裏世界ピクニック(小説・漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『裏世界ピクニック』とは宮澤伊織によって執筆され、『早川文庫JA』から刊行されたSF・ホラー小説及び、原作をもとにして制作された漫画・アニメ作品である。ネット上で実話怪談として語られる危険が存在する〈裏世界〉を紙越空魚(かみこし そらを)と仁科鳥子(にしな とりこ)の二人の女子大生が探索する怪異サバイバル。都市伝説を元にしたホラーやSF要素の他に二人の距離感を中心とした百合的心情も綿密に描かれている。

『裏世界ピクニック』の概要

『裏世界ピクニック』とは宮澤伊織によって執筆され、『早川文庫JA』から刊行されたSF・ホラー小説及び、原作をもとにして制作された漫画・アニメ作品である。実話の怪談を下敷きにした<裏世界>を女子大生の空魚と鳥子の二人が冒険する物語。電子版を含めたシリーズ累計発行部数は50万部を突破している。原作小説の他に、『月刊少年ガンガン』にてコミカライズ漫画化もされており、作画を『スパイラル〜推理の絆〜』の水野英多が担当。2021年1月からはTVアニメ化もされ全12話がAT-X、TOKYOMXなどで放送された。アニメーション制作はライデンフィルム×FelixFilmで共同制作され、監督とシリーズ構成には『STEINS;GATE』の監督を務めた佐藤卓哉が起用された。

紙越空魚は、実話怪談として語られる怪異が徘徊する<裏世界>の存在を知りたびたび探検をしていた。 ある日<裏世界>の探索中に怪異「くねくね」に襲われて、身動きが取れなくなってしまった空魚の前に、一人の少女仁科鳥子が現れる。空魚を助けた鳥子は<裏世界>で行方不明になった「冴月」という友人を探していた。後日、現実世界に戻った空魚の元に鳥子が訪れ〈裏世界〉の探索の協力を依頼する。奨学金を返済するお金稼ぎのため、空魚は鳥子と行動をともにする。非日常へ足を踏み入れた二人による危険なサバイバルが始まる。

本作はストルガツキー兄弟の『ストーカー』をイメージした作風である。作者の嗜好により、登場人物の人物像や関係性には百合の意識した造形が盛り込まれている。作者によると本作を書いたきっかけとして、Web小説の流行ジャンルである「異世界もの」で前述の『ストーカー』のような話を書きたいという理由を答えている。本作の<裏世界>に登場する怪異の多くは、匿名掲示板「2ちゃんねる」(現・5ちゃんねる)のオカルト板に存在したスレッド「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」からのネタを元にしており、小説のあとがきでも参考文献として各種スレッドを上げている。

『裏世界ピクニック』のあらすじ・ストーリー

1話「くねくねハンティング」

<裏世界>を探索する紙超空魚(かみこしそらを)は、怪異「くねくね」に遭遇する。くねくねを見ることで意識がもうろうとし、身動きとれなくなってしまう。死を意識した空魚は誰かの名前を呼ぶ声を聞く。人だと思った空魚は「ここに人がいる」と助けを求め、やってきた謎の美少女に助けられる。少女はせまってくるくねくねに岩塩を投げて撃退する。謎の美少女の名前は仁科鳥子(にしなとりこ)。裏世界で閏間冴月(うるまさつき)という友人を探しており、空魚よりも前から<裏世界>を探索していた。
空魚は鳥子と一緒に、自分が<裏世界>へと入ってきた扉から、現実世界へと戻ってくる。くねくねは撃退された時に謎の鏡石を落としていた。空魚は無事に帰れた事をまずは喜ぶが<裏世界>へと続く扉は消えてしまい、持っていた携帯電話も<裏世界>の影響で壊れてしまった。後日、大学の食堂で食事をしている空魚の元を鳥子が尋ねてくる。通っている大学の名前から場所をつきとめてきたらしい。鳥子は「もう一度裏世界の探索に行こう」と空魚を誘う。乗り気でない空魚であったが、鳥子は「裏世界で入手したものを買い取ってくれる人がいる。お金になるからくねくねを倒しにいこう」と言う。裏世界で壊れた携帯の修理や、奨学金の返済などでお金に困っている空魚はその条件に惹かれ、一緒に<裏世界>へと向かう事にする。鳥子の案内で御茶ノ水にやってきた二人は、雑居ビルのエレベーターから再び<裏世界>へとやってくる。鳥子は空魚に自衛の為に拳銃を手渡す。「何故?」と思うが「共犯者だから」と言う。<裏世界>を探索する二人は再びくねくねに遭遇する。拳銃や岩塩を使って応戦するが以前と違ってくねくねはなんの反応も示さない。空魚は以前のくねくねと戦った時はくねくねを認識していたから撃退できたと思う。「裏側の生き物を狩るなら裏側の理屈に歩み寄らなければならない」とくねくねを直視して認識しようとする。くねくねを見て空魚は意識を失いかけるが、鳥子の「戻ってこい」の呼びかけで意識を取り戻す。「私がくねくねを見てあなたが撃てば撃退できる」と鳥子に言い、鳥子は拳銃を打つ。空魚によって認識されたくねくねは銃弾を受け消滅する。くねくねが落とした鏡石を手にした二人は先ほどまでの戦いに恐怖しながらも、お互いに無事であった事を喜び合う。「打ち上げにいこう」と誘う鳥子の誘いを受けつつ、空魚は「ひとりじめしたい裏世界をこの変な女と一緒になら遊んでもいい」と心に思った。

