結界師(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『結界師』とは、『週刊少年サンデー』で連載していた田辺イエロウによる日本の漫画作品。『週刊少年サンデー』で2003年47号から2011年19号まで連載され、2006年度(第52回)小学館漫画賞少年向け部門受賞。テレビアニメは2006年10月から2008年2月まで読売テレビ制作で放送。主人公、墨村良守は古くから続く結界師の一族である。隣に住む幼馴染の雪村時音とともに、夜の学校を舞台に「結界術」を使って妖怪を退治し、烏森という霊的エネルギーが集まる場所を外敵から守るために日々奔走する物語である。

ある日、裏会の総本部から助っ人として、氷浦蒼士(ひうらそうじ)と言う男の子が現れる。
氷浦は以前、神佑地で交戦した顔を隠した男で、良守は不信を抱く。また、氷浦は感情や人格が欠如していた。しかし氷浦とともに過ごす内に、良守は氷浦の人となりを知り、徐々に親しい間柄になっていった。

そんな中、烏森に二体の大きな妖が現れる。良守は氷浦と共闘して倒すことができたが、その一方で、烏森の敷地に二人組がいたことが閃から知らされる。
また、良守も烏森の悲鳴のようなものを感知し、何か恐ろしいことが起こるという危機感を抱いた。

そこで、結界術の真髄に迫る術を祖父である繁守に教えを乞う。それは「無想(むそう)」と言い、どんな力にさらされても自分を保つことができ、より強く安定した力が出せるというものだった。
無想状態になるため、専用の部屋で修行をする。

すると部屋の番人である二股の猫、縞野(しまの)が現れる。縞野は良守に、無想とは烏森が暴走したとしても、その力の影響を受けずに烏森を押さえつけるためのものであると語る。
そして、烏森は自ら相手を選び力を分け与える。烏森に最も選ばれているもの、それが良守であり、烏森の「共鳴者」であると言う。

揺れる裏会

烏森やその周囲で事件が起きている中、裏会の中でも不可解な事件が起きていた。裏会・総本部長、そして、裏会・十二人会の幹部らが何者かに殺されたのだ。
これらの事件が起きるのと同じくして良守の前に現れた男・扇七郎(おうぎしちろう)。裏会や烏森で起きている事件の糸を引いている男・裏会総帥である逢海日永(おうみにちなが)。
良守たちもまだ知らない巨大な陰謀が巻き起ころうとしていた。

良守たちがいつものようにお役目を果たしていると、突然ピエロが出現し、烏森学園の地面を宙に浮き上がらせた。そして、良守が空を見上げると、閃が以前見た二人組がいた。
その二人組はミチルとカケルと言い、まじない師であった。そして、二人のもとに現れた壱号(いちごう)と弍号(にごう)と呼ばれる異能者たち。カケルは、空にある黒い円を取り囲むように、太い刃を5本地面から生やした。そしてその刃を回転させて街を壊すと言う。
カケルが烏森に来たのは、それが目的だったのだ。

同じ頃、正守は十二人会のナンバー2である夢路久臣(ゆめじまさおみ)の屋敷に来ていた。
正守は一連の騒動に、裏会の総帥が関わっているとにらんでいた。久臣の前で、正守は、何者かに殺された奥久尼を呼び出す。霊体となっている彼女だが、誰が自分を殺したのかはわからないと言う。しかし、一連の騒動の根幹にたどり着いていた。

それは、裏会は400年前に兄弟である総帥と久臣が創設したこと。そして、兄である総帥の手によって裏会が壊されていることだった。
そこで正守は、「これは結局は、お前らの兄弟喧嘩のせいである」と吐き捨てる。しかし、そこで何者かの奇襲を受ける。混乱の最中、久臣は行方を眩ましたが、正守は奇襲の犯人と対峙する。

彼は、自身を零号(ぜろごう)と名乗り、総帥直属の戦闘斑であると言う。零は「お前は手のひらで踊っているだけだ」と、近くにいるであろう久臣に、総帥の言伝を伝える。
正守は久臣を探し出し話をしようとするが、久臣は正守を信用できないと切り捨てる。両者が膠着状態になってる中、零号の攻撃で久臣は死んでしまうのだった。

良守たちは、カケルたちと未だ交戦中だった。良守は自身を無想状態にし、自分の力を制御させる存在・管理者を出現させる。味方と協力し、街を破壊しようとする刃を消滅させた。

