BILLY BAT(ビリーバット)のネタバレ解説・考察まとめ

『BILLY BAT』とは、浦沢直樹による漫画作品。ストーリー共同制作は長嶋尚志。『モーニング』(講談社)にて、2008年から2016年にかけて数回の長期休載を挟みつつ連載された。
歴史の裏を描くSF大河作品。特定の人物に取り付き、未来を予言する「こうもり」の声を聞いた人々が、やがて歴史的な事件に大きく関わっていく様子を描く。

勘兵衛

戦国時代に活躍した伊賀忍者。俊足と目的を達成する為には仲間をも裏切る卑怯さを買われ、ジャッキー・モモチとランディ・モモチの祖先に当たる百地丹波守につかえていた。
織田信長軍から伊勢を守ろうとした百地丹波守から、こうもりが封印された巻物を運ぶと言う任務を任せられる。しかし、任務の途中から巻物のなかのこうもりの声が聞こえるようになり、その影響で子ども時代の友人や任務の途中で自分を助けてくれた人々をことごとく失うはめになる。
巻物を不吉なものと考えるようになり、任務を放棄して巻物を封印する。その後は任務の途中で亡くなってしまった友人や恩人達の地蔵を彫り、彼らの鎮魂に生涯を捧げた。
彼が巻物を封印し、地蔵を彫っていた場所は後に光森村になった。

ランディ・モモチ

1959年のニューヨークにて、タクシー運転手をしていた日系人の男。百地 金持(ももち きんじ)と言う日本名がある。勘兵衛がつかえていた百地三太夫の子孫であり、大の日本びいき。
ヤマガタ版「BILLY BAT」の大ファンであり、妻が作ってくれたというビリーのマスコットをタクシーに付けている。マスコットを介してこうもりの声を聞くことが出来る。
妻や娘のジャッキーとは別居していたが、タクシーの乗客であるダイアンとトニーの結婚を後押しした事で自分も勇気をもらい、妻と復縁し同居するようになる。

ジャッキー・モモチ

ランディ・モモチの娘。1963年のアメリカにて、元カレからヤマガタ版「BILLY BAT」を手に入れる。ヤマガタ版のビリーを目にしたことを切っ掛けにこうもりの声が聞こえるようになる。
その後、ケネディ暗殺に来栖らが関わっている姿を目撃し、彼らの組織に追われるが、オズワルドに助けられる。
ゴールデンコカコーラ社の懸賞に当選旅行に当選し、ランディとともに日本に向かう途中の飛行機でヤマガタに出会う。その後、ヤマガタとともにモモチ親子のゆかりの地でありかつて巻物が封印された土地である光森村に向かう。

チャック・カルキン(偽)

ケヴィン・ヤマガタの元アシスタントで、ヤマガタが日本を訪れている間に「BILLY BAT」の連載を引き継ぎ、「BILLY BAT」を世界的に広めたと思われている人物。
「BILLY BAT」シリーズのアニメや遊園地などの権利を持つ「カルキン・エンタープライズ」という会社を運営し、巨万の富を築いている。
しかし、実際はチャック・カルキンではなく、チャックの名をかたる本名不明の実業家。本物のチャックをそそのかして「BILLY BAT」の連載を続けさせた。主人公のビリーを可愛くコミカルな路線に変更し、子どもに大人気のキャラクターにする事で、「BILLY BAT」を世界的人気漫画にまで成長させた。
その裏で、世界各地のこうもりの声を聴くことができる者たちを、デュヴィヴィエなどのエージェントを雇って抹殺している。
その正体はとあるナチスの残党で、収容所にて脱走兵として処刑されそうになったところを、その商才を見込んだヒトラーにより助けられた。
その後、ヒトラーから「こうもりの絵」を世界的に広めるように命令され、アメリカに渡った。

チャック・カルキン (真)

ケヴィン・ヤマガタの元アシスタント。
1949年、ヤマガタが日本を訪れている間の「BILLY BAT」の連載を任せられるが、その期間にチャック・カルキン(偽)と出会い、彼の口車に乗せられてヤマガタとは違う独自の作風の「BILLY BAT」の連載を始める。チャック・カルキン(偽)の商業的手腕も相まってチャック版「BILLY BAT」はオリジナルのヤマガタ版をしのぐ世界的人気作品となり、結果的にヤマガタから「BILLY BAT」を奪ってしまった。以来、その事を後悔し続けている。
長年、自分の名をかたって華々しく活躍するチャック・カルキン(偽)のゴーストライターとして「BILLY BAT」の連載を続けていたが、ケヴィン・グットマンと出会い、彼が描いたビリーを見たときに才能を感じ、グットマンを「BILLY BAT」の正式な後継者として認める。そして、チャック・カルキン(偽)を裏切り、オードリーと協力してグットマン本人とグットマンが描いた「BILLY BAT」を世に広める為奮闘する。
グットマン版「BILLY BAT」が世に広まった後はグットマンのアシスタントとして彼を支えていた。
2018年にモニカらの協力によりヤマガタと再会し彼と和解した後、他界した。

スミス

CIAのエージェント。1949年に起きたチャーリー・イシヅカの殺人事件のさいに、ヤマガタを調査している。
イシヅカの事件の捜査などを通じてこうもりの存在を知った。ケヴィン・ヤマガタの漫画のファンである。
イシヅカの事件の10年後に、ヤマガタの行方を追って彼が匿われていたアメリカの片田舎を訪れ、こうもりの声を聞く事への恐怖からアルコール依存症になったヤマガタと再会する。
ヤマガタを励まして彼を立ち直らせ、ヤマガタがこうもりから聞いたという「ケネディ大統領が暗殺され、オズワルドという青年がその犯人に仕立て上げられる」という予言の実現を阻止するため奮闘するが、ヤマガタを狙った銃弾から彼をかばった事で目を負傷し、ヤマガタと別行動になる。
数年後、ケヴィン・グットマンが来栖らに命を狙われている事を知ってグットマンの前に現れ、彼に身の守り方を教える。
現役引退後は老人ホームで暮らし、グットマンに遺言を遺して死亡する。

フィニー

GHQ特別検閲官。こうもりの声を聞く事ができる人物とこうもりについて書かれている古文書を追っている。
1949年のチャーリー・イシヅカの殺人事件のさいには、スミスと同様にヤマガタを調査している。
後に「ビリーバット歴史研究所」の代表になり、1964年の光森村で得たこうもりについて書かれた巻物の解読をしていたが、2020年に部下のジェフリーに撃たれて死亡する。

ヘンリー・チャールズ・デヴィヴィエ

1964年に光森村を訪れた、不動産の代理業者の男。しかし、その正体はチャック・カルキン(偽)に雇われた殺し屋。光森村を訪れた目的は、雑風が描いた「BILLY BAT(雑風版のタイトルは『こうもり小僧の大冒険』)」シリーズの始末と村に眠るといわれるこうもりに関する伝承の調査だった。
光森村にて、村に隠れ住んでいた雑風や、たまたま村を訪れていたヤマガタやモモチ親子と出会う。
こうもりについて知っている雑風やヤマガタ、モモチ親子を殺害しようとするが、雑風によって母親の自分への愛を知り、さらに崖から落ちて死にそうになったところを助けられた事をきっかけに改心する。その後はチャック・カルキン(偽)を裏切り、こうもりの声を聞く人々を保護する側に回る。
その後、「BILLY BAT」シリーズの2代目作者となったケヴィン・グットマンの護衛役として彼をサポートするが、2001年のアメリカ同時多発テロに巻き込まれ死亡する。

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