ちひろさん(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『ちひろさん』は安田弘之が2013年から秋田書店より連載しているヒューマンドラマ作品である。『ちひろさん』はかつて同筆者が『モーニング』(講談社)で発表していた『ちひろ』の続編である。海辺のお弁当屋さんで働く元風俗嬢のちひろさんが個性豊かな周りの人々の悩みや迷いを多くは語らず、またちひろ自身の行動のみで解決していく物語である。物語の中でちひろが放つ言葉が名言だらけで心に刺さるとSNSで話題となっている。
『ちひろさん』の概要
『ちひろさん』は安田弘之が2013年から秋田書店より連載しているヒューマンドラマ作品である。『ちひろさん』とは作者である安田弘之がかつて『モーニング』(講談社)で発表していた『ちひろ』の続編である。『ちひろさん』の1巻は2014年に発売されている。安田弘之といえば代表作『ショムニ』がで江角マキコ主演でドラマ化された事でも知られている。そんな安田弘之が描く漫画『ちひろさん』は元風俗嬢のちひろが海辺のお弁当屋さんで働きながらその周りの人物との関わりを描いたヒューマンストーリーである。ちひろの周りには様々な問題を抱えた人や心を閉ざした人がやってくる。そんな人がちひろの生き方に感化されていく物語で、ちひろの言葉や生き様に多くの人が共感し、Twitter上で話題となっている。漫画上で出てくる様々な名言が共感できると話題だ。
『ちひろさん』のあらすじ・ストーリー
元風俗嬢が街のお弁当屋で働く
「古澤綾」こと「ちひろ」は海辺の小さなお弁当や「のこのこ」に現れる。のこのこの店長が面接をし、採用の際に「古澤綾さん…」と名前を呼ぼうとすると「ちひろでいいですよ」と店長に言う。「だってそれ全然違う名前じゃ…あだ名?」と聞くと「源氏名という事で」と明るく答えた。驚く店長だったが、そのまま「ちひろ」という名を使い働く事となる。「ちひろ」とはかつて風俗で勤めていた時の源氏名である。ちひろは持ち前の愛想と聞き上手でたちまち人気者となる。店長が隠していた経歴をちひろは何の迷いもなく同僚や街のみんなに話していた。ちひろは自分の過去が明かされる事をちっとも恐れていなかった。むしろその反応を楽しんでいるのだ。
ホームレスに対するちひろの反応
ある日海岸を歩いていると小学生にいじめられているホームレスを発見するちひろ。小学生を追っ払うとちひろはそのホームレスに一方的に話しかける。ビールを飲みながら話すちひろをホームレスはそっと見守っていた。ちひろはそのホームレスを「師匠」と呼ぶ事にした。そしてちひろはその師匠を自宅に招きお風呂に入れ身なりを整えた。その後また楽しく話をするのだが深夜になり師匠はまた街の徘徊へと戻って行った。その日からちひろは師匠を見かけるたびに声をかけていた。
ある日ちひろはいつものように師匠の分のお弁当を届けようとしたところ道端に倒れている師匠を発見する。もうすぐにわかるほど師匠は冷たくなっていた。友達が自殺した時も涙が出なかったちひろだったがなぜか師匠の姿を見たら涙がこぼれてきた。そしてちひろがとった行動は師匠を山に埋める事だった。静かに手を合わせ、またいつもの日常へと戻っていくのであった。
ちひろに興味をもつ女子高生「オカジ」との出会い
どこにでもいる普通の女子高生「オカジ」は日々の生活に不満や違和感を抱いていた。そんな時お弁当屋で働くちひろを発見する。最初は「変な人だな」と思っていたがだんだんとちひろに興味が湧いてくる。毎日のようにちひろを観察しては写真を撮っていて意を決してちひろの働くお弁当屋に行くと盗撮していた事がちひろにバレていた。その後もちひろの事が気になり友達との遊びを断って会いに行くようになる。ちひろの目を見たオカジは「恐ろしい目」「優しい目」「嘘もごまかしも許さない目」「底の見えない哀しい目」と思い、なんだか涙が止まらなくなる。「なんだか会いたかった人に会えた気がする」とちひろに出会えた事でオカジは変わっていく。今まで学校では話題についていこうと必死にアニメを見ていたり、家庭では父親の機嫌をとるように行きたくない場所にも喜んで行ったりしていた。しかしちひろに出会ったことでオカジは自分を偽わることをやめ、そういった行為をしなくなった。その結果、学校では友達との関係がぎくしゃくし、家庭では怒った父親が物を壊して怒鳴り散らし、家の雰囲気が悪くなった。オカジはその変化に心を痛めるが、周りに負けないようちひろのように強くなりたいと考えるようになる。
オカジは友達との携帯のやり取りで初めて「あのアニメは微妙だった」と自分の本当の気持ちをさらけだす。次の日学校へ行くと友達と気まずい状況になってしまう。その日の帰り道にちひろがよく行っている廃墟に行ってみると一人の女の子と出会う。その子は「べっちん」という名前で同じ高校だった。その子とちひろの話や学校での話、微妙だったアニメの話をしているうちに二人は仲良くなっていった。
