フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと(ゲーム)のネタバレ解説・考察まとめ

『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと』とは「Annapurna Interactive」から発売されたゲーム作品。変死や蒸発など、奇怪な事件に彩られたある一族の歴史を紐解いていく重層的なストーリーが高く評価され、数々の名誉ある賞を獲得している。主人公の少女エディス・フィンチはフィンチ家の末裔にして唯一の生き残りだ。彼女は6年前に去った、ワシントン州オルカス島の実家に再び足を運び、屋敷を探検する中で不審死を遂げた親族たちの秘密を知る事になる。

『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと』の概要

『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと』とは「Annapurna Interactive」から発売されたゲームソフト。
本作はクリエイティブディレクターのIan Dallasが率いるGiant Sparrowのチームが開発した2作目のゲームにあたり、彼らのデビュー作はBAFTA賞を獲得した『The Unfinished Swan』である。
対応機種は Microsoft Windows、 PlayStation4、 Xbox One、 Nintendo Switch。対応言語は日本語、英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語、中国語 (簡体字)。
WindowsとPlayStation4版は2017年4月25日、Xbox One版は2017年7月19日、Nintendo Switch版は2019年7月4日発売。

ストーリー性の高さや洗練された操作性、およそ100年の永きに及ぶ風変わりな逸話に彩られた一族のクロニクルを虚実入り混じる奇想で描きだした芸術性が好評を博し、2017年度の英国アカデミー賞のゲーム部門ベストゲーム賞を獲得している。PlayStation 4、Nintendo Switchプラットフォーム全体のレビューは概ね好意的で、Xbox Oneバージョンは普遍的な評価を受ける。Googleユーザーレビューでは97%から圧倒的支持を得た。

このゲームには選択肢が存在せず、プレイヤーは主人公のエディス・フィンチを操作し、所定のアイテムをクリックしたり、部屋のドアに穿たれた覗き穴や机上の日記や手紙を見る事で、過去に同じ行動をした人物(=その部屋や日記を所有するフィンチ一族の誰か)と視点が交代し、彼らの死亡時ならびに蒸発時のエピソードを追体験できるシステムになっている。その人物が死ぬか蒸発すれば、元のエディスの視点に戻ってくる。
アイテムとしてのマップはないが、主人公のモノローグを代用するテロップがカットインする方向へ行けば正しいルートを進める。

舞台はアメリカ合衆国ワシントン州、オルカス島。
自然豊かなこの島にフェリーに乗って渡ろうとしているのが主人公エディス・フィンチ。彼女はフィンチ家の最後の1人であり、数年前に出た実家に帰る所だった。フィンチ一族の大半は変死や蒸発を遂げており、エディスはある目的から先祖の歴史を紐解いて、彼らの死の背景に迫っていく。

『フィンチ家の奇妙な屋敷でおきたこと』のあらすじ・ストーリー

操作キャラクター・エディス

主人公エディスはある目的から6年前に捨てた実家へ戻る事を決意し、フェリーに乗る。

主人公は17歳のエディス・フィンチ。彼女はフェリーの甲板で日記を開き、自分が今日ここに来た経緯を書き記す。
エディスは11歳の時、アメリカ合衆国ワシントン州オルカス島にある自身が育った屋敷を出た。その屋敷の半分は立ち入りを禁じられており、隠し部屋が沢山あった。フィンチ一族は短命の家系で、一族の多くが謎の蒸発や変死を遂げていた。エディスは母親から遺言と共に鍵を預かっており、それは彼女の実家の部屋の鍵だったが、どこの部屋かはわからない。エディスは唯一の身内だった母から屋敷を相続し、6年越しに家へ帰ってきたのだった。
フェリーは島に到着し、エディスは島へ渡る。オルカス島は自然豊かな島で、島の中心の屋敷には険しい山道を歩いて行かなければならない。この辺鄙な立地のせいで、フィンチ家に料理をデリバリーしてくれるのは親切なチャイニーズレストラン1軒きりだった。
なんとか門前に辿り着いて郵便受けを開けると、7年前の請求書がたまっていた。エディスが屋敷に帰ってくるのは兄ルイスの葬式以来だった。正直相続してからも家に戻る気はなかったエディスだが、ある出来事が彼女に心境の変化をもたらした。エディスは家族についてある疑問を持っており、それは屋敷を探索する事でしかわからない類のものだった。日記にはフィンチ一族の系統樹が描かれており、末端にはエディスの似顔絵と名前が書きこまれているが、それ以外は白紙だった。