2話「八尺様サバイバル」

くねくね退治をした後、空魚は右目が青くなっていた。同様に鳥子も左手が半透明になっていた。原因をさぐるために裏世界の研究をしている鳥子の知人である小桜(こざくら)の元へと向かう。石神井にある小桜の家を訪れる空魚。家に通された空魚は、小桜が冴月の大学時代の知り合いであると知る。また一緒に<裏世界>の研究をしていた事や<裏世界>への調査を嫌がった小桜の代わりに、冴月は家庭教師の教え子であった鳥子を助手として裏世界の探索を始めた事も知る。冴月自身は三か月程前に<裏世界>で消息を絶ってしまった。自分達の体に起こった変化も見てもらうが、小桜も<裏世界>の接触した事以外の原因はわからずじまいであった。
くねくねを倒した時の鏡石を買い取ってもらい、小桜の家を出た空魚。鳥子は「空魚となら冴月を見つけられる」と意気込み、再び<裏世界>の旅へと向かおうとする。神保町のビルから再び<裏世界>へとやってきた空魚と鳥子。空魚は冴月に夢中な鳥子に対して「勝手にやれ」と思ってしまい、終始不機嫌な様子で探索をしていた。その様子を悟った鳥子から「感じが悪い」と言われ、二人は言い争いになってしまう。口喧嘩の最中「止まれ」と一人の男が声をかけ手にした銃を突き付けてくる。男は空魚を見て「妻がいる」と言い始めるが、鳥子の言葉によって正常になる。男の名前は肋戸誠司(あばらとせいじ)といい、神隠しにあった妻を探すために<裏世界>を探索していると話す。肋戸は、鳥子も行方不明の友達を探していると知ると「目的が同じだから安全なルートを案内する」と言い、空魚達と一緒に行動することになる。肋戸は「裏世界には人に化けた奴らがいる。妻も奴らに攫われた」と<裏世界>の住人の存在を示唆する。また空魚達は「言い争いをしていたので人間と思い声をかけた」とも語る。肋戸の言葉に怪しさを感じた空魚は「ついていって大丈夫か?」と思うが、鳥子は冴月を見つけたいと思い一緒についていく。道中の足跡を追うと、八尺様という怪異に遭遇する。肋戸は八尺様を見ると「妻がいる」と言って飛び出し、連れ去られてしまう。鳥子も同じように冴月がいると思い八尺様の元へ行こうとするが、空魚は後を追い静止しようとする。そんな空魚を後ろから引き止めるのはなんと目の前にいる鳥子であった。鳥子への感情を利用されていたのは自分であったと気付き、恥ずかしさを感じる空魚。正常を取り戻した空魚は、自分の右目が怪異を認識できるように、鳥子の左手は怪異に触れる事ができると思う。鳥子の左手の力を使い、八尺様を退ける。肋戸が入ってきた鳥居から元の世界へ帰還する空魚達。近くには八尺様の被っていた白い帽子が残っていた。場所は秩父の山中であった。神保町からはるか遠くに飛ばされ、帰るお金もない二人は小桜に電話をするが「頑張って歩きなさい」と言われてしまう。

