コウノドリ(漫画・ドラマ)のネタバレ解説・考察まとめ

『コウノドリ』とは、2012年より鈴ノ木ユウが「モーニング」(講談社)で連載を開始した産科医療漫画である。産婦人科医でありながら、正体を明かしていないピアニストでもある、主人公鴻鳥サクラ。サクラが勤務する聖ペルソナ総合医療センターで、妊婦とその家族を中心に物語が繰り広げられる。7年間の掲載を経て、2020年10月23日最終巻が発売され完結している。コミックの累計発行部は800万部を超えている大人気コミックである。

『コウノドリ』の概要

『コウノドリ』とは、2012年より鈴ノ木ユウが「モーニング」(講談社)で連載を開始した漫画である。7年間の掲載を経て、2020年10月23日最終巻が発売され完結している。コミックの累計発行部は800万部を超えている大人気コミックである。
2015年、第39回講談社漫画賞・一般部門にノミネート、2016年、第40回講談社漫画賞・一般部門受賞。作者の鈴ノ木ユウは、ミュージシャンとしての活動経験も持つ。2006年、彼自身の妻の出産に立ち会った際に強く感動し、その出産というものを伝えることが自分の使命だと思ったことがこの漫画の誕生のきっかけになったそうだ。妻の出産時の担当医であった、りんくう総合医療センター泉州広域母子医療センター長兼婦人科部長の「萩田 和秀」先生が主人公のモデルである。妊娠・出産というあくまで女性向けのような漫画だが、男性誌「モーニング」で掲載されていたこともあり、出産を自分事と受け止めづらい男性へ向けたメッセージなのかとも捉えられる。また、医療従事者が、医療漫画でこの作品を超えるものはないという評価を残している。

2015年10月~12月に綾野剛主演で実写テレビドラマ化され、好評だったことから2017年~12月には第二シリーズも放送されている。

産科医師でありながら、ジャズピアニストでもある主人公鴻鳥サクラが勤務している「聖ペルソナ総合医療センター」で起こる、出産にまつわるストーリーが描かれている。出産は病気ではないからこそ、安全だと思い込んでしまっている。だが、この総合医療センターで行う年間約2000件の出産のうち、約15%の出産は生命の危機と隣り合わせなのだ。小さな命は必ず助かるわけではない。絶対の安全など、出産には存在しないのである。少子化が進んでいるこの時代において、「中絶手術」「未受診妊婦」など目を背けてはいけない問題が、妊婦の家族のやりとりを中心に2話から4話で描かれている。

『コウノドリ』のあらすじ・ストーリー

2つの顔を持つ産婦人科医

産婦人科医の身分を隠して活躍するピアニスト「ベイビー」

全てが謎につつまれている「ベイビー」というピアニスト。本当の顔は産科医の「鴻鳥サクラ」である。サクラは、生まれてすぐに母親を亡くす。サクラの家族は母親しかいなかったため、その後児童養護施設に預けられたのだ。そこで出会う保育士に、大切に育てられてきたサクラは、ピアニストになる夢、産科医になる夢を持ち、実現したのだった。

彼のピアノの音色は人を、トリコにする才能がありコンサートチケットはすぐに売り切れてしまう程のピアニストである。それにも関わらず本業はベテラン産科医なのである。今日も演奏中、急患を知らせる電話が鳴り始める。サクラは、変装グッズであるカツラをはぎとり、演奏を中断して走り出す。向かう先は「ペルソナ総合医療センター」だった。
「ペルソナ総合医療センター」には、総合病院であるがゆえに、様々なリスクを抱えた妊婦さんが訪れるのだ。

