虎と狼(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『虎と狼』とは2009年から2012年の3年間神尾葉子が『別冊マーガレット』で連載した青春ストーリーである。「ひまわり食堂」を切り盛りするヒロイン鳥沢美以(とりさわ みい)と、客としてやってきた男2人、大上謙(オオカミ)と千谷虎次(トラ)の3人が織りなす青春ストーリーである。冷酷なオオカミと優しいトラは対照的な二人であるが、美以の人生に様々な影響を及ぼし彼女を成長させてゆく。
河田の指示で万引きをしようとしていたところを、オオカミは見ていた。そして、河田に反抗出来ず言われるがままに学校生活を送っている宇都宮に「やりたきゃやればいい。ただ誰かの為に何かやろうとも死ぬときゃ一人だ。誰もお前のそばにはいない」とオオカミは言った。今宇都宮がやろうとしていること=万引きが、河田のご機嫌取りにつながろうとも、そこに友情はなく、宇都宮を真に大事に思ってくれる人がいなくなる、ということをオオカミは教えた。宇都宮はこのオオカミの言葉で万引きを辞めた。さらに、資料室にオオカミと美以を閉じ込めた時も河田はこの言葉を反芻し、正直にトラに白状した。このオオカミの言葉は宇都宮が心を改めたきっかけになった。
オオカミ「俺が作ったもんは味が足りてないだろ?それは個性ってやつだ。人間も同じ。みんなどっか足りないもんなんだよ。」
弥生がトラへ告白したことを知った美以は、トラになんて返事をしたかトラに聞く。するとトラは「10代の女子にありがちな感情」と冷たく言い放つ。弥生のトラへの真剣な恋心を近くで見てきた美以は「人の心がわからないひとに、誰かの心を打つ絵なんて描けない」と怒る美以。このことで、美以とトラはギクシャクし、トラはひまわり食堂に来なくなった。その間まともな食事をしていなかったトラは空腹のあまり倒れる。オオカミはトラを看病しようとするが何を食べさせたらいいかわからない。そこで、ひまわり食堂にいる美以を強引にトラの部屋へ連れ出す。オオカミは味のないおかゆを作る。美以は料理が得意なので定食をさっと作る。オオカミと美以の作った料理を食べ比べて、オオカミの味のなさに美以とトラは驚く。しかしオオカミは、「鳥沢が作ったもんはうまいに決まってる。プロだから。俺が作ったもんは味が足りないだろう?」という。その違いを「個性ってやつだ。人間も同じ。みんなどっか足りないもんなんだよ」と言うオオカミ。料理の味の違いを、人間たちの個性と捉えて話したオオカミである。人間一人一人どこか足りないものを補うために生きている、とオオカミは優しく言った。この言葉で、美以とトラは仲直りできた。
鳥沢美以「オオカミを悪く言うのはゆるさない」
小谷紅子の嘘で、オオカミは教師を辞めることになってしまう。それは、オオカミが美以のことをかばったからである。紅子は生徒をかばったオオカミのことも「気持ち悪い先生」だと悪口を言い始める。その言葉に対して「オオカミを悪く言うのはゆるさない」と美以が反撃する場面である。今までは紅子の巧妙な嘘に舌が回らず、ただ立ちすくむ美以だったが、この時から逞しくなった。オオカミのことを守るという気持ちが美以を強くさせた。
オオカミ、美以にキス
恥ずかしがり屋で素直になれないオオカミは、美以のことを好きだとは言えない。美以が告白した時抱きしめてくれたものの、美以はオオカミに好きだと言って欲しいと思っていた。大手レストランチェーンが美以の就職を決めた時、突然オオカミは美以に会いに来る。オオカミは忙しい合間をぬって会いにきてくれたが、肝心の言葉を言ってくれないのでギクシャクする美以。このまま変な空気でオオカミが仕事に行ってしまい、また会えなくなると思った美以は涙が溢れてくる。それを見たオオカミはキスをする。この突然のキスに固まる美以だった。気持ちを言葉にするよりも、行動にうつすオオカミの性格がわかる場面である。
『虎と狼』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
作者もBL好き
