少女ファイト(日本橋ヨヲコ)のネタバレ解説・考察まとめ

『少女ファイト』とは、日本橋ヨヲコにより講談社イブニングで連載されている、高校女子バレーボールを題材にした漫画作品である。女子バレー界で20年に一人の逸材と謳われた姉の事故をきっかけとし、心を病んでしまった主人公大石練。そんな彼女が高校進学を転機に、仲間達を通して大きな成長を遂げ、春高優勝に向けて力を合わせていく青春物語である。ブロスコミックアワード2008大賞受賞作品。2009年10月にはOVA化もされている。

『今日は死ぬのにもってこいの日』

ネイティブ・アメリカンの古老の言葉。

春高選抜大会行きのバスの中で犬神キャプテンが皆に配り、黒曜谷女子バレー部の掛け声にすることを決定した。
掛け声の順番は背番号順。由良木政子は「悪目立ちが過ぎるぞ」と苦笑したが陣内笛子は「あいつららしい」と評した。

もし誰かと心が通じ合えたらそれは素晴らしいこと でもわかり合えないことがわかるのも同じように素晴らしいこと

全日本招集合宿中。
スタメン組対高校生での試合を控えて、最終確認のために体育館を訪れた大石練は、遅くまで練習をする田上繭と会う。

唯隆子のおじと繭が愛人であるという話を隆子から聞いていた練は、思わず真意を問いただす。
すると繭は「隆子がオリンピックで金メダルを獲れたら、喜んでいなくなってあげる」と言い放った。

真意がつかめなかった練に、繭はさらに「私メダルが獲れたらやることないから死ぬの」と言う。
繭はかつて愛した人をことごとく亡くしており、友達も家族もいない身の上だから寿命も自分で勝手に決めるし、いつかその日が来るまではバレーに愛を注ぐのだと話す。そして、それを大石真理と約束したのだとも。

そこまで「友達」に信頼されている姉といつまでも「友達」の顔色を伺っている自分に埋まらない差を感じた練だったが、繭は孤独を感じる必要はないのだと優しく説き伏せるのだった。

お前は何でも表現するのが一番いいと思ってるとこあるけどさ あえて気持ちを伝えない強さも認めてやれよ 言った方が楽になるのに言わねーんだからな

長谷川留弥子と食事中の堺田町蔵の発言。

この直前に留弥子は、チームメイトの伊丹志乃におせっかいを焼いて怒らせたことを悩んでいた。
志乃は黒曜谷男子バレー部の三國智之のことを好いていたが、身分の違いから素直に告白をするのをためらっていたのだ。

留弥子は自分の思いをはっきり言わないのは逃げであると思っていたが、それを町蔵にたしなめられる。
そして、留弥子はその発言を留弥子の母親であり、町蔵のかつての想い人である久美子に対しての言葉ではないかと邪推してしまうが、町蔵に上手くかわされてしまうのだった。

春高 勝ちにいきましょう!! 悪役として!

全国放送で朱雀高校に煽るような発言をした大石練が、悪役として春高優勝を宣言するシーン。

朱雀高校のキャプテンである寺沼理香は、完蛇田しえの起こした問題の罰としてスマホを破壊してしまう。
それが原因で元ヤンだった過去をバラされ、1年生全員が部活をボイコットする事態にまで発展する。

それは黒曜谷や理香の親友である有栖川幾重の働きで収束に向かうが、事態を重んじた理香は自らスタメン辞退を申し出、朱雀は混乱に陥ってしまう。
春高選抜で1度敗れている黒曜谷は、理香の参加した朱雀最強の布陣での再戦を望んでおり、次期キャプテンに選ばれた練は今こそ嫌われる勇気を持つことを意識する。

春高特集のインタビューを受けることになった練は、挑発的な態度で「寺沼さんのいない朱雀なら楽勝ですね」と発言。
またたく間に理香の復活と練打倒を望む声が上がり、練の性格をよく知る者たちは彼女を称賛したのだった。

これを機に全員が悪役になる覚悟を決めた黒曜谷は、練の号令の元声を上げるのだった。

私が傷ついたって認めない限り 誰も私を傷つけられないわ

山吹矢高校との試合中、闘争心が次第に無くなっていく長谷川留弥子を伊丹志乃が励ますシーン。

留弥子が春高優勝を目指す理由は、堺田町蔵と結婚したいという少々邪な考えのためであった。
しかし、対する山吹矢は純粋にバレーを愛し、町蔵が描く『エドガワ排球団』に憧れを抱き、そしてそのために外野からの非難に懸命に耐えて戦っていた。
そのため留弥子は、山吹矢に試合で勝たなければいけない理由をまったく見いだせないでいたのだった。