街でいたずらをする小学生「マコト」との出会い
ある日街では自転車がパンクさせられる事件が多発する。その事件の犯人を見つけようとちひろは公園で待っていた。そんな時に現れたのが小学生の「マコト」である。マコトはちひろに虫のおもちゃで悪戯をする。しかしちひろの反応は他の大人とは違った。そしてマコトの手にアイスピックのような物がある事に気づき、パンク事件について問い詰める。動揺したマコトはとっさにちひろの腕を刺してしまう。しかしちひろは動揺する事なくマコトに説教を続ける。
ちひろはマコトを海に連れて行った。マコトはちひろがつけている勾玉のネックレスを触っているのを見てちひろはそれをマコトに渡した。マコトは勾玉のネックレスをお守りのように大切にしていた。そのネックレスをなくした時にはいつもランドセルを叩くなどの意地悪をしていた同級生の女の子である「古河さん」が一緒に探してくれたのだ。ちひろからお弁当をもらったりオカジと一緒に遊んだり、古河さんからの優しさを感じる事によってマコトはだんだんと心優しい少年へと変わっていく。
風邪をひいたちひろの元に現れた親友
ちひろが風邪を引いて寝込む。そこにオカジとマコトが心配してお見舞いにやってくる。何をするわけでもなくただ心配してやってきた二人だが、ゲームに火がついてしまいうるさくなり、ちひろは「ゆっくり眠れない」と二人を追い出す。その後にのこのこの従業員である永井さんが自家製の朝鮮人参を持ってやってくるが家には入らずいつもの嫌味を言って帰る。やっと落ち着いて寝られると思ったちひろの自宅にまたピンポンがなる。迷惑そうに出るちひろだったがそこには日本酒の瓶を持った親友のバジル(通称バジ姐)が立っていた。二人で七輪を囲みながら飲んでいたがバジ姐がちひろの手を握り「少しこうさせて」と言う。何も言わず受け止めるちひろはバジ姐の心が傷ついているのがわかっていた。ちひろが具合の悪さで寝込んでしまいバジルは静かに帰っていった。
二人が出会ったのはまだちひろが風俗嬢だった頃である。夜の街を裸足でトンカチを持った姿のバジ姐に「たばこ持ってない?」と声をかけられた事がきっかけである。そんな衝撃的な出会いをした二人は親友のような関係である。
後日二人で街のお祭りへと行く事になる。一通り屋台を楽しんだちひろはまるで子供のようにはしゃいでいた。二人で金魚すくいをしていると屋台の店主がバジ姐に向かって「元にいちゃん上手だな」と言った。それを聞いたバジ姐は怒った。そのやりとりを見ていたちひろを屋台の店主が「ちひろ!?」と声をかける。その金魚すくいの屋台の店主はちひろが風俗店で働いていた時の店長だった。ちひろと店長は昔話に花を咲かせていた。
ちひろが酔っ払って寝た後、バジ姐と店長はちひろの昔話に花を咲かせた。店長がちひろを大事に思っていた事、元気そうでよかった事を話す。その話を聞いてちひろはそっと涙を流した。最初は店長に「元にいちゃん」と言われて怒っていたバジ姐だったが店長と話をしているうちに店長に恋をするのであった。その後バジ姐は店長が働く金魚屋に通い昼間は店長のお店の手伝いをする事になる。
バジ姐とちひろはお好み焼きやでご飯を食べていた。そこに高校生カップルがいた。彼氏はとても横柄な態度をとっていてその場面をバジ姐は静かに見ていた。バジ姐を見た高校生カップルの彼女「ユキナ」はその日からバジ姐が気になってしょうがなくなり金魚屋までバジ姐を見に行ってしまう。その姿を見たちひろはユキナに「それは恋をしているんだよ」と彼女の心を読むのだった。
昔の後輩すずがのこのこに訪れる
のこのこに一人の女性がちひろの元に現れる。それはちひろが風俗嬢の頃の後輩のすずだった。すずはちひろが風俗をやめてからずっと探していたのだ。風俗嬢だった頃のすずはお客さんの要望を断れずお店のルールを破ってしまう女の子だったのだが、ちひろの「サービスってなんでもやってあげる事じゃない」というアドバイスから強い女性へと変わり、今では自分で会社をやっている。そしてすずはちひろを自分の会社に誘うのだった。「お弁当屋なんてやめて私と働きましょう」というすずにちひろは「すずちゃんから見た私はそんな女なんだね」と怒り帰ってしまう。その後すずは謝ろうとちひろの元へ行き、二人は和解する。
ちひろの心の闇を描いた合コン回