3話「巨頭の村」

次の<裏世界>への探索の計画を立てる鳥子。「このまま鳥子と一緒に危険な探索を続けて大丈夫なのだろうか? 」と思う空魚。不安を抱えたまま鳥子と<裏世界>の探索へと再び赴く空魚。今回は冴月が使っていた補給ポイントである小屋へと向かう。<裏世界>に存在するトラップであるグリッチを避けながら探索を続ける二人。巨頭村という立札の立つ先の村へとやってくる。村は静かで廃村そのものの雰囲気であった。村の集落を回っていると開け放された戸の先に、卓袱台にそえられた食卓があった。古ぼけていない食卓を見て、誰もいないが生活感があると思う空魚。肋戸が裏世界に人がいる事を語っていた事を思い出す空魚は、ここが裏世界に住む人の村なのかと思う。肋戸の残した言葉が、精神を病んでしまったゆえの出鱈目から出たものではないとも思う。奇妙に感じた空魚は用がないなら早く立ち去ろうと思うが、探索の最中に空魚は鳥子とはぐれてしまう。村中を走り回りようやく鳥子を見つけるが、直後集落の一つから頭の大きな生物が姿を現す。巨頭の怪異は空魚達を見ると襲いかかってくる。慌てて逃げながらも、拳銃で巨頭の生物を撃退する二人。しかし、即座に廃村じゅうから先ほどと同じ巨頭の生き物が大量に姿を現す。逃げようと走る空魚と鳥子であるが、すぐさま追いつかれてしまう。空魚は右目を使って、近くに祀られていた小さな社が元の世界に繋がっていると判断して飛び込む。巨頭達の追撃を振り切って無事に元の世界に戻ってきた二人。無事を喜んだ鳥子は「やっぱり空魚は頼りになる。これからもよろしくね」と感謝の言葉を空魚に告げる。命の危険に遭ったのに<裏世界>の探索を続けようとする鳥子を見て、空魚は「やっぱり一緒に行動するのは考えなおしたほうがいいのではないか?」と思うのであった。

4話「時間、空間、おっさん」

ある日、打ち上げのためにカフェに行く空魚と鳥子。今のままの探索を続けると絶対いつか死んでしまう、と思う空魚は「考え直すべき」と鳥子に言う。「はやく冴月を助け出さないといけない」と言う鳥子に「あったことない冴月の為にそこまで危険な事はできない」と言う。それを聞いた鳥子は「後は一人でやる」と言い残して去ってしまう。数日後、空魚は小桜から鳥子の家の住所を聞き出し、仲直りの為に鳥子の家に行く。しかしマンションのエレベータに乗っていると、<裏世界>と元の世界をつなぐ中間領域に迷い込む。そこで空魚は時空のおっさんと呼ばれるネットロアの怪異に遭遇、「あの子の事はあきらめろと」言われる。更には元の世界に戻った空魚に鳥子が<裏世界>に向かう写真のメールが送られてくる。鳥子を探す為に、小桜に一緒に<裏世界>に言ってほしいと頼み込む空魚。小桜は「嫌だ」と断るが、その瞬間に小桜の家のチャイムがなる。しつこいチャイムを追い返そうと玄関口に出ると空魚と小桜は<裏世界>へと飛ばされていた。空魚達ほど恐怖耐性のない小桜はおびえるが、空魚は「ここまできたらせっかくなので協力して」と言って小桜と一緒に<裏世界>で鳥子を探し始める。
探索の最中、ふとした事で空魚は小桜に自分の家族について語る。母が亡くなった後、空魚の父親と祖母は怪しい宗教にはまり、それを嫌った空魚は家出をくりかえしていた。ある時に謎の声を聴いて父親達がいるかいらないか質問されて「いらない」と答えた後、空魚の父親と祖母は亡くなってしまう。その後は奨学金で大学に通っている事を話す空魚。小桜からは鳥子の父は軍人をしていた事、カナダ生まれである事、両親は既に亡くなっている事も聞く。神保町から<裏世界>にやってくる時に使う鉄塔から辺りを見まわし、鳥子を見つける空魚。鳥子を見つけた集落を見つけ、張り巡らされたグリッチを右目で見ると鳥子のマンションのような場所へとたどり着く。中を探索して鳥子を遂に見つけ出すが、鳥子は「冴月」を見つけて帰れないと言う。鳥子の近くにいる怪異を見てどう見ても冴月と思えなかった空魚はその怪異を破壊し、鳥子を救出する。

