ペット(漫画・アニメ)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ペット』とは、2003年から小学館の『ビッグコミックスピリッツ』にて連載されていた三宅乱丈によるサスペンス漫画。他人の記憶に入り込み、その記憶を操作出来る特殊能力を持つ3人の少年、ヒロキ・悟・司。彼らは「会社」という組織に属し、組織にとって邪魔な人間を廃人にする仕事を担っていた。だが、元社員でありながら会社を裏切り失踪していた林が再び姿を現した。少年たちは自分達を搾取しペットのように扱う会社の正体を暴き、その束縛から解放されるために闘うことになる。

特殊能力者を用いて裏社会を牛耳る組織体の名称。具体名はなく、終始「会社」と呼称される。中枢は中国人である。

潰し屋

他人のヤマやタニの記憶を操作し、人格を崩壊させることで廃人にさせる仕事を担う。
イメージを使いこなせる人間がいなかった時代には、ただ記憶を壊し、ターゲットを潰してしまうことしか出来なかったためそう呼ばれていた。
現在では桂木やロン、ジンが潰し屋を自称しているが、ヒロキなどは人を潰すだけのやり方に反感を持っており、潰し屋と呼ばれることを嫌っている。

ペット

ヤマの記憶を分け与えることで自我を持つようになった特殊能力者たちのこと。ヤマ親に絶対的な信頼を置くため、会社の社員たちは蔑称としてペットと呼称している。

『ペット』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

司と林の再会

車で逃亡する林の前に現れた司。共に暮らしていた頃の、幼い司の姿を思い出し、林は司を拒絶しきれなかった。

林が日本に戻ってきたという情報を得て、司と桂木は林の身柄を確保するために張り込みをする。だが、林はわざと自分を見張らせ、隙を見て桂木に接触し、悟を逃すための下準備を進めていた。
そのことに気がついた司は車で逃亡を図る林の前に姿を表す。林は成長した司の姿に幼かった頃の面影を見出し、つい司を車に乗せてしまうのであった。

司が会社に取り込まれていることをわかりながらも見捨てられない林の親心と、12年ぶりにヤマ親の林に会え興奮が抑えられない司の姿から、二人の強い絆と依存関係が窺える場面である。

ヒロキと司の幼少期の思い出

幼い頃の司とヒロキの大切な思い出

廃人同様として精神病院で暮らしていたヒロキは、司からヤマの記憶を分けてもらうことで自我と特殊能力を獲得した。

この頃司は林と引き離されており、ヒロキと二人で生活を始める。ある日昼食にホットケーキを作っていた司だが、幼いヒロキが「ずっとゼンブ キイロにしてっ!」と駄々をこねて大泣きする。司もまだ幼い少年であったが、ヒロキの願いを叶えるためその後フライパンいっぱいの大きなホットケーキを何度も試作し、ついにヒロキが望む「ゼンブ キイロ」の大きなホットケーキを完成させた。

ヒロキにとってこの記憶は司との大切な思い出であり、自分が司に愛されていると確信出来る証拠のひとつであった。
物語の終盤において司の自我が崩壊する際にも、大きなホットケーキの記憶はヒロキと司を繋ぐ重要な記憶として登場する。

悟「間違いなんかじゃない」

林が託したMOディスクの中には、メイリンを量産しようとする会社の思惑と、悟や司のことを心から心配する林の思いが綴られていた。悟たちの能力をいいように使おうとする会社に反発した林は、文中でそもそも悟たちを自分が見つけてしまったことが間違いだったと懺悔していた。それは、会社という大きな闇に悟たちを巻き込んでしまったという強い自責の念からの言葉であった。
だが、悟は林に出会い、ヤマの記憶を分けてもらったお陰で自我を持って生きることが出来ている。林が悟たちの幸せを願ってイメージを分けたことは間違いではないのだと悟は強く信じていた。

少年たちのことを心から思いやる林の優しさと、その優しさに報いたい悟。二人の強い絆と、悟の信念が窺える台詞である。

桂木の隠された記憶を知るジン

桂木の記憶の中のレンレン。桂木だけがレンレンをひとりの女性として大切に思っていた

物語の序盤から登場し、イメージを持たない潰し屋として汚れ仕事を担う桂木は、ぶっきらぼうでガサツなキャラクターとして描かれている。だが終盤、桂木には林によって隠されたとある重大な記憶があることが判明する。

かつて桂木は中国で林と共にレンレンと共に過ごしていた。他人の記憶を操作できるレンレンの特殊能力を恐れ、皆が異様な存在として接している中、桂木だけは分け隔てなくレンレンに接していた。
自分を一人の人間として尊重してくれる桂木に、レンレンは次第に心を開いていく。また桂木も、純粋な少女の心を持ったレンレンに惹かれて、ついに二人は結ばれたのであった。

この隠された真実の記憶は悟により明らかにされる。悟はメイリンの蝶のイメージを発動させ、桂木の記憶をジンに見せた。桂木とレンレンの子供とは、ジンなのである。

サブキャラクターのような存在だった桂木が重要人物であったことが発覚するシーンであり、粗雑な性格の裏にある心の根の優しさと深い愛情が感じられる名場面である。

『ペット』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

『ペット』に影響を与えたSF映画

2004年の三宅乱丈のインタビューにおいて、『pet(ペット)』のアイディアは1981年公開のカナダのSFホラー映画『Scannars(スキャナーズ)』の影響を受けていることを明らかにしている。『Scannars(スキャナーズ)』は人間の精神をコントロール出来る超能力者たちのサイキックバトルを描いた作品である。監督はデヴィッド・クローネンバーグ。

三宅乱丈はペンの早い漫画家

2016年9月にNHK(Eテレ)のドキュメンタリー番組『漫勉』に出演。MCを務める漫画家、浦沢直樹から「スピード女王」の異名を贈られるほど、三宅乱丈の作画スピードが早いことが明らかになった。

なお、三宅乱丈(みやけらんじょう)のペンネームの由来はミケランジェロである。そのため男性名のような印象を受けるが、三宅氏は女性漫画家である。

アニメ版では日本人声優が中国語のセリフに苦心

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@keisuke2712d3

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