クイーンズ・ギャンビット(ドラマ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『クイーンズ・ギャンビット』とは、2020年10月23日にNetflixで配信が始まったドラマである。原作はウォルター・テヴィスが書いた小説『クイーンズ・ギャンビット』だ。第73回プライムタイム・エミー賞では、作品賞リミテッドシリーズ/アンソロジーシリーズ/テレビ映画部門を受賞。事故により唯一の身寄りだった母を亡くし、9歳で孤児になった主人公ベス・ハーモン。養護施設でチェスと出会い、才能を開花させる。アルコール・薬物依存と戦いながら、男性社会のチェスの世界でトップにのぼり詰めるまでの物語。

ベニーとの特訓

ベスの姿は、1967年オハイオ米国チェス選手権の会場にある。ここではベニーと再会する。二人は挨拶代わりと軽口を叩く。二人は快調に勝ち進んだ。オフの日を挟み、ついにベスとベニーの対局の日がやってくる。決着は30手で黒盤のベスが勝った。夜、二人でお酒を煽る。ベスの飲むお酒の量に驚くベニー。次の大会が行われるパリ、モスクワの話をするが、ベスは行くことを迷っていた。ベニーは、酒浸りするくらいなら行けと言う。ボルゴフに惨敗したことを引きずるベスだったが、ベニーは準備不足だと言い切る。ベニーがベスのコーチをしてくれることになり、彼の住むニューヨークへ行くことが決まる。

ベニーの車でニューヨークへ行くベス。綺麗な街並みにこれからの期待を抱くベスだったが、連れていかれたのは地下の薄汚い家。ここで、ベニーとチェスの分析をする日々を送る。ある夜、ベニーのチェス仲間であるヒルトン・ウェクスラーとアーサー・レベルトフ、モデルのクレオの3人がやってくる。ベスはクレオの美しさに惹かれ、すぐに親しくなった。ベニー、ヒルトン、アーサーはベスと早指しの多面指しをすることになる。ベスは負けなかった。

依存

薬とお酒に依存するベス。

1967年パリ。この大会は参加者6名の総当たり戦。隙間の時間に棋譜を読み込み、順調に勝利をあげるベス。ついにボルゴフとの対戦という前夜。クレオから一緒に飲まないかと連絡が来る。一度は断ったが、一杯だけ付き合うことにした。しかし、クレオの魅力的な人柄と楽しい会話に、ベスはたくさんのお酒を飲んでしまう。

翌朝、寝坊したベスはドアを叩いて起こされる。お酒も抜けていない寝起きの状態で、ボルゴフの前に座る。なんとか対局を始めるも、水を飲む手が止まらない。指す手も迷ってばかりだ。結果ベスは投了した。悔しくて涙を流すベス。ベスはレキシントンのあの家に帰った。ベニーが、今はひとりきりになるべきじゃないとニューヨークに誘うが、一人になりたいと断るベス。レキシントンに帰ると、ベスは家を整理し、シンプルな内装に整え直した。しかし、広い家にひとりぼっちでいることに気が滅入り、外で夕食をとる。お酒を控えようと思ったベスだが、アルマとの思い出のギブソンを飲むことにした。興が乗ったベスはお酒を買い込み帰宅。その日から、大音量でテレビを付け、両手にお酒とタバコを持って、踊り散らした。ベスの行動は常軌を逸した。やり過ぎなくらいの濃いメイクをし、落としもしない。お酒とタバコを続けて、気絶していた。ベルティックが電話に出ないベスを心配して家を訪ねてくれるが、ベスは起きなかった。州大会の前日まで、そんな生活を繰り返した。

