白い砂のアクアトープ(アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『白い砂のアクアトープ』とは、P.A.WORKS制作による、水族館を舞台に二人の少女の交流を描く2021年夏に放送されたアニメ作品。
沖縄で暮らす海咲野くくるは、水族館の館長代理として迫り来る閉館の危機を相手に悪戦苦闘していた。一方岩手生まれの宮沢風花は、アイドルになる夢に破れ、沖縄に身一つで傷心旅行に訪れる。行くあても無かった風花から「水族館で働かせてほしい」と頼み込まれ、彼女の熱意に感じ入ったくくるはこれを了承。二人の少女は水族館を立て直すために奮闘していく。

おじいが館長、くくるがその代理を務める、沖縄の水族館。来客の減少から閉館の危機にあり、なんとかこれを回避しようと従業員一同悪戦苦闘している。
巨大なガジュマルの木のうろが入り口となっており、作中に登場するキジムナーはもともとここで暮らしていたのだと思われる。

『白い砂のアクアトープ』の沖縄方言

くくる「まくとぅそーけー なんくるないさ」

第1話より。祠に魚の頭を捧げながら、くくるが口にした言葉。
「まくとぅ」は“誠の行い(正しい行い)”、「そーけー」は“するから”、「なんくるないさ」は“なんとかなるさ”といった意味合いで、続けると「正しいことをしているからなんとかなるさ」となる。
口語というよりは格言であり、標準語で似た言葉を探すと「人事を尽くして天命を待つ」となる。ある種の楽観論ともいえるが、沖縄の人たちの真面目な性格も見て取れる。

さつき「いちゃりば ちょーでー」

Episode1より。占い師メイサこと、月美の母である照屋さつきが、占いの料金を払おうとした風花にそれを断りながら告げた言葉。
「いちゃれば」は“居たりば(会えば)”、「ちょーでー」は“兄弟”を意味しており、「一度出会えば兄弟同然だ」といった意味合いになる。
毎年すさまじい台風に見舞われる過酷な環境の中、沖縄の人々は力を合わせることでこれを乗り切り、陽気で人懐っこい県民性を育んできた。誰かと会えば、それはもう兄弟も同じ存在なのだから、共に笑い、共に悲しみ、困った時は互いを助け合うのは当然のこと。沖縄の人々の強さと優しい心遣いが感じられる方言である。

女性客「ちゅらかーぎー」

風花が元アイドルであることが町に広く知れ渡り、ほとんど物見遊山気分でがまがま水族館に客が集まる。彼女たちは噂の風花をまじまじと眺めると、口々に「ちゅらかーぎーさ」と言い始める。言葉の意味の分からない風花は、ひたすら困惑するのみだった。
「ちゅら」は“美しい”、「かーぎー」は“顔”や“外見”を意味しており、「さ」は“~だ”に相当する助動詞である。続けると「美人だ」といった意味合いになり、作中の人物たちから見ても風花が非常に整った容姿の持ち主であることが分かる。
ちなみに「やなかーぎー」とすると“不細工”といった意味合いになるので、注意が必要である。

さつき「あきさみよー」

カメーで風花と再会した際、さつきが口にした言葉。
日本語で言うなら「あらまぁ」といった意味合いの言葉で、いわゆる感嘆詞とよばれるものである。
この言葉自体にそれほどの意味はないが、一度会っただけの風花に対してこういった接し方ができるということ自体、さつきが人懐っこい性格の女性であることがうかがえるシーンとなっている。

さつき「あまさん」

月美考案のマンゴーラフテーを食べて、さつきが漏らした言葉。
「あまさん」は“甘い”という意味で、甘いものが苦手なさつきがマンゴーたっぷりのラフテーを食べればさもありなんといった言葉である。
この場面の直後に、さつきが月美に向けて言った「まぎい」という言葉も沖縄方言で、「大きな」もしくは「太い」といった意味合いのもの。くくるたち若い世代の登場人物が標準語に近い言葉を話している分、さつきは沖縄方言を口にする場面が多いようである。

『白い砂のアクアトープ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

風花「私をここに置いてください!」

第1話ラスト、くくるに向かって風花が発した言葉。
都落ちして故郷にも帰らず、頼る者もいないまま沖縄の町の中を歩き回っていた風花は、夏凛に案内されてがまがま水族館を訪れる。その暖かくも清涼な雰囲気と、くくるたちが人手不足で悩んでいることを知った風花は、突発的に「自分をここに置いて働かせてほしい」と言い出す。
アイドルの夢破れ、半ば自分を見失っていた風花が、新たな道を踏み出す名シーン。同時に『白い砂のアクアトープ』の物語が本格的に動き出す瞬間である。仄暗い水族館の通路から、強い光の中にあるその作業スペースへ向かうことを望む彼女の姿は、まさに「絶望の闇の中から希望の光の中へと向かう」ことの暗喩だといえる。
常に溌剌として周りを引っ張っていくくくるも、この時ばかりは驚きに目を丸くしており、視点を彼女に移せば迷シーンとなることも見逃せない。

くくる「来年も来てください。きっと続けてみせますから」

がまがま水族館の常連の老人・神里に話しかけられたくくる。神里はかつてがまがま水族館で不可思議な幻を見て、その中で幼い頃に死別した兄と出会ったことがあった。新聞でがまがま水族館が閉館することを知り、もう一度兄に会いたい一心でここ数日通い詰めているのだという。神里が話し終えた矢先、二人は突如不可思議な幻に囚われ、その中でくくるは亡くなった両親、神里は死別した兄との再会を果たす。
再び現実に戻った時、くくるの前には念願の兄との再会を果たして感極まる神里の姿があった。そんな彼に向けて、くくるは見出しの言葉を告げる。

“自分以外にもこの水族館を特別な場所だと感じてくれている人がいる”という事実は、くくるに「がまがま水族館を守らなければならない」との想いを新たにさせた。神里に水族館の存続を誓うくくるの姿は、優しく、清々しく、同時にどこか悲壮なものも感じさせる。彼女の想いが果たされることを願わずにはいられない、視聴者の心を揺さぶる名シーンである。

YAMAKUZIRA
YAMAKUZIRA
@YAMAKUZIRA

目次 - Contents