パパと親父のウチご飯(漫画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『パパと親父のウチご飯』(パパとおやじのウチごはん)は、豊田悠によるハートフルフード漫画。『月刊コミック@バンチ』(新潮社)にて、2014年から2020年まで連載された。元カノから娘・愛莉を預けられた整体師の千石、妻と離婚し息子・清一郎を引き取った編集者の晴海。シングルファーザーとして子育てに奮闘する2人は、互いの利害の一致からルームシェアを選択した。全員が抱える様々な問題を、料理を通しながら子どもたちと心を通わせ、次第に家族になっていく心温まるストーリー。

大学時代の晴海と涼子。

晴海の元妻。家庭を顧みない晴海に耐え兼ね、会社経営者の保岡と不倫。そのことは深く反省している。親権を晴海に譲り、家を出た。
自家製ローストビーフを弁当に持ってくるほど、家事全般は得意で料理はかなり上手。清一郎とは月一回面会することになっている。

ある日、清一郎との面会で、千石が子供達を置いて家出したことを聞く。
そこから清一郎の家庭環境を心配して、一時は清一郎を引き取ろうとした。自身も保岡と再婚することを決めたことをきっかけに、その話を保岡に話す。涼子の気持ちを汲み取った保岡は、探偵を使い独自に晴海や千石たちを調査した。
そして千石と晴海の前に現れる。千石の乱暴な面を「DVだ」と取り上げたり、「父親だけの家庭はおかしい」という理由で清一郎を涼子に戻そうとする。その場は、千石たちをよく見ているママ友に助けられ収束する。涼子はこの時、子供たちとお手洗いに行っていたので知らない。

後日、涼子は幼稚園へ行き清一郎を眺めていた。
すると清一郎の方から、「ママについていく」と涼子の元へ来たため一緒に帰宅した。清一郎は「ママとパパは喧嘩をして今は別々に暮らしているだけ。一緒に料理をすれば仲直りする」と思っていた。
涼子はその思いに気づかず、「晴海がきちんと父親をしていなかったから、清一郎は自分の元に来たのでは」と思うようになる。翌日、晴海が清一郎を迎えにきた。そこでも涼子は「清一郎は私と一緒にいたいのではないか」と晴海を少し責める。晴海も「君は不倫して、清一郎を置いていった」と反論する。
清一郎の本心を知っていた晴海は「うちに来て一緒に夕食を食べよう」と涼子を誘った。家事ができるところを見せて、父親として認めてもらうためだ。涼子は了承し、その日の夕方、清一郎を連れて晴海と千石の家を訪れる。
清一郎が「早く行こう」と急かしたため、夕食が出来上がる予定よりも早く、涼子は晴海の家に着く。清一郎に連れられ、涼子も料理の手伝いをすることになった。その様子を見た清一郎は「これで2人は仲直りして、また一緒に暮らせる」と思っていた。

しかしそうはならなかった。晴海は清一郎の本心を解った上で「ママとパパはもう暮らせない」と清一郎に説明していた。涼子が不倫したことを清一郎に言おうとしたが、晴海に止められる。そして不倫をした自分のせいで、清一郎の希望を砕いてしまったと自分を恥じていた。
その後、「晴海が父親として不十分だから清一郎を引き取る」気持ちは無くなっている。清一郎とはこの後も月一の面会のみになっているが、関係は良好である。

保岡

清一郎と取り戻すため、晴海に直談判しにきた保岡。

涼子の不倫相手でのちの再婚相手。とある企業の社長。

涼子のことを一途に思っており、そのため涼子のためにあらゆる手段を使って清一郎を取り返そうとしてきた。
千石の乱暴な部分を取り上げて「DVだ」と言ったり、子供達との料理シーンを「家事ができないから子供たちに手伝わせている」としたり、かなり千石と晴海を敵視していた。
しかし幼稚園のママ友に「千石さんも晴海さんも立派な父親になろうと頑張っています」と反論され、その場から退散している。