州大会の日。会場では、ベスが初めて出た公式戦の相手であるアネットやベルティックが声を掛けてくれるが、精神的に不安定なベスはまともに取り合えない。ベスの精神は大会どころではなかった。帰宅し、カーテンを閉め、引きこもるベス。しばらくして家のドアが激しく叩かれた。ドアへも真っ直ぐ進めないベスは苛立っていた。ドアの前に立っていたのは、ジョリーン。ジョリーンはベスの荒れた姿や散らかった部屋に驚く。ジョリーンはシャイベルが亡くなったため、葬式に誘いに来てくれたのだ。ジョリーンは大学へ進学し、法律事務所で働いているという。ベスはジョリーンから一冊の本を渡される。『モダンチェスオープニング』だ。ベスが養子に出される時、紛失して探していた本だ。ベスが養子に出されること、白人であることにムカついてやったと白状するジョリーン。その清々しさがベスの心を救うのだった。

シャイベルの葬式は教会で行われた。作業のように執り行われた葬式に嫌気がさすベス。途中で教会を抜け、メスーエン養護施設を訪れた。ジョリーンは車で待つという。ベスはシャイベルとともにチェスをしたあの地下室に足を運ぶ。そこには、ベスについて取り上げられた記事、ベスからの手紙がまとめて貼ってあった。ベスが施設にいた時にシャイベルと1枚だけ撮った写真もあった。車に戻ってきたベスは、シャイベルとの写真を持って涙する。ジョリーンはそっとベスを抱きしめた。

モスクワで行われる大会に参加したいベスだが、旅費を払うお金がない。ベスはチェス連盟や国務省に金銭支援を頼む電話をしながら、ジョリーンとスカッシュをして遊ぶ日々を送った。文化局からはお金は出せないが、護衛をつけると告げられる。お金が工面出来ずに困るベスにジョリーンがお金を出すと言う。夢であるロースクールに行くためにジョリーンが貯めていたお金だ。ジョリーンは、お互いの存在があったからここまで生きてこられたのだと胸の内を話してくれる。

世界チャンピオンへ

ボルゴフと対局するベス。

モスクワ行きの旅費が手に入ったベスは無事に飛行機に乗る。そして大会は始まった。ベスは臆することなく立ち向かう。一戦目は無事に勝利。大会期間中、ベスはお酒を断ち、順調に相手を倒していく。対局に勝利するほど、会場の外のファンの数が膨れ上がっていた。元世界チャンピオンのルチェンコとの対局。接戦となった対局は指し掛けとなり、翌日に持ち越した。翌日、ベスが不利な状況からの再開だったが、見事に勝利。ベスはすっかり注目の的だ。そしていよいよ決勝のボルゴフとの対局。ベスはクイーンズ・ギャンビットでゲームを始める。会場内と会場の外に集まったファンが注目する。接戦を続けるもその日は中断となった。ベスを待っていた報道陣の中にケンタッキー州の地方紙だという聞き慣れた声があった。タウンズだ。タウンズはベスに寄り添ってくれた。翌日の朝はタウンズがコーヒーを持ってきて、起こしてくれる。その時、部屋の電話が鳴った。ベニーからだ。受話器の向こうでは、ベニーやベルティック、マット、マイクたちが集まって、ボルゴフに勝つ方法を検討していた。みんなが伝えてくれるパターンを頭に入れていくベス。対局開始時間のギリギリまで相談し、ベスは対局の続きに臨む。ベニーたちが予想してくれた手筋で駒を進めていくベスだったが、ついにボルゴフが誰も予想していなかった手に出る。ベスは天井の盤面を見つめて考え、駒を進める。ボルゴフからドローを提案されるものの、首を横に振るベス。二人の接戦は続き、ついにベスが勝利する。ベスは仲間の力を借りて、世界チャンピオンになった。

『クイーンズ・ギャンビット』の登場人物・キャラクター

家族

ベス・ハーモン(演:アニャ・テイラー=ジョイ)

