キャットストリート(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ
『キャットストリート』とは2004年から2007年の3年間神尾葉子が『別冊マーガレット』で連載したヒューマンストーリーである。かつて人気子役だった主人公・青山恵都(あおやま けいと)。9歳で芸能界を引退してからは不登校になり、ずっと引きこもりの生活を送っていたが、16歳の彼女の前にフリースクール「エル・リストン」へ誘う男が現れる。「エル・リストン」で様々な人間と出会い再び恵都は女優復帰を目指す。2008年にNHKでドラマ化され、谷村美月が主演を演じた。
フランスのノルマンディー地方でよく見られる屋根につける猫の飾り。深夜、屋根の上で猫の集会がありそれをキャットストリートと呼ぶ。住民が外に出て空を見上げると猫たちが気高く人間を見下ろしている様子をモチーフに作られたもの。恵都は、その猫たちが集まる様子を恵都、玲、紅葉、浩一の4人に似ていると思った。そして恵都はエル・リストンを再建築する際に、エル・リストンの屋根の上に4匹の猫を集めたキャットストリートを飾った。
『キャットストリート』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
野田紅葉「だってあたし達みんな野良猫みたいなもんだもの」
玲のバイト先のファミレスで、玲のかつてのサッカーチームの部員から侮辱された玲を、恵都たちがかばった後の帰り道での場面。この時恵都はまだ紅葉と浩一に自分がかつて芸能人であったことを伝えていなかった。玲がなぜエル・リストンに来るようになったのか明らかになったことで、恵都も自分の過去を紅葉と浩一に伝えようとした。すると紅葉が、「知ってる。天才子役青山恵都でしょ」と、先に言ってくれた。そして「でもそんなの私たちにとって全然関係ないよ」と恵都を変に特別扱いしなかった。その理由を紅葉が表現したのが、「だってあたし達みんな野良猫みたいなもんだもの」というこの言葉である。野良猫のように、どこにも属せず自由に生きている。皆、事情はあるが地位や肩書きは紅葉たちにとって関係なかった。たとえ恵都のようにかつて子役として失敗したとしても、それは過去の出来事であり芸能人だからと言って興味本位で接したりしない。この「あたし達のみんな野良猫みたいなもんだもの」という紅葉の言葉に玲がうなずき、浩一が微笑んだ。彼らは言葉にしなくても紅葉と思いは一緒である。こうして、恵都は初めて本当の仲間に出会うことができたのだ。
青山恵都「とり返せ、あたしの失敗を。肩にのしかかる記憶を自分の力でふきとばせ」
奈子が出演予定だったミュージックビデオは、奈子の突然の失踪により、撮影が困難となっていた。奈子のマネージャーは奈子の代役を恵都にお願いした。その理由のひとつに、奈子が残した置き手紙に「このPVの出演はケイトにさせてあげてください」と書かれていたからだ。また、奈子のマネージャーは恵都がかつて奈子と一緒に「サニーデイズ」の舞台に立ったことを知っていた。だから、恵都に代役を頼んだ。しかし、カメラの前で演技をするのは7年ぶりの恵都である。かなりのブランクと、過去の「サニーデイズ」の舞台での大失態が恵都にまとわりつく。「できません、私には」と一旦恵都は断った。しかし、奈子のマネージャーは恵都が「サニーデイズ」の舞台を降ろされたあと、奈子が恵都の分まで朝と夜の2部を1人で演じきったことを伝える。さらに、恵都には紅葉、玲、浩一のように夢や目標がない自分が不甲斐ない気がしていた。それは浩一が言った言葉も影響している。浩一が「俺たちはいつまでもあんたを助けてあげられない。過去の重荷は自分で吹き飛ばすしかない」と恵都に言ったのだ。浩一の言葉は恵都の核心をついていた。トラウマから克服するには、自分と向き合うしかないのである。浩一の言葉と、奈子がかつて自分の分まで頑張ってくれたことに背中を押された恵都は、奈子の代役を務めることを決意する。そのとき、恵都は心の中で「とり返せ、あたしの失敗を。肩にのしかかる記憶を自分の力でふきとばせ」と強く言った。恵都の表情も決意がにじみ出て、目つきがはっきりしている。このことがきっかけで、恵都は芸能界へ復帰する第一歩を踏み出すことになる。その決意がこの言葉で表現されている。
小島「動き出すことに早いとか遅いとかはないよ」
エル・リストンのスクール長・小島が入院している病院へお見舞いに行った恵都が、小島から言われた言葉である。小島はベットに横たわりながら、過去の恵都や浩一のことを思い返していた。浩一は、中学を卒業してすぐエル・リストンにやってきた。高校に行きたくないと行っていた浩一は、エル・リストンに入った当初から誰とも口をきかなかった。どうしたものかと思った小島は、何かにつけて壊れたラジオや機械の修理を浩一に頼んだ。浩一は小さくため息をつきながらも、嬉しそうに修理してくれた。そんな浩一は会社を設立し、社長にまでなっている。恵都もまた同じく、初めから順風満帆な人生ではないのだ。かつて子役を失敗しひこもりをしていた恵都だが、小島を見舞っている現在では、ドラマや映画に引っ張りだこである。見舞いにきた恵都の目を見ながら小島は、「動きだすことに早いとか遅いとかはないよ」と言ってくれた。何か人生で失敗し、そこで立ち止まったとしても焦る必要はないということである。人が未来に向かって歩き出すタイミングは、十人十色である。そのことを小島は教えてくれた。