5話「ステーション・フェブラリー」

小桜を勝手に<裏世界>へ連れて行った事へのお詫びと、空魚と鳥子の仲直りを兼ねた打ち上げが開催される。小桜が一足先に帰り、二人になった空魚と鳥子は次の<裏世界>の探索計画をたてていた。打ち上げで酔いが回った鳥子は以前の探索で持ち帰った八尺様の帽子を被るなどはしゃいでいた。打ち上げが終わり酔った鳥子と一緒に帰る空魚は、帰宅の途中で急に謎の草むらに迷い込む。池袋の繁華街から急速に変化した風景に戸惑っていると、上空に謎の巨大鳥が飛ぶのを目撃する。また<裏世界>にやってきたと確信する。「何故急に<裏世界>に来たのか? 」と空魚は鳥子がカフェで被った八尺様の帽子が原因ではないかと考える。直後、謎の怪異ホーンドマンに襲われる空魚と鳥子。いきなり飛ばされ準備も不十分な二人は逃げるしかなかった。逃げ出しながら、道中の線路を発見し駅を探しだそうとする空魚と鳥子に銃弾が飛んでくる。謎の武装集団が現れ、彼らが怪異を退ける。武装集団は二人にコンタクトをとる。彼らは在日米軍部隊「ペイルホース」であり、沖縄で実践訓練中に<裏世界>に迷い込んだと説明する。リーダーのドレイク中尉は二人に「どこから来た?」と尋ねる。東京の池袋から来たと知ると、沖縄の山奥に迷い込んでいたわけではないと改めて実感する。米軍達は一か月以上もこの裏世界に迷い込んでいる。既に犠牲者も出ており、先ほどの怪異もグリッチでおかしくなった自分達の兵器であったと説明する。自分達の拠点に案内すると言われ、ついていくことにする二人。途中、ドレイクがステーションフェブラリーと語る場所にやってくる。それはネットロアで有名なきさらぎ駅であった。

6話「ミート・トレイン」

きさらぎ駅近くにドレイク達の在日米軍隊「ペイルホース」は陣地を張っていた。ドレイクは二人を迎え入れるが、部下であるグレッグ曹長を始めとした軍人達からは得体が知れない存在として煙たがられる。ドレイクは二人をレイバルカー少佐に紹介、少佐の協力もあって野営地でのテントをあてがわれる。ドレイク達「ペイルホース」は元の世界へ帰還するために<裏世界>を探索しているが、グリッチの存在で部隊が立ち往生していた。空魚はグリッチを見破れる自分の右目の力で、部隊を案内できないかと考える。寝る場所を与えられて安心した二人は携帯の電波が届いている事に気づく。しかしドレイクは「電話はかけない方が良い」と言うが、空魚は小桜へと電話をかける。途中までは会話が成立するが、言葉がおかしくなり途中で会話が成立しなくなってしまう。
その夜、野営地に怪異が襲ってくる。野営地ではペイルホース部隊が必死の攻防を繰り広げるが、怪異に対してダメージを上手く与えられないでいた。空魚は鳥子と一緒に協力して、いつもと同じように怪異の実体を見抜き、怪異を撃退する。自分達の勝利に部隊も喜び、今まで二人を疎ましく思っていたグレッグ曹長も「見直した」と感謝の言葉を伝える。しかし、片目の色が違う空魚を見て、「やはり化け物だ」と思い、今度は空魚達に襲い掛かってくる。もうここにはいられないと思った二人は野営地から逃げ出す。近くのきさらぎ駅までやってくると線路に電車が走ってくるのを目撃する。空魚は電車が元の世界へとつながっていると見抜き、鳥子と協力して元の世界へと帰還する。しかし元に戻った場所は池袋から遥か遠く離れた沖縄であった。

