煉獄に笑う（煉笑）のネタバレ解説・考察まとめ
『煉獄に笑う』とはアクションかつファンタジー要素を含む時代活劇漫画である。作家は唐々煙で、2014年に「WEBコミックBeat's」に掲載され、同年『月刊コミックガーデン』にて連載が継続された。3部作ある笑うシリーズの1作で『曇天に笑う』の前日譚にあたる。主人公は石田佐吉。羽柴秀吉の命により近江国にある曇神社を訪れ、双子の男女と出会ったことから佐吉の運命が大きく動き出す。双子と共に呪大蛇を封印するまでの奮闘を壮大なストーリー展開で、人間の業の深さについても描写されているのが魅力の作品。
『煉獄に笑う』の概要
『煉獄に笑う』とは、2014年1月から2022年5月まで連載された時代活劇漫画である。作者は唐々煙で、当初は「WEBコミックBeat's」（マッグガーデン）に掲載されたが、2014年に同社が『月刊コミックガーデン』を創刊しそちらに移行している。『泡沫に笑う』、『曇天に笑う』に続く笑うシリーズの最終作品である。2017年には、舞台 『煉獄に笑う』として舞台化された。
『曇天に笑う』の300年前の時代を描いた前日譚として、シリーズの中では最も長編となる14巻で完結している。
物語は冒頭、関ヶ原の戦いに繰り出す武士たちが描かれており、これは漫画の最終巻の最後のページに帰結する始まりとなっている。関ヶ原の戦いまでの様々な史実が、ファンタジー要素を取り入れながら描かれ、その中に人間の業の深さも描写されている。
主人公は石田佐吉（いしださきち）。ある日、主君の羽柴秀吉（はしばひでよし）の命を受け近江国の南部を訪れていた。そこで、ある双子に出会う。この双子は、ある重要な鍵を握る人物だった。佐吉は、村では忌み子とされる双子の存在に振り回されながらも、任務を遂行しようとする。その中で天下統一のために呪大蛇の力を手に入れようとしている者がいることを知った佐吉は、力ではなく正しく民を導ける者が上に立つべきであるという信念のもと呪大蛇を討つことを決心し、その討伐までの道のりを描く。
『煉獄に笑う』のあらすじ・ストーリー
双子との出会い
石田佐吉（中央）の前に姿を現した曇芭恋（右）と曇阿国（左）
時代は戦国時代。主君・羽柴秀吉（はしばひでよし）の命令で、近江南部にある曇神社を訪れた石田佐吉（いしださきち）。そこにいたのは8代目当主である曇芭恋（くもうばれん）と曇阿国（くもうおくに）の双子だった。佐吉は2人に髑髏鬼灯（どくろほおずき）を頂きに参ったと申し出るが、それが何なのかも知らない佐吉に対して双子はのらりくらりと躱す。佐吉は何とか髑髏鬼灯を手がかりを掴み、手に入れようとする。
国友編
髑髏鬼灯が手に入るまで神社に居座ることにした佐吉。ある日、阿国が鉄砲鍛冶の集団の国友衆に襲われ、髑髏鬼灯を盗られたという。
国友衆の本拠地へ乗り込んだ佐吉だったが、国友の者たちと対峙したことで、自分が双子に騙されていたことを知る。一旦撤退した三成は双子に詰め寄るが、国友の頭領・国友藤兵衛（くにともとおべえ）という少女が売られた喧嘩を買いにやってきてしまう。銃撃戦の最中、なぜか藤兵衛が仲間に撃たれ、そのまま国友のお家騒動に巻き込まれることに。
藤兵衛によると、自身が頭領を継いだのは最近のことで、まだ子どもである自分をよく思わない叔父の勇成（ゆうせい）が起こした事件だろうと言う。やはりこの騒動の黒幕は勇成であったが、最後は部下からの信頼を培ってきた藤兵衛の勝利に終わった。
伊賀編（前編）