恵都と浩一が抱き合う場面
恵都は、浩一と2年ぶりに再会したあと浩一への恋心に気が付く。玲と交際している間も、浩一のことばかり考えていたし、浩一から「もう面倒なんだ」と拒否されたときは恵都はとても傷ついた。再会してから、浩一に告白する恵都だが浩一は困った表情を見せた。浩一は臆病で恵都のことを想っていたものの、本気で恋愛をして自分が傷つくのを恐れていたのだ。しかし浩一は恵都のことを諦められなかった。「俺はやっぱり恵都の人生から出ていきたくない」と浩一は自分の気持ちを伝える。その言葉に恵都は「出ていかないで」と言いながら浩一を優しく抱きしめた。そして「あたしの人生に浩一がいないと幸せになれないんだ」と恵都は浩一の存在の大切さを伝える。2人は目にうっすらと涙を浮かべながら互いに抱きしめ合った。恵都は浩一の温もりを感じ、幸せな気持ちになった。
『キャットストリート』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
作者が『キャットストリート』に込めた思い
原作者・神尾葉子が高校生の頃、理由はないが神尾自身も学校に行きたくない時期があった。そんな時は学校をサボり江ノ島に海を見に行ったりしていた。時々サボってはいたものの高校は卒業することができた。その理由を神尾は「高校の時に一緒にいてくれる友達がいたから」と語っている。高校を卒業し、30年以上は経っているが、その当時の友人は神尾にとって大事な存在である。どんな時でも、自分に寄り添ってくれる友達がいることの大切さを神尾は『キャットストリート』に込めた。
『キャットストリート』のヒロインは黒髪にしない
神尾の作品には、黒髪のヒロインが多く登場している。代表的な作品に『花より男子』がある。ヒロインの牧野つくしと恋人の道明寺司(どうみょうじ つかさ)はどちらも黒髪である。さらに脇役で2人黒髪のキャラクターを描いている。10年以上『花より男子』を書き続けた神尾は、黒髪を描く際にべた塗りをするため、ページが真っ暗になるのを嫌がった。だから、『キャットストリート』のヒロイン・青山恵都は黒髪にしないという目標を立てた神尾であった。
ドラマ『キャットストリート』の主題歌・挿入歌
主題歌:いきものがかり「プラネタリウム」(エピックレコードジャパン)
作詞作曲は水野良樹。いきものがかり11枚目のシングル。2008年10月15日にエピックレコードジャパンから発売された。前作「ブルーバード」から約3か月ぶりに発売された。初回仕様限定盤には特典として「いきものカード006・007・008」のうち1枚がランダムで封入されている。
挿入歌:kagrra(カグラ)「四月一日」(キングレコード)
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目次 - Contents
- 『キャットストリート』の概要
- 『キャットストリート』のあらすじ・ストーリー
- 元天才子役の負った深い傷
- 初めての友達
- 初恋の失恋
- 過去と決着
- 交差する思い
- それぞれの道を歩く4人
- 結ばれる2人
- 結ばれる2人
- 『キャットストリート』の登場人物・キャラクター
- エル・リストン
- 青山恵都(あおやま けいと)
- 佐伯玲(さえき れい)
- 野田紅葉(のだ もみじ)
- 峰浩一(みね こういち)
- 小島(こじま)
- マーサ
- 恵都を取り巻くキャラクター
- 園田奈子(そのだ なこ)
- 原沢大洋(はらさわ たいよう)
- 平野ユミ(ひらの ゆみ)
- 恵都の家族
- 青山知佳(あおやま ちか)
- 恵都の母
- 恵都を誘拐した2人組
- なつみ
- 隆(たかし)
- 『キャットストリート』の用語
- エル・リストン
- コックス・コーム
- キャットストリート
- 『キャットストリート』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 野田紅葉「だってあたし達みんな野良猫みたいなもんだもの」
- 青山恵都「とり返せ、あたしの失敗を。肩にのしかかる記憶を自分の力でふきとばせ」
- 小島「動き出すことに早いとか遅いとかはないよ」
- 恵都と浩一が抱き合う場面
- 『キャットストリート』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 作者が『キャットストリート』に込めた思い
- 『キャットストリート』のヒロインは黒髪にしない
- ドラマ『キャットストリート』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:いきものがかり「プラネタリウム」(エピックレコードジャパン)
- 挿入歌:kagrra(カグラ)「四月一日」(キングレコード)