曇り空に聳えるフィンチ家の屋敷の外観。

フィンチ家の屋敷は増築と改築を繰り返し、奇妙な塔のような外観をしていた。庭の池は濁っており、行方不明になったフィンチ家の1人・ミルトンの人相描きが水面に夥しく浮いていた。それを見たエディスは、曾祖母のイーディから池に住むドラゴンに夫が殺されたと聞かされたのを思い出す。エディスは子供時代を過ごしたこの屋敷を恐れていたと今になって漸く気付く。100年以上前に築かれたフィンチ家の屋敷は数多くの人死にを看取ってきたが故に、子供心にもそれとわかるほど常にどこか浮世離れした気配を漂わせていたのだ。

6年ぶりにエディスが訪れた屋敷には家財道具一式が残され、裏寂れた気配が漂っていた。

エディスは犬用の扉をくぐって家に入る。家の中は無人の廃墟と化し、様々な家具や調度が埃を被って放置されていた。冷蔵庫にはエディスの母ドーンの誕生日を祝うエディスと長兄ルイス、曾祖母イーディの写真が貼ってある。
キッチンには大量のサーモンの缶詰が積み上げられていた。これは兄ルイスが缶詰工場に勤めていた為だ。余った在庫は飼い猫に与えていたらしい。屋敷の中は6年前にエディスと母が去った夜のままだった。母とエディスが屋敷を出ると同時に祖母は老人ホームに入り、そこで死去した。
居間の暖炉の上にはセピア色の古い写真が飾られており、そこには初代のレンガ建ての屋敷が写っていたが、この屋敷は海に沈んでもうないそうだ。屋敷を探索していたエディスはオルゴールを見付けてネジを巻く。すると蓋が開き、メロウな音楽に乗せて木彫りの人形が踊りだす。このオルゴールはエディスの曽祖父のスヴェンが、娘のバーバラの為に製作した物だった。チェストの上には新聞があり、エディスの次兄ミルトンが11歳で失踪したニュースが報じられていた。ドーンは決して楽観主義者ではなかったが、屋敷を去るその日までミルトンの生存を信じ、捜索に手を尽くしていた。しかしミルトンの消息はわからなかった。エディスはもともと3人兄弟の末っ子だったが、長男のルイスと次男のミルトンが消えた今、生き残りは彼女1人になってしまった。
エディスは次の扉を開けて書庫へ入る。本棚には大量の蔵書が詰まっていた。イーディはこれまで死んだフィンチ家の全員が書庫のどこかに埋められていると妄想を抱いていたらしい。ミルトン失踪後にドーンは地下室と寝室を全て封印したが、イーディはそれに反発して全てのドアに覗き穴を開けた。ミルトンは離れの部屋から忽然と姿を消したため、ドーンは家族の身にまた同じことが起こるのを恐れていたのだ。

2階への階段に面した壁には、フィンチ一族の肖像画が大量に飾られている。

エディスが階段を上ると、壁に先祖の写真が大量に掛けてある。そこには有名子役として銀幕を賑わせたバーバラの写真や、フィンチ家の初代でイーディの父親でもあるオーディンの写真もあった。バーバラは2年間子役スターとして華々しく活躍し、特にビッグフットが出てくるホラー映画のヒロインが当たり役だったが、成長していくと次第に大衆に飽きられていった。
階段を上った突き当たりはイーディとその夫スヴェンの寝室だ。隣はエディスの祖父サムと、幼い頃に死んだ彼の双子の兄カルビンの部屋だった。サムは7年間、死んだ兄と共同の部屋を使い続けたのだ。
家中のドアに覗き穴が穿たれている事を子供時代のエディスは疑問に思わず、よその家にも入れない部屋が沢山あるのだと思い込んでいた。覗き穴の下には部屋の持ち主の名前と生没年が彫られており、あたかも墓碑銘を思わせる。
早死にが多い一族の中で、エディスが最も親近感を抱いていたのは1947年に死んだモリ―だ。彼女は動物好きな空想家で、僅か10歳で死んでいた。

ウォルターの部屋は壁全体が深緑色で、海洋生物の絵が描かれていた。

モリ―の部屋の前を通過したエディスが入ったのは大叔父ウォルターの部屋だ。
ウォルターの部屋の壁にはクジラやイルカの絵が描かれており、子供の頃のエディスにとって格好の遊び場だった。ウォルターもまた早い時期に失踪していた。家具が撤去されて空っぽのウォルターの部屋は安全と思ったのか、ドーンはこの部屋を封印しなかったが、子供たちが忍び込んでいるのを知れば後悔したかもしれない。ルイスは「ウォルターの部屋には秘密の抜け道がある」と主張していた。

ウォルターの部屋の隠し扉は、本の中にノブが仕込まれていた。

ウォルターの部屋を歩き回ったエディスは、ジュール・ヴェルヌの小説『海底2万マイル』が、壁の窪みに立てかけられているのを見付ける。その本には南京錠が付いており、もしやと思ったエディスが鍵を差し込むと、本が上にスライドして次の間への通路が開いた。