未受診妊婦

この日、運ばれた妊婦は検診を一度も受けていない「未受診妊婦」だった。「野良妊婦」とも呼ばれる妊婦は、胎児の状態も不明、母親の感染症の情報等さえもないため、受け入れる病院のリスクは大きく、搬送を受け入れてもらえずにたらい回しにされることが多い。ペルソナも例外ではなく、受け入れを拒否しようとしたが、サクラだけは赤ちゃんを思い、受け入れを決めたのだった。結局、感染症もなく無事に赤ちゃんは生まれたのだが、母親は浮かない顔をしてベッドに横になっていた。
実は、赤ちゃんの父親とは音信不通となり、両親に頼ることもできず、更には借金まで抱えている状況だというのだ。そして彼女は、お金が払えないという理由から病院から赤ちゃんを置いて逃げ出してしまう。

結局、母親はサクラにすぐに見つかってしまい諭されるのだが、堕胎するお金もなく、これから赤ちゃんを育てていく自信がないという気持ちをサクラにぶつけ返すのだ。
自分の気持ちなんて医者のサクラにはわからないと怒る母親に、サクラは気持ちはわからないが、「生まれようとしている赤ちゃんがいれば、僕らは全力で助けます」と言った。それでも、母親は赤ちゃんを育てることはできないと判断し、赤ちゃんは乳児院に預けられることとなる。

「きっとキミはこれから人の何倍、何十倍も辛いことがあるかもしれない。でも、人一倍幸せになることはできる。」
残された赤ちゃんの側で、サクラは自分のピアノを聞かせながら、笑顔の赤ちゃんに、涙をこらえながら「負けるなよ」と続けて囁いたのだった。

切迫流産

子供が産まれたら障害が残る可能性があり、2日以内に出産するか子供を諦めるか決断を迫られた夫婦の物語。陣痛が始まり、下屋と妊婦は帝王切開をするかしないかで葛藤する。結局、サクラを呼び出し、500gの赤ちゃんが産まれることに。しかし大地と名付けられた子供は、出産後2ヶ月経ってもチューブに繋がれたままだった。

オンコール

ストリッパーの妊婦は職業柄お腹を切りたくないと要望する。
しかし逆子であることが発覚し、へその緒が巻き付くと危険なので、サクラに説得され、帝王切開を選ぶ。

自然分娩と帝王切開

サクラが診察していると妊婦はこう言う、「絶対、助産院で出産したいんです。」。毎日5kmのウォーキングと、食事管理で体重にも気を付け、自然分娩をするために日々の努力を怠らない、強く自然分娩を望む女性だった。それでもサクラは、「今のところは問題ないと思いますが、妊娠出産には予測不可能なことが起きる場合もあるので、その時は産科医が介入することもあります。」と忠告をするが、妊婦は自分の力で産むと言い張った。

この妊婦はペルソナが提携している「ののむら助産院」に通っていた。ここで働く助産師の野々村は、「御産は分娩台で産まないといけないなんてことはない。好きなように産めばいい。全ての妊婦さんに、楽しくお産をしてほしい。」と考えている。妊婦は沢山考えてきたバースプランを、野々村に伝え、野々村は全て受け入れた。後日、旦那とののむら助産院に訪れた妊婦はサクラと同様のことを野々村に言われるのだ。「出来るだけ、二人のバースプランをかなえたいと思っていますが、助産院はサービス業。医療行為は行えない。御産が順調でなくなったときは、すぐに提携先のペルソナ病院に協力してもらいます。」。信頼する野々村の言葉さえも、彼女には届かず自然分娩と言い張るのだった。

遂に陣痛が始まり助産院で、出産を初めたが、赤ちゃんが後方後頭位となり進まなくなる。ペルソナに搬送され、赤ちゃんも危険な状態になる可能性がでてきたため、帝王切開することに。それでも首を縦に振らない妊婦に、旦那は怒るのだった。旦那をなだめながら、野々村はこう言った。「あなたがこれまで頑張ってきたのは、赤ちゃんのため?それとも自分のため?今、あなたを救えるのは病院の人たち。」。そして「私も帝王切開で赤ちゃんを産んだのよ」と優しく続ける。

