ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(ホラー映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』とは、1968年アメリカで公開されたホラー映画。死者が蘇り人を襲い始める事件に直面した主人公たちが一軒家に籠城して内輪で争いながらも、死者からの襲撃をから一夜を生き抜くという内容である。11万ドルの予算で製作され1800万ドルの収入を上げた。
原作はジョン・A・ルッソ、監督はジョージ・A・ロメロ。「ゾンビ」というモンスターは本作品で創作され登場した。人種、社会問題をも作品に反映しており、単なる恐怖映画を超えた名作としてロングランを続けた。
本作品で何故「死者」が蘇って人間を襲うのか、明言はしていないが原子力発電機を積んだ人工衛星が墜落して放射能が地表に降り注いだことが原因では、と説明している。
映画製作時の1960年代はアメリカとソ連で激しく宇宙開発競争が行われており、また世界各地で核実験が行われ放射能汚染が社会問題となっていた。
また「死者が蘇り人間を襲う」という設定は古典ホラー映画では既にはあったが悪魔の呪いや科学技術等の説明がなされていた。本作品で「ゾンビ」というモンスターがメジャーになったがゾンビの発生原因はその後のロメロのゾンビ作品でも明確になっていない。
保安官
「死者」を退治して事態を収拾させるのは地元の保安官や民兵であり軍隊は登場しない。
アメリカの地方自治制度では緊急事態には民間人が銃を所持して警察と協力して発砲することが許可されている。
国が起こしたトラブルを国(軍隊)は解決してくれず結局市民がそのツケを負う、という皮肉が込められている。
バリケード
「死者」の侵入を防ぐために窓や扉を塞ぐ「バリケード」はその後のゾンビ映画には定番のアイテムとなった。
有名なゾンビ映画「ゾンビ」「バタリアン」「死霊のはらわた」「ワールド・ウォーZ」でも、バリケードを作る→ゾンビに突破されて危険に陥る、という展開となっている。
著作権・フィルム保存・評価
本作品は当初のタイトルが「ナイト・オブ・ザ・フレッシュイーター」だったが公開直前に変更したため、その際の不手際で著作権が成立していない。よってインターネット上で自由に閲覧・公開できる状態になっている。映画公開時の興行収入は失敗に終わったがドライブインシアターやテレビ放送されると徐々に話題を集め、「少数な熱烈支持者がつく名作」いわゆるカルト・クラシックとしてフィルムはニューヨーク近代美術館に所蔵された。そしてアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録されている。
ニューヨークタイムズの「優れた1000の映画」・イギリスの映画雑誌トータルフィルムの「優秀作品100選」のリストの中に本作品が入っており、アメリカ映画協会の優秀作品上位93位に選ばれている。
「ゾンビ」という単語は使われていない
本作品では「ゾンビ」という用語は出ていない。冒頭では「奴ら」と呼び後半は「グール(人肉を食べる鬼)」と呼んでいる。「ゾンビ」とは南米のブードゥー教にある言葉で、農業の繁忙期に死者を蘇らせて労役を課すという言い伝えがありその「死者」を「ゾンビ」とよぶ。本作品の続編「ゾンビ」でゾンビの名称が世界的に知られるようになった。
監督のロメロがカメオ出演している
テレビのニュース放送で政府高官にインタビューする人物は監督のジョージ・A・ロメロである。
設定の矛盾点
農家にてバーバラは謎の惨殺死体を発見する。この死体は「死者」となって蘇り、そうなると屋内で籠城しているベン達は危険な状態になる筈だが映画ではその描写がない。
複数のバージョンと亜流作品
本作品には複数のバージョンと亜流作品が存在する。
・「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 死霊創世記」 1990年製作 本作品を忠実にリメイク バーバラが逞しい女性として最後まで生き延びる。
・「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 最終版」1999年製作 最初に現れる「死者」が棺桶から蘇るシーン、牧師が「死者」が蘇る理由を「神の怒りだ」と説明するシーンの追加がなされている。とってつけたような「死者」への解釈がファンには不評だった。
・「チルドレン・オブ・ザ・デッド」 2001年製作 本作品の後日譚。テンポが悪くストーリーも破綻しており評価は低い。
・カラー版 2004年 製作 フィルムに着色する技術によるカラー版。ファンからは好評を博し、白黒画像が醸し出す独特の恐怖感が再認識された。
・「超立体映画 ゾンビ3D] 2006年製作 冒頭のみ本作品のリメイクという位置づけでほぼオリジナル。冒頭で本作品がテレビ放送されている場面がある。
・ミメシス ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 2013年製作 ホラーコンペンションに参加した若者がナイト・オブ・ザ・リビングデッドの世界に迷い込むという内容。
・ナイト・オブ・ザ・リビングデッド リザレクション 2012年製作 舞台をイギリスにしたリメイク作品 映画情報サイトIMBdによると10点満点中2.7点の低評価である。
・ナイト・オブ・ザ・リビングデッド ダーケスト・ドーン 2015年製作 CGアニメ
元ネタ
本作品の元ネタは「地球最後の男」という作品であり、脚本家のルッソも認めている。「地球最後の男」では「死者」ではなく吸血鬼が主人公を襲う。「ノロノロ歩く」「集団で襲う」「知能が低い」「主人公が一軒家に籠城する」という点が本作品に影響を与えている。
『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の音楽
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目次 - Contents
- 『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の概要
- 『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のあらすじ・ストーリー
- 謎の男の出現
- 農家での籠城
- 他にもいた生存者
- 脱出作戦
- 脱出の失敗
- 破られたバリケード
- 夜明け
- 『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の登場人物・キャラクター
- ベン(演:デュアン・ジョーンズ)
- バーバラ(演:ジュディス・オーディア)
- ジョニー・ウィルソン(演:ラッセル・ストライナー)
- ハリー・クーパー(演:カール・ハードマン)
- ヘレン・クーパー(演:マリリン・イーストマン)
- カレン・クーパー(演:カイラ・ショーン)
- トム・レノックス(演:キース・ウェイン)
- ジュディ・ジャクソン(演:ジュディス・リドリー)
- ニュースキャスター(演:チャールズ・グレッグ)
- 共同墓地のゾンビ(演:ビル・ハインツマン)
- ウォルト・マクレラン(演:ジョージ・コサナ)
- リポーター(演:ビル・カーディル)
- 『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 「地下室へ行けよ!」
- 「死者」となったジョニー
- 食人シーン
- 『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の 裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 「リビング・デッド」という名称
- 人工衛星と放射能
- 保安官
- バリケード
- 著作権・フィルム保存・評価
- 「ゾンビ」という単語は使われていない
- 監督のロメロがカメオ出演している
- 設定の矛盾点
- 複数のバージョンと亜流作品
- 元ネタ
- 『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の音楽