髑髏鬼灯は人を寄り代にして蘇る化け物・呪大蛇（のろいおろち）の在処を示す者である。その呪大蛇を宿す者は「大蛇の器」と呼ばれ、その中から負の感情に飲まれた者の身に巣食うという。
さらに、徳川家康（とくがわいえやす）、大坂の石山本願寺、伊賀三大上忍、織田信長（おだのぶなが）が、呪大蛇の力を手に入れて天下を取ろうと動いていることが判明する。
大蛇の器が誰なのか知るため、佐吉は芭恋の後をつけて京の街へとやってきた。彼を追って入った遊郭で、芦屋弦月（あしやげんげつ）という遊女と出会う。彼女はそこで情報屋をしている陰陽師だった。
芭恋が情報を得るためにここへ来ていることを知った佐吉が彼女と話していると、伊賀忍の百地一波（ももちいちは）が刺客として2人の前に現れた。
同刻、山あいを歩いていた阿国と藤兵衛のところへも刺客が現れる。藤兵衛を逃がした阿国の前に現れたのは、百地海臣（ももちかいしん）と百地桜花（ももちおうか）率いる伊賀忍衆だった。そして、応戦する阿国の前に現れた百地家当主の百地丹波（ももちたんば）は、近江の村々の村人を人質にしていることを告げ、阿国に伊賀に来るよう命令するのだった。
一方、刺客からは逃れたものの、阿国が連れていかれたことを知った佐吉と芭恋は、阿国奪還のために伊賀へと向かう。その道中、百地一派が近江国を焼き払おうとしていることが明らかになり、芭恋はそれを阻止するために近江に帰る。
阿国は百地海臣と桜花によって助けられた。自力で脱出しようとする阿国の前に、国友の跡取り騒動での借りを返すために藤兵衛が現れる。阿国は伊賀の本拠地を出る前にある巻物の在処を突き止め、それを持ち出し脱出する。
その後、芭恋・阿国・佐吉の3人は、丹波の計画を阻止するために闘う。近江国が火だるまになるのは回避できたものの、百地派の者たちによって芭恋と阿国は曇神社もろとも消されてしまった。
伊賀編（後編）
曇神社を立て直そうとする佐吉。彼は、伊賀との戦いの中で芭恋と阿国が髑髏鬼灯を守る役目を担ってきたことを知り、2人に代わって髑髏鬼灯を狙うものから守ると誓う。
大蛇を手に入れるには復活の章・操りの章・封印の章という三つの巻物が必要であることを知った佐吉は、巻物を探しに行く。巻物を巡っての争いが繰り広げられる中、佐吉は荒木村重（あらきむらしげ）から一本の巻物を託された。
一方、陰陽師の安倍晴鳴（あべのせいめい）が伊賀と手を組み、器候補を炙り出すために佐吉たちを追い込んでいく。追い詰められた佐吉を助けたのは、消えたはずの曇兄妹だった。
巻物は佐吉・阿国・信長がそれぞれ持っていることが明らかになる。
信長の国取りが進むにつれ、伊賀軍と織田軍の争いが始まる。その時が巻物を取るチャンスだった。
しかしそんな矢先、芭恋の前に百地丹波が現れる。実は丹波は双子の父親だった。信じられない芭恋だったが、真相を探るためにも伊賀へと向かう決心をする。
伊賀の本丸にて、芭恋は対織田との戦いの指揮をとるように言われる。そして芭恋は、織田軍にいる佐吉たちと前線で闘うことになる。
戦が始まった。阿国は織田軍の1人として潜入し、佐吉は織田軍の小姓として戦に参加。国友も後方支援として軍を率いていた。
芭恋の作戦により、追い詰められていく国友衆。芭恋は藤兵衛を逃がすため、一瞬の隙をついて彼女を谷へ突き落とした。しかし安倍晴鳴に捕らえられた藤兵衛は、決死の覚悟で孤軍奮闘し、自身の命と引き換えに国友一味を守ったのだった。
伊賀で囲まれている芭恋を助け出そうと、佐吉と阿国が駆けつける。しかし芭恋は伊賀の地で過ごす内に、この地にも守りたい人ができていた。芭恋の思いを知った2人は、共に伊賀につき、里の者を助け出す。
