精霊の守り人(守り人シリーズ)のネタバレ解説・考察まとめ

『精霊の守り人』とは、上橋菜穂子原作の異世界のファンタジーである守り人シリーズのアニメ化作品。
2007年4月~9月にNHK-BS2の衛星アニメ劇場枠で全26話構成で放送された。
100年に一度卵を産む水の精霊に卵を産みつけられた新ヨゴ皇国の第二皇子チャグムとチャグムを守るよう母妃に託された女用心棒バルサ。皇子の命を狙うヨゴ皇国。卵を狙う異世界の生物。二人の過酷で困難に満ちた旅が始まる。

「ジグロ・ムサ」

バルサ6歳の頃。父カルナ・ヨンサは生まれ故郷のカンバル国王の主治医だった。そんな父カルナは宮廷の権力争いに巻き込まれる。王弟ログサムは王位を狙い、断ればバルサの命はない、と主治医カルナに王の毒殺を命じていたのだ。
しかし、王を毒殺し終えてしまえば、親子ともども闇に葬られることは火を見るより明らかである。カルナは唯一の友人であるジグロに、バルサを連れて逃亡してくれるようお願いした。

ジグロ・ムサは、9人からなる王に仕える精鋭「王の槍」を最年少で拝命されるほどの短槍の使い手であり、カンバル王国最強の誉れも高かった。一度はカルナの頼みを断ったジグロだったが、ログサムの命によって捕縛の兵がバルサに迫った時、ジグロは幼いバルサを連れてカンバルを脱出した。

逃亡から5日後、最初の追っ手がやってきた。それはジグロと同じ王の槍だった。
更に、カンバルからの出稼ぎの男によって、父カルナが処刑されたことを知ったバルサはログサムへの憎悪を燃やすのだった。

その後、二人は逃亡しながら生活をするため行商人の護衛をしていた。
バルサは類稀なる才能をもって、ジグロの武術を吸収しはじめる。当初女であることから武術を教える気はなかったジグロだったが、バルサが生き延びるのには武術の道しかないことを理解した。
しかし二人の凄腕の短槍使いの噂は、周辺に知れ渡ってしまう。やがて、残りの王の槍全員である6人がバルサ達の前に立ちはだかるのだった。

「目覚めの季」

ジグロは「王の槍」6人に取り囲まれ傷を負いながらも、死闘の果てに全員を討ち果たすことに成功した。
バルサを助けるために殺した8人の命と同等の命を償わねばならない、というバルサの「8人の命を救う」という誓いはこの時生まれたのだ。

その話を聞いて、バルサの逃亡の生活と、自身を重ね合わせたチャグム。
バルサと同じく、過酷な運命を戦って切り開くべく、バルサに武術の鍛錬を請う。たとえ、自分の身は朽ちても卵を孵すと、チャグムは覚悟を決めたのだった。

一方、碑文解読を進めるガカイ。シュガの訪問に、いまだ水没する最下層の碑文の間にこそ確信に迫る重要な内容があると言う。

「シグ・サルア」

碑文をすべて解読することが叶わないまま春がきた。「宴の地」の場所は「青池」であると特定したシュガと狩人そしてヨゴの軍勢は出立し、二の后はシュガにチャグムの身を守ってほしいと託す。
一方、トロガイも「狩穴」に戻ってきた。そしてチャグムのために成人用の服を渡し、短剣をバルサに渡す。バルサはチャグムに短剣を授けると、カンバルで、父親が成人した我が子に短剣を授ける儀式で用いられる祝いの言葉を送る。

チャグムは自身の中で育つ卵が、孵る場所を求めて訴えていることを告げる。そして青弓山脈をさかのぼったシグ・サルアが咲き乱れる泉に到達すると、まもなくシュガと狩人とヨゴの軍勢も同じく泉にたどり着く。
その時、突然チャグムが泉に向かって駆け出した。