この『虎と狼』の原作者である神尾葉子も、実はBL作品を好んでいた。神尾氏が14歳、中学生の頃は「まんがの主人公は男!女はいらん!沢山男がでてくるまんが!全員美形。これぜったい」というようなことばかり考えていたらしい。神尾氏が中学生の頃はまだ「BL」という言葉が存在していなかった。そのため友達に「この男とこの男が付き合ったら…」などと話すといやがられたという。
作品に出てくる料理は、作者が外食を撮影したもの
第1話のトラとオオカミに料理を出す場面では、定食がリアルに描かれている。また、学園祭で美以がつくるロコモコ丼(ハンバーグと目玉焼きをご飯の上にのせた丼)も、白黒の漫画でありながら本物のような描写である。これら『虎と狼』に出てくる料理は、神尾が実際の外食を自身で撮影したものである。カメラを手にして食べに行った店で撮影したものを参考に、料理の絵は描かれた。
作者は料理をしない
『虎と狼』の中には美味しそうな料理がたくさん描かれている。どれもリアリティがある。しかし、作者の神尾はあまり料理をしない。たまにストレスが溜まって、どうにもいかないときに料理をする。
Related Articles関連記事
キャットストリート(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ
『キャットストリート』とは2004年から2007年の3年間神尾葉子が『別冊マーガレット』で連載したヒューマンストーリーである。かつて人気子役だった主人公・青山恵都(あおやま けいと)。9歳で芸能界を引退してからは不登校になり、ずっと引きこもりの生活を送っていたが、16歳の彼女の前にフリースクール「エル・リストン」へ誘う男が現れる。「エル・リストン」で様々な人間と出会い再び恵都は女優復帰を目指す。2008年にNHKでドラマ化され、谷村美月が主演を演じた。
Read Article
花より男子(花男)のネタバレ解説・考察まとめ
『花より男子』とは、『マーガレット』(集英社)で1992年から2004年まで連載され大ヒットとなった神尾葉子の少女漫画。単行本発行部数は5940万部を超え、「最も多く発行された単一作者による少女コミック」としてギネス世界記録に認定された。電子版を含む国内の累計発行部数は6100万部以上となっている。アニメ化に留まらず、実写ドラマや映画もされ、人気に拍車をかけた。また、台湾や韓国でもテレビドラマ化されており、世界中から愛される作品となっている。
Read Article
花のち晴れ〜花男 Next Season〜(花晴れ)のネタバレ解説・考察まとめ
『花のち晴れ〜花男 Next Season〜(花晴れ)』とは、神尾葉子の漫画『花より男子』の続編として、2015年から『少年ジャンプ+』で連載されていた漫画である。2018年にはドラマ化もされた。 F4卒業から2年後の英徳学園を舞台に、学園に相応しくない資産状況の生徒を追放する「C5(コレクト5)」のリーダー神楽木晴(かぐらぎ はると)と、元社長令嬢で現在は庶民の主人公・江戸川音(えどがわ おと)を中心としたラブコメディーだ。 『花男』と同一世界の物語のため、前作のキャラクターも登場する。
Read Article
まつりスペシャル(漫画)のネタバレ解説・考察まとめ
『まつりスペシャル』とは2007年から2009年まで、集英社『ジャンプスクエア』で連載された青春漫画である。作者は神尾葉子。主人公の羽生まつり(はにゅう まつり)は女子高校生でありながら、覆面レスラーとして日々実家の「まごころプロレス」のリングにあがる。プロレスラーとしての顔は秘密にしているが、ある日クラスメイトの重松荒太(しげまつ あらた)に正体がバレてしまう。少女漫画要素の「恋愛」と、少年漫画要素の「格闘技」を織り交ぜた作品である。かつ神尾が初めて少年漫画として連載した漫画だ。
Read Article
【花より男子】シビれるカッコ良さ!松本潤演じる道明寺司の名言・名セリフまとめ
日本中に一大ブームを巻き起こしたドラマ『花より男子』。学園を牛耳る「F4」の1人・道明寺司を演じたのは、嵐の松本潤でした。道明寺のドSな性格とツンデレぶりは、まさにそんなイメージのある松潤そのものですよね!この記事では、彼が演じる道明寺の名言・名セリフについてまとめました。不器用ながらもただ一途につくしを想う道明寺の言葉には、もうシビれます!
