BANANA FISH(バナナフィッシュ)のネタバレ解説・考察まとめ

『BANANA FISH(バナナフィッシュ)』とは、『別冊少女コミック』で連載されていた吉田秋生によるバイオレンスサスペンス漫画。1980年代のニューヨークを舞台に、バナナフィッシュというドラッグをめぐる、ストリートキッズ、アッシュの戦いを描く。ハードな抗争を繰り広げる一方、孤高に生きてきたアッシュが英二との友情を通して人間らしさや愛を覚えていく姿が描かれている。かねてより名作として人気を博していたが、2018年に吉田秋生40周年プロジェクトでアニメ化され、人気が再燃した。

『光の庭』

本編から9年のちの物語である。英二とシンがアッシュの死と向き合い、その思い出とともに未来に進んでいく内容だ。

アッシュの死後、英二はニューヨークに移り住み、シンとともに暮らしていた。そこへ、英二の同僚の姪である暁(あきら)が遊びに来る。暁は思春期を迎える中で、自分の名前が本当は男の子を望んでつけられたものだと知り、思い悩んでいた。

『PRIVATE OPINION』

アッシュとブランカの出会いを描いたストーリーである。

14歳のアッシュを育て上げるようにディノに指示されたブランカは、その才能を見出し、いずれディノに牙を向くことすら予見していた。

また、アッシュがマービンに定期的に強姦されていることを知り、心身ともに傷ついたアッシュを介抱した。
自分を利用したり踏み躙ったりする大人ばかりに囲まれて育ったアッシュは、勝手な欲望も害意も持たずに自分に接してくれたブランカに心を少しずつ開いていく。

『Fly boy, in the Sky』

英二と同僚のジャーナリスト・伊部が出会ったエピソードである。

美大生の伊部は、偶然見ていた高校総体で棒高跳びの選手として出場していた英二に心奪われる。友人とデザイン大賞に申し込む予定もあった伊部は、英二をモデルにカメラ広告を作成することを決め、島根県まで英二に会いに行った。

高校生の英二は優れた棒高跳びの選手であったが、高校総体の結果は中学からのライバルである水野という選手に負け、2位に終わっていた。
水野は英二よりも背が高く、よりポールの高い位置を掴めることが有利な点なのだという。身体的素質による限界を感じた英二は、内心で棒高跳びを引退することを考えていた。

だが、自分に熱心に興味を持つ伊部と接することで、英二は初めて空高く飛び上がった時の喜びを思い出す。英二の写真をキービジュアルにした伊部の広告デザインは特選となった。

自分の生き生きとした表情を見た英二は、棒高跳びを続けることを決意した。

『BANANA FISH(バナナフィッシュ)』の登場人物・キャラクター

CVは1994年と1995年にNHK-FM「青春アドベンチャー」枠内にて放送されたラジオドラマ版/2018年にフジテレビのノイタミナ枠にて放送されたアニメ版の順に記載。なお、ラジオドラマ版の声優が複数列記されていのは、1期と2期・3期でキャストが異なっているためである。
演は2005年、2009年にアクサル(Axle)により舞台化されたもの、2012年に劇団EXILEの磯村洋佑と竹内寿のW主演で舞台化されたもの、そして2021年の『BANANAFISH The Stage』のキャストを記載する。

主要人物

アッシュ・リンクス

CV:古澤徹/内田雄馬・塙真奈美(幼少期)
演:柄谷吾史(2005、2009年)・永井樹(同年、幼少期)/磯村洋祐(2012年)/水江健太(2021年)

ニューヨークのダウンタウンのストリートキッズを束ねるボス。登場当初は17歳だが、物語の終盤には19歳となる。本名はアスラン・ジェイド・カーレンリース。
マサチューセッツ州ケープゴット出身であり、父子家庭で育つ。7歳の時に男に強姦されたことをきっかけに男娼まがいのことをして生計を立てていた。やがてディノに買われることとなり、彼の元で一流の教育を受け、射撃の腕と高い知力を遺憾なく発揮するようになる。

兄グリフが「バナナフィッシュ」により廃人にされ、挙句殺されたことからディノに復讐を誓い、国家さえ巻き込む大スキャンダルの渦中に巻き込まれることになる。
闘争と憎しみの中で孤高に生きていたアッシュだったが、純粋無垢な英二の無償の友情と愛を受けることで、無条件に人を信じ愛する心を得ていくようになる。
だが、それが最大の弱みとなり、最後にはラオに刺殺され、その短い生涯を閉じることとなった。