そして丹波は信長の影武者との一騎打ちをするが決着はつかず、圧倒的な織田軍との戦いに敗れて開城した。
戦いのあと、芭恋は自身の出生につい百地ご衛門（ももちごえもん）から話を聞いた。やはり、自分達の父は百地丹波であり、母の旭（あさひ）は抜け忍だった。旭は決死の覚悟で伊賀から抜け出し、近江国で曇家7代目当主として、精一杯近江と自分の子どものために生きたのだ。その話を聞き、芭恋は静かに納得するのだった。
大蛇編
伊賀の乱のあと、石田三成（いしだみつなり）の名を挙げた佐吉。信長は、天下統一のためにかねてより侵攻を続けていた中国の毛利征伐を本格化させる。秀吉からの援軍要請で京の本能寺に来ていた時に、明智光秀（あけちみつひで）の謀反に遭う。本能寺で明智軍に応戦していたのは、信長の影武者・比良裏（ひらり）だった。比良裏は、髑髏鬼灯の守り人として転生していた人物だった。髑髏鬼灯とは、遥か昔に大蛇を封印するために用意された式神であり、信長の女中として転生していた。比良裏を助けようとする中で、髑髏鬼灯は本来の姿を覚醒させる。大蛇を封印する約束をし、比良裏は本能寺で討死する。これが、表向きは信長が討たれたとされる本能寺の変である。
天下統一の裏で、巻物と大蛇の器を巡っての争いが激化する中でついに大蛇の器が分かる。
織田信長だった。大蛇に姿を変え、敵も味方もなく近江国を飲み込んでいく。全ての人間が大蛇封印のために動き出した。芭恋と阿国、髑髏鬼灯を中心に大蛇封印のために死闘を繰り広げる。髑髏鬼灯が渾身の力を発揮し、一度は大蛇封印は成功したかに見えたが、佐吉が大蛇に飲まれてしまう。
芭恋と阿国は、佐吉を取り戻そうと曇神社に代々伝わる短刀を大蛇の口に投げ入れる。芭恋が投げ入れた刀を受け取り、中から出てきた佐吉は自我を失っていた。佐吉への総攻撃が始まる中、芭恋と阿国は必死に佐吉に縋り付く。何とか本体を引き剥がし、今度こそ完全に大蛇を封印するのだった。
戻ってきた佐吉だったが、既に体の半分は残っていなかった。そして、双子たちに看取られながら笑顔で眠った。
『煉獄に笑う』の登場人物・キャラクター
主要人物
石田佐吉（いしださきち）／石田三成（いしだみつなり）
本作の主人公。近江の北・石田村で育つ。秀吉の小姓で、主君の羽柴秀吉にその名をもらう。石田三成という名は、伊賀の乱以降に正式な名として挙げるようになる。
緑色の珍しい髪色を持つ。性格は、頑固で正直者。こうと決めたら梃子でも動かないところがあり、へいくわい者と呼ばれている。己の正義のために真っ直ぐ突き進む姿に皆が信頼をおく存在である。
武士としての腕も中々で、戦いながら相手の弱点を探る頭脳戦もできる。
大蛇の器を知るという「髑髏鬼灯」なるものを探せと近江に御遣いに。本人もまた大蛇の器候補の一人である。髑髏鬼灯や大蛇の伝承を探るうちに、曇の双子と深く関わりあうことに。
隠し事が苦手なため、「極秘で動いてる為」と口を滑らせ、島左近に「極秘で動いてることは教えてくれるんですね」と突っ込まれたこともある。
愛馬は俊足かつなぜか尻尾とたてがみが縦ロールの撫子。仕方なく近江で新しく購入した馬だが懐いている。
動物には懐かれるが言い方が辛辣で言葉を選ぶことはないため、友達は少ない。
曇芭恋（くもうばれん）
曇神社8代目当主の一人。双子の片割れの18歳。眼帯と羽根が付いた髪飾りが印象的。性格は根に持ちやすく、しつこく、人の神経を逆撫でするのが得意。意外にも面倒見がよくマメ。綺麗好きらしく、阿国のかんざしは芭恋が磨いているらしい。
