平家物語

平家物語

『平家物語』は、鎌倉時代の軍記物語である『平家物語』を古川日出男が現代語訳した版を底本として、サイエンスSARUが制作した2022年1月から放送されたテレビアニメ。物語の語り部となる琵琶法師の「びわ」がアニメオリジナルキャラクターとして主人公に据えられている。未来が見える力を持つ琵琶法師の娘「びわ」が平家の屋敷で暮らすようになり、滅びゆく一族の栄華と衰退をその目で見つめていく。平家の人々と「びわ」の交流を軸に、時代に翻弄されながらも懸命に生きた人々の群像物語。

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平家物語のレビュー・評価・感想

平家物語
8

犬王が面白かったならオススメ

言わずと知れた、日本古典の名作。でも意外と詳しくは知らないという人も多いと思います。『平家物語』本来の陰鬱さも、日本古典の優雅な雰囲気もキチンと保ちつつ、とてもモダンでカッコいい仕上がりです。
物語自体は、新しい表現方法を取り入れ、コミカルで軽快。それによって、『平家物語』の雰囲気が変わるかと思いきや、節々で取り入れられる琵琶で語られる口伝が『平家物語』の本来の雰囲気を伝える重要な役割を果たしています。
羊文学のOPがさわやかに、エンディングのagraphは暗くモダンでカッコいい。およそ『平家物語』らしくない音楽を合わせたセンスがスゴく良いです。話の筋は、軽快でコミカルに描きつつも、『平家物語』に実に忠実に作っています。
観る前に、ざっとで良いので、『平家物語』を復習してから観ると、面白さ倍増します。この時代の人々が、この物語を作り上げたかと思うと、「日本古典、やっぱりスゴイ!」と感動します。また、国語の授業では言葉でのみ語られてしまうのですが、イメージが掴みにくかったシーンもアニメで鮮やかに描かれる事で、「こういう事だったのか!」とさらに理解も深まります。海外の人にも観て欲しいけど、この物語の機微が分かるかなぁ。日本人のセンスのスゴさを観て欲しいです。

平家物語
9

滅びゆく一族とそれを見つめる少女のものがたり

日本人の多くが知っている有名古典『平家物語』をアニメ化。
時は平安末期、平家全盛の時代。主人公・びわは常人には見えないものが見える少女。托鉢をしていた父を、目の前で平氏の家来により失ってしまう。
怒りと悲しみで父の仇を討とうと平家の屋敷に乗り込もうとしたところ、清盛の長男・重盛と出会い、その屋敷に世話になることに。そこから物語は始まる。

人には見えざるものが見える者同士、重盛とびわとの交流が時には同志、時には父子のようにも見え、穏やかで美しくそれでいて物悲しい。
重盛の瞳に映ってしまうものは失われた多くの命であり、平家が背負う業。その業から平家を襲うであろう未来すらも見えてしまう重盛が気の毒。びわとの最期の語らいが本当に切ない。

重盛以外の平家の人々との交流も平和的で、だからこそ後の悲劇性がいっそう高まっている。また合間に入る琵琶の弾き語りが迫力があり恐ろしさすら感じる。
仇であるはずの人たちに情が移ってしまったびわは、重盛亡きあとどうするのだろうか。平家一門と波の底の都に住まうのか、それとも。
彼女の人生に幸いあれ、と祈らずにいられない。

かなりスピード感があり人間関係の説明もないため、ある程度『平家物語』の内容を知らないとわかりにくいかもしれない。

平家物語
10

結末は知っての通りだが“盛者必衰の理”について考えさせられるアニメ

ほとんどの人が「平家物語」の名前と何となくの内容を知っていると思います。
特に冒頭の「祇園精舎の鐘の声」は学校の授業で暗記した人も多いのではないでしょうか。しかし、この冒頭と何となくの結末を知っているだけで、内容まで知っている人はあまりいないのでは。

この物語はアニメオリジナルキャラクターの視点で物語を追っていくのですが、そのキャラクターは少し先の未来を見ることができるだけで、その未来である平家や源氏の起こす戦いに影響を与えることが一切できないという特徴を持つキャラクターです。
まさに“なんとなく平家物語の結末を知っている人”と同様の立場なので、物語を一緒に見ていくことができ、このキャラクターのお陰でアニメの世界観に入りやすくなっています。

多くの物語では、主人公は大きな目標を掲げそれに向かって努力したり友情を深め合い、最後に最大の目標をクリアすることで物語が終結する大団円が基本ですが、これは知っての通り“盛者必衰の理”を表した物語。成功から失墜していく物語の主人公“平家”の行く末を見た今の私達がどうしていくべきなのか、なぜ約8世紀も前の昔話が現代に伝えられているのかを考えさせられます。

何となく知ってる物語のアニメ版と思って見たら、最後には歴史を尊ぶことになっているかもしれません。

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