そして以前志乃は、春高優勝を目指す理由を「中学時代に八百長疑惑をかけられた経験を払拭するため」だと語ってくれた。
留弥子は、自分の勝ちたいという想いよりも志乃の想いをずっと大きなモノだと思っており、尊敬の念を抱いていた。
だが、山吹矢の想いも志乃と同じくらい強く、勝たせてあげたいとさえ思ってしまう。
留弥子はこの試合で山吹矢と黒曜谷、どっちが本当に勝つべきなのかと深く考えこむ。

そして留弥子は、自分の揺れ動く感情を吹き飛ばすために、志乃に「あきらめろ」と言うことを頼む。
すると、志乃は留弥子の頬を張り、すでに八百長疑惑の件は自分の中で決着が着いており、もう自分が認めない限り傷つけられることはないときっぱりと言うのだった。

他人の評価で自信を作るとそれが消えた時どうしようもなく揺らぐ だから楽しめ 自分を信用するために 君達は好きなものを誰のせいにもするな 正しく狂え

幹弓弦の独白。

バレーは専門外であり、部活を楽しまない子に少しばかり厳しい彼が監督を務める山吹矢高校は、高校に入って本格的にバレーを始めた高校バレーの新参者である。

彼女らの原動力は大好きな漫画「エドガワ排球団」。
他校からは道楽でバレーを始めたように捉えられ、しかも春高に名を連ねる実力を持っていたことから非難の対象になる。
それと同時に、初回から強豪校である黒曜谷とぶつかることになり、次第に部員のやる気は削がれていく。

キャプテンの柴田このみは、バレーを心から楽しめなくなっていくメンバーに涙をこぼすが、それを見ていた大石練は、山吹矢に敬意を表してわざと山吹矢を煽る発言をする。
そのヒール芸に、突然手のひらを返したように観客達は山吹矢を応援し始める。

周りの評価なんてその場のノリで簡単に変わってしまうことを知った山吹矢は息を吹き返し、勝とうが負けようがこの試合を楽しむことに全力を注いだ。

お前は特に強う見えるからあいつらは何やっても傷つかへん人形やと思とんのやろ でもなーあんなアホに見切られたところで お前の価値は何一つ変わらへんよ

白雲山2年の柴田あかりが、唯隆子を慰めるシーン。

直前にインタビューに答えていた隆子は、親友である大石練のことを聞かれて「私にとって大切な人です」と発言する。
しかし、それに他校の生徒からブーイングが上がり、練の悪口や隆子に期待して損したと言うのだった。

それに理性が飛んだ隆子はバレーボールを叩きつけて英語で罵倒を言い放ち、白雲山1年生に取り押さえられる。
他校生は2年のあかりと森繁フミが少々きつめに灸を添えたが、不満タラタラの隆子はあまりにも理不尽な仕打ちに文句が止まらなかった。

そしてあかりの上記の台詞の直後、初めて人間らしく涙をこぼすのだった。

私は…自分の欲求を誰かの為だと主語をすり替える人が嫌いです… 自分を正義だと信じて疑わない姿はとても醜い…

部内の精神的支柱である小田切学が、珍しく腹を立てたシーン。

黒曜谷のドッペルゲンガー高校である墨日野では、小岩素(大石練のそっくりさん)の自分だけが目立とうとするわがままなプレーに部内がギスギスとしていた。
素は今日試合に勝たなければ退部することになっていたので、攻めなければ勝てないと思い込みすぎていたせいだった。

同じ1年の大糊遊(小田切学のそっくりさん)はそれを知るや、今まで溜め込んでいた素への不満から「負けたほうがみんなのためですたい こげな人うちの部に要らんとです」とつい言ってしまう。

それにショックを受けたのは素ではなく、黒曜谷の学だった。
学や弟の明は、かつて自分を正義だと疑わない人たちによって苦しめられてきた過去を持つ。
さらに、自分と容姿の似ている人間がそれを口に出したとなれば、余計ダメージが深いのだった。

そんな学に、式島滋は「年相応でホッとした」と評した。

veckn2313
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@veckn2313

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