帝王切開を受け入れ、彼女は無事に手術が終わり出産を終えた。「帝王切開を受ける妊婦さんは自分の病気や怪我を治す為でもなく、赤ちゃんの命を守るためだけに命をかけて自分から手術台の上に上るんです。僕らはそれをお産でないと言えません。帝王切開は、立派なお産です。」サクラの言葉を、彼女はただ黙って聞くのだった。

妊婦と喫煙

サクラが、妊娠中の喫煙のリスクについて話している妊婦がいる。彼女は、やめようと思ってはいるが喫煙がやめられない。
たばこを吸い血管が細くなることで赤ちゃんに酸素と栄養が十分届かなくなり、流産、早産のリスクも増加する。早剥の危険性だってある。早剥になってしまうと、赤ちゃんの致死率はは30~50%。ただ、喫煙を直接的な原因と断定できならいから、余計怖い。そうなったときに、あのとき禁煙ができていたらと、一生責め続ける女性だっている。そのサクラの説明を受けた帰り、女性はたばこをゴミ箱に捨てようとしたが、結局捨てることなく帰宅してしまったのだ。

次の診察の際、女性を診ていたのはサクラの同僚の四宮ハルキ(しのみやはるき)だった。まだタバコをやめられれていなかった女性に、四宮は「私はタバコを止めない妊婦は、母親になる資格がないと思ってますから。」とキツく言い放つ。診察後に怒る妊婦をみかねて、院長は四宮に患者に優しくするようにと諭すが、「優しくしたら患者を救えるんですか?優しいけど患者を死なせる医者と、嫌なヤツだけど助けてくれる医者。院長だったらどっちに診て貰いたいですか?」と言い、去っていった。

ある日、女性宅に義母が訪れた。義母の言葉や、買ってきた子供服への不満とイライラが募りタバコを吸おうとすると、旦那が止めたのだ。だが旦那自身は吸っており、彼女は自分だけが止められることにも腹を立てる。その後、一人でペルソナに向かう途中、悩んだ末にタバコを吸ってしまったのだ。すると、急にお腹が痛くなる。通りがかった四宮が気づき、病院に運ばれすぐに手術となる。案の定、女性は早剥になったのだ。赤ちゃんは無事に取り上げられたが、出血が多く、子宮収縮もよくない。過去に子宮を残そうとしたことで、患者を死なせてしまった経験のある四宮は、彼女の子宮を残そうとするサクラを止め、二人はもめるのだ。サクラが子宮を残せると言い張り、最終的に子宮を残して手術は終わった。

過去の四宮は患者に優しかった。四宮が優しく接し、喫煙をやめられなかった妊婦は、今回の女性を同様に早剥になり大量出血で手術中に亡くなった。さらに産まれた赤ちゃんは、植物状態になってしまった。その経験から、四宮はこんなことになるなら無理にでも辞めさせるべきだった、患者に嫌われても助けられる方がいいと思ったことが現在の四宮の言動に通じている。当時の悔しさ、悲しみからを背負い続けていた四宮だったが、今回の妊婦の母体も赤ちゃんも助けられたことが、嬉しかった様子が描かれている。

