同級生(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『同級生』とは2006年より中村明日美子が『OPERA』(茜新社)で連載していたBL漫画、およびアニメ映画。「まじめにゆっくり恋をしよう。」をコンセプトに描かれた高校生のピュアな純愛ボーイズラブ作品。性格も見た目も真逆な佐条と草壁は高校2年生の時に同じクラスになり、合唱祭を通じて恋愛が始まる。ジャンルの違う者同士、男同士で付き合うこと、進路や受験などに日々迷いながらも、まじめにゆっくり恋愛していく。この漫画からBLにハマる人が続出するなど、青春BL漫画の不朽の名作と言われている。

卒業

佐条は無事に京都大学薬学部へ現役合格し、離れるのは寂しいけどがんばっている姿を見てきた草壁は心から祝福する。
ようやく受験が終わったお祝いに水族館でデートしていたが、草壁はどこか浮かない顔だった。そんな時草壁の電話が鳴り、海外バンドのサポートを依頼される。チャンスだから行った方がいいと佐条に促された草壁はサポートを承諾した。二人はお互いのマフラーを交換し、草壁は旅立った。

草壁が帰国して学校に着いたのはみんなが整列し出した卒業式ギリギリの時だった。佐条と目が合うなり草壁は「トイレ行ってくる」と列を抜ける。その姿を佐条が追っていくと階段で草壁が待っていた。草壁が「2年のときの教室見にいかない?」と誘い、卒業式をサボって2人で教室へ向かう。この教室で恋におちたと懐かしむ草壁。しかし些細なことから感情的な言い争いに発展してしまった。それでもお互いを想い合っているのは変わらず、佐条はずっと言えなかった自分の想いを涙ながらに伝える。
佐条の心の内を聞いた草壁は佐条を抱きしめ「20歳になったら結婚して」と涙しながら伝える。その言葉に佐条は「…はい」と頷いた。誰もいない教室、遠くから仰げば尊しが聞こえる中、二人は初めて身体を重ねた。卒業式が終わり、原は二人に「卒業式サボっただろ」と問い詰める。二人の雰囲気から何があったか察した原。
そんな原に草壁は「俺たち結婚することにしたから」と報告する。それなら「ここで誓いのキスをしろ」と、他の生徒が騒ぎまくっている廊下で言い放つが草壁は躊躇なくキスをするのだった。こうして同級生だった季節が終わった。

『空と原』

新入生

教師の原学は教え子の佐条に恋をしていたが、報われないまま佐条は卒業していき、37歳独身の日々を送っていた。久しぶりにゲイの盛り場に赴いた原は、眼鏡をかけたどことなく佐条に似た若い男と口づけを交わし、一夜を共にしようとするが佐条がよぎり若い男を置いてその場を去った。
一度きりの関係だと思っていたその若い男・青砥空乃(あおとそらの )は後日校内でばったり再会し、15歳の新入生であることがわかる。関係を続けたい空乃に対して原は「生徒とわかった以上俺は一切手を出さん」と凄む。
そんな会話をしていたところに卒業アルバムを取りに来た佐条が来る。佐条と原の様子をじっと見ていた空乃は原の想い人が佐条であることを悟る。その後もなんやかんや絡んできては傷を掘り返す空乃に原はそっけなく対応していた。
そんな中、空乃がまた盛り場へと来ていて「やばいやつに捕まりそうだ」と知り合いから連絡があり、原は急いで空乃をその場から連れ出す。空乃が盛り場へ赴いていたのは失恋からだった。しんどい恋はもうしたくないと言う空乃に原は「しんどくねぇ恋なんかあるわけねえだろ。なるようにしかならない」と諭す。

デート

佐条とのデートを提案してきた空乃の一言に拒否しつつもつい考えてしまう原。グダグダとデートに後ろ向きな原に、「じゃあ俺とデートしましょう」と一方的に日時だけ伝えて空乃は帰っていった。
言われた日時に一応足を運ぶとそこには空乃ではなく佐条が待っていた。空乃は佐条を引きずっている原のために佐条にデートをお願いしたのだった。
草壁にも空乃が承諾を取ったと聞き、原はせっかく作ってくれたこの時間を大事に過ごすことにし、ご飯や映画を楽しむ。映画終わりに外で一服しながら一年のころの話になった。原は冗談混じりに「1年のとき俺のこと好きだった?」と佐条に尋ねてみた。すると佐条は何も言わず顔を赤らめた。
そんな二人の様子を空乃と草壁は隠れながらもずっと見ていた。原は佐条と別れた帰り際に空乃を発見し、スッキリした顔で空乃に「ありがとな」と言う。