日本語吹き替え:伊勢茉莉也
この作品の主人公。精神病を患っていた母アリス・ハーモンが起こした事故によって、9歳で孤児になる。メスーエン養護施設に引き取られ、家族のような関係になるジョリーンと、チェスを始めるきっかけになるシャイベルと出会う。口数も少なく、言われるがままに行動するベスだったが、チェスに興味を示してからは、のめり込んでチェスをプレイし、才能を開花させる。施設で精神安定剤を常用していたために、依存症になってしまった。14歳の時、ウィートリー家に養子として引き取られる。家の近くで開催されたチェスの州大会に参加し優勝。賞金で稼がせたい養母のアルマと強い相手とチェスがしたいベスは、一緒に各地のチェス大会に参加するようになる。アルマからお酒の味を教えられたベス。チェスではどんどん知名度を上げていく裏で、精神安定剤とお酒の依存症に苦しむことになる。心の支えになっていたアルマの突然死や、チェスの世界チャンピオンであるボルゴフに大敗したことで、ベスはどんどん依存症を悪化させ、身を滅ぼしかける。ジョリーンのおかげで、やり直すことが出来、チェスの世界大会に出場。ボルゴフとの決勝では、チェス仲間のベニーを筆頭に、タウンズやベルティック、マット、マイクたちが協力し、世界チャンピオンにのぼり詰めた。

アルマ・ウィートリー(演:マリエル・ヘラー)

日本語吹き替え:まつだ志緒理
主人公ベスの養母。夫であるオールストンとの仲が上手くいっておらず、寂しさを埋めるため、養子としてベスを引き取った。話し相手が欲しいという軽い気持ちで養子をとったが、オールストンが南西部で無期限勾留されてしまい、帰ってこなくなったことをきっかけに母として生きる覚悟を決める。賞金のためにベスに学校を休ませてチェスの大会に出ることを望んでしまうところもあるが、ベスとの利害は一致していた。ベスの大会に付き添い、ベスのサポートをする。話を重ねるごとに母の顔を見せていく。ベスが高校を卒業したお祝いにブローバの時計を贈る。ベスはその時計をずっと身につけていて、とても大切にしていた。オーケストラでピアノを弾くことが夢だったが、酷いあがり症のため断念した過去がある。体が弱いが、お酒とタバコが好き。精神に不調を来すと精神安定剤を服用していた。メキシコでのベスとボルゴフとの対局中に、ホテルの部屋で肺炎を起こして亡くなった。

オールストン・ウィートリー(演:パトリック・ケネディ)

日本語吹き替え:岡哲也
主人公ベスの養父。妻アルマのことを良く思っておらず、ベスともほとんど会話をしない。仕事の出張が多く、家にいることが少なかった。出張中に南西部で無期限勾留されてしまう。アルマが亡くなってベスが連絡をとるも、帰ることはできないと、アルマの死因も聞かずに冷たい対応だった。家も譲ると言う。しかし、しばらくして勾留が解けたオールストンは帰宅し、家はやらないと主張を変える。意地を張ったベスはこの家を買い取ることになる。それ以来オールストンはベスの前に姿を現さなかった。

アリス・ハーモン(演:クロエ・ピリー)

日本語吹き替え:岡本沙保里
主人公ベスの実母。精神病を患っていて、物事の考え方にはかなりの偏りがあった。アリスとベスのことを心配した元旦那が家を訪れるもヒステリーを起こし、追い払ってしまう。数年経ち、一人でベスを育てることに自信がなくなり、元旦那を訪ねるが、すでに新しい家庭を築いていた元旦那に追い返されてしまう。絶望したアリスはベスを乗せた車で、対向車にぶつかりにいき、無理心中を図ろうとした。アリスは命を落とすもベスは無傷で生き残った。

ベスの父親(演:セルジオ・ディ・ジオ)

アリス・ハーモンの夫。別れた後もアリスとベスのことを心配して訪ねてきたが、アリスに追い返されてしまう。その後、家庭をもつ。アリスが助けを求めにきた時は、自分の家庭のために追い返した。

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