クィーン / The Queen

クィーン / The Queen

『クィーン』とは、2006年にイギリスで制作された政治映画である。ダイアナ元皇太子妃の交通事故死を受けて、ただ1人沈黙を貫き通すエリザベス女王の姿と就任間もないブレア首相が国民と王室との和解に奔走する姿が描き出されていく。
『ゴヤの名画と優しい泥棒』のヘレン・ミレン、『フロスト×ニクソン』のマイケル・シーンが共演し、『ヴィクトリア女王 最期の秘密』、『疑惑のチャンピオン』などを手掛けたスティーブン・フリアーズが監督を務めた。

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クィーン(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

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『グッドライアー偽りのゲーム』とは、ニコラス・サールの小説『老いたる詐欺師』を映画化したクライムミステリーである。監督は数々のヒット作を持つビル・コンドン。イギリス映画界の重鎮であるヘレン・ミレン、イアン・マッケラン、ジム・カーターを起用し、緊張感に満ちた、良質な大人のサスペンスを生み出した。世間を知らない初老の資産家ベティの全財産の乗っ取りを企む老獪な詐欺師ロイと、相棒のヴィンセントが仕掛ける危険な罠。60年もの間ベティの心の奥底にくすぶっていたロイへの怒りが今、解き放たれようとしていた。

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クィーン / The Queenのレビュー・評価・感想

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クィーン / The Queen
8

ヘレン・ミレンのエリザベス女王が、おそろしく、本物そっくりで驚かされる「クィーン」

この映画のタイトルは、「クィーン」と少し弱いが、原題は、「ザ・クィーン」。
あのクィーン、クィーンそのものといった含意で、迫力がある。

よく言われるように、ヘレン・ミレンのエリザベス女王が、おそろしく、本物そっくりで驚かされる。
また、マイケル・シーンも、顔つきは若干違っていても、トニー・ブレアの感じをよく出しており、ここまで似てしまうと、安っぽいパロディー劇は作れない。

実際、なかなか大人のセンスで作り、そのうえ奥行きのある皮肉も効いていて、なかなかの出来栄えだった。
しかし、本物そっくりといっても、我々は、彼女をマスメディアを通じて知っているにすぎないのだから、その、そっくりは、マスメディアで作られたエリザベス女王の社会的イメージとそっくりだというにすぎない。

だから、マスメディアでさんざんこき下ろされ、社会的イメージが安っぽいものになっているチャールズの方は、マスメディアの関数通りに安っぽくなっている。

しかしながら、この映画は、そういうマスメディアのイメージを、映画を使って、さらに増幅するのではなく、逆に、まずはマスイメージから出発して、マスメディアが捉えてこなかったエリザベスとその家族の実像に迫ろうとする。

映画の最後のほうで、ブレアが「もう少しご自分のことを考えられては」というようなことを言うと、「義務第一、自分第二と教えられましたからね」と答えるエリザベスだが、ある意味では、この人には通常の自分というものはないのだ。

常に監視された生活の中で、自分を奥深いところにしまい込む習慣ができている。
逆に言えば、映画としては、彼女の自己をどのようにも映像化できるということでもある。

ダイアナの事故死にもかかわらず、バルモラル城からバッキンガム宮殿に戻らないエリザベスに、マスコミから非難の声が湧き上がった時、エリザベスは、一人苦難に陥る-------という風に、この映画は描くのだ。

夫のフィリップ殿下(ジェイムズ・クロムウェル)や皇太后(シルヴィア・シムズ)は、明らかにダイアナを嫌っており、王家を去った者は他人だという、つっぱねた態度を取る。

ダイアナが死に、離婚したチャールズ皇太子(アレックス・ジェニングス)も悲しんでいるのに、彼らは、平気で鹿狩りに出かけるのだ。

エリザベスの内面を描くシーンの一つは、1万エーカーもある彼女の敷地を、自分でドライブしていて、車を湿原にはめてしまい、携帯で迎えの車を呼び、その間、辺りを眺めながら時間をつぶしている時、たまたま近くに、美しい鹿が現われるところだ。

彼女は、その鹿にダイアナのイメージを重ねているかのように見える。
そして、その鹿が夫たちの鹿狩りの手にかからないことを願うのだ。

これは、むろん、映画が作り出したフィクションである。
しかし、このシーンは両義的だ。
エリザベスが、優しい心の持ち主であると、ごく一般的に解釈することもできるし、また、鹿の命には哀れを感じるが、ダイアナにはそうでない、あるいは、ダイアナを鹿ぐらいにしか見ていないという風にも解釈できるからだ。

「義務が第一、自分は第二」という原理は、ビクトリア女王時代に確立されたものであって、これが、王政国家においては、国家が民族主義や経済至上主義に陥るのを防ぐ、安全装置になってきた。

しかし、20世紀後半になって、国家がグローバル化し、一国主義がありえなくなってきた時、王室を規制装置とする必要性が薄らいだ。
そしてイギリス王室が、大分依然から、「気高い」タテマエの見本を見せる主体から、スキャンダルの見本を披露する主体に変質するのは、こういう文脈の中においてだ。

今や、規制と安全の装置は一国内にあるのではなく、世界にまたがるグローバルなネットワーク状の組織であり、血の繋がりよりも、情報の繋がりを重視する。

こう考えると、ダイアナの事故死を通じてあらわになり、この映画で映像化されたエリザベス女王の危機は、現代の権力システムにとっては、必然的なものであり、エリザベスが、「義務第一、自分第二」という原則に固執すれば、危機に陥るのは当然だ。

しかし、ブレアが、ダイアナの事故死に乗じて、自分のアドミニストレイションを拡張し、かねがね母親エリザベスに不満を抱いていたチャールズ王子が、ブレアにすりよって王室の改革めいたことをしようとしたにもかかわらず、エリザベスの王室は、最終的に致命傷を負わなかった。
少なくとも映画はそう示唆している。

ところで、ヨーロッパの王室は、国家を越えている。
情報的にはむろんのこと、血族的にも、血の交換を繰り返してきた。
血の繋がりがない日本の皇室とも、緊密な連絡を取りあっている。

ローヤル・ファミリーは、国家の特権階級ではなくて、国際的な特権階級であり、インターナショナル・ルーリング・クラスに属する。
つまり、現代のグローバル権力と一体化しているのだ。

それは、一国単位で見られた国家よりも、国連や赤十字や世界銀行やその他の国際組織との方が、親密な関係を持っていると思う。

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