東村アキコ「かくかくしかじか」が夢見る若者に現実を突き付けてきてツライ

数々のヒット作を飛ばす女性漫画家東村アキコさんの2012年スタートの連載であり、2015年マンガ大賞を受賞作でもある『かくかくしかじか』は、漫画家を目指す人、ひいては夢を見るすべての人たちへのメッセージに溢れています。
◆東村アキコさんとは?

東村アキコの主な著作
『きせかえユカちゃん』
『ママはテンパリスト』
『海月姫』
『主に泣いてます』など
「オシャレ」「カワイイ」をテーマにしたドタバタコメディから、ヲタク女子&男の娘をメインにアニメ化・実写化までされた人気作、自身と息子のやりとりをユーモラスに切り取ったエッセイまで、個性豊かな作品で多くのファンを魅了する漫画家です。
◆『かくかくしかじか』とは?

こちらは『ママはテンパリスト』や『ひまわりっ』と同様、自身の体験をベースにした自伝的作品。作者の故郷である、鹿児島県を舞台に物語はスタートします。主人公の林アキコは絵が上手な(と周りに囃されるあまりちょっぴり鼻が高くなっている)女の子。美大を受験することに決め、見学に行った絵画教室では木刀を担いだ「日高先生」に、それまで積み重ねた自信をあっけなく砕かれ、木刀で殴られながら文字通りビシバシしごかれていきます。
5巻完結という手ごろな冊数が、これから読み始める人にもおすすめ。
◆甘ったれた若者たちへ……これが現実だ!!

物語は高校時代~大学時代~漫画家になるまでを現代の作者自身が振り返るような構成になっており、当時を振り返って恥ずかしさにもだえるシーンや、「当時の自分をブン殴りたい」という衝動が包み隠さず描かれています。
また、美大を受験したきっかけについて「勉強が得意じゃなかったから」と正直すぎる理由を明らかにしたり「美大生なんてのは親が必死で働いて稼いだ金で自分の好きなこと4年もやらせてもらたくせに就活すらせず社会に貢献しようなんて発想もなければ親に恩返ししようとも思ってない、ただの…ただの…クソバカなんです!!」(同作3巻より)など、あまりにも痛快すぎる言葉が散りばめられ、身悶えなしには読めない人もいるのでは……?

はじめは絶好調のアキコちゃん。しかし彼女がひとたび井の中を抜け出すと……。

「いくらなんでもアバンギャルドすぎるだろう……」というこのお方こそ、今作の最重要人物であり、東村アキコの恩師がモデルとなった絵画教室の「日高先生」。

男も女も関係なく、木刀でブン殴りながら指導し、泣き始める少女には「泣くなー!!」とアイアンクローで追い打ちをかける超絶スパルタの日高先生。しかし、アキコはそんな日高先生に泣きながら食らいついていきます。

絵を描くという哲学と絵を描くという逃避行を交互に見せつけられ、分かりやすい図式を持ち出してまで解かれる「いかに美大生が大人になりたくないピーターパン症候群か」というページは、飲み会帰りの美大生諸君のライフポイントを確実に削る仕様。
共感しながら、胸を痛めながら……泣いて笑える青春ギャグ漫画の、新たな『鉄板』になるかも?
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