ペット(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『ペット』とは、2003年から小学館の『ビッグコミックスピリッツ』にて連載されていた三宅乱丈によるサスペンス漫画。他人の記憶に入り込み、その記憶を操作出来る特殊能力を持つ3人の少年、ヒロキ・悟・司。彼らは「会社」という組織に属し、組織にとって邪魔な人間を廃人にする仕事を担っていた。だが、元社員でありながら会社を裏切り失踪していた林が再び姿を現した。少年たちは自分達を搾取しペットのように扱う会社の正体を暴き、その束縛から解放されるために闘うことになる。

『ペット』の概要

『ペット』とは、2003年より小学館の『ビッグコミックスピリッツ』にて連載されていた三宅乱丈によるサイキックサスペンス漫画である。

他人の記憶の中に入り込める特殊能力を持つヒロキ、司、悟の3人の少年を主軸に、自分達を搾取する「会社」の呪縛から逃げ出し、自分達の生き方を見つけるための闘いを描いた物語である。
記憶の中に入り込む際、自分の姿を水や金魚に変えたり擬似的なドアを生み出すなど、絵としての表現が困難であろう記憶の中での闘いを独自の世界観で表現している。

原作コミックスとしては、2003年に小学館『ビックコミックス』から全5巻が発刊されたのち、2009年に『ビームコミックス(現在はエンターブレイン)』から『ペット リマスター・エディション』が発売された。
『ペット リマスター・エディション』は2003年版に150ページあまりの描き下ろしが加えられている他、全編を通して大幅な加筆修正がなされている。

また、2018年と2019年には『ペット リマスター・エディション』を原作とした舞台公演が行われた。
2018年12月5日〜9日に『舞台「pet」-壊れた水槽-』が草月ホールにて、翌2019年7月29日〜8月4日には『舞台「pet」-虹のある場所-』が神田明神ホールにて上演された。
総合監督はなるせゆうせい、演出・脚本は伊勢直弘、制作はオフィスインベーダーが担当した。主演は植田圭輔(ヒロキ)、谷佳樹(悟)、桑野晃輔(司)など。

舞台公開に合わせ、アニメ版も2020年1月〜3月に全13話にて放映された。放送局はTOKYO MIX、BS11、AT-X、HBC北海道放送。配信サイトはAmazon Prime Video、NTTぷらら。
原作は『ペット リマスター・エディション』に拠りながら、ヒロキを明確な主人公におき、司との関係をメインテーマとしている。また、第3話はアニメ版オリジナルストーリーとなっている。制作はジェノスタジオ、ツインエンジン。監督は大森貴弘、企画プロデュースは山本幸治、作画監督は山田正樹、日向正樹。声優は植田圭輔(ヒロキ)、小野友樹(悟)、谷山紀章(司)など。

2021年1月12日発売の月刊コミックビーム2月号より、『pet(ペット)』に続く物語として『Fish -フィッシュ-』が連載開始された。

『ペット』のあらすじ・ストーリー

他人の記憶に侵入できる特殊能力者、ペットたち

他人の記憶を操作する力を持つ特殊能力者であるヒロキは、会社と呼ばれる秘密組織に所属し、社員からの指示を受けて活動している。
特殊能力者たちの仕事は、ターゲットに催眠や暗示をかけたり、その記憶の中に入り込み破壊したりするというものだ。そうして会社に都合の悪い記憶や、あるいはその人物自体を廃人にして社会的に抹殺するのである。

人間が自我を保ち生きて行くには、心を支えるかけがえのない記憶であるヤマと、トラウマ的記憶のタニが不可欠である。
他人の記憶や感情への感度が高すぎる人間は、自他の境界が認識出来ず、自分だけの記憶を保持することが出来ない。つまり、自我を持つことが出来ず、廃人のようにしか生きられないのである。
会社の人間はそのような子供たちを見つけては特殊能力を使ってヤマの記憶を分けることにより、彼らに自我を与えて会社に引き入れていた。

ヤマを分け与えた人物は、ヤマ親と呼ばれる。ヒロキのヤマ親は司(つかさ)という少年だ。ヒロキは司と共に、「CAFE and BAR DIVING POINT」の店長である佐々木健治(ささきけんじ)の家の2階を間借りして暮らしていた。

健治は特殊能力を持たない一般人だが、会社の社員である桂木と接点があった。
これまで健治は親友の横田(よこた)と2人で桂木の仕事を請け負っていた。だが、少し前から横田は「バリに行く」と言い残したまま行方不明となっていた。