7話「 果ての浜辺のリゾートナイト」

元の世界へ戻ってきたものの、沖縄まで飛ばされた空魚と鳥子。ホテルに泊まり、一夜明けた空魚は「大学もあるし東京に帰ろう」と思うが、鳥子は「折角なので海によってから帰ろう」と提案する。海に向かう為にタクシーに乗っていると、意識を失う空魚、気づくとタクシーは無人となっており<裏世界>へとたどり着いてしまう。やってきた<裏世界>は海の家が建ち、海岸が存在していた。周囲の確認をして、今のところ危険がないと思った二人は<裏世界>での海でリゾート気分を楽しむ。元の世界でのビーチで楽しむ為に持っていたパラソルを張り、お互いにビールを飲み乾杯するなど海を満喫する。「空魚とは友達とできる事の全てをやりたい」と鳥子は言う。その時、近くで誰かのうめき声が聞こえてくる。うめき声の場所まで行くと、人殴っている複数の暴漢がいた。空魚を見ると今度はこちら側に襲い掛かってくる。空魚は拳銃で暴漢と思われるものを撃退する。右目で見て、人間ではない事を確認しつつも「自分を破壊しようとする相手なら物理的にも精神的にも、拳銃を撃つ事ができる」と思う。今度は海の家から大量の緑色の怪異が出現し空魚達の元へ向かってくる。数が多いため逃げようと空魚は自分達の張ったパラソルの場所まで戻ってくる。八尺様の帽子を取り出し「上手くやればゲートを作り出せる」と思った空魚は、鳥子の左手の力を借りてゲートを作り出す。空魚はゲートから元の世界へ帰る。ゲートが閉まる直前に謎の人影を見るのであった。

8話「猫の忍者に襲われる」

空魚は大学の学食で後輩の瀬戸茜里(せとあかり)に「相談にのってほしい」と声をかけられる。茜里は「猫の忍者に襲われる」と悩んでおり、怪異の存在に詳しい空魚に相談しに来たという。茜里が話すのは「猫の忍者」という有名なネットミームの話だと思った空魚は、からかわれているのかと思い、その場は連絡先を貰うだけで別れる。
小桜の家には謎の機械が送られてくる。沖縄へ行った時に鳥子が<裏世界>探索に便利だと思い、AP1という作物管理作業車を購入していた。それが小桜の家宛てにしており、到着したのだ。急に頼んでもいない大型の作業車が届き、小桜は困惑する。茜里から相談を受けている話を聞いた鳥子は「いつもはなんだかんだで協力するのに、今回は何故、助けてあげないのか?」と尋ねる。空魚も茜里が嘘をついているようには見えないと思っているが、猫で怖い思いをして猫が嫌いになりたくないと思っていた。鳥子は「動物は人間より強いから油断できない」と語り、とりあえず茜里の話だけ聞いてみようと空魚に提案する。
翌日、鳥子を連れて大学で茜里に会う空魚。茜里が話すには数週間前に夜中にコンビニに買い物に行った時、猫の集会を目撃した。それからというものの、毎日のように猫に襲われているという。この数日は特に酷くて、空魚に相談しに来たという。
茜里の話を聞いていると、突如として中間領域に迷い込む空魚達。そして三人の元に猫の姿をした忍者が現れる。猫の忍者を倒すために拳銃をつかおうとする鳥子。茜里の前で拳銃を使うのをためらう空魚。「あの子も共犯者にするしかない」と思うと鳥子だが、空魚は「共犯者は嫌、被害者ならいい」と言う。茜里と一緒に猫の忍者に応戦する中で、猫の忍者の目的が茜里の中にある何かであると思う。空魚は右目の力を使い、茜里の中に何かを見つけた空魚は鳥子によって取り出す。茜里の身体の中からでてきたのは猫のお守りであった。「いつの間にかなくしていた」と語る茜里。茜里が猫に追い回されている原因はお守りにあると思った空魚は、お守りをあさっての方向へと投げ捨てる。猫の忍者はお守りを追いかけて去っていった。猫の忍者の騒動が解決し、空魚に感謝する茜里。空魚は「お守りを誰にもらったのか」と聞くと「家庭教師の閏間冴月に貰った」と答える。その名前は鳥子が<裏世界>で探し続けている冴月の名前であった。

