同級生(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『同級生』とは2006年より中村明日美子が『OPERA』(茜新社)で連載していたBL漫画、およびアニメ映画。「まじめにゆっくり恋をしよう。」をコンセプトに描かれた高校生のピュアな純愛ボーイズラブ作品。性格も見た目も真逆な佐条と草壁は高校2年生の時に同じクラスになり、合唱祭を通じて恋愛が始まる。ジャンルの違う者同士、男同士で付き合うこと、進路や受験などに日々迷いながらも、まじめにゆっくり恋愛していく。この漫画からBLにハマる人が続出するなど、青春BL漫画の不朽の名作と言われている。

『同級生』の概要

『同級生』とは2006年より中村明日美子が『OPERA』(茜新社)で連載していたBL漫画、およびアニメ映画である。シリーズ化されており『同級生』→『卒業生』→『O.B.』→『blanc』と続き、スピンオフ作品として『空と原』がある。時系列順でいうと『同級生』→『卒業生」』→『空と原』→『O.B.』→『blanc』となる。
作者の中村明日美子は2000年の大学生時代に『月刊マンガF』(太田出版)にて第3回エロティクスマンガ賞佳作を受賞。ボーイズラブ以外にも主に少女漫画、挿絵など多数の作品が存在する。
同漫画はドラマCD化もされており、2016年には劇場版アニメも公開となった。『O.B.』から6年後の2020年、シリーズ最新作となる『blanc』が刊行され物語はハッピーエンドを迎えた。
『同級生』では、性格も見た目も真逆な佐条と草壁が高校2年生で同じクラスになり、合唱祭を通じて恋愛が始まる。ジャンルの違う者同士、男同士で付き合うこと、進路や受験などに日々迷いながらも、まじめにゆっくり恋愛していく。『卒業生』では2人が高校を卒業するまでを、『O.B.』では卒業後の2人の様子を、『blanc』では結婚に至るまでが描かれており、『空と原』では2人の高校の先生だった原の恋愛模様が描かれている。
劇場版『同級生』は、原作漫画に忠実に作られているが、原と佐条の出会いの話のみ省略されている。水彩画タッチの画に、押尾コータローのギターBGMが、ゆっくりとした時の流れと爽やかさを醸し出している作品である。

『同級生』のあらすじ・ストーリー

『同級生』

馴初め

私立東府第一高等学校に通う同じクラスの草壁光(以後草壁)と佐条利人(以後佐条)は、正反対のタイプだった。金髪にロン毛、ピアスにバンド活動といわゆる不良の草壁。一方佐条はメガネにサラッとした黒髪の絵に描いたような優等生である。
高校二年生の夏、合唱祭の練習中に草壁は佐条が歌わずに口パクしていることに気づいた。歌が苦手だった佐条は人目につかない場所で一人練習を続けていたが、たまたまその場面を目撃した草壁は、思わず個人レッスンを申し出る。
その後佐条を無意識に目で追うようになった草壁は、佐条が歌を頑張る理由は音楽教師である原先生のためではないかと思い始めた。合唱祭前日の個人レッスンの際そのことを草壁が訪ねると、佐条は驚いて持っていたサイダーを落としてしまう。
落としたサイダーを拾おうとした草壁の手と自分で拾おうとした佐条の手が重なった時、草壁は無意識のうちに佐条にキスをしてしまうのだった。当日、練習の成果が表れてちゃんと歌っている佐条を見た草壁は、感動して思わず泣きだしてしまう。自分でも驚いた草壁は本番中にもかかわらず飛び出していき、佐条も草壁を追いかける。二人はお互いのことが好きなのだと確認し合うと、近くにあった小屋に隠れてもう一度キスを交わした。

原先生

両思いになったものの、佐条は男同士で付き合うことに対する視線を気にして、草壁に「付き合ってない」「キスはもうしない」と突き離す。草壁は思いもよらない言葉に落ち込んでいた。
そんな中、進路希望の紙を白紙で出した草壁は進路指導室に呼ばれる。そこで待っていた原に「オマエと佐条ってちょっと前まで仲良かったよな。俺はあいつのこと1年の時から知ってた」と皮肉じみたことを言われる。実は原は1年の入学式に来る途中に倒れた佐条を介抱しており、その際に密かに佐条に恋心を抱いていたのだった。立場上卒業まで待つつもりだったが、草壁が現れて内心焦っていたのである。
原は次に佐条を呼び出し、「男同士でつきあうってどういうことかわかってる?佐条、草壁は“そう“じゃないよ」と元気がない様子の佐条を諭した。一方、進路指導室での原の皮肉じみたあの言葉が引っかかっていた草壁は、急いで学校に戻り進路指導室に駆け込む。今にも佐条にキスしようとする原が目に入り、草壁は原を殴って佐条を急いで連れ出した。
そして、佐条に対し改めてちゃんと言葉にして「つきあってください」と告げるのだった。