ある日の深夜、健治はいつもの通り桂木の仕事を終えた。そこで彼は桂木と悟、バリに行ったはず横田の姿を発見する。
横田は車の運転席に座っていたが、その話し方は幼稚で、おもちゃで遊ぶ子どものようにはしゃいでいた。悟が「お空飛びに行こうか」と語りかけると、横田は車を急発進させる。健治は急いで後を追いかけるが、横田は車ごと崖から転落して死亡した。

健治は、桂木に横田が殺されたことを警察に告げると言った。桂木は動じず、「潰し屋を呼んだからな」と言い立ち去った。潰し屋とは特殊能力者を指す古い言い方だ。
身の危険を感じた健治は自宅に戻り、海外逃亡をすることを決意した。健治はヒロキと司に助けを求めたが、桂木の送り込んだ潰し屋とはヒロキと司であった。ヒロキたちの正体を知らなかった健治は愕然とする。取り乱す健治に司が催眠をかけ眠らせた。

そもそも横田と健治が潰し屋に狙われるようになったのは、桂木の仕事を手伝う中で会社により始末された人間の死体を発見してしまったことが発端であった。横田は桂木たちが殺人事件に関与していることを警察に届け出ると脅迫したのである。

会社から横田の記憶を消すように言われた桂木だったが、手違いから横田を廃人にしてしまった。
桂木は仕方なく横田と健治を始末することにした、というのが事の真相だ。

司とヒロキのもとに桂木がやってきて、健治を早く潰すように指示した。だが、正義感が強く他人を思いやる性格のヒロキは健治を潰すことに反対した。
司は健治の記憶を作り替えて、横田が悪人であったと思い込ませるという解決方法を提案する。

桂木は司の計画を承諾した。ヒロキと司はイメージを用い、健治の記憶の中の横田との一番の思い出にシンクロしていく。
だが、健治のヤマは横田との思い出で構成されていた。横田を悪人だと思い込ませてしまうとヤマの記憶の辻褄が合わなくなる。思案を重ね、司は健治のヤマの記憶の核心となっている横田を桂木にすり替えることにした。

この出来事は、ヒロキの桂木や会社への不信感を一層高めることとなった。
次の仕事を指示されたヒロキと司だったが、ヒロキはもう会社の仕事を辞めたいと言った。司はヒロキの想いを汲んで、桂木に話をつけてくると言った。

司は、桂木と自分で仕事を行うことを提案し、その代わりにヒロキを巻き込まないように依頼する。桂木は、ヒロキに甘い司を訝しがる。司は、「あれほどのペットは絶対に手放すわけにはいかないんだよ」と答えた。ペットとはヤマ親がヤマの記憶を与えた相手への隠語である。ヤマ親に絶対的忠誠心を持つことから、揶揄を含んだ意味合いで会社の社員たちはペットと呼んでいるのである。

MOディスクとマタサのおじちゃん

会社から指示された次の仕事は林という人物を潰すことであった。特殊能力者である林は2年前に突如会社から失踪し、行方を眩ませていたが、今になって突然日本に戻って来たのである。

司は桂木と組んで林の潜伏先を見つけ、その動向を監視していた。だが、林は2人の監視に気が付いていた。野暮用で1人外に出かけた桂木に、林が接触した。林は桂木に催眠をかけ、悟の居場所を聞き出した。さらに、桂木の記憶に侵入し、持参していたMOディスクと「マタサのおじちゃん」というキーワードを与える。桂木は植え付けられた記憶により、「マタサのおじちゃん」に大切なMOディスクを渡さないとならないと思い込むようになる。
林は桂木が伝書鳩となったことを確認すると、車を奪い、悟の元へ向かった。

桂木が出し抜かれたことを察知した司は林を追った。幼かった司の成長した姿を見た林は感極まり、車を止めてしまう。司もまた、久々に再会したヤマ親である林を前に喜びを隠しきれない。興奮する司を落ち着かせ、林は「メイリンには会ったのか?」と質問する。司は、「あれは林さんの傑作ですよ!」と笑顔で答えた。
メイリンとは、林がヤマを分け与え、イメージを教えた中国人の少女の名前である。だが、メイリンは会社にとって使い潰しのきく操り人形のような特殊能力者だった。

林は会社に司と悟を人質に取られ、意図せずメイリンを作り出してしまった。会社のやり方に反発した林に対し、会社は「メイリンのような操り人形を作り続けるか、悟を潰すかのどちらかだ」と脅した。林はどちらも受け入れず、会社から逃亡していたのである。

