鬼滅の刃 無限列車編のネタバレ解説・考察まとめ

数百名で構成される、鬼を滅するための組織。政府非公認の組織なので帯刀を許されていない。それ故に、炭治郎たちは警官と出くわした際には帯刀を咎められ、逃走している。
「育手」に手ほどきを受け、最終選別試験を通過しなければ鬼殺隊員になることが出来ない。晴れて隊士となった者には隊服と、鬼を滅することができる日輪刀が支給される。隊服は上部で、弱い鬼ならば傷つけることが出来ない。隊服の背には「滅」の字が印字されている。
隊内には十の階級があり、その上に長である親方様と、最強の隊士である柱が存在する。
各地に藤の花の紋をつけた家が存在する。その家は鬼殺隊により助けられた人間の家で、鬼殺隊をサポートすることを意味している。その家では、怪我の治療などを受けることが出来る。
他隊士の殺害、鬼殺の妨害などが禁止事項となっている。

全集中の呼吸

鬼殺隊の剣士たちが、鬼と戦うために修得している技術。特殊な呼吸によって身体能力を増強し、鬼と互角に戦う力を得る。また、この時手にしている刃にも特殊なエネルギーが伝わり、首を切り落とすことでほぼ不死の怪物である鬼に致命傷を与えることができるようになる。
炎、水、風、岩、雷の五つが基本形であり、そこからさらに音や虫などに派生する。これらの流派はそれぞれ「全集中〇〇〇の呼吸」と呼ばれ、ここからさらに「〇〇〇の型（〇〇〇には数字が入る）」という個別の技が存在する。
作中では水の呼吸の技なら波しぶき、雷の呼吸の技なら電光が斬撃と共に現れるように描かれているが、これは漫画的視覚表現であり、実際は普通に斬っているだけである。

柱

鬼殺隊の剣士の最高位の称号にして最大戦力。現在は九人存在している。
誰もが壮絶な技量の持ち主で、鬼殺隊の剣士たちにとって憧れであり誇りでもある。相性次第な部分もあるが、下弦の鬼なら造作もなく倒せる一方、上弦の鬼には彼らですら単独では勝つことはできない。

無限列車

炭治郎たちが本作で与えられた任務の現場。いわゆる蒸気機関車と、それに牽引された全8両からなる客車で構成されている。
この列車の中で短期間に40人以上の乗客が失踪し、調査に向かった鬼殺隊の剣士までもが数名行方不明になっている。そのため柱である煉獄が赴くこととなり、炭治郎たちはそのサポートのために派遣された。
魘夢が狩場として利用しており、あえて噂を流し鬼殺隊の剣士を返り討ちにし続けることで、柱が現れるのを待っていた。

『鬼滅の刃 無限列車編』の名言・名セリフ／名シーン・名場面

煉獄「うまい！」

その言動、その活躍。どこを取っても輝かしいまでに鮮烈な煉獄というキャラクターだが、中でも印象に残るが、『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の冒頭でも披露した「うまい！」という言葉である。
大量の駅弁を平らげながら「うまい！」とひたすら叫び続けるシーンは、初登場となった柱合会議での鬼気迫る様子から、一瞬で煉獄を親しみやすいキャラクターに変えた非常にインパクトの強いものである。製作者サイドにとってもそれは同様だったのか、本エピソードにおいても煉獄は何度もこの言葉を発している。本エピソードの最後の戦いで命を落とす煉獄が、食欲という人間らしい感情のまま声を発する姿は、どこか切なく、同時に微笑ましいものである。

重なる煉獄の父子剣士

ふくとトミを襲っていた鬼を一蹴し、納刀する煉獄。刹那、トミの脳裏に20年前の光景が蘇る。かつて彼女は、煉獄と瓜二つの燃え盛る炎のような色の髪をした剣士に、娘（＝ふくの母）ともども鬼から助けてもらったことがあったのだ。
代々鬼殺隊の剣士として鬼から人々を守り続けてきた、“煉獄”という血筋の気高さを感じさせる名シーン。その槇寿郎がすっかりやさぐれ、息子との仲を修繕できないまま彼と死別するという運命に虚しさを感じる一方、それでもこの親子の間には各個たる絆が存在していた。時を超えた2人の剣士の所作が寸分違わず同じであることが、視聴者にそう納得させてくれる。

炭治郎「ああ…ここに居たいなぁずっと。振り返って戻りたいなぁ」

魘夢の作り出した夢の世界に囚われていたことを知り、脱出する術を探す炭治郎。その際、夢の中の家族たちに「どこにも行かないで」とすがられ、思わず心中で漏らしたセリフ。
炭治郎は刀などとは無縁に生きていた少年である。鬼に襲われることさえなければ、家族とずっと平穏に暮らしていたはずなのだ。本来自身があるはずだった日々に背を向け、再び苛烈なる戦いの中へと進むことを決めた炭治郎の、捨て切れない未練の発露である。
炭治郎の優しさと家族の絆の強さを、そしてだからこそそれらを振り払って進む彼の決意がいかに強烈なものなのかを感じさせる。後に炭治郎が家族に詰られる悪夢を見せられて激昂するシーンも登場し、彼にとって家族がどれほど大切なのかを、本作では特に重点的に描いている。