草壁のバンドのライブ

高校3年生になった佐条は初めて予備校帰りに草壁のバンド活動の様子を観るが、そこで草壁が女子に人気があることを知ってしまう。しかも草壁はファンの女の子から連絡先を好感してほしいと誘われ、快諾したのである。
ショックを受けた佐条はライブハウスで誤って受け取ってしまったビールを飲み干して会場を飛び出すと、草壁からの連絡を何度も無視してしまった。最終的に着信拒否になってしまっても草壁は諦めず、公衆電話から連絡を取り、ようやく公園の砂場で寝そべる佐条と再会する。佐条は「僕といて楽しい?」と問いかけると、草壁は「1番だよ。佐条が1番だ」と真顔で答えるのだった。

二度目の夏

周囲は進路のことで頭がいっぱいの中、草壁の頭の中はキスから進展しない佐条との関係のことばかりだった。男同士で付き合うことに関して先輩である原にアドバイスをもらおうとするが、話の流れで佐条が京都大学を目指していることを原から聞いてしまう。
そんなこと一切聞かされてなかった草壁は、関係がどうなってしまうのか不安になり佐条に詰め寄ってしまう。佐条は言えずにいたことをうまく説明できず、「僕だって全然お前のこと知らないよ!」と喧嘩になりすれ違ってしまう。
お互いに傷つき連絡を絶っている間、草壁はバイクの免許合宿へ友達と向かう。佐条は予備校への電車の中で草壁とのことを考えると不安で体調を崩す日々を送っていた。模試の日、また電車で気分が悪くなってしまった佐条に、草壁から久しぶりに電話が来る。
途中で意識が遠のいた佐条が再び目覚めるとホームに横たわる自分と心配する草壁がいた。模試に間に合わないと血の気が引く佐条を草壁は免許取り立てのバイクに乗せて模試会場へとすっ飛ばした。その最中で草壁は受験を頑張っている佐条に対して1人置いていかれた気分になって卑屈になったことを謝る。そして「どーいうふうに生きても後悔するときはあるし 、逆に得るものもあると思ってんだよね。 でも今んとこ佐条と別れるっていう選択肢はないんだ」と自分の思いを告げる。そんな草壁に佐条も「僕もない」と答えるのだった。ギリギリ模試に間に合った佐条は仲直りできたことで吹っ切れ、模試も無事に終えたがもう結果などどうでも良くなっていた。ただ草壁がそばにいればそれでいいと心が軽くなっていた。

『卒業生』

ー冬ー

受験が迫る冬になった。2人は予備校終わりに喫茶店でのデートを楽しみにしていた。途中草壁ファンの女の子から連絡が来たが、「大事な時間なので」と断ってしまう。そんな様子に嬉しく思う佐条だったが、次にかかってきた「山崎」という人の電話に即座に出る草壁を見てスネて帰ってしまい、冷静になって自己嫌悪に陥るのだった。
原は音楽が苦手な佐条をいいことに、歌の再テストを繰り返し佐条と一緒にいられる時間を作っていた。佐条に予備校の時間まで飯に行こうと誘い、佐条は昨夜草壁が即座に出た電話の待ち合わせ場所である渋谷を指定。佐条は原に草壁のことになると心を掻き乱される心情を相談するも、佐条を諦め切れていない原は「それは恋だ」とは言えずはぐらかす。ふと外を見た佐条の目に女性と待ち合わせをする草壁が映り、佐条は店を飛び出す。
追いかけた原は佐条を落ち着かせるためにホテルに部屋をとった。佐条のケータイを使い草壁に「今ホテルにいる」とヒヤヒヤさせる電話をかける。傷心の佐条はやけにエロく、理性を抑えるのに必死な原。急にドアがけたたましく叩かれ、必死の形相の草壁が現れる。ホテルに2人を残し原は去って行った。

草壁は、「アイツがちょっと佐条にさわるだけで妬けて妬けて狂いそうになる」胸中を告げる。佐条も負けじと女性と会っていたことを問うと、草壁は本気で音楽をやりたいという本心を照れ臭そうに話し始めた。会っていた女性は音楽事務所の人だったのだ。夢を抱く草壁をかっこいいと思う佐条とは裏腹に、佐条にかっこいいところを見せたいのにまだちゃんと進路が形になっていない自分が恥ずかしいようだった。いい雰囲気になりつつも予備校の時間が近づき、「お前に進路があるように僕にも進路があるんだから」と佐条は去っていった。