左目に鱗模様のアザがあり、自身も大蛇の器であると疑っている。普段はアザを隠すために眼帯をしている。いつもキセルを携帯している。幼い頃に母を亡くし、阿国と2人で支えあって生きてきたことから、基本的には阿国と自分しか信用しておらず、どうでもいい人間に対しては冷酷な一面を見せることも。
腕は相当立ち、純粋な強さでいえば佐吉を上回る。相手の神経を逆撫でする事に対しては天才的。即席でパチンコを作るなど手先は器用。
伊賀の忍によって近江に火を放たれた際、芭恋がやったと誤解され、村人に銃で撃ち抜かれ崖から落下。生死不明となっていたが、四巻で存命が示唆され、五巻にて再登場する。
曇阿国（くもうおくに）
目次 - Contents
- 『煉獄に笑う』の概要
- 『煉獄に笑う』のあらすじ・ストーリー
- 双子との出会い
- 国友編
- 伊賀編（前編）
- 伊賀編（後編）
- 大蛇編
- 『煉獄に笑う』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- 石田佐吉（いしださきち）／石田三成（いしだみつなり）
- 曇芭恋（くもうばれん）
- 曇阿国（くもうおくに）
- 織田信長（おだのぶなが）
- 羽柴秀吉（はしばひでよし）
- 国友の人々
- 国友藤兵衛（くにともとおべえ）
- 国友勇成（くにともゆうせい）
- 国友勇真（くにともゆうま）
- 百地家の人々
- 百地丹波（ももちたんば）
- 百地海臣（ももちかいしん）
- 百地桜花（ももちおうか）
- 百地一波（ももちいちは）
- 百地ご衛門（ももちごえもん）
- 百地秋水（ももちしゅうすい）
- 百地亜瑚（ももちあこ）
- 百地鈴太郎（ももちりんたろう）
- 百地獅子丸（ももちししまる）
- 曇旭（くもうあさひ）
- その他
- 芦屋弦月（あしやげんげつ）
- 比良裏（ひらり）
- 髑髏鬼灯・牡丹（どくろほおずき・ぼたん）
- 織田信雄（おだのぶかつ）
- 安倍晴鳴（あべのせいめい）
- 島左近（しまさこん）
- 荒木村重（あらきむらしげ）
- 明智光秀（あけちみつひで）
- 多羅尾光俊（たらおみつとし）
- 黒田官兵衛（くろだかんべえ）
- 鬼平太（きへいた）
- 蘭丸（らんまる）
- 大谷紀之介（おおたにきのすけ）
- 服部半蔵（はっとりはんぞう）
- 藤林長門守（ふじばやしながとのかみ）
- タヌキ
- 撫子（なでしこ）
- 曇佐世（くもうさよ）
- 『煉獄に笑う』の用語
- 人物に関するもの
- 呪大蛇（のろいおろち）
- 髑髏鬼灯（どくろほおずき）
- 煉獄者（れんごくもの）
- 八咫烏（やたがらす）
- 場所に関するもの
- 安土城（あづちじょう）
- 曇神社（くもうじんじゃ）
- 『煉獄に笑う』の名言・名セリフ／名シーン・名場面
- 曇阿国「胸張って笑ってりゃいいのよ 少しは生きやすくなるわ」
- 曇阿国「ほら、私も笑うから」
- 曇芭恋「正しいことが幸せとは限らねぇんだよ 佐吉っちゃん」
- 国友藤兵衛「終わってたまるか 近江国友は鍛冶屋にして戦屋 表裏一体の製造衆 たとえこの身朽ちても魂は共にある 愛すべき国友よ 繁栄あれ！今日と云う日に 国友藤兵衛此処にあり！！」
- 石田佐吉「正しいとは正義ではない 己で貫いたものが正しくなるのだ」
- 『煉獄に笑う』の裏話・トリビア・小ネタ／エピソード・逸話
- 比良裏（ひらり）は織田家の一族の1人
- 鬼平太は17歳
- 芦屋家のトレードマークは眉毛と月