野球部

高校に入る前、空乃がフラれた相手は野球部の「フジノ」という同級生だった。
違う高校に行ったフジノから「今度お前の学校行く」とメールが入る。交流試合の日、1年のフジノは雑用係として奮闘していた。ドリンク作りに行く途中空乃とばったり会う。なぜフった自分にメールしてきたのか気になっていたが、空乃は「俺彼女できたよ」とウソをつく。その言葉にフジノはホッとしたような顔をし、試合に戻って行った。
その様子を影から見ていた原はそんなウソ良くないと空乃に詰め寄るが「自分の気持ちより大切なもんだってあるでしょ!?」と泣きそうな空乃を見て、原は無言で空乃の頭をなでた。
ちょうどその時、入院となった化学の先生の代理として急遽来ることになった新しい先生が到着した。その先生は、原の高校の苦い思い出の人「有坂先生」だった。

有坂先生

有坂と一緒に荷物を整理していた原は、有坂が結婚指輪をしていないことに気づく。そのころ空乃は原のゲイ仲間であるコマっちゃんといつの間にか仲良くなっており、話の流れでコマっちゃんのデザイン事務所で撮影モデルをすることになっていた。
よく原の話をする空乃にコマっちゃんは原をどう思っているのかと聞く。そこに同じくモデルとして調理専門学校に通う青年、響もやってきた。響は空乃の制服を見て、なぜか東一高だと気づく。響と東一高には何か関係があるようだった。

原は有坂の歓迎会で飲みに来ていた。だいぶ飲んだから帰ると言う有坂に「送ります」と原は付き添い、帰る前にもう一件飲みに誘った。有坂は「ずいぶん前に離婚したんだ」と、原との一件があったことで男が好きだということを再認識し、偽って生きるのは無理だと判断したことを話した。コマっちゃんに原のことを聞かれ自分の気持ちがどうなのか考える空乃。考えるより行動する派の空乃は思い切って原に電話をすると、有坂と別れ一人ヤケ酒をしていた。

そんな原と合流した空乃はベロベロになった原を原の家まで送った。空乃はなんでそんなに飲んだのか原に聞いた。ヤケ酒をしていた理由は、離婚の話を聞いた原が有坂に今恋人がいるのか聞いてみたことが原因だった。有坂は「恋人かなと思った人はいるけど…」と答えを濁した。何やら複雑な事情があるようだった。有坂の相手というのは元教え子であり、空乃がコマっちゃんのところで会った響だった。有坂と響は、卒業したら付き合うと約束していたが、響の親がそれを許さなかったのだ。原は有坂の「別れた方がいいのかもしれないなぁ」と言う言葉に喜んでしまった。有坂とどうにかなるかもと淡い期待を抱いてしまっていた自分に嫌悪し、ヤケ酒していたのだ。
そんな自己嫌悪した話を聞きながら空乃は原の布団に入り込んでくる。その様子にドキドキしてしまう原。結局原が抱き枕のような形で寝入った。先に起きた空乃は原にキスをする。そのことで原のことが好きなのかと自問し始める。

原が二日酔いで遅刻ギリギリに学校に着くと、そこには左頬に大きな傷を作った有坂がいた。酔っ払って転んだと言う有坂だが、原は交際相手に殴られたんじゃないかと問いただす。「こんなことする男とは別れましょう」と説得する原に「そうじゃない」と言いかけた有坂のケータイに電話がかかってくる。電話の相手は、響がケータイを離した隙にそのケータイを使ってかけてきた響の親からだった。途中で切れた電話に咄嗟に学校を飛び出して有坂は響の実家に向かった。
授業を放って飛び出した有坂を引き返させるため、原も後を追った。そのころ空乃はコマっちゃんのところでシャワーを借りていた。先に撮影のはずだった響と連絡が取れないことを知った空乃は、コマっちゃんに「俺が行くよ」と言って、響の家に向かう。そんな原と空乃は駅で偶然会った。
同じ駅に向かおうとしていることを知り、一緒に響の家へ向かうと、響の母親に叩かれる有坂を見つけた。世間体を気にする母親に変態と罵られる有坂、そこに原が仲介に入ると家から響が出きてた。
響は有坂にひどい態度を取る母親に罵声を浴びせるが、そんな響に有坂が頬を叩いた。母親に対して「もう二度と響君には会わない。教師も辞める」と謝る有坂。嫌だと泣き反対する響を両親が家に引き戻そうとする。その様子を見ていた原は有坂に「今彼と向き合わなくてどうするんだ」と問うと、有坂は響が好きだという本心を涙ながらに告げる。「余計なことしないで」と泣きわめく母親に原が殴られた。
響と有坂のところから去り、原と空乃は浜辺に来た。有坂の代わりに尻拭いをした原を空乃は「ヒトの幸せがどーとかってあんたの幸せはなんなんだよ!あんたはもっと…」と涙が溢れながら怒る。そして空乃は原のことが好きだと認めた。「俺が先生のこと幸せにしてやるよ。 二人で幸せになろう」と笑顔で原に告白するのだった。「とりあえず卒業してからだからな」と原は答えつつ頬を赤らめた。