正守は、残された幹部とともに新しく裏会を立て直すことを決め動き出した。良守たちは戦いを終えて疲れを癒していたが、氷浦が居なくなってしまった。
突然のことで消沈する良守だったが、家を開けていた母親である守美子が帰ってきた。守美子は、烏森に封じられている魂を違う場所に移すために帰ってきたのだった。

烏森の秘密

烏森の正体、それは魂蔵(たまぐら)を宿した人間が封印されたものであった。魂蔵とは力を無限に蓄えられる力である。封印されていたのは、宙心丸(ちゅうしんまる)という名の着物を着た小さな子供だったのだ。
宙心丸を烏森の外に連れ出した良守は、烏森の力、つまり宙心丸を封印するために守美子とともに烏森を離れることになった。

良守たちがやってきたのは、廃屋のような一軒家。宙心丸を封印するために良守が身につけなければならない技術を取得するために来たのだった。
しかしその夜、廃屋の周りを妖が囲んでいた。そしてそこには、1体の妖と共にいる一人の男が立っていた。

男の名は間時守。400年前に烏森家に使え、間流結界術(はざまりゅうけっかいじゅつ)を作った結界師だった。時守は、良守の力量を測るために試したのだった。
良守は、時守のもと封印のための修行を開始する。良守が目指す最終的な終着点は、真界。良守が無意識でやっていた真界を、完全なものにしなければならなかった。
良守は、時守の宙心丸への態度を見て、宙心丸が時守の子供だと確信する。なぜ宙心丸に本当のことを話さないのかという良守に、時守は語り出す。

400年前、時守は烏森家の当主に雇われた。妖に娘が狙われているとのことだったが、実はその娘である月影(つきかげ)が、妖怪を見たくて自ら呼び寄せていたのだ。
その事実に辟易しつつ、自分も収入を得ることができるからと、月影に付き合う時守。そうしている内に、月影は時守の心の闇に気づき、彼を癒してくれた。
その結果、時守は月影に惹かれ、月影は宙心丸を身籠ったのだった。

しかし当主に仲を引き裂かれ、時守は復讐をする。その復讐とは、いずれ烏森家を継ぐであろう我が子、宙心丸に異能の力を与えるというものだった。
それが原因で、月影は死に、烏森家は滅んでしまった。

宙心丸は力を注ぐことも奪うこともできたが、それを制御できなかったので、人間も妖も近づくことができなかった。
時守は、宙心丸の力を封じるため、安らかに過ごせる場所を見つけるために各地を巡る。そしてウロ様が当時、神佑地としていた烏森の地を見つけ出したのだった。

宙心丸を烏森に封印した時守だったが、その封印は完全なものではなかった。そこで烏森を管理する人材を集めた。それが雪村家と墨村家だった。
そして、正統後継者に出る方印も家に伝わるしきたりも、全ては烏森に縛り付けるためにあるものだと打ち明ける。時守は宙心丸を完全に封印するために、その力を持つ者が現れるのを霊体になっても400年も待ち続けたのだ。
そして、その人物が現れた。それが守美子だった。

決着

今まで裏で糸を引いていた裏会総帥・日永だったが、ついに表立って行動を開始した。
日永は、扇一族の本拠地を襲撃し、自身の精神支配によって扇家に使える者たちを洗脳し従えていった。そして、支配した者たちを連れて姿を消したのだった。

さらに日永は、十二人会の本部にも襲撃をしかけた。そして、その場にいた正守を除く幹部を洗脳していった。
撤退を余儀なくされた正守は、十二人会を脱退していた竜姫(たつき)のもとを訪れ、裏会を救ってくれるように懇願する。
竜姫は、独自に総帥を討つために人を集めていた。その中に正守を加えるつもりだったと言う。

そして、竜姫と正守の他に、十二人会・元幹部の鬼童院ぬら(きどういんぬら)、銀魅霞玄(しろみかげん)、扇家次期当主の扇七郎を加えた五人が集まった。
そこで正守はある予言を聞く。それは、総帥を討つのは正守であるというものだった。
決行は明日の晩。舞台は裏会本部がある地・覇久魔(はくま)。そして、守美子と時守が宙心丸を封印する地に選んだのも、この覇久魔(はくま)だった。

そしてついに最後の決戦が始まった。竜姫たちが覇久魔に攻撃をしかけたのだ。
しかしその時、裏会の内部も揺れていた。今の日永の妹である遥(はるか)と日永の世話をしていた水月(すいげつ)が行方を眩ませてしまったのだ。
遥は魂蔵持ちであり、日永はその観に宿した力を使い術を行使していた。遥がいなければ力を使う操にも限界があったのだ。

