風夏(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『風夏』とは週刊少年マガジンにて4年間(2014年2月〜2018年4月)連載されていた瀬尾公治原作の日本の漫画、およびそれを原作としたアニメ作品。ロックバンドを題材とした漫画でジャンルとしては青春・恋愛・ヒューマンドラマに分類される。内向的な主人公・榛名優が秋月風夏と出会い、人間的に成長していく様子、彼らが結成するバンドが憧れのバンドへと追いついていく様子が描かれる。物語序盤で主要キャラが交通事故で亡くなるため、人間の死と向き合い、乗り越えていくヒューマンドラマの要素が大きい。

ヒロインの死から生まれるヒューマンドラマ

風夏を語る上で外せないのは、やはりヒロイン秋月風夏の死だろう。原作中では序盤も序盤、バンドとしても、恋愛としても、これから物語が盛り上がっていくと思っていた矢先に事故が起こる。秋月風夏の姿が無くなった中で、碧井風夏というヒロインが現れる。碧井風夏がバンドにはいることはバンドとしてのパフォーマンスの向上のためにも必要なことだと誰もが思っていた。だがバンドメンバーにとっては秋月風夏の代わりなんていないという考えや、同じ名前のせいもあり碧井風夏を秋月風夏と重ねてしまうことがメンバーにとってのネックとなり受け入れるのに時間がかかる。碧井風夏を秋月風夏の代わりではなく1人の人間として見れたときに彼らは秋月風夏の死を乗り越えたといえるのだろう。死を乗り越えたわけではなく、長い時間をかけて、様々な経験や人との会話を積み重ねた末に秋月風夏の死が過去になる。現実の人間の死を考えても直ぐに割り切れるわけはない為、作品内のキャラクターの心情は丁寧でありリアリティがあるといえる。
碧井風夏もまた、秋月風夏の関係者であった。交通事故を起こしたトラック運転手の娘であり、当日の朝に体調が優れない父を仕事に送り出したことに責任を感じていた。秋月風夏の死が「The fallen moon」メンバーにとって、切り離せない出来事であると考えると、碧井風夏以外の加入は考えられず、彼女の加入は必然的にも思えてくる。

SNSによる人とのつながりの描き方

本作ではSNSが度々登場する。SNSを通じた変化、物語初期の優の内気な性格を表すアイテムとして携帯電話やSNSが多用される。
優はクラスの人気者である三笠に対して「僕だってフォロワー数489人いるし」と小さな抵抗を見せる。人間関係をめんどくさく感じた時は「リアルな人間関係もツイッターみたいにブロックできればいいのに」、氷無小雪が自分の部屋に居る状況を見て「これツイートしたらどれだけ拡散されるんだろう」と何かとSNSに絡めて独り言を呟く。SNSが悪いという訳ではなく優にとってのSNSは逃げ道として描かれることが多い。現実世界では心ここに在らずでSNSのことばかりを考えており、現実逃避を繰り返しているのだった。対する風夏はSNSどころか携帯電話も持っていない。優は影響され、次第に携帯離れしていく。そんな中でも大きな転換期となったのは、「The fallen moon」としての初めてのライブの舞台である文化祭だった。氷無小雪とのツーショット写真を撮られた優は炎上を経験し、ライブ会場はアンチによって溢れかえる。ネットの世界での誹謗中傷を経験した時に、味方でいてくれたのは現実世界の人間だった。バンドメンバー、家族、「HEDGE HOGS」、知人の声援があったからこそ優はステージに立てるのだった。
頑なにダメなものとして描くのではなく良いところと悪いところの多面的な描き方をしている。風夏の死後、風夏が携帯にメッセージを残していたからこそ優は立ち直れた。権力によってメディアに出れなかった「Blue Wells」を世界に広めたのはネットの力だった。長所と短所、どちらのケースもSNSを介して人とのつながりの尊さを描いている。

瀬尾公治の他作品とクロスオーバーする世界観

瀬尾公治作品の中でも『風夏』、『君のいる町』、『涼夏』、『ヒットマン』は世界観がクロスオーバーしている。分かり易く言うと、同じ世界に存在しているということである。1作の漫画を長年連載し続ける漫画家が多い中で、代表作をいくつも産み出している作者だからこそできる漫画の楽しみ方だ。
原作内には作者の他作品『涼夏』から秋月大和、秋月涼夏、『君のいる町』から桐島青人、枝葉柚希、御島明日香他、が登場する。その他にも作中のちょい役で過去作のキャラクターが登場している。作者の過去作を読んでいる人ほど楽しめるつくりとなっている。原作184話「君のいるフェス。」は1話丸々が『君のいる町』のキャラクターにフォーカスされ物語が構成されている。『風夏』が終わった後でも他作品でキャラクター達を拝める可能性があるという訳だ。「Blue Wells」のワールドツアーやその後の様子が描かれる可能性も高い。

風夏の主題歌・挿入歌

OP(オープニング):沼倉愛美「Climber's High!」

作品内では「HEDGE HOGS」の代表曲の1つとして扱われる。「The fallen moon」が初めて演奏した楽曲。アニメOPでは氷無小雪の声優を務めている沼倉愛美が歌っている。原作内でも氷無小雪がステージ上でこの楽曲を歌うシーンがあるため、原作ファンはさらに楽しめる。アニメ内では「The fallen moon」ver.も披露される。ロックバンド‘‘my first story‘‘のメンバーが編曲に参加しており、「HEDGE HOGS」の代表曲に相応しいバンドサウンドとして仕上がっている。

挿入歌:秋月風夏(CV:Lynn) / The fallen moon『for you』

「The fallen moon」の楽曲であり、原作とアニメで制作の過程は異なるが、大きなテーマとしては同じである。アニメにおいては全編、秋月風夏が榛名優のことを思って書いた曲。原作では1番は同じだが、それ以降は優が風夏に向けたラブソングとなっている。武道館のラビッツの前座にて初披露される。

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