観る人を選ぶトラウマ映画
家族を亡くして喪失の悲しみに暮れていたダニーが、恋人から男友達と計画していた旅行に誘われたところから物語は始まる。
民俗学を専攻する恋人たちが旅行先に選んだのはスウェーデンの奥地だった。彼らはそこで「90年に1度行われる祝祭」を体感しに来たのである。
にこやかに柔らかく迎えてくれた村人たちは、白い衣装を身にまとい、笑顔を絶やさず一様に幸せな空気に満ちていた。親切で明るい彼らと、色とりどりの花が咲き誇る明るい村の風景に、ダニーの喪失感も少しずつ癒されていくようだった。
だがしかし、争いを好まず穏やかな彼らは、ダニー達には理解しえない宗教を遵守していた。
白夜のスウェーデン、沈まない太陽の下で想像もしなかった惨劇が繰り広げられる今作。
ホラーやサスペンスジャンルの映画はたくさんあるが、そのどれにもない明るさの下、個人が信じる幸せのための宗教からくる惨状は単にエイリアンや殺人鬼が暴れまわる殺戮系にはない恐怖が感じられる。
誰かの幸せを頭ごなしに否定してはならないという気持ちと、その経典が自分を害する狂気に満ちていると分かった時の自己保身、その両極端な感情が入り混じるからだ。
殺害された人間の美術などはチープさを感じてしまうものの、出演役者があまり有名ではない作品な為、妙なドキュメント感をも感じさせる今作。普通のホラーには飽きた人、心理的にじわじわと怖い作品が好きな方には特におすすめの1本である。