白い砂のアクアトープ(アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『白い砂のアクアトープ』とは、P.A.WORKS制作による、水族館を舞台に二人の少女の交流を描く2021年夏に放送されたアニメ作品。
沖縄で暮らす海咲野くくるは、水族館の館長代理として迫り来る閉館の危機を相手に悪戦苦闘していた。一方岩手生まれの宮沢風花は、アイドルになる夢に破れ、沖縄に身一つで傷心旅行に訪れる。行くあても無かった風花から「水族館で働かせてほしい」と頼み込まれ、彼女の熱意に感じ入ったくくるはこれを了承。二人の少女は水族館を立て直すために奮闘していく。

『白い砂のアクアトープ』の概要

『白い砂のアクアトープ』とは、水族館を舞台に二人の少女の交流を描く2021年夏に放送されたアニメ作品。製作は『SHIROBAKO』、『TVアニメ ウマ娘 プリティーダービー』などで知られるP.A.WORKS、監督は『黒執事』、『凪の明日から』を担当した篠原俊哉、音楽は『どろろ(2019年版ED)』、『僕のヒーローアカデミア(第三期OP)』の出羽良彰。
実力と実績を兼ね備えるスタッフによるオリジナルアニメ作品として、放送前から注目を集める。いざ第1話が放送されるや、その地上波アニメとは思えぬ圧巻のクオリティに視聴者の多くが驚嘆。2021年夏アニメの中でも特に注目される作品となった。

アクアトープとは「水質保全システム」を意味する言葉で、これは清浄な土や水生植物によって水質の汚染を防ぐという現在研究が進められている技術である。環境汚染は水質の汚染と密接な関係にあり、これを守ることで“環境そのものを守る”ことを目指したもの。規模の小ささから周囲の環境の影響を受けやすい都市部の水辺などで採用されている。
舞台は現代だが、沖縄に多く生えるガジュマルの木の近くに住むとされる精霊キジムナーが要所要所で姿を現し、日常の中にほんのわずかに非日常を落とし込んでいる。キジムナーは「存在はするが、普通の人間には見ることができない」超常的な存在として描かれており、物語の基軸はあくまで等身大の二人の少女の交流となっている。

沖縄で暮らす海咲野くくる(みさきの くくる)は、地元にある「がまがま水族館」の館長代理として、迫り来る閉館の危機を相手に悪戦苦闘していた。一方岩手生まれの宮沢風花(みやざわ ふうか)は、アイドルになる夢に破れ、沖縄に身一つで傷心旅行に訪れる。
島民から勧められるままがまがま水族館に向かい、そこでくくると出会う風花。水族館特有の幻想的な雰囲気に惹かれ、行くあてもなかった風花は「ここで働かせてほしい」とくくるに懇願。その意気に感じ入ったくくるはこれを了承し、二人の少女は水族館を立て直すために奮闘していく。

『白い砂のアクアトープ』のあらすじ・ストーリー

第1部:がまがま水族館編

沖縄にあるがまがま水族館は、設備の老朽化から閉館を余儀なくされていた。現館長の孫である海咲野くくるは、閉館の準備に奔走される祖父に代わって館長代理を任されていたが、未だに閉館を受け入れられず、水族館を存続させる方法がないか必死に思案していた。
そんな折、宮沢風花という少女が沖縄にやってくる。風花は東京でアイドルをしていたのだが、その苛烈な競争についていくには人柄が優しすぎ、後輩に出番を譲ったことがきっかけで人気が凋落。岩手の実家に帰ることとなるも、今さら家族とは顔を合わせがたく、逃げるように沖縄に来てしまったのだった。

がまがま水族館にはキジムナーが隠れ潜んでおり、時々来訪した者に不思議な幻を見せることがあった。沖縄の町をさまよった末にがまがま水族館を来訪した風花は、キジムナーによって幻覚を見せられ、それに気づいたくくるに声を掛けられる。他に行くあてもなかった風花は、くくるにこの水族館で働かせてほしいと頼み込み、その勢いに押される形でくくるもこれを了承。「夏休みの間だけ」という条件付きで、閉館間際の水族館に新しい従業員が増えることとなる。
不慣れな風花に水族館の仕事を教えつつ、新しい設備を購入するための資金を捻出しようとするくくる。しかしくくるの友人たちも巻き込んで様々に手を打っても焼け石に水で、ただ閉館予定日だけが近づいていく。