晴海の母

宮崎に住んでいる晴海の母親。優しく穏やかな性格。

友人から歌舞伎のチケットをもらったからと、突然上京し晴海たちの元を訪れる。歌舞伎目当てでもあるが、男2人で子供たちを育てられるのかという心配もしていた。だからこそ家を訪ね、生活の様子を見にきたのである。
その時に千石が家出した話や、愛梨の髪飾りがくたびれていることに気づく。「男だけじゃやっぱり子育ては無理」と感じ、晴海と清一郎に「宮崎に来れば、毎日おばあちゃんが美味しいご飯を作ってあげるし、自然もいっぱいで楽しいよ」と誘う。
その後、晴海と2人きりになった時に「宮崎に帰ってきなさい、再婚もしなさい」とお節介を焼く。それに対し晴海は「母さんには関係ない!」と怒られる。母はしばらく宮崎に帰っていない晴海が、このまま家に帰ってこないのではという心配や焦りもあった。そのための発言でもあった。

子供たちが寝静まった後、母は千石の口から自分が家出未遂をしてしまった話を聞く。その間、晴海が子供2人の面倒を見て、ご飯も作って待っていてくれた話も話した。母はそのことに驚き、千石は「自分なりに父親として成長しているから、晴海のことも見守っていて欲しい」とお願いされる。

宮崎に帰る前、晴海から「この仕事も清一郎のことも、自分で決めて一生懸命している。だから宮崎には帰れないけど、また頼っていいかな」と切り出される。一生、実家に戻ってこないのではと不安になっていた母は、晴海の本当の気持ちを知り安心から泣いた。
その後、晴海が宮崎に子供達を連れて帰省した時は、とても喜んでいた。

晴海の父

地元宮崎の銀行に勤める、副支店長。メガネをかけている。
昔から無口で頑固。晴海に言わせれば「自分がこうだと思ったらそれが正しい」と思うような性格。晴海が東京の大学へ進学することにも反対しており、出版社に就職するという話を聞いたときも「そんなふざけた仕事するために上京させたんじゃない」と否定した。「地元の銀行に就職しろ」とも口うるさかった。
晴海とはそれっきりになり、縁を切ったわけではないが晴海は父を頼らなくなる。

晴海が離婚後、子供たちと千石を連れて宮崎に帰省した。父親だけでは子育ては不十分だと、父は見合いの話を晴海に進める。晴海は「勝手なことしないで」とここでも父と衝突する。

父は無口ではあるが、よく周りを見ている。清一郎のことも大切に思っており、口では言わないが態度で愛情を示している。その証拠に食事中、清一郎が口元を汚すとティッシュをそっとそばに置いてあげていた。
実は晴海のことも応援しており、書斎の一角に晴海が担当した漫画雑誌を大切に収納している。そのことに千石が気づき、晴海にこっそり教える。晴海がその光景を見ると「お互いに口下手だな」と父のことも自分のことも分かった上で笑った。

その後、晴海から「離婚も仕事も自分で決めた道だから、最後まで責任を持って進んでいく」と父に宣言。父は納得して、静かに支えることを決めた。
なお、携帯の待ち受けは晴海たちと一緒に撮った家族写真。

山代 尊(やましろ たける)

晴海が以前担当していた漫画家。元々は少年誌で『ドラゴン・ドクター』を連載していた。有名作はそれのみで、いわゆる一発屋な面が窺える。

晴海は中学生の時から山代のファン。青年誌でも山代の作品は受けると思い、熱く晴海の方から山代を誘った。その晴海の熱意に負けて、青年誌で『復讐整形外科』など3本を連載。しかし単行本の売れ行きが伸びない。匿名掲示板でも誹謗中傷され、山代は酒に溺れて追い詰められていく。
その結果、限界を超えた山代は編集部で、包丁を用いて自殺未遂を起こす。それを止めようと晴海と揉み合いになり、山代が軽く腕を切る事件が起こった。なお、この事件がきっかけで晴海は包丁が使えなくなった。

その後、真潮出版が自社アプリで過去の漫画作品を配信することになった。過去に連載していた山代の作品も該当し、山代は久しぶりに真潮出版を訪れていた。晴海はもう一度山代と話がしたいと、後日アプリの契約の件も兼ねて喫茶店で待ち合わせをする。
そこで山代は晴海に過去の事件を含め、全てを謝罪した。結局のところ山代は、自分の実力不足が招いたことだと感じていた。そして山代は「地元に戻り、漫画家も辞める」と晴海に伝えた。晴海はどうしても納得できなかった。
というのも山代が今日、自分にわざわざ会ったのは漫画家として未練があるからだと感じたからだ。晴海は「もう一度漫画を描きましょう」と過去の反省点も含めた上で、もう一度山代を鼓舞する。山代は「漫画を描くことがどれだけ大変なことか、お前に分かるか」と怒り店を出ていった。