一方、碑文解読をすすめるガカイは、驚くべき事実に突き当たる。「青池」は「宴の地」ではなかったのだ。

徐々に日が暮れ始めるころ、泉に殺気が満ちる。
そしてついに「精霊の守り人」チャグムを切り裂こうと、ラ・ルンガの爪の姿がおぼろげに現れた。チャグムの周囲を護衛する狩人とヨゴ軍、そしてバルサは火を放つ槍をもってラ・ルンガの爪を焼き払う。だが、おぼろげに現れた爪は1つや2つではない。

数多の爪がチャグムを取り囲んだ時、不思議な結界がチャグムを護る。そして同時に、チャグムも何かに操られるかのように泉から駆け出してしまう。

「最後の希望」

卵に操られ泉を離れ、森へと駆け出すチャグム。そんなチャグムをバルサとタンダ、そして狩人が追う。
混乱するヨゴの軍勢をまとめあげ、チャグムを追おうとするシュガをトロガイはとどめる。 もし、この地が「宴の地」であるなら、必ずチャグムは戻るはずだからだ。しかしシュガの解読しえた碑文からでも、結局は精霊の守り人がラ・ルンガに引き裂かれなければ卵は孵らない、という。

また、チャグムも卵と対話をしていた。孵るべき地を知らせる卵に、チャグムはラ・ルンガの接近を感じ駆け出す。

トロガイとシュガとヨゴ軍の兵士が休息を取るところに、早馬が駆けてくる。使者によって、本当の宴の地は青池から20ナンの距離にある「サーナン」だという知らせがもたらされた。
直ちにトロガイとシュガはサーナンに向かう。そしてバルサ達にもこの情報を伝えるべく、トロガイは泉に顔をつけ、呪術をもって伝言をする。そしてタンダは自分を呼ぶ何かを感じて川に顔をつけると、そこに現れたのは「ナユグ」の水の住人だった。水の住人はタンダにトロガイの伝言を伝える。

宴の地がサーナンであることを知ったバルサ達も急いで駆け出した。そして、チャグムの足跡を発見する。その時、ラ・ルンガもチャグムの匂いを追ってやってきた。先程よりはっきり姿がみえるラ・ルンガを狩人達が攻撃するが、当たらない。

そんな時、シグ・サルアの花を食べることで、「ナユグ」の生物であるラ・ルンガに干渉する方法を思いついたのはタンダだった。打つ手を見出せない狩人達の間をすり抜け、タンダは火を放つ槍をラ・ルンガに突き立てる。
狩人達も火炎放射ができる槍「大たいまつ」をもってラ・ルンガを屠る。

「宴」

タンダの機転によってラ・ルンガと戦うことができたバルサと狩人達は、すぐさま、シグ・サルアの花を食べる。そしてタンダが術をかけて「ナユグ」に干渉できるようになる。負傷したタンダを残し、チャグムを追うバルサと狩人。
醜い化け物であるラ・ルンガを観察するタンダに、馬を駆けるトロガイとシュガも追いつく。

一方、チャグムは「宴の地」「サーナン」へと到達していた。そんなチャグムを追って現れるラ・ルンガ。そして、チャグムに追いつくバルサと狩人達。ラ・ルンガを撃退せんとする狩人、バルサはチャグムを抱きしめる。

馬を走らせたトロガイとタンダ、シュガもその場に追いつく。だが、「ナユグ」に深く干渉するバルサと狩人達の戦闘やチャグムの姿でさえ、トロガイとシュガには見えない。
ラ・ルンガを退ける狩人は、バルサにチャグムを連れて安全な場所に退避しろとうながす。だが、チャグムはここで卵が生まれないといけないのだと訴える。そこに、タンダが駆けつける。碑文によると、安全に卵を取り出す術が200年前にあったという。タンダの言葉を信じ、バルサはチャグムを託すと、数多押し寄せるラ・ルンガとの戦闘に身を投じる。