善逸「禰豆子ちゃんは俺が守る」

本性を現した魘夢に乗客が襲われそうになり、それを守ろうと奮戦する禰豆子。彼女が窮地に陥った時、雷光と共に善逸が駆けつけて敵を切り払い、上記のセリフを言い放つ。
臆病で、ヘタレで、「どうせ任務ですぐ死んじゃうからその前に結婚してくれ」と道行く女の子に声をかけまくっていた善逸だが、禰豆子と出会ってからは彼女一筋である。その言葉が口先だけのものではないことを証明したこの鮮やかな登場シーンは、まさにヒーローが参上したがごとくであり、男女の機微に疎い禰豆子でさえ一瞬善逸に見惚れていた。
しかし実際のところ、この時善逸はまた魘夢の夢に半ば囚われた状態で、直後に鼻提灯を膨らませていた。せっかくのカッコいい姿が台無しで、あまりの落差に禰豆子も目の前に敵がいるというのにポカンとした顔で彼を眺めている。
見方を変えれば「夢うつつの状態ですら禰豆子の窮地に駆けつけた」ということでもあり、それはそれですごいことなのだが、最後が締まらないのはいかにも善逸らしい。

煉獄VS猗窩座

二百名あまりの乗客を、そして炭治郎たち鬼殺隊の後輩を守るため、煉獄はただ一人決然と“上弦の参”猗窩座に挑む。技量では食い下がるものの、歴代の鬼殺隊の剣士が百年以上の長きに渡り倒すことができなかった上弦の力は圧倒的だった。煉獄は負傷を重ね、あまりの実力差に見ていることしかできない炭治郎たちの前で次第に追い詰められていく。しかし負傷した分以上の恐るべき気迫を発揮してなお猗窩座に挑み、ついには彼を捉え、自らの命と引き換えにその首を落とす一歩前まで迫る。
TVアニメ版『鬼滅の刃』19話などでも絶賛され、アクションに定評のあるufotableの実力をこれでもかと詰め込んだ、アニメ史上に名を遺すだろう迫力全開の戦闘シーン。それに応えるように声優も素晴らしい熱演を見せている。『無限列車編』と銘打ってはいるが、本作最大の見せ場は間違いなくこの場面である。

炭治郎「お前の負けだ！煉獄さんの勝ちだ！！」

朝日が昇るまで煉獄に食い下がられ、撤退していく猗窩座に向けて炭治郎が言い放ったセリフ。該当部分全文は以下の通りである。

「お前なんかより煉獄さんの方がずっと凄いんだ！強いんだ！煉獄さんは負けてない！誰も死なせなかった！戦い抜いた！守り抜いた！お前の負けだ！煉獄さんの勝ちだ！！」

勝利というものが、“目的を達成できたかどうか”が重要であるとすれば、確かに煉獄は「ここにいる者は誰も死なせない」という目的を完全に達成している。対して猗窩座は「鬼殺隊の殲滅」を目的に行動しており、煉獄以外の鬼殺隊の剣士（＝炭治郎たち）を仕留められなかったことを後に無惨に痛烈に叱責されている。この点で考えれば、たとえ個人の勝負において後れを取ったとしても、煉獄こそが勝者であるという炭治郎の指摘は事実だといえる。
鬼の暴威をこれでもかと見せつけ、煉獄ほどの猛者ですら戦いの中で倒れるという結末を突き付けられながら、炭治郎のこの絶叫によって「煉獄は負けたわけではない」という一抹の救いが視聴者に提示される。そしてこの咄嗟に口にしたようにしか思えない言葉が、猗窩座の過去の古傷を容赦なく抉る内容であったことが後に明らかとなるのも、『鬼滅の刃』のストーリーとキャラクター造形の秀逸さを語る上で見逃せない点である。

瑠火「立派にできましたよ」

今わの際に、幼い頃に病死した母・瑠火の霊を目にし、「弱き人々のために力を振るう」という彼女との約束を全うできたかどうか問う煉獄。その彼に対する瑠火の返答が上記のセリフである。
短い言葉ながら、一番褒めてもらいたかったであろう母の口から、もっとも言ってほしかったことを伝えられ、煉獄は穏やかな笑みを浮かべながら息を引き取る。彼の生涯は短いものではあったが、まさに炎のごとく燃え盛り、熱く激しくも華々しく鮮烈で、そしてきっと満ち足りたものだったはずである。

伊之助「信じると言われたなら、それに応える以外考えるんじゃねえ！！」

煉獄を看取り、力になれなかったことを悔やみ、自分は彼の強さに追いつけるだろうかと弱音を口にした炭治郎に向かって伊之助が叫んだセリフ。
山奥に捨てられ、猪に育てられた伊之助は、まさに獣のように生きてきた。鬼殺隊の剣士となった経緯も「たまたま縄張りに侵入した鬼殺隊の剣士を殴り倒して装備を奪い、自分が最強であることを示すために鬼を狩っていた」というデタラメなもの。真っ当に師匠に着いて修行した炭治郎や善逸とはまったく異なる出自の持ち主で、初対面の時は彼らに襲い掛かってさえいる。
行動を共にするようになってからも悪い意味でのマイペースを貫き、仲間意識らしいものをほとんど感じさせなかった伊之助。しかし“自分の強さ”を示すことにこだわる伊之助だからこそ、遥かに格上の剣士である煉獄の戦いぶりに衝撃を受け、その彼ですら敗れた猗窩座の存在に震撼する。
煉獄は“弱い自分たち”を守るために、その力の全てを振り絞って戦い、天災が形を成したような怪物をついには退け、「君たちを信じる」と言って死んだ。ならば自分たちは彼の期待に応え、強くなるしかないではないか。恐らく、この時初めて伊之助の中に「コイツら（炭治郎と善逸）と一緒に強くなるんだ」という明確な仲間意識と、鬼殺隊の剣士としての誇りが芽生えたのだと思われる。
虎は死して毛皮を残す。煉獄はその命と引き換えに、後にそれぞれ成長して無惨との決戦に挑むこととなる三人の剣士と、彼らの間に確固たる絆を残していった。