翌日、地元に帰るため家で荷造りをしていると晴海がやってきた。
山代はドアも開けずに、晴海を追い返す。その際に晴海はドアに、紙袋を下げていった。晴海が帰った後、山代が中身を確認するとそこには漫画の資料がぎっしり詰まっていた。高い参考イラスト集まであったため、山代は晴海に返しに行こうと晴海の家を訪ねることにした。
そこで偶然、晴海と千石に出会い家の中へ招かれる。山代は子供達にねだられ、夕食が出来るまでの間リクエストに応えて絵を描いていた。清一郎に頼まれ、サラサラとクラゲや魚の絵を描いていく。その手つきを見た晴海は、「やはりまだ漫画家としての未練がある」と感じた。
山代も交えて夕食を共にした後、晴海はもう一度山代に「漫画家を続けて欲しい」とお願いする。本心を見抜かれた山代は、晴海の熱意に折れて「分かったよ」と地元に帰っても漫画のネタを探し続けることを約束した。

その後、地元でクリーニング屋の仕事をこなしながら、ネタは書き留め漫画家としての気持ちは忘れていないのだった。

愛莉と清一郎の同級生

信行(のぶゆき)

愛梨や清一郎のことを「パパしかいない家なんて変だ」と難癖つけてきた男の子。「ママがいないなんて可哀想」と発言し、愛梨と取っ組み合いの喧嘩になる。その日は反省していない様子だったが、母親からこっぴどく怒られたこともあり、翌日は気まずそうにしていた。
愛梨の方から「ごめんね」と謝ると、赤くなって照れていたため、愛梨のことが好きで意地悪をしていた可能性もある。その後の関係は良好で、信行の方から「ボール貸してやってもいいぜ」と愛梨に話しかけている。

中村 さくら(なかむら さくら)

愛梨が初めて家に連れて来た友人の一人。黒髪ロングが特徴的。将来の夢はアイドル。
父は税理士だったが退職して専業主夫。母はキャリアウーマン。

てぃあら

愛梨と仲直りするてぃあら。

特に愛梨と仲良しな女の子。
しかし学区が違うため、愛梨とは同じ小学校には行けない。そのことを知った愛梨と、喧嘩のようになるが仲直り。小学校へ行った後も、度々遊ぼうと愛梨と約束した。

健(たける)

特に清一郎と仲良しな男の子。初めは母親から「千石と晴海の家は変だから、遊んじゃだめよ」と言われていた。
ある時、幼稚園が昼で終わりだったが両親が迎えに来れなかった。そして清一郎から「うちに来る?」と誘われたこともあり、千石の家で昼食を取ることとなる。

千石の家にお邪魔し、当初は千石を怖がっていた。しかし愛梨や清一郎が「うちはパパだけで変だけど楽しい家だよ」と言ったことから、千石と晴海の2人に対する見方が変わり始める。
愛梨たちとピザを作り、焼ける間に健の母親が急いで迎えにきた。そして健を連れて帰ろうとするが、健は「ピザが焼けるまで居たい」とごねる。千石もここで引き下がれないと「健ママも一緒にどうですか?」とピザに誘ったのだ。

健ママも健もピザを楽しみ、夕方に帰っていく。健ママは「本当に今日はありがとうございました」と千石にお礼を伝えた。健も清一郎に「また遊ぼうね」と今後も関わることを約束した。

その他

健ママ

幼稚園のママ友。清一郎と愛梨の同級生の健の母親。真面目で優しい性格。
当初は「シングルファーザー同士がルームシェアなんておかしい」と思っており、息子の健にも「愛梨ちゃんと清一郎くんにはあんまり関わっちゃダメよ」と教えていた。

ある時、健のお迎えに行けず2人の家に健が遊びに行った。そこで楽しくピザ作りをしたり、友達を遊ぶ建を見て心を入れ替える。また普段の千石と晴海を見ており、「ダメなことはダメと言う、子供たちと一緒に料理を楽しむ姿」などの父親らしい一面を知っていく。それ以降は信頼して千石や晴海、清一郎や愛梨とも偏見を持たずに関わりを持つようになる。

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