原の過去

原が高校生の頃の話。音楽室でピアノの弾き語りをしていたところに新しく来た先生が顔を覗かせた。専門は化学だがピアノが好きとのことで、原は先生が少し弾いた『メヌエット』を教えて欲しいとお願いしレッスンをしてもらう。
初めて話すはずなのに自分の名前を知っている先生に「前っから俺の名前知ってたんですか」と問うと、先生は頬を赤らめ狼狽えた。その姿を見てキスを迫ると先生は抵抗することなく、原を抱きしめてきた。体制が崩れてバーンとピアノの大きな音とともに我に帰った先生は、「ごめん」とだけ言い残し去って行った。それが2人にとって最初で最後のキスだった。
その後、原はクラスメイトが先生が男なのに産休を取った話をしているのを耳にする。先生を訪ねた原は今日は外していない結婚指輪とともにこの前の件を問う。「君は僕の名前も知らなかったろ。それでいいんだ」となかったことにしてほしいと言う。原は1人、大人は勝手だと失恋を嘆いた。

手袋

草壁と佐条は相変わらず予備校終わりのデートを重ねていた。草壁は佐条の手がカサカサなことに気づき、ふと手袋をあげたいなと思う。そんな草壁の思いはつゆ知らず、佐条は原から誕生日プレゼントとして手袋をもらう。
次の予備校終わりのデートで佐条が原にもらった手袋をしていることに妬いた草壁は学校で原に「カゲでコソコソ人のもんに手ー出しやがって」とくってかかるが「ビビってんのかガキ」と応戦する。2人揃って青タンを作り保健室に行った2人の元に噂を聞きつけた佐条が来る。原は佐条に「オマエって草壁のモンなの?」と問う。佐条は「…そうです、半分」と顔を赤らめながら頷いた。その答えを聞いた原は保健室を出て行った。
草壁は「あの手袋むちゃくちゃ妬けるからしないで」とお願いし、代わりの手袋を2人で買いに向かった。実は誕生日だったのは佐条ではなく原であった。佐条の誕生日にプレゼントをするのは草壁が絶対許さないと思った原は、自分の誕生日に「佐条にプレゼントを貰ってもらう」というプレゼントが欲しかったのだ。

2人揃って青タンを作り保健室に行った2人の元に噂を聞きつけた佐条が来る。原は佐条に「オマエって草壁のモンなの?」と問う。
佐条は「…そうです、半分」と顔を赤らめながら頷いた。その答えを聞いた原は保健室を出て行った。草壁は「あの手袋むちゃくちゃ妬けるからしないで」とお願いし、代わりの手袋を2人で買いに向かった。
実は誕生日だったのは佐条ではなく原であった。佐条の誕生日にプレゼントをするのは草壁が絶対許さないと思った原は、自分の誕生日に「佐条にプレゼントを貰ってもらう」というプレゼントが欲しかったのだ。

母の病気

受験が近づく中、佐条の母親にガンが見つかり入院することになった。父親は海外のため家事も見舞いも1人でやることになった。「大丈夫」と無表情で草壁に状況を説明する佐条を心配する草壁。
慣れない状況にだんだんと疲れが溜まり余裕がなくなった佐条は、母親に当たってしまう。そのことで心身ともに限界になった佐条は予備校をサボり夕飯を作ってくれた草壁と共に過ごすことで心を癒す。

母親の手術日が決まり、草壁は「匿名で」と言ってたくさんのCDを佐条に託す。CDを見た母親は懐かしそうにしており、ふと佐条の顔を見て「彼女でもできた?」と問いかけた。佐条は「…男なんだ。つき合ってるの…ごめん…」と返すと母は草壁に会いたがった。お見舞いが終わるまで外で待っていた草壁を母に会わせると、「この子…いろいろわがままだけど…よろしくね」と言われ草壁は嬉しくて涙が流れた。
病室を出て待合室へ移動した佐条と草壁。草壁はいつも「大丈夫?」と佐条に問いかけてしまう自分を不甲斐なく思っていたが、佐条は「その言葉が支えになっていた」と返す。手術が無事に終わった後、ホッとした佐条は草壁に抱き着いて涙し、草壁も弱さを見せてくれた佐条を嬉しく思った。

京大入試

ついに入試の日が近づく中、佐条と草壁は結婚が原因でケンカ中だった。いつかは結婚を望む楽観的な草壁に対し、佐条は男同士での結婚のリスクを訴える。
ケンカ以降草壁から連絡が何も来ないことを気にしつつ、佐条は京都へと出発した。京都へ着いてすぐに草壁から連絡が来て、遥々バイクで京都まできた草壁と驚きながらも合流する。草壁は「この前はごめんね」と謝りつつ、「根本は間違ってないと思う」とも話す。草壁はすごく怒っていると思っていた佐条は、京都まで来てくれたことが内心とても嬉しかった。
泊まるところを決めていなかった草壁は、佐条の京都での暮らしの拠点となる予定の家に泊まることになった。明日は試験だから手を出すまいとしていた草壁に佐条から誘いをかけ、2人の関係は少し前進する。
そして翌日、草壁が心の安定剤となった佐条は凛々しく試験へと向かって行った。

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