ムカデ人間(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『ムカデ人間』とは2011年に公開されたオランダのホラー映画。過激で奇想天外、下劣な内容により日本ではDVDのみの予定だったがネットの口コミで話題となり、本国でも劇場公開できることになった。全部で3作あるうちの1作目である。シャム双生児の分離手術の名医であったヨーゼフ・ハイター博士はある密かな願望を抱いていた。今までやってきた分離手術とは反対に、人同士の口と肛門を繋げ「ムカデ人間」を作りたいということ。ある日タイヤがパンクし助けを求めてきた女性二人とその後捕らえた男性を使い「ムカデ人間」を作る。
「ムカデ人間」を作る半年前、ハイター博士が自分の夢を叶えるためにまず3匹の犬を繋げ「ムカデ犬」を作った。写真には黒い大型犬が縦に並び、それらは口と肛門が繋がっていた。2匹のと3匹がもの2枚ある。3匹ともロットワイヤー犬という警察犬などに使われることの多い大型犬である。本作中に「ムカデ犬」という言葉では表現されていないがまさにその状態だった。手術前に1匹逃げ出し、罰としてその犬を一番辛い「真ん中」にした。「ムカデ人間」でもこの犬のように逃げ出したリンジーが「真ん中」になった。すぐに「ムカデ犬」は死んでしまったが、ハイター博士は「成功した」とし満足していた。彼らの亡骸を庭に大事に埋め、「わが愛する3匹の犬」と墓標を建てた。ハイター博士は「ムカデ犬」の写真を大事に持ち歩き、寝室の写真立てにも飾ってある。
『ムカデ人間』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
カツロー「ごめん ごめんよぅ、ごめんよぅ、ごめん」
「ムカデ人間」にされてしまったカツローが便意を催した時に後ろに繋がれているリンジーに向けて言ったセリフ。食べ物を食べることができるのは先頭のカツローだけである。自然と最初に便を出すのは彼となる。罪悪感を感じながらも我慢できずに脱糞してしまう。それを口で受けなくてはいけないリンジーに対して「ごめん ごめんよぅ、ごめんよぅ、ごめん」と言う。申し訳なさと憤りを感じて泣いて詫びるカツローは、自由のきかない絶望に苛まれている。
カツロー「たとえこれがあなたの与えた天罰だとしても、俺は人間であると信じたいです!」
繋がれた状態でリンジーとジェニーを連れ、なんとか激しい体の痛みに耐えながら脱出しようとしたが後一歩のところでハイター博士に追いつかれてしまう。絶望し、観念したカツローがにじり寄ってくるハイター博士を前に自嘲し、涙しながら言ったセリフ。全文は「神様、神様ですか?俺は虫ケラです。親を捨て、子供を捨てて、愛を拒絶して生きてきました。虫ケラ。虫ケラ以下の存在です。でも、でも神様。たとえそうだとしても。たとえこれがあなたの与えた天罰だとしても、俺は人間であると信じたいです!」そう言って自らガラス片で首を切った。
「ムカデ人間」の完成に歓喜するハイター博士
3人に手術を行い「ムカデ人間」を作ったハイター博士。とうとう禁忌に触れてしまったのだ。自分のしてしまったことをなんとも思わないどころか号泣し感激している姿はとても人間の所業とは思えない。繋がれた3人は人間として生きることを彼によって奪われた。
『ムカデ人間』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
ハイター博士のモデルとなった実在の人物「ヨーゼフ・メンゲレ」
出典: ja.wikipedia.org
ヨーゼフ・メンゲレ(1911年3月16日〜1979年2月7日)は、本作の主人公、ヨーゼフ・ハイターのモデルとなった人物である。ドイツ、ナチス時代に実在した医師・ナチス親衛大尉。大学で遺伝学、医学、人類学を研究し博士号も取得している。のちに国家社会主義ドイツ労働者党(通称ナチス党、ナチ党)に入党し軍医として勤務していた。さまざまな功績を授与され強制収容所の主任医官となる。その時に送られてきた囚人たちをガス室に送るべき人間、人体実験に役立つ人間と選別していく。クラシックを好んでいたメンゲレは、この選別作業や人体実験中に口ずさんでいたという。