幼い頃に両親を失い、祖父母に引き取られたくくるにとって、がまがま水族館は第二の家に等しい存在だった。それが失われることは、自分の帰るべき場所が無くなることと同義であり、くくるにはどうしても受け入れられなかった。
最後の手段とばかり、くくるはがまがま水族館にバリケードを築いて籠城する。閉館回避のために一緒に粉骨砕身してきた風花は、くくるの気持ちを慮ってこれに協力。しかしその晩台風が沖縄に上陸し、がまがま水族館は全館停電の非常事態に陥る。飼育している生き物たちの生命維持のためには電力が必須であり、老朽化した非常電源では長くはもたないのだ。大急ぎで駆けつけた仲間たちの尽力もあり、生き物たちに大きな被害は出なかったものの、この出来事は「がまがま水族館はもはや飼育されている生き物を十分に守れる状態にはない、だから閉館するしかない」という現実をくくるに思い知らせることとなった。

くくるががまがま水族館の閉館を受け入れると同時、風花との別れの日もやってくる。一夏の間に確かな絆を築いた風花を飛行場に送り出すと、くくるは「再び自分の帰る場所を失った、それを隣で支えてくれた風花もいなくなってしまった」ことに改めて涙する。
そんな彼女の前に、予約していた便に乗らずに戻ってきた風花が現れる。彼女はくくるが1人になったらきっと泣くだろうと考え、その悲しみに寄り添ってからでないと沖縄を離れられないと思い決めて帰ってきたのだった。

帰るべき場所がないなら、家族にも等しい存在を失ったことが悲しいなら、自分がくくるの新しい姉になると誓う風花。その言葉と友情に感極まり、彼女の胸の中で号泣したくくるは、「いつかまた会う」ことを約束しながら風花を改めて送り出すのだった。

第2部:アクアリウムティンガーラ編

がまがま水族館が閉館して半年。高校を卒業したくくるは、沖縄市街にできたアクアリウムティンガーラという新しい水族館のスタッフとなっていた。がまがま水族館を失った心の傷はまだ癒えていなかったが、「姉になる」とまで言ってくれた風花との絆が、くくるに新しい道へと進む勇気を与えていた。
しかし、飼育スタッフとして働くことを希望していたくくるは、どういうわけか企画広報担当に回されてしまう。「生き物の世話がしたい」とぼやきつつ、パワハラ気質の上司に振り回されながら慣れない企画広報の仕事をこなしていくくくる。そんな折、がまがま水族館での経験から自身も水族館で働くことを望むようになった風花が沖縄を訪れ、改めてアクアリウムティンガーラでの同僚となる。

再会を喜び、それぞれに仕事に励んでいく風花とくくる。しかし「生き物と直接関わる仕事がしたい」と願うくくるは、企画広報という“自分にとっては場違い”な職場に次第にストレスを溜めていき、初めて任された大きな企画のプレゼンが失敗したことでそれが爆発。無断欠勤して離島へと逃げ出してしまう。
しかしそこで出会った人々や、訪れた水族館が抱える様々な問題を見て、くくるは「企画広報の仕事の意義」に気付いていく。企画広報とは水族館の運営にも関わる重要な仕事であり、それはより大きな視点から海の生き物を守っていくことにもつながるのだ。迎えに来てくれた風花と共にアクアリウムティンガーラに戻ったくくるは、心機一転して一度は放り出しかけた企画を成功に導く。

一方、この時の経験は風花にも大きな変化をもたらした。「海の生き物の保護」という観点から水族館の仕事を見詰め直した風花は、絶滅の危機にあるウミガメなどを救うため、より専門的な勉強がしたいと望むようになる。折しも海外にある世界屈指の大型水族館への研修の話がアクアリウムティンガーラに持ち上がり、これに応募した風花は役員審査を突破して研修候補生に選ばれる。
しかし「くくるを1人にしておけない」との想いも捨てがたく、研修候補生を辞退しようと考える。これを聞いたくくるは「自分だけ風花に甘えるわけにはいかない、今度は自分が風花を送り出す番だ」と言って、無二の親友との2度目の別離を受け入れる。別々の場所で、それぞれに力を尽くして、次に会う時には互いに今よりもっと成長した自分になっていることを約束し、くくるは旅立っていく風花を見送る。

