滅びゆく一族とそれを見つめる少女のものがたり
日本人の多くが知っている有名古典『平家物語』をアニメ化。
時は平安末期、平家全盛の時代。主人公・びわは常人には見えないものが見える少女。托鉢をしていた父を、目の前で平氏の家来により失ってしまう。
怒りと悲しみで父の仇を討とうと平家の屋敷に乗り込もうとしたところ、清盛の長男・重盛と出会い、その屋敷に世話になることに。そこから物語は始まる。
人には見えざるものが見える者同士、重盛とびわとの交流が時には同志、時には父子のようにも見え、穏やかで美しくそれでいて物悲しい。
重盛の瞳に映ってしまうものは失われた多くの命であり、平家が背負う業。その業から平家を襲うであろう未来すらも見えてしまう重盛が気の毒。びわとの最期の語らいが本当に切ない。
重盛以外の平家の人々との交流も平和的で、だからこそ後の悲劇性がいっそう高まっている。また合間に入る琵琶の弾き語りが迫力があり恐ろしさすら感じる。
仇であるはずの人たちに情が移ってしまったびわは、重盛亡きあとどうするのだろうか。平家一門と波の底の都に住まうのか、それとも。
彼女の人生に幸いあれ、と祈らずにいられない。
かなりスピード感があり人間関係の説明もないため、ある程度『平家物語』の内容を知らないとわかりにくいかもしれない。