ちひろはのこのこの近くの会社で働く女性二人組から合コンに誘われる。恋愛に興味のないちひろは断っていたのだが、その二人組から「女子力は油断しているとおとろえる一方ですよ」などと好き勝手言われ腹が立ち、合コンに参加する事にする。二人組をぎゃふんと言わせようとちひろは男性陣を全員攻略しようとする。持ち前のトーク術と偶然も重なりちひろは見事男性陣全員を攻略する事に成功する。二次会に誘われるちひろだったが断り、「のこのこに来たらいつでも会えるよ」と答えるちひろに対して合コンメンバーは「何だか変な人」と言った。
合コンが終了し、急にスイッチが切れたちひろは「愛だの恋だのくっついたの別れたのそんなもので心が満たされた事なんてなかった」と過去の暗い恋愛や思い出が蘇ってくるのだった。そして一人屋台のラーメンを食べ、満足したちひろはいつもの明るいちひろになった。
ちひろさんお母さんと出会う。ちひろが「のこのこ」で働く事になったきっかけ
ちひろがのこのこで働こうと思ったきっかけは「のこのこ」の女将である「多恵」(たえ)が影響している。雨が好きなちひろは雨の日にのこのこの前を通りかかる。そうするとそこには笑顔で雨を見つめるたえの姿があった。その姿にちひろは惹かれ、お弁当を買いに行く。お弁当の味に感動したちひろは何度かのこのこへと通い、いつものように自分は風俗嬢だった事をタエに告げる。たえの反応は意外なもので、「そう」と一言答えた。ちひろはまるでその答えを待っていたかのように喜んだ。
ちひろとたえは親しい関係へとなっていく。そんな時にたえは自宅で階段から転倒してしまい入院。治療をするが両目の視力を失ってしまう。入院中もちひろはのこのこで働いている事を言わずに何度か病室へと足を運び二人はどんどんと親しい関係へとなっていく。タエが退院した後にのこのこで働いている事を言うとたえは驚いていた。二人で旅行に出かけ、ちひろはたえに「たえちゃんがお母さんだったらどんな人生だったのだろう」と悲しそうに話しながらタエは涙を流す。
永井さんの本当の姿
のこのこの従業員である永井さんがギックリ腰になり仕事にこれなくなってしまう。永井さんの代わりに来たのは息子の奥さんの「初音さん」だった。初音さんは初めての仕事だったがとても手際が良く大活躍だった。仕事の休憩時に初音さんが「お義母さんは人の事を悪く言わない。すごく穏やかでいい人」だと言った。のこのこでの永井さんは口うるさい無愛想な態度なのでみんながびっくりしていた。のこのこでの姿を知った初音さんは「私には気を使っているのでは」とガッカリした。その姿をみたちひろは「そのままでいい」とアドバイスするのだった。
ちひろの本当の家族の話
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目次 - Contents
- 『ちひろさん』の概要
- 『ちひろさん』のあらすじ・ストーリー
- 元風俗嬢が街のお弁当屋で働く
- ホームレスに対するちひろの反応
- ちひろに興味をもつ女子高生「オカジ」との出会い
- 街でいたずらをする小学生「マコト」との出会い
- 風邪をひいたちひろの元に現れた親友
- 昔の後輩すずがのこのこに訪れる
- ちひろの心の闇を描いた合コン回
- ちひろさんお母さんと出会う。ちひろが「のこのこ」で働く事になったきっかけ
- 永井さんの本当の姿
- ちひろの本当の家族の話
- 犬猿の仲であるマコトの母とちひろ
- 【最終回】のこのこから姿を消したちひろ
- 『ちひろさん』の登場人物・キャラクター
- のこのこ関係者
- ちひろ
- のこのこ店長
- 永井さん
- たえ
- 篠原さん
- 初音さん
- ゆり
- 海辺の街の人々
- オカジ
- マコト
- 師匠
- べっちん
- マコトの母
- 谷口
- 古河さん
- マダム
- ユキナ
- ちひろが風俗嬢だった頃の知り合い
- バジ姐
- 店長
- すず
- 『ちひろさん』の用語
- のこのこ
- 古澤綾
- 『ちひろさん』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- ちひろ「風俗嬢でした。というあいさつに人はうっかりその素顔を見せてしまうものだ」
- ちひろ「言い訳きれい事全部引き算していくと最後に着色されていない肌の感覚が残るでしょ。答えはもう出ているのよ。あとはそれを飲み込む覚悟ができるかどうかだけ」
- ちひろ「サービスってね。なんでもやってあげる事じゃないからね」
- ちひろ「謝る時はちゃんと相手の目を見て言わなきゃ」
- ちひろ「礼儀を知らない相手に礼儀など必要ない。この女は話が通じない。ただ私にも傷ついて欲しいだけ。だったら、傷ついてあげない。かすり傷ひとつ、つけさせてなんかやらない」
- 谷口「俺たちはちゃんと食ってやろうな」
- 『ちひろさん』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- ちひろのモデルは作者の理想
- 作者が好きなちひろのセリフ