2年後、くくるは相変わらずアクアリウムティンガーラの企画広報部に在籍し、水族館と海の生き物たちの未来のために何ができるのかを模索しながら尽力する日々を送っていた。海外研修組が帰国する日、風花を出迎えようとしたくくるは、不思議な幻覚に導かれてガジュマルの木の下で彼女と再会する。
互いの成長と変わらぬ友情を感じながら歩いていくくくるたちを尻目に、樹上ではキジムナーが風花がお供えしたマカデミアナッツチョコレートを食べていた。ガジュマルの木に住む精霊に見守られながら、これからもくくるたちの日常は続いていくのだった。

『白い砂のアクアトープ』の登場人物・キャラクター

がまがま水族館の従業員

海咲野くくる(みさきの くくる)

CV:伊藤美来
本作の主人公の一人。沖縄で暮らす天真爛漫かつ明朗快活な高校生で、地元にあるがまがま水族館の館長代理を務める少女。勉強は苦手で流行にも疎いが、海洋生物の知識は豊富。生き物を預かる場所の長を務めているだけに、生き死にが関わる場面ではシビアな一面を覗かせる。本人が自己紹介する時は「館長」を名乗っている。
がまがま水族館は閉館の危機を迎えており、その立て直しのために奮闘中。なかなか良い打開策を閃くこともできない中、東京からやってきた風花に「ここで働かせてほしい」と懇願され、その意気に感じ入ってこれを了承。彼女と共に水族館の新たな道を模索していくこととなる。

宮沢風花(みやざわ ふうか)

CV:逢田梨香子
本作の主人公の一人。年齢は十代後半で高校生くらいだと思われるが、くくると同い年であるかどうかは不明。アイドルになることを夢見て岩手から上京し、芸能事務所に所属して一時はユニットのセンターを務めるなど才能を発揮。しかしその優しさから“他人を蹴落としてでも上に這い上がる”ことができず、周囲に配慮している内に人気が衰えて引退を決意する。
故郷に帰るつもりでいたが、もともと田舎特有の人と人の距離感の無さに辟易としており、鬱々としていたところで偶然見かけた観光ポスターに惹かれて突発的に沖縄に向かう。そこでがまがま水族館と、館長代理として奮闘するくくるの存在を知り、他に行くあてもなかったこともあって「ここで働かせてほしい」と懇願する。

屋嘉間志空也(やかまし くうや)

CV:阿座上洋平
がまがま水族館で働く青年。仕事中にスマホをいじるなど一見やる気が無さそうに見えるが、緩急をつけるのが上手なだけで働きぶりは真面目。かなり奥手な性格で、同年代の女性とは目も合わせられない。
閉館寸前なこともあり、水族館は慢性的な人手不足の状態にあり、いろいろと兼任しているため疲れ気味。アルコール好きで、特にくくるの祖母が作る梅酒には目が無い。
夏凛とは同級生で、高校に通っていた頃は文武両道のイケメンとして人気があった。とある女生徒の告白を断ったことを皮切りに悪質な嫌がらせを受け、高校を中退。がまがま水族館に拾ってもらい、当時の館長(おじい)との交流の中で水族館という場所とそこで働くことに愛着を持っていった。

おじい

CV:家中宏
くくるの祖父で、がまがま水族館の館長。とても穏やかで優しい性格で、沖縄に住むガジュマルの精霊キジムナーの存在を信じており、くくるにもこれを教えている。孫のくくるに館長代理を任せ、自身は水族館で働くスタッフや飼育している生き物の引き取り先を探して奔走している。くくるが水族館の存続に躍起になっている一方、彼自身は「閉館は仕方のないこと」と受け入れつつ、孫を優しく見守っている。
長年水族館で仕事をしてきただけに、海の生き物全般に対する知識が非常に豊富。難しい魚の展示や赤字水族館の復活を次々に成功させて、業界では「伝説の飼育員」として知る人ぞ知る存在である。高校中退後行く場所の無かった空也を引き取ったこともあり、彼からは恩人として尊敬されている。

具殿轟介(ぐでん ごうすけ)

CV:櫛田泰道
がまがま水族館のスタッフ。通称“うみやん”。腰を痛めてしばらく休暇をもらっていたが、復調したため仕事に復帰。風花とはその時が初対面であり、最初は不審者扱いされるも、「スタッフルームに知らない男が入り込んでいたら、そう思うのも当たり前」と笑って許す懐の大きい人物。
腰はまだ完全には治っておらず、時折り痛めてはうずくまる。アイドルオタクで、風花がかつてアイドルとして活動していたこともすぐに見抜いていた。

YAMAKUZIRA
YAMAKUZIRA
@YAMAKUZIRA

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