手をこまねいている日永のもとに零号が現れる。そして、零号は主人であるはずの日永に対して剣を突き立てたのだった。
零号は夢路久臣に支配を乗っ取られていたのだ。久臣の真の名は逢海月久(おうみつきひさ)だった。

月久は、日永を拘束して投降し、新たに生まれ変わった裏会の幹部に乗り移るという計画を話す。しかし日永は、自分の精神支配の力の象徴である海蛇を出して反撃し、月久を討つのだった。
そこに正守が現れた。正守が自分を殺しにきたと悟った日永は、全てを正守に打ち明け始めた。

日永は嘗て、天女のように美しい女性・水月に恋をし、彼女を妻にした。しかしある時、異能者たちの怪しげな宴に遭遇した。その宴を取り仕切っていたのが月久だった。
それから、日永と水月は月久によって記憶を消され記憶を書き換えられ、いいように操られていたのだ。
“今までの自分”という自己同一性の根底が崩れた日永には、月久に復讐することしか残っていなかったのだった。

そこに行方を眩ませていた水月と遥が現れる。
なぜこんなことをしたのか、もう気は済んだのか問う水月。日永は水月が拒めば復讐を止めるつもりだったと言い、全ては水月のためにやったことだと答えた。

するとそこへ、時音を背に乗せた女の形をしたものが飛来する。
それは、この世界を眺め、命を与えて命を奪う”眺める者”(ながめるもの)だった。”眺める者”は、神佑地の力を溜め込んでいた遥の命を奪ってしまった。日永は、”眺める者”の出現を神の審判であると感じた。

自分の命と引き換えに遥の命を返してもらうように頼むが、それを”眺める者”は一蹴してしまう。水月はならば自分が代わりに命を差し出すと言うと、その命の価値を認めた”眺める者”はその申し出を容認した。
日永は水月にこれまでのことを詫びて、水月の制止も聞かずに正守が展開していた絶界の中に、自分の本体を晒して飛び込み消滅していった。そして水月も自ら”眺める者”に食われたのだった。

残るは、宙心丸を覇久魔の地に封印することのみ。良守は、宙心丸が過ごしやすいように、広大な範囲に城と城下町を作り上げた。
そして、宙心丸が寂しくないようにこれまで出会った人物や妖を作り出した。良守は、その中に自分のわがままと言って限も作り出した。そして中から封印する人物が必要であったため、守美子が結界の中に残ることになった。

良守は後は消えていくだけだという時守に対して力を使い、結界の中で実体化できるようにした。
そして、時守を殴りつける。宙心丸のそばにいて、いつか自分が父親であることを打ち明けるように言い、外に出て行くのだった。

結界師として役目を終えた雪村家と墨村家には変化が訪れていた。
繁守は雪村家を訪れてお茶を飲み合っていた。良守も、時音を自分の家に上げて一緒にお菓子作りをしていた。そして、自分たちの未来について話すのだった。

『結界師』の登場人物・キャラクター

墨村家

墨村良守(すみむら よしもり)

墨村良守

CV:吉野裕行
本作の主人公。墨村家22代目(予定)。私立烏森学園中等部3年。14歳。正統継承者。墨村家の正統継承者は右手の平に方印が出るため、方印を持っている良守が継承者である。家族構成は、祖父、父、母、兄、弟。母親はほとんど家におらず時折帰ってくる程度。
お菓子作りが趣味であり、夢はお菓子の城を作る事。日々研究しており、学校ではお菓子の城の設計図を描き、放課後は台所で作成している。9歳の時、時音が怪我の療養中にお菓子の城が食べたいと知ったのがきっかけである。しかし、祖父には反対されており、西洋かぶれ呼ばわりされている。お菓子の制作中に台所に押し入り良守の邪魔をしようとし、結界術を使った攻防を繰り広げるのがお約束になっている。
授業中は昼寝をしていることが多く、枕を持参している。教師に注意されるがまったく起きず、半ば諦められている。
結界師としては、荒削りで精密さは乏しいが、パワーと持久力に優れ戦いの中で成長していくタイプ。烏森について自分なりに考えており、烏森の持つ特異性について疑問を持つ。そして、烏森を永遠に封印することを誓う。良守の行動原理は、全てが時音が要因である。烏森の封印も、時音が傷つかずに済むようにするにはどうすれば良いのかを良守なりに考えた結果である。しかし、14歳ということもあってか、時音に対してなかなか素直になれず、不用意な発言をして怒られたりしている。