司は林を敬愛していた。だが、再会した林は悟の心配をするばかりであった。司の心は折れ、林への愛情は憎しみに変わり、会社のために働くという信念だけが残されてしまった。
司は会社のために林を潰すことを決意し、「悟を守ってやりたいのなら俺を潰しておくんですね!」と林に宣戦布告した。

林は司に愛情が残っており、潰すことは出来ない。その代わり、会社への忠誠心に囚われた司の記憶を改変するため、彼の記憶の中に入り込んでいった。だが、司は逆に林のヤマに侵入し返す。司は、林を潰すためにヤマを破壊し始めた。だが司は、林のヤマが崩壊するさまにシンクロしてしまった。結果、林と司の2人ともが潰れてしまう。

遅れて駆けつけた桂木は司だけを回収し、林を潰したことを会社の上層部に報告しその処理を依頼した。
特殊能力者たちを使役する会社は、中国系マフィアの傘下にあった。
桂木が林の処理を報告した相手は社長の息子と呼ばれる会社の上層部員であり、中国人の潰し屋のロンとジンであった。

気功術師と会社の過去

桂木は司をヒロキの元に運んだ。潰れた司を見て狼狽するヒロキに、桂木は「いさぎよくあきらめろよ」と言って立ち去った。
だが司はまだ完全に潰れていなかった。それに気が付いたヒロキは、司の記憶の中に入り込む。崩壊しかけている司のヤマの中で、ヒロキは正気を失いかけている司を見つけた。司を救うため、ヒロキは司を自分のヤマの中に入れた。

ヒロキのヤマに入り、司は正気を取り戻す。ヒロキは司のヤマを元に戻すため、自分のヤマと司のヤマを繋げて浄化する方法を思いつく。ヒロキの作戦は成功し、司のヤマは浄化され、彼は自我を取り戻した。司は林を潰した功績を認められ、会社の上層部員に昇格を果たす。

メイリンのように便利な駒を量産したいロンとジンは、林の後継人を誰にするかを相談していた。候補者は司、悟、ヒロキに絞られる。そのうち司はすでに会社側の人間となっている。信頼のおける社員を増やすため、ジンは悟を勧誘することにした。
さっそくジンは悟に接触し、気功術師の話をした。気功術師とは、潰し屋を育てていた中国人のことである。気功術師の話を終えたジンは悟を社員に勧誘した。だが悟は林の意見を聞きたいと申し出を断る。

一方、その頃、林との対決で消耗した司は病床に臥せていた。ヒロキは司にも会社を辞めるように訴えたが、彼はそれを拒否する。言い合いの中で、浩紀は司に対しての不信感を募らせていく。
司は不安定になったヒロキを宥めるため、初めて彼に自分の出自を語った。

司は元々臓器売買用の子供として会社に囚われていた。だが、林に特殊能力を見出され、命を救われていたのである。
このような過去があるため、司は会社のために働かなければと強く思っているのである。

ヒロキは自分がいるからもう会社に頼らなくても良いのではと司に言った。だが司は、「会社は俺達のことを手放すつもりなんかないんだぞ?」と忠告した。しかし、司もただ会社に尽くしているわけではない。社内での地位をあげ、いずれ会社を掌握するつもりだ。
そして司は、自分の目的の妨げとなる悟の排除を胸の内で決意する。

同じころ、中国にいるロンは上海の権力者、陳一族の長男である大豪(ダアハオ)を洗脳していた。その際に、会社の社長である趙金貴(チョウ キングイ)は父の仇である勝傑(ショウジィエ)を殺害。会社は上海での権力を掌握した。

日本では、悟と司、ヒロキに新たな仕事が任された。仕事に向かう途中、悟は社員に誘われていることをヒロキに相談した。司に悟を信用するなと言われていたヒロキは、悟の話を無下に扱った。
仕事はどうにか完遂できたが、心労と司の看病疲れによってヒロキは倒れてしまう。

すれ違うヒロキと司の想い

搬送先の病院で目を覚ましたヒロキは、不思議な気配に気が付いた。それは、秘密裏に病院に入れられていた林から漏れ出しているものだ。
ヒロキと林とは面識がない。しかし、同じ病院内に特殊能力者がいることに興味を持ったヒロキは、イメージの出所を探ることにした。
イメージを垂れ流している特殊能力者は霊安室で治療を受けていた。ヒロキは男の正体を探ろうと記憶の中に潜入し、彼が林であることと、林を潰したのが司であることを知った。