ミルトンの部屋の壁には彼が描いた飼い猫の絵が残されていた。

次の間はミルトンの部屋だった。彼はこの部屋を秘密基地のように使っていたらしく、クレヨンや画用紙、おもちゃのティーセットなどが転がっている。ミルトンの部屋のドアを開けるとモリ―の部屋に通じていた。モリ―の部屋はピンク基調の少女趣味な内装で、木馬やままごとの乳母車、クラゲのぬいぐるみやヒトデの標本が蒐集されていた。
レースを掛けられたチェストの上には写真立てがあり、その中で在りし日のモリ―が微笑んでいる。ドーンが部屋を封じる前、イーディはこの部屋で長い時間を過ごしていた。幼くして死んだ娘モリーをイーディは忘れられず、独り傷心に耽っていたのだ。
チェストにあったモリ―の日記を開くと、当時のモリ―へと視点が切り替わる。

操作キャラクター・モリー

モリ―の部屋の様子。

1947年、10歳のモリーは母親に夕飯抜きで寝かされた。閉じ込められた理由は不明だが、夕食を食べてないせいで空腹だったモリ―は途中でベッドから起き出し食べ物を探しに行く。しかしハロウィンに貰ったカボチャの入れ物の中のキャンディは尽きており、モリ―はその横のネズミの餌とヒイラギの実を食べる。
モリ―は扉越しに母親に声をかけるが、「いい子だから早く寝なさい」と窘められるばかりだ。お腹が減って仕方ないモリ―は自分の部屋の洗面所へ行き、歯磨き粉を搾り出して食べる。
歯磨き粉を食べたモリ―は窓の外から響く鳥の囀りに気付く。窓辺には1羽のツバメがいた。モリ―は窓を開けツバメを捕まえようとする。ツバメはモリ―の手から逃れて木の枝に飛び移る。さらにツバメを追いかけようとしたモリ―の手が毛皮に包まれ、突如として猫に変身する。猫になったモリ―は枝から枝へと飛び移り、身軽に移動していく。モリ―は枝から屋根へ移り、樋を伝って両親の寝室を窓から覗くが、母親のイーディスと父親のスヴェンは彼女にてんで無関心で目もくれない。モリ―は再び木の枝をよじのぼっていく。追いかけっこはツバメは疲弊し、もう少しで捕まえられそうな近距離に迫る。モリ―は危ないから木に登らないとスヴェンと約束していたが、どうしてもツバメを食べたい欲求を抑えきれない。モリ―は枝の先端に追い詰めたツバメにとびかかって一気に貪り食うが、勢い余って転落する。落下の途中でモリ―は再び変身し、今度はフクロウになる。フクロウになったモリ―は雪が舞う曇り空を羽ばたいて、森を駆ける子ウサギを捕らえる。ウサギの生肉を美味そうに咀嚼して飲み込むモリ―だが、まだ空腹はおさまらない。今度は母ウサギを鋭い爪で組み敷く。母ウサギは喉が詰まりそうに大きかったが、モリ―は夢中で食べ終えた。

サメになって雪が積もった斜面を転がり落ちていくモリ―。

ウサギをたいらげたモリ―はサメに変身し、雪が積もった斜面を凄まじい勢いで転がっていく。斜面の先は崖で、モリ―は海へと転落する。モリ―は海を泳いでまるまる太ったアシカのヒレ足に噛り付き、巨大マグロを噛み砕く。それでもまだ食欲は止まらず、遂に海から飛び出す。目を開けるとモリ―は吸盤の付いた触手を蠢かす怪物となり、船の甲板の上を這いずっていた。怪物になったモリ―は人間が食べたくて仕方ない。ちょうど甲板に出ている男がおり、モリ―はその背後に静かに接近し、触手を足に絡めて貪る。次はテーブルで酔い潰れた水夫を襲い、操舵輪を握る船長まで餌食にする。それでもまだ飢えに苦しむモリ―は船から飛び下り、崖の断面に設けられた排水溝をくぐり、パイプを辿ってフィンチ家の屋敷に侵入する。巨体をくねらせて便器から這い出たモリ―は次の獲物を求めて部屋へ向かうが、そこは元の自分の寝室だった。モリ―は一周して戻ってきたのだった。
怪物はモリ―のベッドの下に潜りこむ。再び目を開けると、人間のモリ―がベッドで寝ていた。モリ―は自分の身に起きた不可思議な出来事を日記に書き留めるが、その間もベッドの下で蠢く異形の気配を感じ取っていた。
「きっとみんな知ってる、わたしがすごくおいしいって」と書いてモリ―が日記を閉じると同時に、ベッドの下に潜んだ何者かが彼女に飛びかかった。

操作キャラクター・エディス

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