Read Article
【花より男子】嵐・松本潤が演じた道明寺司の迷言まとめ!「仏の顔も3つある」などの面白発言も!
『花より男子』に登場する道明寺司の迷言・迷セリフをまとめてみました。ドラマ版で嵐の松本潤が演じたことでも話題となった道明寺は、俺様な性格のイケメンですが、勉強が苦手という一面もあります。そんな彼が発した面白い発言をたくさん集めたので、作品のファンはもちろん、松本潤のファンも、ぜひチェックしてみてください。
Read Article
胸きゅんが止まらない!おすすめの恋愛ドラマまとめ【花より男子など】
見れば胸きゅんが止まらない、おすすめの恋愛ドラマをまとめました。「花より男子」や「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~」など、放送時に大きな話題となった作品を網羅。ハッピーエンドから悲恋ものまで、様々な恋愛ドラマのあらすじやレビューを紹介していきます。
Read Article
少女マンガのイケメンキャラ大集合!かっこよすぎて辛いかも!?
少女マンガに登場するかっこいいイケメンキャラクターをまとめた。『イタズラなKiss』や『花より男子』など世代を超えて愛される作品ばかりである。一体どんなイケメンが登場するのかぜひチェックしてみてほしい。
Read Article
いじめをテーマにしたおすすめ漫画まとめ【『花より男子』など】
いじめをテーマにしたおすすめ漫画をまとめました。『ライフ』や『GTO』、『花より男子』など学校でのいじめを描いた作品や、人気作家・安野モヨコが世の女性に衝撃を与えた『脂肪という名の服を着て』など、各作品のおすすめポイントを交えながら紹介していきます。
Read Article
実写映画の評判が意外と高かった少女漫画まとめ!『花より男子』『ハチミツとクローバー』など
漫画が実写化されると聞くと、「やめてくれ!」と思う方はきっと多いことでしょう。実写化ってだいたい原作と内容を変えてきたりするし、配役を見たときに「この人は違う…」といった幻滅を抱いたりしがちですものね。そんな中、いざ実写化されてみると意外に高評価だった少女漫画があるので、この記事でまとめてみました。原作しか読んだことがない方は、ぜひ映画も一度観てみてください。評価が変わるかもしれませんよ。
Read Article
タグ - Tags
目次 - Contents
- 『虎と狼』の概要
- 『虎と狼』のあらすじ・ストーリー
- 美以、トラとオオカミとの出会い
- トラとオオカミが学校の先生に
- トラへの恋
- 美以の失恋
- デストロイヤー紅子
- すべての真実が明らかに
- ひまわり食堂復活
- 『虎と狼』の登場人物・キャラクター
- ひまわり食堂
- 鳥沢美以(とりさわ みい)
- 美以のおばあちゃん
- 学園の先生たち
- 千谷虎次 (せんごく とらじ)
- 大上謙 (おおかみ けん)
- 森下(もりした)
- 東山(ひがしやま)
- 学園の友達
- 八戸弥生(はちのへ やよい)
- 関獅子雄(せき ししお)
- 河田 (かわた)
- 宇都宮(うつのみや)
- 小谷紅子(こたに べにこ)
- 『虎と狼』の用語
- ひまわり食堂
- おかもち
- BL小説
- 『虎と狼』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 鳥沢美以「ごちゃごちゃ言うのは食べてみてから!!」
- オオカミ「飯をうまく作るのは才能で個性だ。それを生かして何が悪い。」
- オオカミ「やりたきゃやればいい。ただ誰かの為に何かやろうとも死ぬときゃ一人だ。誰もお前のそばにはいない。」
- オオカミ「俺が作ったもんは味が足りてないだろ?それは個性ってやつだ。人間も同じ。みんなどっか足りないもんなんだよ。」
- 鳥沢美以「オオカミを悪く言うのはゆるさない」
- オオカミ、美以にキス
- 『虎と狼』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 作者もBL好き
- 作品に出てくる料理は、作者が外食を撮影したもの
- 作者は料理をしない