その頃、司は会社の社長に呼び出され、ロンも交えて会食をしていた。社長は司に、悟にはもう会うなと告げた。何かの拍子に司が林を潰したと悟が知れば、司の身が危険だという理由であった。

司はヒロキの元に帰った。ヒロキは司が林を潰したことを理解出来ず混乱したままであった。
悟を潰すように迫る司と、それに反発し2人で会社から逃げようというヒロキの意見が対立する。林を潰した件で、ヒロキは司に対して不信感を抱いていたのだ。

司はとうとう逆上し、ヒロキの記憶を改ざんして悟を知らない人間にすれば躊躇なく潰せるだろうと言った。
ヒロキは司を跳ね除け、自分の精神内から追い出した。頑なに自分の考えに囚われ、邪魔者を全て排除しようという司をヒロキは恐れ、ついに司の元から逃げ出してしまった。

ヒロキの逃亡はすぐに桂木に知らされ、捜索が始まった。ヒロキは一般人のカップルを催眠にかけて、彼らの家に身を隠していた。
隠れているヒロキを誘き出すためロンがメイリンを連れてやってきた。そして、ヒロキを見つけ次第殺すよう司に告げる。追い詰められた司はロンに「ヒロキのヤマ親を社長にスリ換えればいい」と提案した。だがそれこそが社長の思惑であった。

悟がMOディスクを入手

司の計画を実行するため、ジンは悟に会っていた。その際に交わした会話をきっかけに、ジンは悟を林の元に連れて行くことになる。ジンと向かった部屋の前には桂木、ロン、そして司がいた。そこで初めて司も悟と同じく林をヤマ親に持つことを知った。
悟は司と共に林のいる部屋に入る。そこには完全に潰れた林の姿があった。ロンは取り乱す悟に「ヒロキが林さんを潰したんだ」と嘘を伝えた。その後、メイリンの記憶とシンクロした悟は、ヒロキに対して激しい恨みを抱くに至る。

メイリンを通して司たちはヒロキの居場所を特定した。意識の中に侵入してきた司と悟を命からがら跳ね除けたヒロキだったが、潜伏先にやってきた桂木に身柄を取り押さえられてしまう。
ロンは早くヒロキの記憶を改ざんするように促したが、ヒロキを説得したい司は体調不良を言い訳に処置を延期させた。
手の空いた悟は林を連れてきて世話をしたいと言ったが、桂木に気色悪いやつを部屋に連れてくるなと言われ喧嘩になる。だが、会話の中で悟は桂木が林からのメッセージを預かっていることに気が付いた。

悟は桂木に「マタサのおじちゃん」を知っているかと問いかけた。桂木はそのキーワードに反応し、悟にMOディスクを受け渡した。MOディスクの中身は林が悟に宛てた手紙であった。
手紙を読んだ悟は、会社の真実や、林の身に降りかかった出来事のすべてを知ることになる。
そして、手紙の最後には、司が12年も林から離れ会社に預けられていたため洗脳されている可能性が危惧されると書かれていた。そしてもし司が会社に強く洗脳されていた場合の処置として、記憶の場所を隠す方法を綴っていた。

悟は司に、林に託されたMOディスクのことを打ち明ける。林が心から自分を想ってくれていたことを知った司は、林を疑い潰してしまったことを激しく後悔した。だがもう後には引けない。司はロンに悟の裏切りを報告する。

司は覚悟を決め、悟に林を潰したのは自分であると真実を告げた。悟はロンに足を撃たれ倒れた。騒ぎをきつけ、ジンや桂木も集まってきた。悟を取り押さえる中でMOディスクを再び目にした桂木は伝書鳩としての役目を思い起こし、悟を守り周囲の人間を排除する。異変に気がついたジンとロンが止めに入るが、ロンは額を撃ち抜かれて死亡する。ロンを殺されたことに激高したジンが桂木を銃殺。悟はジンを桂木の記憶の中に入れると、その隙に逃亡を図った。

ジンは桂木の記憶の中にある奇妙な形のスーツケースを見つける。それこそが林がかつて隠した桂木の記憶であった。記憶を見たジンは、桂木が自分の実の父親であったことを知る。父を自らの手で殺してしまったことを知ったジンは自殺を図るが、駆けつけた会社の人間により保護された。