墨村繁守(すみむら しげもり)

墨村繁守

CV:多田野曜平
良守の祖父。墨村家21代目当主。68歳〔正統継承者〕。雪村時子にこそ劣るものの、強力な術者。好物はだし巻き卵。
現在、時子との仲は口論だけに収まらないほど悪い。しかし若い頃は一緒に烏森を守っていたこともあり、憎み合っているというわけでもなく、一人で抱え込むタイプの時子を気遣ったり、もしものときは共闘したりする。
頑固で口やかましい性格であり古からのしきたりを大事にしているため、良守とはそりが合わない。正統継承者の自覚が無い良守に手を焼いているが、墨村・雪村の垣根を越え次の世代のことを考えたり、正統継承者ではない守美子、正守の身を父や祖父として心配したりしている。良守に対しても、本人には口にしないが案じたり、成長を期待している。

墨村正守(すみむら まさもり)

墨村正守

CV:宮内敦士
裏会・実行部隊"夜行"の頭領。十二人会第七客。
21歳。良守と利守の兄。結界師。腕利きの術者で、かなり頭も切れ、弟の良守や烏森の力を試すなど、強かな性格をしている。常に和服だが、家に帰ってきた時は父の買ってきたTシャツを着ることもある(良守曰くダサい)。斑尾曰く体に薄い膜を張っているため臭いがしないためか、斑尾や白尾からはあまり好かれていない。結界師であるため精神系の能力にかなり敏感であり、精神系の攻撃を絶界で防ぐこともできるため、精神系の能力者でも考えがまったく読めないことからその手の異能者からも良く思われないことが多い。間流結界術を高いレベルで行使できる他、さらに強力な絶界、異界との抜け道の作成、空間の綻びの修正などさまざまな技術に精通しており、かなり上級の術者であることがうかがえる。
繁守の反対を押し切って裏会に所属したり、良守の力を試すために妖を烏森に放ったり夜未を烏森にけしかけるなど、物語の序盤では裏で暗躍しているような印象だった。しかし、正守の根底にあるのは烏森を守ることであり、そのために、敵の懐に飛び込んで行ったり、危ない橋を渡ろうとしたりすることもある。
良守と同じく、クリームソーダやチョコレートパフェ、和菓子などを好む甘党であり、喫茶店で夜未と会う時は、たいてい甘いものを食べており、夜未に似合わないと言われている。

墨村利守(すみむら としもり)

墨村利守

CV:川庄美雪
良守の弟。三影小学校3年1組。9歳。図書委員を務めており、愛称は「トショ」。兄たちの才能に少々コンプレックスを抱いているが、幼いながらも良守に気を遣えるしっかりもの。結界師としての力もあり、不十分ながら結界術を使うこともできる。

墨村守美子(ゆきむら すみこ)

墨村守美子(右)

CV:金野恵子
良守の母、繁守の娘。作中トップクラスの異能者。繁守曰く「放蕩娘」。
人間らしい情緒が備わっおらず、感情と呼べるものもなく他者の気持ちも慮ることもできない。結界師としての能力は極めて高く、土地神クラスの龍を手玉に取ったり、殺すこともできるほどの実力者。開祖である間時守に「次元の違う術者」、無想を使った良守に「足元にも及ばない」と言わしめている。
宙心丸には今ひとつ気に入られず、正当継承者にはなれなかったが、それでも宙心丸の力を色濃く受けている。そして、守美子が時守と出会ったことにより、烏森の封印計画が大きく動き出すこととなった。なぜ家を空けて全国各地を放浪しているかは物語終盤まで誰も分からなかったが、それは宙心丸の封印場所の選定をしていたからである。
家事が壊滅的に苦手であり、ケーキを焼けば焦し、洗濯物も満足に畳むことができない。また、子供たちに母親として何一つしてやれなかったことを彼女なりに悩んでいたようである。
真白湖に行ったことがあるようで、そのため裏会の調査室からは神佑地狩りの疑いをかけられている。その証拠として写真に守美子らしき人物の後ろ姿が写っていた。また、過去には土地神のまだ生まれていない子供に言われ、親である土地神を殺したこともあった。宙心丸を覇久魔で完全に封印するため、墨村家に自身の7割程度の記憶・能力を有する自分そっくりの式神を送り、良守に修行をつけた。その後覇久魔の地で発動された良守の真界の中に残り、中から真界を完全に閉じて宙心丸を封印した。結果自身は真界から二度と外に出られなくなった為、最後に式神を残して夫への感謝の言葉を伝えた。

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