーに苦しめられる十二支高校であったが、虎鉄が雛壇の癖を見抜いたことでスライダーを攻略し、見事勝利を収める。3回戦は、「十二支高校野球部」の伝説のOBとして知られる村中が監督を務める「私立黒撰高校」と戦うことに。試合前に村中の実子である「村中 魁(むらなか かい)」と「村中 由太郎(むらなか ゆたろう)」の兄弟の力を目の当たりにし、自身を失ってしまう「十二支高校野球部」。そこで羊谷は、自身が野球部員時代に行われていた離島での臨時合宿を開催する。この合宿は、数々の過酷な特訓を行い、突破できなかった選手を退部させるといった驚きの内容だった。荒療治で特訓するしか勝ち目のない「十二支高校野球部」は、全員が合宿に参加する。

次々と部員が脱落していき、兎丸や鹿目といったレギュラーメンバー達も脱落してしまう。猿野や犬飼、子津には極秘の個人練習が課されており、なんとか食らいついていく。最後の特訓をクリアした猿野達であったが、脱落した部員が大勢いることで、表情が暗くなる。そんな猿野達の前に、脱落した部員達が姿を現す。脱落した後は別の練習場で、それぞれの弱点克服メニューをこなしていたのだった。部員全員が安堵の笑みをこぼし、3回戦に向かうことに。離島での追い込み合宿を行ったことでパワーアップした「十二支高校野球部」は、激闘の末に見事勝利を収める。ついに準決勝まで駒を進めた「十二支高校野球部」は、凪の兄である「鳥居 剣菱(とりい けんびし)」率いる「私立セブンブリッジ学院」との勝負を迎える。

「セブンブリッジ学院」は「華武高校」に並ぶ強豪校であり、苦戦を強いられる。両者とも互角の勝負となるが、鳥居の剛速球を攻略できず、無念の敗退となった。「十二支高校野球部」の夏は終わったのであった。

全国高校野球県対抗総力戦篇

甲子園予選で敗退した「十二支高校野球部」だったが、各都道府県ごとに代表メンバーを選出して戦う「全国高校野球県対抗総力戦」が開催される。「十二支高校野球部」からは猿野や犬飼、牛尾などのメンバーが選ばれ、甲子園予選で戦ったライバルたちとチームを組むことに。かつてのライバルたちとチームを組むことになり、犬飼と御柳、牛尾と屑桐といった因縁のあるメンバーが揃う。互いにぶつかり合うメンバー達だが、お互いの過去の誤解などが解けたことで、関係が良化していく。猿野と御柳、由太郎は新しい打法の特訓、犬飼は最強の必殺技を習得するために猛特訓をしていくことに。

そして「全国高校野球県対抗総力戦」の合間に、ついに凪に告白してめでたく結ばれる猿野。喜ぶ猿野であったが、優勝候補の大阪選抜でエースを務める猿野の実兄「雉子村 黄泉(きじむら よみ)」との因縁の対決を前に胸を引き締める。黄泉は猿野の父親である「雉子村九泉(きじむら きゅうせん)」によってアメリカで育てられており、メジャーリーグに挑戦できるほどの腕前を持っていた。順調に勝ち進める埼玉選抜は、ついに決勝に駒を進める。決勝の対戦相手は、優勝候補の大阪選抜。終始大阪選抜のペースで試合が進むが、メンバーそれぞれが能力を開花させていき、激闘の末に見事埼玉選抜は優勝を果たす。

「全国高校野球県対抗総力戦」から2年後、猿野は3年生となっていた。いつもの痴話喧嘩から勝負することになる猿野と犬飼。そして誰もいなくなった部室には、甲子園の優勝旗が飾ってあるのだった。

『Mr.FULLSWING』の登場人物・キャラクター

埼玉県立十二支高校 野球部

猿野 天国(さるの あまくに)

「十二支高校野球部」に所属している1年生部員。ポジションはサード。高校から野球を始めた全くのド素人ながら、人間離れした馬鹿力と持ち前の負けん気を生かして、「十二支高校野球部」のレギュラーを勝ち取る。「十二支野球部」の1年女子マネージャーである「鳥居 凪(とりい なぎ)」に一目惚れしたことで野球部に入部した。チーム内のムードメーカーであり、度々部内で問題を起こしている。「覇竹(はちく)」と「空蝉(うつせみ)」といった強力な必殺技を持っており、特にバッティングで活躍している。実の父は、日本初のメジャーリーガーである「雉子村 九泉(きじむら きゅうせん)」。

犬飼 冥(いぬかい めい)

「十二支高校野球部」に所属している1年生部員。ポジションはピッチャー。高校生離れした剛速球を投げるサウスポー。クールな性格で、基本的に無口。銀髪の美少年であり、女子生徒からの人気が高く、ファンクラブもある。野球の師匠である「大神 照(おおかみ てる)が遺した「四大秘球」を必殺技としており、プロ注目の選手として活躍している。前述の通り、クールな性格をしているが、大のお笑い好き。

兎丸 比乃(とまる ぴの)

「十二支高校野球部」に所属している1年生部員。ポジションはセンター。特徴的な耳付きのニット帽と、帽子と同じデザインのリストバンドを付けている。身長が低く、可愛らしい外見をしていることから、女子生徒に間違われることもある。部内一の俊足を誇り、打球をフィールドに転がしさえすれば、高確率でセーフになる程。極端なダウンスイングで打球を叩きつける「断頭台(ギロチン)」などの必殺技を持つ。誰とでもすぐに打ち解ける人懐っこい性格。

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