サバイバル(さいとう・たかを)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『サバイバル』とは、原作・原案さいとう・たかを、作画さいとう・プロダクションによるサバイバル・ファンタジー漫画(劇画)作品である。
1976年から1978年にかけて『週刊少年サンデー(小学館)』にて連載されていた。
ある日、突如として世界中に発生した巨大地震を生き残った日本人少年・鈴木サトルが、文明の壊滅した世界で己が生存をかけて抗う姿を描く。
大自然に放り出された人間が、人類原初の生活に戻り、そこから創意工夫と勇気をもって少しずつ元の文明を取り戻そうとしていく様が読者を大いに惹きつける。

画像左からゲン、ご隠居、幹部。

大地震で崩壊した刑務所から脱獄した、死刑囚や終身刑囚の徒党。ゲンをボスとして、意見役に最年長のご隠居がいる。
ずっと刑務所の中にいたため、まだ文明が崩壊しているという事実を知らない。
(世界を滅ぼすほどの地震が起きて刑務所から脱出できたのだから気づきそうなものだが、頭が悪すぎるのか、ゲンとご隠居を含めた幹部以外、感づく者はいなかった。気づいている連中は、警察が機能していないと知れば労働力たる手下が逃走してしまうと危惧して気づかないフリをしている)

犯罪者らしく出会った途端にサトルを捕らえ、最終的にはゲンが威厳を示すためというくだらない理由で彼を殺そうとするが、一味の中で唯一良心が残っていたご隠居の離反によって失敗。ゲンは銃の暴発で死に、ご隠居もまもなく病死した。そして、残った連中もやっと世界は崩壊していて、もう自分たちを捕らえようとするものはどこにもいないのではと、うすうすながら感づいて瓦解。どこへともなく去っていった。

辰野

サバイバルの途中で出会った、元プロ野球選手。彼もまた生き残った仲間と共に集落を作って生き抜いていたが、致死的な感染病(いかなる感染病かは明らかにされていないが、作中での描写はインフルエンザに近い)がことごとく仲間の命を奪ってしまう。前述の親娘と違うのはサトルをも上回るすさまじいバイタリティの持ち主であることで、さらに防衛者のいなくなった畑を奪おうとした暴徒どもを撃退しつつも、その行動原理を許容する度量を兼ね備える人格者。
(そして暴徒たちは感染病でことごとく死亡するという、サトル以上の強運の持ち主でもある)

しばらくサトルと共同生活を構えていたが、家族との再会を夢に見てうなされていた彼の心情をくみ取り「自分は仲間の遺した集落を守らねばならない」としつつも、貴重な食料と、多大な勇気を与えて彼の新たな旅路を見送った。
サトルに「もし自分に兄がいたなら、辰野さんが理想的」と言わしめるほど人格形成に強くポジティブな影響を与えた存在としても描かれており、ほとんどヒーローのような人物。
これは、1970年代当時の野球人気の凄まじさが反映されている側面もある(少年たちにとって憧れの職業=野球選手といっても過言でなかった時代)。

東京流民たち

東京から逃げ出してきた連中。すでに大半が餓死してしまっている。
もはや生存者同士支え合おうと考える者はおらず、辰野の畑を奪ってしまおうと暴徒化していたが、伝染病にかかって全員死亡する。『サバイバル』は極限状態に置かれた人間を描いているために、かつての都市生活者は傲慢かつ残忍で、農村部生活者は非科学的で無知かつ排他的といった、やや極端な描写が目立つが、彼らはその象徴である。

小見山博士と瀬川助手

画像左から小見山博士、瀬川助手。

崩落をまぬがれたトンネルで、助手の瀬川とサバイバル生活を行っていた高名な地球物理学者。震災前は地震研究所の所長かつ地震予知連絡会議のメンバーでもあり、地殻変動から予見される大地震を6ヶ月も前に予告していた。しかし荒唐無稽な理論として瀬川以外の誰からも信用されず、地球が滅亡する様を見ているしかなかったショックで精神に異常をきたしてしまう。
だが、新たな地震で全身を打ったことで奇跡的に正気を取り戻す。サトルの家族と遭遇しており、その行方を示唆した。

助手の瀬川は、錯乱した小見山博士の面倒をも見つつサバイバルを生き抜いており、サトルに(読者にも)推測される世界状況の説明などを行ってくれた。トンネル内においても正確に経過日数を記憶しており、それが260日に達しようとしていることを語った。非常に冷静かつ知的な男。

カラス(カー公)

サバイバルの途中で出会ったカラス。サトルの家族から餌付けされていた可能性があり、サトルを恐れず、また襲いもしなかった。サトルがハンググライダーを手作りする様をからかいながら見守る。
ハンググライダー完成後はサトルと共に空を舞った。

神主が支配する村で関わるキャラクターたち

和夫と松じい

画像左から松じい、和夫。

家族を追ってサトルが辿り着いた村の少年と、その祖父。村周辺の山でウサギ狩りの最中に出会い、村への案内役を買って出てくれた純朴な少年。

松じいは弓矢職人であり、技術力の高さはハンググライダーさえ自作するサトルが、その出来映えに舌を巻くほどである。また、生きる気力をなくし神に祈るばかりの村人たちと違い、自身の力・知恵・勇気で行動することが大切だと確信を持って村人の目を覚まそうとする、骨のある人物。

神主

村を宗教的に支配する神主。
さつきを村を守る生き神などと決めつけ担ぎ上げ、自身はその「神託」を受ける存在として、支配力を維持していた。よそ者でサバイバルの深い知識を持つサトルがいると、自身の立場が悪くなるために「厄を運んできた」などと適当なことを言って追いだそうとするが、うまくいかなった。
サトルを殺してしまおうと企むが、さつきの妨害でそれも失敗。最終的には悪事が露見し立場を失うが、どこかに良心が残っていたらしくさつきの説得に改心し、村にせまる山火事を村人と共に食い止めた後、サトルにそれまでの非礼を詫びた。

さつき

神主の娘だが、予知や遠視の力を持っているとして勝手に生き神認定された。実際にはやや勘が鋭いぐらいの普通の人間であり、自身は生き神扱いを快く思ってはおらず、このままでいいものかと思案していた時にサトルと出会う。
神主とは違って心の綺麗な女性でありサトルの目を見た時に「悪意がない」と見抜いた。サトルが神主に追い出されそうだったところを村に置こうと発言してかばったのも、さつきである。
どことなくアキコに似ているが、特に意図されたわけではなく、単純にさいとう・たかを風の美人が似通った顔になることによる。

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@1sadd9866

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