9話「サンヌキさんとカラテカさん」

急遽小桜に呼び出された、空魚と鳥子。小桜の家には茜里がいた。大学で空魚に避けられたと思い、冴月の友達の小桜を訪ねてきたという。茜里は幼馴染の市川夏妃(いちかわなつみ)がある日、猿のような生物に話かけられ「サンヌキカノを知っているか」と質問されたと語る。話を聞いて、サンヌキカノのネットロアであると思う空魚。怪談通りであれば、猿が渡した歯を埋めてしまえばよいと思うが、幼馴染の夏妃は気味悪がって歯を捨ててしまったという。夏妃の身の危険を感じて、彼女の働いている車検工場へと向かう空魚、鳥子、茜里。夏妃は猿に会って以来、整備場で謎の老婆の自殺を目撃するなどおかしな現象に遭遇したり、家族が事故に会って入院するという不幸が続いていた。
空魚は捨てた歯を探し、車検工場の整備場を探して回る。手分けをして探している中で、夏妃は空魚に茜里と冴月の事を話す。直接の面識はないが、茜里と一緒にいる冴月を見て夏妃は気味が悪い人だと思った。そして茜里をどこか遠くに連れていくとのではないかと心配になっていた。茜里が最初知り合いを連れてくると聞き、また冴月のような人を連れてくると思い心配であったが「空魚はそんな人物でなさそうでよかった」と語る。そんな中またもや整備場にサンヌキカノがやってくる。「歯をいただきにきた」と言うが、歯がないとわかるとサンヌキカノは襲い掛かってくる。鳥子や茜里と協力してサンヌキカノを退ける。数日後、夏妃は両親も退院し、謎の現象に遭遇する事も無くなった。自分だけでなく親友の問題も解決してくれた事で茜里にますます尊敬される空魚。茜里は空魚の事を「家庭教師だった冴月に似ている」と言う。

10話「エレベーターで焼肉に行く方法」

空魚に鳥子から電話がかかってくる。小桜や茜里を誘い、打ち上げのために焼肉屋へ誘われる。空魚が待ち合わせのために池袋に向かう。待ち合わせの場所には鳥子がいるだけであった。茜里は焼肉屋へ予約をとりに行き、小桜はまだ到着していない。二人きりになった空魚と鳥子。鳥子は以前に迷い込んだ<裏世界>で出会った米軍部隊を残して帰還してきた事を気にしており、何とかして彼らを助けれないかと思っていた。空魚と鳥子はもう一度米軍部隊がいる場所に行く手段を考える。その時、茜里から電話がかかってくる。「焼肉屋の入っているビルのエレベータに乗っても、いつまでたっても到着しない」と言い残して、茜里からの電話は途中で途切れてしまう。エレベータに乗っている途中で中間領域へと迷い込んだと思った二人は、救出のために茜里の乗っていたエレベータに乗り<裏世界>へと向かおうとする。焼肉屋のあるビルに到着しエレベータに乗ると、遅れて小桜がやってくる。そのまま最上階の焼肉屋に行くと思った小桜はエレベータに乗り込む。扉が閉まった直後に空魚がこれから<裏世界>へと向かうという事情を説明すると、小桜は嫌がるが後戻りができないため一緒に茜里を探すことになる。
中間領域で茜里を発見した空魚は、前へと歩き続ける茜里に声をかける。空魚に気づいた茜里は「ずっと前にいる空魚を追いかけていた」と言う。目の前には髪の長い女性の人影がいた。「何故髪の短い自分と見間違えたか?」と空魚は疑問に思っていると、前方から謎の怪異が襲ってくる。皆でエレベータまで引き返し、間一髪で逃げ延びる事に成功する。動き出したエレベータの中で皆が気を失っていると、目覚めた空魚は再び開いたエレベータから冴月の影を見る。未だに気を失っている鳥子の左手の力を使い、その幻影を打ち破ると、エレベータは何事もなかったかのように元の世界の焼肉屋へとたどり着く。

11話「きさらぎ駅米軍救出作戦」

Sota219
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