奥村英二

CV:井上和彦/野島健児
演:斎藤准一郎(2005年)/宮下雄也(2009年)/竹内寿(2012年)/岡宮来夢(2021年)

島根県出雲市出身の日本人大学生で、登場時は19歳。元棒高跳びの優秀選手であったが、スランプに陥っていた。煮詰まった現状を打破するきっかけにと、ストリートギャングの取材をする伊部のカメラマン助手としてニューヨークにやって来た。
伊部の仕事を介してアッシュと出会い、「バナナフィッシュ」を巡る抗争に巻き込まれていく。時に命の危険に晒されながらも、過酷な運命に立ち向かうアッシュに深く同情し、その心を支える存在となっていく。アッシュより2歳年上だが、元々童顔なのに加え、東洋人であるためアメリカでは5歳は若く見られている。

『光の庭』では28歳となり、ニューヨークに移り住んでシンと暮らしている姿が描かれる。

ショーター・ウォン

CV:橋本じゅん/古川慎
演:古川貴生(2005、2009年)/柏木祐介(2012年)/川崎優作(2021年)

中国系アメリカ人であり、ニューヨークのチャイナタウンのストリートキッズを束ねるボス。気さくで仲間を大切にする性格であり、人種やグループは違えどアッシュとは親友であった。
だが、チャイナタウンを支配する李一族とディノにより、「バナナフィッシュ」の被験者となり、アッシュが射殺する。

李月龍(リー・ユエルン)

CV:大輝ゆう・舵一星/福山潤
演:斎藤准一郎(2005年)/田渕法明(2009年)/木村敦(2012年)/佐奈宏紀(2021年)

李一族の末弟。6歳の頃に異母兄たちに母親を目の前で殺され、一族に強い恨みを抱き続けている。
薬草や毒物に関する知識に長けており、バナナフィッシュの正体も独自に突き止めるほどである。その一方で、体力面は劣り、肉弾戦は不得手。
自分と同じく争いと憎しみの中で生きるアッシュの気高い魂に憧れを抱くが、英二と出会い平凡な幸せを得ようとする姿に強い嫉妬心を持つ。兄たちやディノ、ブランカを利用してうまく立ち回るが、アッシュから英二を奪うことに固執するようになる。
最後にはディノの協力を得て母を殺した李一族の復讐を果たす。それでも虚無感から逃れられず孤独を感じていたが、シンに励まされ、チャイナタウンの復興を担うようになった。

シン・スウ・リン

CV:あずみれいか/千葉翔也
演:梅林亮太(2005年)/小野賢章(2009年)/小田和晃(2012年)/椎名鯛造(2021年)

ショーターの後任者としてチャイナタウンのストリートキッズを束ねる。初めはショーターを殺害したアッシュを恨んでいたが、真実を知った後は同盟関係を結んだ。
ブランカによって襲撃されけがを負った英二の安全と引き換えにアッシュがディノに捕縛された際には、英二らと共にアッシュ奪還のために動く。作戦は成功したが強大な敵を相手にメンバー達は疲弊し、シンは異母兄であるラオと揉め事を起こしてしまった。さらにひそかに英二殺害を指示されていた部下が発砲し、英二が重体に陥ったことでアッシュは怒りに任せてシンの部下を粛正した。
このことがきっかけでシンは同盟関係を解消することとなり、落とし前としてシンはアッシュに決闘を申し出るが、本心は「自分の命一つで揉め事を治める為」であった。シンを殺されたくない異母兄のラオはアッシュに不満や怒りをぶちまけて組織を抜けてしまう。アッシュは仲間のために命を張ったシンの覚悟を認めたが、フォックスとの決着がつくまでは同盟関係を維持することでまとまった。
フォックス、ディノとの決着をつけるべくアッシュ一人で乗り込んだ際には、ブランカと共にアッシュの救出に向かう。しかしシンが高所から足を滑らせ、落ちかけたことをきっかけにアッシュは絶体絶命のピンチに陥った。そこを思いがけずディオに救われ生き延びた二人は「決闘はやめよう」と和解する。
しかし英二が帰国するという知らせをシンがアッシュに届けた後、国立図書館にいたアッシュは空港に向かおうとしたところをラオに襲撃される。アッシュとシンが和解したことを知らないラオは、シンを守るためにアッシュを撃とうと考えたのだった。最終的にラオはアッシュに殺されるが、アッシュも怪我が致命傷となりその場で息絶えた。
アッシュの死から九年後は、英二と共にニューヨークで暮らしている。

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