ヒロキと悟が会社から逃亡

一方、林の本当の気持ちを知った司は激しく混乱し、ヒロキに縋っていた。目的を見失う司に、ヒロキは「司はどうして欲しい?」と優しく尋ねた。司は「眠りたい」と答え、ヒロキに林の記憶を消すように懇願した。ヒロキはどうにか林の記憶だけを消そうと努力したが、それは叶わず司はヒロキのことまで忘れ去ってしまう。

ジンの元から逃走した悟は司とヒロキを発見する。ヒロキは自分のせいで司の記憶が全て消えてしまったことを嘆き、自分の中の司の記憶も消して欲しいと悟に頼んだ。
悟はヒロキの訴えに了承したが、司の記憶を消すのではなく、ヒロキが司の記憶を全て消してしまったということを隠すことにした。そのせいでヒロキは司を救えたのだと思い込む。だが、本当の司は一緒には連れて逃げられない。
記憶との齟齬を埋めるべく悟は自分を司だとヒロキに思い込ませ、ヒロキと共に会社から逃げた。

悟とヒロキは、林がMOディスク内で待ち合わせ場所として指定していた地を目指す。
安全な場所まで逃げ延びた悟とヒロキだったが、ヒロキにかけていた暗示が解け始めてしまった。悟はヒロキの暗示を解き、真実を伝えることにした。

全てを思い出したヒロキは悟を責める。だが、悟は司を救いたいなら間違いに向き合わせるべきだったと伝えた。そして、ヒロキの中から司の記憶を完全に消してしまうことは、司との思い出全てを間違いにしてしまうことなのではないかとヒロキに語った。

悟はヒロキと司の関係を、自分と林との関係に重ねていた。林は悟にヤマを与えて会社に引き込まなければこんな悲劇は起きなかったとずっと後悔していたが、悟にとっては林がヤマを与えてくれたことは何よりも感謝すべきことであった。悟は林との出会いが間違いだったなどと思いたくないと、ここまで逃げ延びることを選んだのだった。

悟の考えに涙を流したヒロキは、空に大きな二重の虹がかかるのを見た。悟も空を振り返る。そこは、林が持つヤマの風景そのものであった。その風景を目に焼き付けたヒロキは、「司にもこの景色を見せてやらないといけない」と呟いた。悟は「司だけじゃない林さんもメイリンもだ」「俺達で取り返すんだよ、ヒロキ!」と答えた。

『ペット』の登場人物・キャラクター

イメージを用いる特殊能力者たち

ヒロキ

演:植田圭輔
CV:植田圭輔/古市眞琴(幼少期)

司をヤマ親にもつ青年。明るく感情的な性格で、正義感が強い。その性格ゆえ、特殊能力者を道具として使おうとする会社の方針に強い反発を抱いていている。
幼い自分にヤマの記憶を分け与えて自我を持たせてくれた司に絶対的な親愛を向けている。会社や林との関係を巡り一時は司との絆も壊れかけるが、司を助けたいという一途な想いは変わらなかった。

司の水のイメージに合わせ、金魚のイメージを用いる。汚れたタニの記憶を嫌い、自分の記憶の中にもあまり多くのタニを持っていないために鍵が他の特殊能力者よりも緩く他人の記憶や感情に感化されやすい。その一方で、イメージの力をより自由に使いこなすことが出来る。

漫画版では司、悟と並ぶ主人公格の一人だが、アニメ版では主人公となっている。

悟(さとる)

演:谷佳樹
CV:小野友樹/朝井彩加(幼少期)

幼少期に病院で偶然出会った林にその能力を見出された特殊能力者。短い金髪にピアスを多数つけた外見だが、穏やかで冷静な性格である。性格に似合わない派手な外見は、林と引き離された寂しさを埋めるための行為であると自身で語っている。

林が失踪した後は桂木のペットとして仕事をしている。林の行方や失踪の動機について疑問を抱くも、深く考えると辛くなるので目を背け続けていた。だが、突如林が日本に舞い戻り、自分に宛てられたMOディスクを手にしたことで、林の想いを知り、会社から逃亡することを決意した。

他の特殊能力者たちは有機物のイメージを使うが、悟のイメージは某ネコ型ロボットアニメに登場するピンク色のドアである。タニを前にすると故障するなど悟の感情に機能が左右されることもあるが、瞬間的に記憶の中を移動出来るため、他の特殊能力者よりもスピードで優っている。

司(つかさ)

keisuke2712d3
keisuke2712d3
@keisuke2712d3

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