その時、ついに夜が明けた。日の光の前に、動きを止めるラ・ルンガ。バルサの手をとるタンダは、不思議な術をもってチャグムの体内に手をいれ、卵を掬い出すことに成功する。
チャグムは確信をもって空を見上げる。その先を全員が見上げると、渡り鳥「ナージ」の姿が現れたのだった。チャグムは確信をもって、卵を空高く放り投げればいい、と言う。

バルサが卵を高く放り投げると、一匹のナージが卵をくわえ、群れに戻って海まで運び去っていった。

「旅立ち」

チャグム(左)とバルサ(右)の別れ

すべてが終わり、都につくと、バルサ達はシュガの案内で盛大な歓待を受ける。
帝に拝謁するチャグム。帝は、チャグムの苦難を聞き及び、経た苦難をねぎらう。だがバルサのおかげだというチャグムに、バルサのことは忘れよと言う。

翌朝、帝の御前にて褒賞を受け取るバルサ達。チャグムは帝の横で、皇太子として振る舞い一言も発することは無かった。
そして引き上げるバルサ達に「横の小道を行け」と門番を務める狩人達は言う。そこにいたのはバルサの槍を預かっていたチャグムとシュガだった。

チャグムは、バルサにすがりつき「離れたくない」と泣く。そんなチャグムに「一緒に逃げるかい?」とバルサは言う。だがチャグムはうん、とは言わなかった。
チャグムは、振り返らないまま「ありがとう、バルサ。タンダ、トロガイ師。さようなら」と別れの挨拶をして、去っていった。

その後、トロガイは山に行き、タンダはトーヤとサヤの店にいた。ふいに辺りが暗くなり、外にでるタンダが空を見上げると、雲が湧いていた。
バルサは一人、亡き父の菩提を弔うため、カンバルへと向かって行くのだった。

『精霊の守り人』の登場人物・キャラクター

バルサ

バルサ:安藤麻吹
「短槍使いの女用心棒」の異名をとる凄腕の武術家。物語開始時は年齢30歳。
商隊の護衛などをして生計をたてている。北方のカンバル国の出身。新ヨゴ皇国が誇る闇の実行部隊『狩人』にもまったく引けをとらないほどの武術の腕前をもつ。
6歳の頃、宮廷に仕える父カルナが政争に巻き込まれ、暗殺されそうになったところを、カルナの宮中における唯一の友人ジグロ・ムサに救出され国外へ逃亡。その後、追っ手を逃れつつ情報をしいれるため商隊の護衛などをして生計をたてていたが、武術以外に生きる術がないであろうと考えたジグロから短槍の戦闘術を習う。ジグロ病没後はジグロ同様護衛などをしていた。自分を助けるため、ジグロが葬った『王の槍』の8名の命と同じ命を救わねばならない、と人助けをしていた。その8人目がチャグムにあたる。

チャグム

チャグム:安達直人
新ヨゴ皇国の第二皇子。物語開始時では11歳。
100年に一度起こるとされる、新ヨゴ皇国の歴史で『水妖』と呼ばれ水の精霊『ニュン・ガ・ロイム』の卵を体内に産み落とされ『精霊の守り人』になってしまうという数奇な運命を背負ってしまう。そのせいで父である帝から命を狙われ、母である二の后によってバルサに託されて逃亡生活を送ることに。
当初は年齢相応の子供だったが、自身の過酷な運命を受け入れバルサやタンダ、トロガイと行動を共にするうちに肉体的にも精神的にも大きく成長してゆく。また、非常に聡明であり名君の片鱗を覗かせている。

トーヤ

画像左の人物がトーヤ

トーヤ:浅野まゆみ
頼まれ屋という、便利屋を営む孤児。そのため橋の下にある浮き船を住処にしている。以前、バルサに助けられたことがあり、バルサ姐さんと呼び慕っている。
その後、妹同然に暮らしていたサヤと結婚し、自分の店をもつほどに商いが成功する。

サヤ

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