中学生の妊娠

元気にバスケットボールをしている女子中学生が突然倒れた。保健室の先生は、彼女の様子がおかしいことに気付き「最近の生理はいつ?」と聞いた。彼女は14歳。妊娠に気付かないうちに、8ヶ月目に入ってしまっていたのだ。そして女の子の父親の旧友が院長だったこともあり、ペルソナに訪れる。
サクラが担当医となり検診を行った。しかしエコーで見た赤ちゃんの画像を「CGアニメみたい」と言い、女の子はイマイチ現実を受け入れていない。少女の母は離婚しておりシングルマザー、赤ちゃんの父親である男子中学生の父は市議会議員。男の子の父は、お金の援助はするが、息子の将来のために赤ちゃんのことは少女側に任せると言うのだ。少女の母は持病を持っており、母が少女と一緒に育てることもできない。男の子は、現実が受け入れられず女の子からの連絡を拒否するようになる。ようやく、女の子と男の子、それぞれの親との話し合いの場が設けられた。男の子の父が、話し合いもしようとせず特別養子縁組を強行しようとしたとき、はじめて男の子は「いやだ」と言葉を発したのだ。その言葉に憤慨する父に、サクラは「赤ちゃんの親はこの二人です。中学生だろうとちゃんと考える責任があります。まだ時間はあるから二人でちゃんと考えて欲しい。どうすれば生まれてくる赤ちゃんを幸せにできるか。」と伝えたのだ。二人で話す時間が設けられ、ようやく二人は自分の気持ちを素直に伝える。「この子よく動くんだ。すごく元気なの。」と女の子がお腹をなでると、「触ってもいい?」と、男の子は優しく触れた。女の子は嬉しそうな顔で微笑み返す。
サクラと触れ合っていくなかで、赤ちゃんの母親としての自覚が芽生えてきた女の子は、考えた末に赤ちゃんを養子に出す決意をしたのだ。「きっとその方が赤ちゃんは幸せになれると思う。私一人じゃ育てられない。これ以上自分の母に苦労をかけらない。赤ちゃんの幸せが一番だ。」と、サクラに伝えた彼女の顔は幼いながらに子どもを思う母の表情になっていた。
遂に、女の子に陣痛が訪れる。養子縁組の夫婦も彼女の隣の部屋に到着し、その時を待った。女の子の部屋に入ろうとするサクラは男の子が廊下で待っていることに気付いた。「俺、なにも出来ないですね。」とサクラに言う。サクラは「そうだよ、君には彼女の痛みも苦しみも肩代わりする事は出来ないし、まだ子供を育てる力もない。だからじっくり考えていかなきゃね。起きたことから目をそらさずに、生まれてくる命をしっかり受け止められる大人になれるように。」と優しく返すのだった。
やがて赤ちゃんの産声が響き渡る。赤ちゃんを見て女の子は笑顔を見せたかと思うと、多量の涙を流しながら赤ちゃんを抱きしめ離さないのだ。助産師の小松ルミ子(こまつるみこ)は赤ちゃん女の子から離し、隣の部屋の夫婦の元に連れていく。赤ちゃんを抱かせてもらった妻は、「生まれてきてくれてありがとう。」そう赤ちゃんと赤ちゃんの母親に伝えるのだった。女の子の鳴き声は廊下にも響き渡り、その声を聞きながら男の子はその場で泣き崩れた。生まれてすぐに可愛い我が子と離れる決断をした女の子、自分の無力さに打ちのめされた男の子。血の繋がりのない赤ちゃんを我が子として迎え入れたいと望む夫婦。誰しも願っているのは、今誕生した命がずっと幸せであるようにとただそれだけだたのだ。

研修医

サクラのもとで働く2年目研修医の赤西ゴローは、街で心肺停止して倒れている妊婦に遭遇する。近くにあったAEDを使い、妊婦は一命をとりとめ病院に運ばれたが、そこで再び心肺停止を起こしてしまう。聖ペルソナ総合医療センター一同が取った選択は“究極の心肺蘇生術”というものだった。

無痛分娩

妊娠38週の山崎は心臓に持病があるため、負担がかかりにくい無痛分娩での出産を予定している。ところが出産前に、自然分娩で出産した友人から「お腹を痛めて産んでこそ母親」と言われ、無痛分娩をすることに引け目を感じてしまう。「母性」と「痛み」には関係があるのかという点に焦点が当たる。

子宮頸がん

妊婦の市川は、子宮頸がんがどれくらいの大きさなのか調べる手術・円錐切除を受けるために検査入院することとなった。子宮頸部を切除するため、流早産のリスクが高くなってしまうが、自分とお腹の赤ちゃんが助かるためには、受けるしかない。

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