倫理に反する人体実験を重ねるメンゲレは双子に対し異常なほど執着していた。数千もの実験対象を集め肢体の切断、性器の転換その他の残忍な外科手術が行われた。そして2つの臓器が同じ身体で正常に機能するかを確認するために双子の背中同士を縫い合わせて静脈を縫い合わせることで人工的に「結合双生児(シャム双生児)」を作った。悪性の感染症にかかってしまうだけであり、とても成功とは言えないものだった。癒着した双子は痛みに泣くだけでとても見てられないものだった。我が子を繋がれてしまった親は数日後に彼らを窒息死させたという。メンゲレの手に掛かった3000人の双子のうち生き延びたのはたったの180人。しかしいずれも後遺症や精神的ショックにより苦しみ続けた。
実際の医学的には「ムカデ人間」実現は不可能
本作では「ムカデ人間」を作ることに対して、医学的根拠があるように描かれている。実際に可能なのか実在の外科医(ルイーズ・オーウェン医師とフィリップ・コークレー医師)が医療系メディア、Medical Dailyのインタビューに答えている。結果は「NO」である。
一番最初に「糞尿を食べる」ということに対して疑問視される。
コークレー医師「すべての人間は本能的にどんな糞便でも吐き出すようになっている。これは喉元で強制的に起こることです」
出典: www.excite.co.jp
オーウェン医師「吐きたいのに吐けない、つまり行き場を失くした嘔吐物(胃酸と糞便)は、呼吸困難と肺炎を引き起こすでしょう」
出典: www.excite.co.jp
このことから強制的に糞便を食べてしまう、というプロセスは現実的ではないということがわかる。そしてその状態に泣き続けると鼻水が詰まり窒息するとも指摘している。そして繋がれたまま逃げる(動く)ことに関しても指摘している。
「細菌が血液にのって全身をめぐるなかで、最も影響を及ぼすのは言うまでもなく脳です。繋がれたムカデたちは考えることもままならなくなり、脱出を計画するどころか、命令に従うことすらできるかわからない」
出典: www.excite.co.jp
糞便などによる感染症の上に動くたびに外科手術を施した患部からの大量出血に耐えなければならない。そういったことを踏まえ、映画のように「ムカデ人間」のまま数日間生きることは不可能という結論となった。
「ムカデ人間あぅ、ごめん ごめんよぅ、ごめんよぅ、ごめん カレー」が発売
出典: www.amazon.co.jp
【製品概要】
商品名:『ムカデ人間』あぅ、ごめん ごめんよぅ、ごめんよぅ、ごめん カレー
価格:¥600(税抜)
発売:2015年7月下旬
内容量:200g
賞味期限:24ヶ月(開封前)
出典: hs-days.com
「先頭」を担当したカツローが不本意に脱糞してしまった衝撃のシーンを、カツロー役・北村昭博監修で作ったというカレー。悪趣味な代物だが中身はちゃんとしたカレーであり、現在は品切れとなっている。
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目次 - Contents
- 『ムカデ人間』の概要
- 『ムカデ人間』のあらすじ・ストーリー
- プロローグ
- ハイター邸
- ムカデ人間
- ハイター邸からの脱出
- ムカデ人間誕生
- 訪問者
- 地下室からの脱出
- エピローグ
- 『ムカデ人間』の登場人物
- ヨーゼフ・ハイター博士/演:ディーター・ラーザー
- リンジー/演:アシュリー・C・ウィリアムズ
- ジェニー/演:アシュリン・イェニー
- カツロー/演:北村 昭博
- クランツ刑事/演:アンドリュー・レオポルド
- フェラー刑事/演:ピーター・フランケンシュタイン
- エイミー/演:ローズマリー・アナベラ
- 『ムカデ人間』の用語
- シャム双生児
- ムカデ犬
- 『ムカデ人間』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- カツロー「ごめん ごめんよぅ、ごめんよぅ、ごめん」
- カツロー「たとえこれがあなたの与えた天罰だとしても、俺は人間であると信じたいです!」
- 「ムカデ人間」の完成に歓喜するハイター博士
- 『ムカデ人間』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- ハイター博士のモデルとなった実在の人物「ヨーゼフ・メンゲレ」
- 実際の医学的には「ムカデ人間」実現は不可能
- 「ムカデ人間あぅ、ごめん ごめんよぅ、ごめんよぅ、ごめん カレー」が発売