『O.B.』

草壁と佐条、原と空乃、有坂と響などそれぞれのその後が描かれている。

草壁と佐条

草壁と佐条は、定期的に草壁がバイクで京都まで会いに行くことが日常になっていた。大学の課題に追われたりしながらも、2人はまるで新婚のような平和で幸せな限りあるひとときを楽しんでいた。佐条は学校で少しだが友達もできた。草壁のことも話せるくらいの友達もできていた。
そんなある日、草壁の幼馴染で佐条とも同級生だった谷から「デキ婚した」と連絡が来る。その話を聞いた佐条は、「草壁ならいい父親になっただろうなとか、そういう未来もきっとあったんだろうなと考える」ことを草壁に話す。そんな佐条に「なにもかもは無理でしょ。俺はそのときどきで1番ベストの選択をしてるつもりだし、それで幸せになる自信あるし、それで幸せにする自信もあるよ」と返す。佐条はそんな草壁にいつも救われるのだった。
そう言ってくれた草壁に対し佐条は「20歳になったら結婚してください…って僕からも言いたくなっちゃったから言っちゃった」と笑顔で草壁を見た。二人は一緒にいられることが変わらず幸せだった。
草壁が東京へ帰る日、草壁から「そのうちおんなじ苗字になるんだし下の名前で呼んでいい?」と提案される。その日から二人は下の名前で呼び合い始めた。

有坂と響

有坂と響は平穏に付き合いを続けていた。
有坂の娘が結婚することになった。その娘が「会いたいと言っている」と元奥さんから連絡が来る。その日は響との約束があったが娘さんに会った方がいいと響が促し、娘と会うことにした。
父親が着ていた服のセンスから彼女がいることを察した娘は「再婚はしないの?」と聞く。有坂は離婚の理由を娘に話し、響を2人の席に呼んだ。
離婚理由が有坂の恋愛対象が男だったからだと知った娘に「ごめん」と何度も謝る有坂。そんな有坂に娘は「あやまらないでよ!」と叫び、ショックと動揺から店を飛び出す。有坂は娘を追いかけ抱きしめ、申し訳ない気持ちとともにずっと会いたかったことを泣きながら伝える。

有坂の家に帰ってから、今日の様子の始終を見ていた響は、「自分といるといろんなことを諦めることになる気がする」と不安になる。有坂は「自分には手に入れられないものを響が諦めさせてくれたんだ」と自分だけの幸せの形を響のおかげで見つけられたことを伝えた。その日、終電までにはいつも帰されていた響は初めて泊まることを許してもらえた。

原と空乃

空乃は高校卒業後、バイトをしながらモデルの仕事をしていた。
原は空乃が高校卒業まで手を出さず、未成年だからとさらに2年プラトニックな関係が続いていた。ついに空乃が20歳になったある日、これで堂々と体の関係を持てると意気込んでいた空乃と原は、どちらがタチかネコかで揉めに揉める。結局根負けした原が下になる雰囲気になったものの、2人の初めてはうまくいかずに終わる。
次会える日を決めようとした時、原は母親の命日を思い出す。そしてその日に「父親にカミングアウトしようと思う」と空乃に話した。
当日「言えなかった」と肩を落とした原に空乃は「余計なこと言ってごめんね」と謝る。そんな空乃に原は「お前がいてくれてよかった」とぎゅっと抱きしめた。

『blanc』

結婚式

20歳の誕生日に指輪を贈り合った草壁と佐条だが、未だ結婚はしていなかった。同性カップルのパートナーシップ制度が徐々に広まってきており、草壁が「時期を見たほうがいい」と言ったのだ。佐条はショックを受けて徐々に疎遠となってしまう。草壁も貰った指輪を佐条に返していた。二人はそれぞれの周囲の人間から「本当に別れていいのか」と問われ、自分を見つめなおす。

そんな中佐条の母親の再入院が決まり、ステージ3のがんだという事が知らされた。草壁は忙しい佐条に代わって母親の見舞いに行くことを申し出る。気に入りそうな曲をピックアップした自作アルバムの中に、草壁は一曲だけ佐条にあてた思いをつづった曲を混ぜていた。佐条の母は曲を聞いて二人の関係が変化していることに気付く。そして「今でもあの子の一番はあなただと思う」と励ました。

その後佐条から母親が他界したという連絡を受け、草壁が病室へ向かうと、父親が現れる。「家族以外は出ていけ」という父親に対して、佐条は「彼は僕の恋人だ」と止めに入った。壮絶な言い争いの末草壁と二人きりになると、佐条は「恋人だなんて言ってごめん」と謝る。草壁は「俺はずっとそのつもりだよ」と応じたのだった。

葬儀の日「チャラチャラした髪しやがって」という言葉を受けた草壁は、坊主になって現れた。その姿を見た佐城は草壁を連れて外に飛び出し、今までの事を謝罪する。気持ちを確かめ合った二人は追いかけてきた父親に対して、「結婚します」と宣言した。

結婚式当日父親は姿を見せなかったが、懐かしい面々がお祝いに駆け付ける。するとそこに紙袋に入った大量のCDが届けられる。届けたのは父親だった。佐条は父親に対し「幸せです」とだけメールを返すのだった。

『同級生』の登場人物・キャラクター

佐条 利人(さじょう りひと)

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@kou_maria8786p2

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